本日の市民講座で参耆地黄湯加減による慢性腎炎の治療を終了します。
( )内に私のコメントを随時いれます。
医案に進みましょう。
患者:?某 29歳 男性
初診年月日:2005年5月18日
病歴:
高血圧の病歴三年、ここ2ヶ月腰酸乏力、尿蛋白3+、血圧160/100mmHg、腎機能:Cre144μmol/L(1.63mg/dL)、西医は嘗て、限局性硬化性糸球体腎炎と診断し、降圧?那普利(絡汀新)Benazepril Hydrochloride(塩酸ベナゼプリル、ACE阻害薬、日本ではチバセン)と血小板凝集抑制剤のdipyridamoleを与えた。中医治療を求めて氏の病院受診、外来では虚労、慢性糸球体腎炎、慢性腎不全と診断され入院となった。
(限局性硬化性糸球体腎炎とは組織病理学的な診断ですから腎生検を受けたのでしょう。チバセンは懐かしいですね。十数年前までは私も使用していました。Dipyridamoleは商品名ペルサンチンです。)
初診時所見:
腰酸乏力、双下肢軽度浮腫、下腿に軽度指圧痕が残る、舌質紅、苔白、脈沈。BUN5.24mmol/L(31.44mg/dL)、Cre113μmol/L、尿酸478μmol/L(8.03mg/dL)、尿蛋白2+、潜血2+、RBC3~4個/HP、ヘモグロビン10.2g/dL、超音波検査:双腎軽度炎症性変化、右腎小嚢胞結石を伴う。
(嚢胞の数、サイズ、結石の存在する場所についての記載は有りませんでした。)
中医弁証:脾腎両虚、湿熱瘀血
西医診断:慢性糸球体腎炎
治法:脾腎双補
方薬:参耆地黄湯加減:
熟地黄25g 山茱萸20g 山薬20g 牡丹皮15g 茯苓25g 澤瀉20g 黄耆50g 党参20g 淫羊藿(仙霊脾に同じ、補腎壮陽、祛風除湿)20g 蘇木(活血祛瘀 消腫止痛)20g 胡芦巴(温腎陽、逐寒湿、寒湿を伴う腎陽不足に適している薬剤)25g 懐牛膝20g 車前子15g 土茯苓50g 薏苡仁25g 丹参20g 桃仁20g 金桜子20g 桑椹子30g 甘草15g
七剤、水煎200ml 毎日100mlずつ2回に分服。
(参耆六味地黄湯加味方になっています。
黄耆50gの大量配伍はネフローゼ症候群242、259、慢性糸球体腎炎261、262報にも有りました。一般に蛋白尿の多い場合や、気虚症状が強い場合に増量されます。胡芦巴は温腎陽、逐寒湿、寒湿を伴う腎陽不足に適している薬剤ですが、一方では湿熱と弁証しながらも、腎不全の弁病論として祛寒湿という考えをお持ちなのかもしれません。本案はそれほどの腎不全ではありません。慢性腎不全 張琪氏漢方治療6.(腎病漢方治療206報)でも胡芦巴が配伍されています。土茯苓(清熱解毒)50gの大量配伍も同206報に見られます。蘇木、丹参、桃仁は祛瘀活血の生薬群です。これらの活血薬は腎機能の低下を防ぐ弁病論でしょう。)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます