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慢性腎不全 張琪氏漢方治療2.(腎病漢方治療202報)

2013-11-17 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方

患者:周某 68歳 男性

初診年月日:20021218

主訴:倦怠乏力半年

病歴:

20026月明らかな誘引なく倦怠乏力が出現、検査にて腎機能異常が発見され、多医の治療を受けたが、明らかな改善は得られず、氏の外来を受診した。脂肪肝20年余、嘗て龍胆瀉肝丸を2年余服用したことがある。

初診時所見:

倦怠乏力、納差、心煩口干、口が粘る、大便2/日、舌質紅、中央に裂紋、辺に歯痕あり、苔白厚黏膩、脈大。尿検査:蛋白(+)、腎機能、Cre492.5μmol/L5.57mg/dl)、BUN10.23mmol/L61.38mg/dl)、ヘモグロビン6.1/dl、超音波検査で双腎体積縮小。

中医弁証:湿濁化熱 胃熱陰虚 瘀血内

西医診断:慢性間質性腎炎 慢性腎不全(高窒素血症期)

治法:清胃熱 養胃陰 化湿濁 活血化瘀

方薬:甘露飲加活血化瘀薬

熟地黄20g 生地黄15g 黄芩15g 枳殻15g 茵陳蒿15g 枇杷葉15g 石斛20g 麦門冬15g 川黄連10g 草果仁15g 砂仁15g 藿香15g 白朮15g 山茱萸20g 大黄10g 桃仁15g 丹参20g 赤芍15g 当帰20g 甘草15g

水煎服用 1日1剤 二回に分けて服用

二診 2003122

近日胃脘張満、大便日に23回、便は薄く、舌質淡紅、苔白厚裂、脈大。腎機能:Cre496.9μmol/L5.61mg/dl)、BUN14.12mmol/L84.7mg/dl)、二酸化炭素結合力18.0mmol/L(正常域2030mmol/L或いは5070 Vol%) ヘモグロビン7.49/dl、尿検査:蛋白±白血球510/毎視野、赤血球1015/毎視野。弁証治療同前。

方薬

熟地黄20g 生地黄15g 黄芩15g 枳殻15g 茵陳蒿15g 半夏15g 砂仁15g 草果仁15g 白朮20g 神曲15g 葛根15g 赤芍20g 桃仁15g 当帰20g 丹参20g 甘草15g

水煎服用 1日1剤 二回に分けて服用

三診 2003319

服薬30余剤、食後に胃張はあるが、口中異味感はない。舌質淡でやや水っぽく、苔白厚、脈大。腎機能:Cre447.7μmol/L5.06mg/dl)、BUN16.82mmol/L100.92mg/dl)、ヘモグロビン7.4g/dl、尿検査:蛋白(+)弁証治療同前、方薬前方加味

方薬                                                

生地黄15g 茵陳蒿15g 黄芩15g 黄連10g 半夏10g 陳皮15g 紫蘇15g 草果仁15g 太子参15g 白朮15g 茯苓15g 砂仁15g 白豆蔲15g 神曲15g 麦芽30g 山楂15g 大黄10g 桃仁15g 葛根20g 赤芍15g 丹参15g 山茱萸20g 何首烏20g 女貞子20g 瞿麦15g 甘草15g

水煎服用 1日1剤 二回に分けて服用

その後フォローアップしたところ、症状は著明に改善、Creは400μmol/L4.52mg/dl)前後、病情は穏定。

ドクター康仁の解釈

前案では甘露飲中の枇杷葉は配伍されていませんでしたが、本案では初診時に配合されています。枇杷葉は化痰止咳、和胃降逆に作用します。清胃熱の効果が甘露飲では見逃せないところです。

本案では消化剤の神曲15g 麦芽30g 山楂15gの組み合わせが施されています。

最終的な薬用中の何首烏には補益精血、抗マラリア作用、解毒、潤腸通便の作用がありますが、大黄 桃仁と共に通便泄濁に働くことも要点になるでしょう。女貞子は養陰薬ですが、山茱萸、何首烏と共に補(肝)腎に作用すると考えられます。大黄10g 桃仁15g 葛根20g 赤芍15g 丹参15g 当帰20gの大黄の通腑泄濁 活血祛瘀 葛根 赤芍 丹参の活血祛瘀、全当帰の養血活血は前案とほぼ同じです。最初の頃の熟地黄 当帰の組み合わせは貧血のための養血目的でしょう。貧血がやや改善してからは滋膩の熟地黄は除かれていますね。前案と比較してみますとよく分かります。砂仁(化湿行気和中)15g 草果仁(温中燥湿)15g 白豆蔲(行気温中化湿消痞)15gなどの組み合わせも前案と同様です。

前案の前記で日本の医療制度について間違いが有りました。最短でも医師になるのに24歳です。中国では張琪氏に見られる様に20歳から医療活動を開始したとあります。弟子派と学院派の違いでしょうか。本案にも誇張も無く、淡々と中医治療の結果を述べています。前案でも藿香発表解暑、化湿止嘔、行気止痛)が三診まで、本案では初診時に配伍されています。化湿と止嘔が主な目的だったのでしょう。

以上は中薬治療として素晴らしいものです。誇張がありません。データの捏造もありません。

20131116日(土) 記