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慢性腎不全 張琪氏漢方治療4.(腎病漢方治療204報)

2013-11-23 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方

患者某 31歳 女性

初診年月日:2005117

病歴

一年前、腰酸乏力を自覚したが検査治療は受けなかった。10日前。悪心嘔吐が出現、黒い便を伴い、黒龍江省緩化市第一病院受診、胃の透視検査で胃十二指腸球部潰瘍が発見され、西薬の咪替丁片(シメチジン)を1クール服用して黒便は好転したが、まだ悪心、嘔吐があり:腎機能:BUN34.8mmol/L208.8mg/dlCre863μmol/L9.75mg/dl)、故に氏を受診した。貧血歴6年。

私の印象:消化管出血がある場合にBUNは上昇しやすいのです。このデータでは、腎不全が治ることはありません。早晩、血液透析や腎移植となるはずです。H2ブロッカーの初代のシメチジンの名前を久しぶりに耳にしました。2005年の中国ではすでに広く流通していたのでしょう。)

初診時所見

腰痛乏力、悪心、嘔吐、便干、面色萎黄、形体消痩、眼瞼に浮腫無く、舌淡苔白、脈沈細。尿蛋白(+)尿潜血(+)ヘモグロビン9.8g/dl、腎機能:BUN34.15mmol/L204.9mg/dl)、Cre1018.9μmol/L11.51mg/dl)。

中医弁証:湿濁化熱、胃熱陰虚

西医診断:慢性腎盂腎炎、慢性腎不全(尿毒症期)

治法:清胃熱 養胃陰 化湿濁

方薬:甘露飲加減:

生地黄20g 茵陳蒿20g 黄芩15g 枳殻20g 枇杷葉20g 石斛20g 麦門冬20g 大黄10g 草果仁15g 砂仁15g 竹茹20g 半夏20g黄連15g 乾姜10g 芦根30g 当帰20g

14剤、水煎服用 1日1剤 二回に分けて服用

私の印象:芦根は甘寒 生津、清熱止渇に作用します。太平恵民和剤局方が出典の甘露飲は枇杷葉 熟地黄 天門冬 枳殻 茵陳蒿 生地黄 麦門冬 石斛 甘草 黄芩の十味の組成ですが、陰虚挟有湿熱の疾患に用いられます。

再診

14剤服用後腰痛乏力軽減、悪心嘔吐の回数減少、睡眠は不良。腎機能:Cre919μmol/L10.38mg/dl)、効果が出ているので処方を変えないで、上方に夜交藤30g 酸棗仁20gの安神剤を加味した。服用14剤で諸症減軽、Cre799μmol/L9.03mg/dl)、前方加減を継続、活血化瘀薬を併用し、病情は好転。

ドクター康仁の印象

慢性腎不全で陰虚湿熱が慢性化すれば、胃内湿熱は必ず胃陰を損傷するので甘露飲が良いのです。胃の降濁受納が失調し、胃気上逆による悪心 嘔吐 納差になります。そこで、清胃熱、養胃陰、化湿濁が治療法となるのです。黄連を加え、黄芩を増し、茵陳蒿など苦寒清熱祛湿を行う一方で、竹茹、半夏、芦根で降逆止嘔(竹茹には泄濁の効果もあります)、草果仁、砂仁で化湿濁、大黄は通腑泄濁導滞に作用します。石斛 麦門冬 芦根は養胃陰清熱と考えれば理解しやすいでしょう。

但し、「脾胃受湿、瘀熱在裏」の状態に温裏薬の乾姜が一味加味されているところが、私には「はて?」と感じました。このような一味の「はて?」が張氏の匙加減なのでしょう。辛開苦降の半夏瀉心湯の乾姜の意味だろうと思います。

氏の活血化瘀薬群は大黄15g 桃仁20g 赤芍20g 紅花15g 丹参20g 時に葛根を組み合わせます。

本案の眼目は、西洋医ならあわてて血液透析の準備をする腎不全でも、一定の中薬治療で「落ち着かせる」「一時的寛解が得られる」いうところに有ります。

20131122日(金) 記

明日から2連休ですので「目をお休みさせるためにも、安息日には漢方医案を作成しない予定です。皆さん良い2連休をお楽しみください。