四逆散は漢方古典の「傷寒論」の少陰病に記載される方剤である。
組成は柴胡 枳実 白芍 炙甘草の4薬である。気薬としての柴胡は疏肝理気に、血薬としての白芍は和血養陰に、上行の柴胡と理気に働く枳実は下行に対をなし気机調整に働き、炙甘草は諸薬調和に働き、全体として調和肝脾の作用を持つ。また白芍と炙甘草は緩急止痛とともに、酸甘化陰で柴胡の傷陰を間接的に防止すると説く学派もある。
肝は血を蔵し(陰を蔵し)、疎泄(気-陽)を司る
肝は体陰であり、陽を行う 「体陰用陽」の漢方基礎理論がある。
つまり、肝郁による四逆(陽虚、陽郁を意味する)、陽郁のために経絡に陽気が供給されないので、手足の外側部分が冷たい。脈は弦である。
面倒な漢方理論よりも、最近の症例から早漏やEDの具体的な話をしよう。
44歳のエンジニアで、普段は健康で健診で異常を指摘されたことはなかったが、昇進を期に忙しい時期が半年ほどあり、その後EDと睡眠障害が半年ほど続き、
心療内科で睡眠薬、抗うつ剤、泌尿器科でバイアグラなどを処方してもらってから、幾分の改善を見たものの、仕事のストレスが重なるにつれ再び症状が悪化し、来院された。
悪化してからは、以前週に2回はあった夫婦生活も、月に1度あるかないかになり、勃起も不十分で、挿入困難であるに加え、2分以内に快感も無く射精してしまうと言う。手足は冷たいが、髪は黒々としており、歯も健康そうであり、とても腎虚や腎精不足は感じられない。
漢方診断は肝気鬱結(肝郁)、陽事不用(ED)である。治療は疏肝解郁、安神定志であり、四逆散に香附子、川芎、遠志、真珠粉、蜈蚣を加味し、減煙を薦めた。
20日後に再診されたときの表情が全てを語っていた。
不眠傾向が改善し、性欲が増し、勃起不全が改善されたとのこと。
更に20日後、諸症はことごとく消失した。もちろんバイアグラのお世話にはなっていない。
現在は煎じ薬を中止してエキス剤の逍遥散で再発はない。
ちなみに逍遥散は肝郁血虚脾弱証に使用される方薬であり、組成は
柴胡 薄荷 茯苓 白朮 当帰 白芍 である。
経験的に、女性の生理前の乳房張痛がひどい場合の生理痛などに、特に効果がある。