古川日出男が若いころから傾倒していた村上春樹、つながり。
なぜかいつものように村上ワールドに安心して浸れない作品だった。
冒頭、田村カフカくんが旅に出るところは、若いときにやってみたかったことを大人になって
リアルに想像して楽しんでる感、があって一緒にわくわくした。
でもその後、どうもカフカくんの旅立ちに大きく影響しているであろう、お父さんという人間を
どうとらえていいのか分からないまま終わってしまった。
母と姉と関係を持つことになるだろう、と息子に予言する父親の異常さはどこからくるのか?
カフカが入った深い森の世界の描写は、止まった時間の中でカフカくんだけがよそものであることを肌で感じ取れた。
私の中ではこれこそ村上ワールドなのだ。
死んだ人の世界、というよりは、佐伯さんのように記憶を燃やしてしまった世界なのかもしれない。
攻殻機動隊の中で、素子ちゃんが映画館にダイブしたときの話を思い出す。
あのときのあっちの世界の人との会話、戻ってこようとする気持ちの強さ、と似ている。
印象深い文章
☆難解な音楽についての大島さんのセリフ
「僕の人生には退屈する余裕はあっても、飽きているような余裕はない。」
退屈する=難解である すぐに飽きる=安直さ
☆森に入ったカフカの感想
「植物がそれほど不気味なものになれるのだという事実を、僕は知らなかった。」
人間の手によって飼いならされた植物とはまるで別物、ということ。
おそれや敬意を持て。
これを同じように知らないことは山ほどある。
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