前回「さよならクリストファー・ロビン」の中で頻繁に登場したアトム。
ここで引用されているアトムには、私が今まで持っていた子供向けの明るいヒーロー色は感じられず、
むしろアトム自身の深い考察に、そうか鉄腕アトムってこんな話だったのね、としんみりしてしまった。
そこでつながった「火の鳥」。
13巻すべてが火の鳥が関わる物語で、それは古代においても未来においても
人間という生き物が基本的に変わらないものであることを火の鳥を通して気付かせてくれる。
どういう行いが良い、悪いというような単純なものさしで作られた物語ではない。
一見良さそうに見えたものが、悪しきもののように見えたものと、実はたいして変わらないということを
火の鳥が知るのは、不死鳥として生き続け、世の中を見続けた結果だ。
未来について描かれた物語は、今でこそもう手が伸ばせる範囲にある世界だと感じるのだが、
これが描かれた時代に、所詮AIも人間がつくり出した産物であり、何か一つ歯車が狂い出した途端、
人間の愚かさがこぼれ出てくるというような想像していた手塚治虫という人間を、ただただすごい!と思う。