紅葉狩り

　「明日ありと　思ふ心の仇桜　夜半に嵐の　吹かぬものかは」と、親鸞聖人が詠った春の桜のように、秋の紅葉も日本人の心を穏やかざるものにする自然の美しさの代表である。

　百人一首では藤原忠平が「小倉山　峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ」と、愛しいあの人ともう一度見に来るまで散らずに待っていてくれ、ともみぢに語りかける。　

　文京区駒込にある江戸時代の大名庭園・六義園ではライトアップが行われ、初冬の園内はカメラやケータイやタブレットを手にした多くの人で賑わっていた。

　今の時期は一年で日の入りの一番早い季節だそうだが、日暮れと共に回遊式庭園の紅葉がLEDのライトに浮かび上がり、趣向を凝らした色鮮やかな庭園をゆっくりと2時間かけて廻った。

　12月としては暖かく、微かに風に揺れる紅葉の葉が「嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の 錦なりけり」と詠われたように、池に映った錦が揺らぎ、その美しさにしばし見とれていた。

65歳以上は150円という入園料に、大満足の一夜でもあった。