勿忘草 ( わすれなぐさ )

「一生感動一生青春」相田みつをさんのことばを生きる証として・・・

青い鳥

2008-09-07 19:52:52 | Weblog
 主のいなくなった鳥かごの掃除をした。毎日餌を食べ、鏡に映る自分の姿とのおしゃべりに興じ、好きなだけ遊んでは籠から出て部屋の中を飛び回る。そして僕の肩に止ってまたしゃべる。白い鳥かごに残された、たった一ヶ月の思い出が、激しく切なく胸を締め付ける。

 失って始めて知る大切なもの。本当の大切さは、失ってみないとわからない。長く生きてきて何度も体験したことである。突然現れて突然去っていったピーチャン。そこにいることが当たり前になっていたピーチャンがいなくなって、心にポッカリと穴が開いた。

 洗濯機の終了音、炊飯器の炊きあがりを知らせる音、電子レンジの音、すべてがピーチャンの鳴き声に聞こえ、辺りを見回す。ベランダの向こうの電柱に止まるスズメの鳴き声にも、目を凝らして確かめる。

 籠の鳥にするのはかわいそうと、自由に遊ばせた。米粒ほどのフンも、ウェットティッシュを持ち歩いて拭いた。時には出かけようと着替えたシャツの肩に止ってフンをしたこともある。それらのすべてを許せた。それほど可愛かった。

 小さな身体に似合わぬ聡明さに、驚かされる毎日だった。僕を慕い、僕と一緒の時は、外に出る素振りもしない。安心していた。

 メーテルリンクは、童話「青い鳥」で、幸せは鳥かごの中にあると教えた。いま、我が家の青い鳥は、鳥かごから出て幸せを運んでいるのかも知れない。白い鳥かごには、多くの幸せな思い出が残った。