クールジャパン★Cool Japan

今、日本のポップカルチャーが世界でどのように受け入られ影響を広げているのか。WEB等で探ってその最新情報を紹介。

クールジャパン現象は終るのか?(1)

2011年08月04日 | クールジャパンを考える
MANGA、宴のあとで】(朝日新聞グローブ (GLOBE)2011年2月7日)

「クール・ジャパン」の行方
昔浮世絵、今MANGA。現代日本のポップカルチャーの代表格であるマンガは多くの国の言葉に翻訳され、出た先々でファンを生み、世界を席巻する勢い──のはずが、最近は売り上げ減少、苦戦を強いられているという。ブームは早くも黄昏(たそがれ)を迎えたのか。「クール・ジャパン」とはやし立てたあの盛り上がりは一時の宴(うたげ)に過ぎなかったのか。


このような出だしで始まるレポートは、フランス、アメリカ、ベトナム、韓国などの「マンガ」出版事情を扱い、かなり分量がある。ただし、このレポートはいわゆるクールジャパン現象の、ビジネス面での陰りを扱っているにすぎない。各国の「マンガ」出版に少し陰りが見えることは、私も少しは気になる。しか私自身の本来の関心は、クールジャパン現象が世界の文化にどんな影響を与えているのか、それが文明史的にどんな意味があるのかということである。日本のポップカルチャーは、世界に大きな影響を与えてきたし、今もそれは変わっていない。

日本のポップカルチャーがなぜ、世界に大きな影響を与えてきたのか、その背後にある文明論的な意味が理解されれば、ビジネス面での多少の浮き沈みはあっても、大きな流れに急激な変化はないことが分かるはずだ。たとえばこのブログでは「日本文化のユニークさ」を5項目に分けて追及し続けているが、マンガやアニメの魅力の背後にはそのユニークさが息づいているのだ。世界は、マンガやアニメを通して無意識のうちにも、そのユニークさに魅力を感じているのではないか。

まずは、このレポートでも示される、フランスでの「マンガ」売り上げの数字を見ておこう。

昨年仏国内で発行されたマンガ単行本は、前年より100点以上増えて1631点。しかし、売り上げは約1億ユーロ(約111億円)で、前年比3.6%の減。仏語圏にマンガが広く普及して以来例のない大幅な後退となった。(中略)

フランスは日本のアニメやマンガが最も愛される国として有名だ。パリ郊外で毎年開かれる日本文化の祭典「ジャパン・エキスポ」は、昨年18万人が集う盛況ぶりだった。なのに、なぜ売り上げが伸び悩むのか。米国でも最近マンガが売れなくなっている。何かが起きているに違いない。


フランスのある編集者が言うように、「頭打ちになっていることは確かだ。日本マンガは売れすぎた。『ナルト』は仏文学のどんな有名作家よりも売れた。今も売れ続けている。ただ、続く大ヒットが出てこない。新しい少年マンガがフランスには必要だ」というのが、フランスでの実状だろう。

一方で、こうした報告もある。

パリ・ジャパンエキスポに19万人以上 昨年を上回る】(アニメ!アニメ!ビズ2011年7月13日)

6月30日から7月3日までフランス・パリ郊外で開催されたジャパンエキスポの来場者が過去最高となった。ジャパンエキスポによれば、今年の来場者数は当初予想していた19万人を大幅に超えたという。 過去最高であった2010年の来場者数17万5000人を上回った。
 
今年で12回目を迎えるジャパンエキスポは、毎年夏にノール・ヴィルパント展示会会場で4日間にわたり開催される日本カルチャーの大型イベントである。当初はアニメ・マンガ・ゲームなどを中心としていたが、近年はJ-POPやファッション、さらに伝統文化なども取り込んでいる。また、日本の行政や企業などの関わりも拡大しており、日本の文化発信の拠点として注目されている。

そうした取り組みは、来場者数の急増にも表れている。2008年の13万5000人、2009年の16万5000人、2010年の17万5000人と、来場者は10万人を越えたあとも一貫して増え続けている。2011年は前年比で1万5000人増の高い目標を掲げたが、これをクリアーした。

米国では7月1日から4日までロサンゼルスで開催されたアニメ・マンガのイベント アニメエキスポが、今年の来場者が過去最高、12万8000人を超えたと発表している。米仏で日本のカルチャーイベントが勢いを増している。

ジャパンエキスポでは、期間中は昨年と同様に10万㎡もの会場に600もの出展ブースが設けられた。また、ライブイベントも数が多く、4日間で20を超える無料コンサートが開催された。

日本からはマンガ家のいがらしゆみこ さん、内藤泰弘さん、アニメーターの結城信輝さん、音楽家 大島ミチルさん、X-JAPAN、May’nさんら数十人ものゲストが招かれている。また、日本の東日本大震災からの復興を応援するプロジェクトも行われた。

ジャパンエキスポは、2012年も7月5日から7月8日まで4日間引き続きパリで開催を予定する。さらに2011年は新たに、フランス中部のオルレアン、隣国ベルギーのブリュッセルでも同様のイベントを開催する。既に継続的に開催されているフランスの南部マルセイユのジャパンエキスポ・シュードと併せて年4イベント体制となる。


2011年のジャパンエキスポの最終的な入場者数についてはレポートによって少し違いがあるが、19万人をかなり超え、20万人に達したという報告もある。フランスでのマンガの売上高のわずかな減少は、ジャパンエキスポで見る限り、日本のポップカルチャー人気の衰えを示しているとはいえないようだ。

一方アメリカの場合はどうだろうか。

米国アニメエキスポ 来場者過去最高 128000人超える】(2011年7月05日)

7月1日から4日まで、米国ロサンゼルスで開催された日本アニメ・マンガの大型イベント アニメエキスポ(Anime Expo)は、来場者数が実数で4万7000人以上、延べ人数で12万8000人を超えたと発表した。アニメエキスポは1992年からカリフォルニア州で開催されている。日本アニメ・マンガのイベントでは北米最大規模を誇る。

これまでの過去最高は2009年の4万4000人(実数)、2010年は実数では前年比を下回ったともされているが延べ人数10万5000人だけが明らかにされている。2011年は、この双方を大きく上回ったことになる。また、延べ人数では前年比で22%増と、来場者は2006年以来の高い伸びとなった。

今年のアニメエキスポが大きな伸びをみせたのは、業界を取巻くムードの変化もあるのかもしれない。近年は大手企業の撤退が相次ぎ業界全体が重いムードに包まれていたが、そうした動きも一段落しつつある。また、2011年は6000人を動員したボーカロイドのアイドル 初音ミクのコンサートなどボーカロイド関連の積極的な動きも影響したかもしれない。
 
また、ゲーム関連の存在感の拡大、ニコニコ動画やクランチロールなどの動画配信サイトのライブ中継の本格化など、新しい時代の流れを取り込みつつある。

一方で、ここ数年、米国で指摘される関連イベントの成長とアニメ・マンガのビジネス不振のミスマッッチ問題は解決されていない。アニメは2000年代半ば以降、マンガは2008年以降、北米での売上げが急減しているからだ。

2011年のアニメエキスポ成功は、依然北米には多くのファンと潜在的なマーケットがある可能性を感じさせる。アニメ・マンガの北米展開に、大きな課題を投げかけるものだ。


この記事の最後にも示されているように、アメリカでの「マンガ」販売売上の落ち込みは、フランスよりもかなり深刻だ。前年度比20%減だという。にもかかわらず、アニメとマンガのイベントは、アニメエキスポ以外でも盛況が報告されている。昨年10月のイベント「ニューヨーク・コミコン」は、5回目となったが、マンガやアニメの熱狂的なファンが全米各地から押し寄せた。来場者は3日間で9万6000人、これまでで最多を更新したという。

このギャップを私たちはどうとらえるべきなのか。これまで何回も紹介してきた櫻井孝昌氏の本でも、各国のマンガ・アニメ関連フェスティバルの熱狂的な様子が熱く語られており、日本のポップカルチャー人気はますます盛り上がっているのことが分かるのだが‥‥。

《櫻井孝昌氏の関連著作》
アニメ文化外交 (ちくま新書)
世界カワイイ革命 (PHP新書)
日本はアニメで再興する クルマと家電が外貨を稼ぐ時代は終わった (アスキー新書 146)

《関連記事》
『日本はアニメで再興する』(1)
『日本はアニメで再興する』(2)
アニメ文化外交 (ちくま新書):YouTubeでのJapan熱を裏付ける本(1)
「カワイイ」文化について

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3 コメント

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Unknown ()
2011-08-04 19:02:48
国の内外問わず、買わずに違法コピーでアニメや漫画を見ているってことでしょ?どうみても。
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Unknown ( )
2011-08-05 04:11:49
日本がここ数年萌え系に走りすぎたのも一因だと思う
元々欧米では萌えアニメはあまり理解されてないからな
最近そっち系のファンも増えてきたかもしれないけど、それでも日本との温度差はまだあると思う
日本で売れてる奴は海外でも注目度高いと思うけど、見た目が萌え系だったらそれだけで切る人もいるだろうな
返信する
Unknown ( )
2011-08-05 16:25:25
 単純に面白い作品が作れなくなったのが理由でしょう。
 日本の若い世代が、一般の視聴に耐えうる面白い作品を創作する能力に欠けてきたことが原因です。

 これは学校教育の弊害とも言えます。なぜなら、今の若い世代は、幼年期や思春期の殆どを学校や塾、習い事といった狭い空間でのみ生活する、極めて限定的なつまらない体験しかできないのです。
 当然、若い世代から出てくる創作物は、学校ものや想像上のファンタジー、今までの映画やマンガの焼き直し、そして内容も似たようなものしか作れなくなるでしょう。

 つまり、面白い作品が作れないのは、若い世代が「つまらない画一的な体験」しかしたことがないからです。学生が「学校がつまんない」というのは、至極真っ当な感想なのです。

 これらの貧弱な思春期の弊害は創作以外にも、政治や経済、技術開発などの日本のあらゆるところに創造力の欠如として現れてきているのではないでしょうか。

 近代からほとんど変わってない学校教育の内容を頭に詰め込むだけの為に、子供たちの多感な思春期の、一日のほぼ全ての時間を費やすほどの価値は、全くもって、無いばかりか、発想を貧困化、固定化する弊害しかないのです。
 そして、そうやって育ったらそれに気づくこともできなくなるでしょう。
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