クールジャパン★Cool Japan

今、日本のポップカルチャーが世界でどのように受け入られ影響を広げているのか。WEB等で探ってその最新情報を紹介。

クールジャパン現象は終るのか?(2)ジャパン関連イベントなど

2011年08月05日 | クールジャパンを考える
昨日紹介したように、「ニューヨーク・コミコン」や「アニメエキスポ」なのアメリカのイベントはいずれも来場者が増大し、成功を収めている。アメリカでもマンガ・アニメのファンは確実に増えているのだ。にもかかわらずマンガの売り上げは激しく減少している。

MANGA、宴のあとで】(朝日新聞グローブ (GLOBE)2011年2月7日)

全米で500万人を超えた、とも言われるファンの順調な拡大とは対照的に、マンガの売り上げの方は急速に落ち込んでいるのだ。

米市場調査会社ICv2の推計によると、米国での日本マンガの売り上げは2002年以降順調に伸びてきたが、07年の2億1000万ドルをピークに減少に転じた。09年は1億4000万ドルまで低下。10年はさらなる下落が予想され、大手出版社ではタイトル数の削減と大規模な人員整理を急ぐ。

業績不振の原因は、金融危機後の景気低迷だけでは説明しにくい。バットマンやスーパーマンといった英雄モノで30・40代の男性読者を引きつける米国マンガ(コミックブック)は、09年の売り上げが07年比で6%減。これに対して日本マンガは同じ時期に33%の大幅減だったからだ。


もちろん、ファンが増えているにもかかわらず売り上げが減少するひとつの理由は、インターネット上に海賊版が出回っていることである。「ファンや出版業界の中には、海賊版が出回ることで逆に海外で日本マンガの認知度が高まり、実売にも好影響を与えてきた、との見方もある」という。そういう見方があるというよりも、これはまぎれもない真実であり、アニメ、そしてマンガがここまで世界に広がった無視できない理由のひとつだろう。しかし、「マンガ販売の減少に悩む出版社にとって、海賊版サイトの存在は命取りになりかねない。数が多い海賊版サイトと出版社との争いは「いたちごっこ」」なのだという。

しかし、このブログの関心は、ビジネス戦略としてクールジャパン現象をどう利用するかではなく、世界での、日本のサブカルチャー人気そのものに陰りがでているのかどうかということであった。マンガ・アニメについてのビジネス戦略に関心のある方には、次のブログが参考になるかもしれない。下にタイトルを掲げ、リンクだけしておく。

アメリカでアニメやマンガが売れなくなった本当の理由?Too much expectations and not enough marketing lead to manga slump in US

さて、ここでは昨日も触れた櫻井孝昌氏の本のうち、このブログでまだ取り上げていなかった『ガラパゴス化のススメ』に触れながら、話をすすめよう。世界のジャパン熱の現状とそれが若者文化に与える影響についてである。

現在、世界中で1万人を超える日本関連のイベントは珍しくもなんともないと櫻井氏はいう。彼が2010年に参加した大型イベントだけでも、パリのジャパンエキスポはもちろん、ハワイの「カワイイ・コン」(2010年、1万人参加)、米国ボルチモアの「オタコン」(2010年、2万9千人参加)、スペイン・バルセロナの「サロン・デル・マンガ」(2009年、7万5千人参加)などがあるという。

ちなみに、英語版ウィキペディアの、世界の主なアニメ・コンベンションのリストには、95のコンベンションが挙げられている。これはアニメに特化されたコンベンションのリストなので、ゲームなどのジャンルも含めた日本関連のコンベンションの実数は、はるかに多いだろう。今は時間がないが、それぞれのコンベンションの規模や参加者数の増減などもじっくり調べてみたいと思っている。これらを丹念に調べることが、世界のクールジャパン現象の動向をつかむのにある程度役立つだろう。

ところで櫻井氏によれば、現在ジャパン熱を世界にもたらした大きなポイントは、アニメ・マンガのクリエイティブなオリジナリティであり、それを一気に広めたネットの存在だという。ネットの役割は大きく、そこにはネット上の海賊版という問題も含まれる。しかし、世界各地でこれだけジャパン関連のイベントが開かれる背景にネットによるアニメ・マンガの普及という事実があるのは否定できない。

ビジネス関連でいえば、パリジャパンエキスポに関しては、今年は日本企業の参加もだいぶ多くなっているが、たとえばバルセロナなど他のイベント会場には、日本人、まして日本企業の参加はほとんどないという。ジャパンエキスポに割り込んででも自国コンテンツの拡大をねらう韓国などに比べ、日本企業は世界中に広がるジャパン関連のイベントをまったく利用していないというのが実情なのだ。日本企業が積極的に参加・支援をすることで、これらのイベントがさらに盛大になる可能性は高いのではないか。

「MANGA、宴のあとで」のレポートの中にも「海賊版を取り込め」という発想でのいくつかの試みが紹介されているが、ネットの力で世界中に広がったジャパン関連イベントを、今度は絶好のビジネスチャンスとして最大限に活かしていく発想の転換こそが必要だろう。

さて、私の関心事のひとつであった、世界のクールジャパン現象に動向については、主なイベントの規模拡大や櫻井氏のレポートで知るかぎりは、陰りどころかますます熱が上がっているように思われる。しかし、もう少し数字的な裏付けが欲しい。これについては時間をかけて世界のそれぞれのイベントに当たってみたい。

私自身は、日本のサブカルチャーが世界に大きな影響を与えつつあるという大きな流れは、ほとんど変化しないと思っている。これについては『ガラパゴス化のススメ』の内容を紹介しながら、次回に触れてみたいと思う。

《櫻井孝昌氏の関連著作》
アニメ文化外交 (ちくま新書)
世界カワイイ革命 (PHP新書)
日本はアニメで再興する クルマと家電が外貨を稼ぐ時代は終わった (アスキー新書 146)

《関連記事》
『日本はアニメで再興する』(1)
『日本はアニメで再興する』(2)
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