ライトスタッフ

2013年07月15日 | 風の旅人日乗
アメリカズカップ予選を戦う、若いニュージーランド人セイラーたち。



アメリカズカップの制式艇について、
自分たちなりの持論は持っているはずだが、
それがAC72クラスに決まったのであれば、
アメリカズカップを自国に取り戻すために黙ってそれに従い、
全力を尽くして最速と信じるAC72クラスを開発し、
その艇を自在に走らせることに最善を尽くして取り組む。



アメリカズカップの制式艇が様変わりしたことに、
強い反対意見を述べるセイラーも一般のファンも多い。
一方で、アメリカズカップはその時代時代の最先端のセーリング艇で競われるべきだ、
と考えるセイラーやファンも少なくはない。

このことについて考えるとき、
いつも思い出す映画がある。

ライトスタッフ。
大空を飛ぶ空軍パイロットという自らの仕事に誇りを持ちながら、
ロケットに乗って宇宙へと飛び出す道を選んだ者たちと、
成層圏内を飛ぶジェット機に乗り続けることを選んだ者。
どちらの選択が正しかったかを決めようとするのは
この映画のテーマではなかったけれど、
ジェット機のテストパイロットであり続けることを選んだ
チャック・イェーガーことサム・シェパードの
複雑な胸の内を演じる無言の演技が強く印象に残る。

文字通り針の穴を通すような正確無比の操船が求められ、
自分の一瞬の操作ミスが、艇を大破させ
それまでの数万時間に及ぶチームの努力と
注ぎ込まれた数百億円を水の泡にしてしまうという
ものすごいプレッシャーを、
セイラーになるという人生を選んだ自分自身への矜持と、
自分が生まれた国の海洋文化を誇りに思う気持ちだけで支えながら、
自分のすべてを出し切って海の上で戦う若者たち。



その姿が、ライトスタッフのスクリーンに映し出される若者たちと重なる。
彼らはただセイラーとしての技量を持つ以上に、
人間としてものすごく深みのある人格を備えることになるのだろう。
そして彼らは何年かすると、自分たちの国の次の世代を育てる側に回る。

そんな若者たちが日本の海から育つ日が来ることを
夢見たい。