AC45ワールドシリーズへの日本参加の可能性を求めて 第34回America's Cupニュース その4

2011年09月28日 | 風の旅人日乗

アメリカズカップ・イベントオーソリティーの
代表者とのミーティングで明らかになったことは、
2013年のサンフランシスコでの本予選と本戦に至る前の、
レースフォーマットの詳細です。

以下に記す新しいレースフォーマットは、
このレポートを書いている時点ではまだ公式発表もされておらず、
アメリカズカップのオフィシャルサイトにも掲載されていません。

AC45クラスを使ったアメリカズカップ・ワールドシリーズ第2シーズンは、
ワールドシリーズ2012-13と銘打たれて
来年2012年の2月のニュージーランドかオーストラリア(最終調整中)での
第1戦を皮切りに、2013年5月(イタリア・ナポリ)までの期間、
全10戦あるいは11戦で開催されます。

現時点でも公式には2012年のワールドシリーズから投入されることになっている
AC72クラスですが、実際には2013年の6月以降の、
本予選(ルイヴィトンカップ)で初めて登場することになります。

AC45クラスがワールドシリーズの制式艇として
2013年5月まで使われることになったことに伴い、
AC45 によるユースアメリカズカップ構想は、
早くともそれ以降に延期されました。

AC45でのワールドシリーズを2013年まで開催する目的のひとつは、
スポンサー集めに苦労する各チームが、
段階的に挑戦資金を獲得するのを可能にしたいからだと言います。

AC45によるワールドシリーズに参加している間は、
各チームは全長45フィートの艇で国際レースに参加する程度の資金で
チームを運営していくことができるのです。

この程度の資金であれば、
日本のヨット界にも可能性が出てくるのではないでしょうか。

ただし、ワールドシリーズにエントリーするためには
第34回アメリカズカップに参加することを確約した上でなければならない、
という縛りがもちろん付帯しています。

ここでは詳しい報告ができませんでしたが、
ヨット専門誌のKAZI誌12月号(11月5日発売)で
これらの詳細をレポートするページを割いていただきましたので、
現在と今後のアメリカズカップ詳細について興味のある方は
是非そちらをご覧下さい。

AC45ワールドシリーズ2011を観て 第34回America's Cupニュース その3

2011年09月28日 | 風の旅人日乗


レースの模様は、
アメリカズカップのオフィシャルサイト内の
動画で紹介されています(http://www.americascup.com/)ので
それを観ていただきたいのですが、
現地で実際にレース使用艇(AC45クラス)やレースを
実際に目の当たりにするとさらに、
これまでのアメリカズカップとは、
まったくの別物の競技だという印象を強く受けます。



さらに言えば、ディンギーであれキールボートであれ、
普通のセーラーがイメージするこれまでのどのヨットレースとも異なる、
まったく新しい水上競技のように見える、
と報告すべきかもしれません。

これまでのアメリカズカップ艇や
それらの艇が繰り広げるレースを観て、
アメリカズカップのレースはこういうものだというイメージを持っている人は、
それを一旦完全に捨てたほうがよさそうです。



過去のアメリカズカップにノスタルジーを感じてしまう世代には、
これから行なわれようとしているアメリカズカップは
到底受け入れられるものではないかもしれません。

しかしその一方で、
これまでのアメリカズカップや一般のヨットレースをいうものを
まったく知らない無垢なスポーツファンや子どもたちの目には、
非常に興味をそそられる水上スポーツになる
可能性を秘めているのではないか、
とも思います。



これまでの優雅なアメリカズカップのレースの魅力が
消え去ろうとしていることに後ろ髪を引かれつつも、
アメリカズカップやセーリングの未来を考えると、
そういう新しいグループや新しい世代に
興味を持って受け入れられることのほうが、
スポーツとしてのアメリカズカップやセーリングの
より良い発展にとってとても重要なはずだ、
という感想を、個人的にですが、持ちました。


(つづく)

AC45ワールドシリーズ2011 第2戦プリマス大会 第34回America's Cupニュース その2

2011年09月28日 | 風の旅人日乗


AC72クラスで行なわれる
2013年の本予選(ルイヴィトンカップ)と
本戦(アメリカズカップ)を前に、
現在はAC72クラスの約半分の大きさのイメージの
AC45クラスという名のワンデザイン・カタマランを使って
世界を転戦するワールドシリーズ2011が開催されています。



JSAFアメリカズカップ委員会(植松 眞 委員長)では、
ワールドシリーズ2011第2戦の
イギリス・プリマス大会(9月10日~18日)への招待状が
第34回アメリカズカップの運営全体を統括する
アメリカズカップ・イベント・オーソリティー社から届いたことを受けて、
その大会時期にたまたまフランス滞在中だった委員の一人(ワタクシです)を
イギリスに派遣しました。 



1、新しくなったアメリカズカップの空気を現地で感じ取って
それを日本のセーラーの皆さんに伝えること、

2、アメリカズカップ・イベントオーソリティーの代表者に会って
アメリカズカップ・ワールドシリーズの詳細情報を聞き出すこと、

3、そして日本からのワールドシリーズ参加の可能性を探ること。

この3つが植松委員長から託された任務でした。
(つづく)



第34回America's Cupの展望 第34回America's Cupニュース その1

2011年09月28日 | 風の旅人日乗

日本セーリング連盟会報誌『J-Sailing』の最新刊号用に書いた、最新のアメリカズカップに関するニュース原稿のダイジェストを、4回に分けて掲載します。


1,【第34回アメリカズカップの展望】



2009年7月に第32回アメリカズカップが終了した後、
第33回アメリカズカップの挑戦者代表ヨットクラブの
資格の有無をめぐる議論をキッカケにした様々な紆余曲折を経て、



次回第34回アメリカズカップは
再来年の2013年7月~9月に、
米国サンフランシスコ湾で開催されることになりました。





第34回アメリカズカップに使われる艇は、
全長72フィートのAC72クラスと呼ばれるカタマラン艇です。



AC72クラスはキールボートではありません。
鉛をぶら下げたキールではなく、
カーボン製のダガーボード(モノハル艇で言えばセンターボード)を備えた、
超大型のカタマラン・ディンギーだと表現するほうが正確でしょう。



船体長21メートル強、全長30メートルもの大型艇だとはいえ、
ディンギーですから、操船ミスをすれば簡単に転覆します。
再帆走も可能ですが、転覆したレースは負けることになるでしょう。

裁判所の判断によってモノハル対カタマランで強行された第27回大会を別にすれば、
第32回アメリカズカップまで150年以上続いた
モノハルのキールボートによるアメリカズカップの歴史は
終わりを告げることになりそうです。

歴史の早い時期、葉巻を口にくわえた老獪な艇長が
悠然と舵輪を操っていたアメリカズカップ艇は、
これからは、風圧抵抗を最小限に抑えるウエアに身を固め、
直感的なセーリング感覚に優れた、
屈強でしかも素早い身のこなしを身上とする
若いアスリート・セーラーたちでしか走らせられない、
非常にスポーティーな艇へと大きく変化することになったのです。



AC72クラスは、
微~軽風では風速の3倍以上のスピードで走ることが可能で、
サンフランシスコ湾のような強風のエリアでは
45ノットを越えるスピードでレースをする超高速ヨットです。
口にくわえた葉巻など、
出艇したとたんに風に飛ばされるか
スプレーでびしょぬれになってしまうことでしょう。
(つづく)