御託専科

時評、書評、そしてちょっとだけビジネス

須原一秀「<現代の全体>をとらえる一番大きくて簡単な枠組」

2009-12-26 21:57:54 | 書評
今年はかなり精力的に読書が進んだ年であり、またわりと問題意識も系統だっていたのでそれなりの進展はあったといえよう。現代芸術、村上春樹、現代思想などなどにつきある程度の水準の見解を持つことができた。しかしその一方で飽きたというか、どうしても知りたいと思う気分も薄まり読書の限界生産性が落ち気味であった。それでしばらくは読まずにぼんやり考えたり、声楽の訓練を受けたりしようかと思ってた。

その気分は今でも変わらないのだが、この本はぐっと来た。須原氏は分析哲学・科学哲学から哲学に入り、「止むにやまれない探求に最終回答を」出そうとし、それが見出せずその他の方面も探求したが求めるものはなかった。うん、僭越ながらここまでは自分とそっくりだ。そして、氏は堂々と「哲学溺死宣言」をした上で「自覚なき肯定主義」の現代を「明るい消極的理想主義」で堂々と駆け抜けろ!といっているように思われた。

これはとりあえずの書き込み。氏の他の本とあわせもう少し読みこんでみる。

なお、平岡正宗さんが描く表紙絵と裏表紙絵は秀逸。田村隆一の「腐刻画」を思わせる。