御託専科

時評、書評、そしてちょっとだけビジネス

小谷野 敦「もてない男」

2006-01-09 23:40:48 | 書評
八犬伝に興味がいっていて、あれこれ調べるうちに著者の八犬伝評を推薦するホームページにあたり、そこでこの本も推奨していたので読んで見た。

いいね。僕はジェンダー論とかそういう分野は詳しくないが、正直上野千鶴子や宮台なんかは所詮もてる人間であり、何を言おうが許される優越感のもとにもったいぶったことを言っているだけじゃないのかなと思ってきたので、その類のことが指摘されるととてもすっきりする。それから、この人は読む限り腹に一物がない人だ。肝心の部分をいわずに迂遠な論説を展開したり、あるいはずばりと言ってしまえば簡単なことを韜晦して見たりということが一切ない人だと思う。だから、気を許して読めるな。
姦通罪についての論議は新鮮だった。僕なりにまとめると、
①近代に入り家の結びつきから個人同士の愛へと結婚観がかわる。
②愛が結婚の前提なら、愛があればセックスは婚前でも許容される。
③それが愛さえあればセックスは許される。ならば不倫も許される。
ということであり、「愛」の名の下にフリーセックスの世界が出来ちゃったってわけだ。それは「恋愛教」という現代最大宗教の勝利と言うことでもあるんだな。

小谷野氏はちょいと凝って見ようかな。