6篇の「中本の一統」の物語。解説が吉本隆明と江藤淳、挿絵が横尾忠則とはまあ豪華な顔ぶれである。オリュウノオバハは路地の産婆という人物でありつつかつ路地を、中本の一統を讃じまた嘆じる精霊でもあろう。語られる物語は現実と異界を行き来し、また決して当たり前の倫理観で律せられてはいない。江藤のいうとおり、今昔物語やギリシャ神話のような不思議をそのままとする素朴にして骨太な話たちである。
不倫も泥棒も人殺しもしかるべき人間のしかるべき所作なら問題ではない、というのはいかにも超人思想的ではあるが、そういってしまうと何かつまらぬ。もちろん、江藤の言うように序列の根源が能力でもなく徳でもなく偏に血にあるというのが路地でありまた日本である点において、貴種崇拝思想と超人思想は綺麗に重なるわけなのだが、それが特権でもなく義務でもなく、悲劇として生きられてゆく、それが路地の人々そのほかとの濃密な交わりの中で演じられてゆくところがすばらしい。
さて、てなことをいっても始まらないかな。ギリシャ神話や今昔物語のように、語りに耳を傾けるのが一番だろう。何度か読み直すうちにまた何かが啓けて着そうな気がする話である。
不倫も泥棒も人殺しもしかるべき人間のしかるべき所作なら問題ではない、というのはいかにも超人思想的ではあるが、そういってしまうと何かつまらぬ。もちろん、江藤の言うように序列の根源が能力でもなく徳でもなく偏に血にあるというのが路地でありまた日本である点において、貴種崇拝思想と超人思想は綺麗に重なるわけなのだが、それが特権でもなく義務でもなく、悲劇として生きられてゆく、それが路地の人々そのほかとの濃密な交わりの中で演じられてゆくところがすばらしい。
さて、てなことをいっても始まらないかな。ギリシャ神話や今昔物語のように、語りに耳を傾けるのが一番だろう。何度か読み直すうちにまた何かが啓けて着そうな気がする話である。