帰省の前後に読んだ作品。
「第四間氷期」は中学か高校のころ読んだはずだが印象は全く異なっていた。水棲人のイメージはもっと半魚人っぽいと記憶していたし、予言機械や主人公とその周囲を巡るサスペンス風の展開は全く覚えていなかった。
ということで改めて興味深く読んだわけだが、最近三島をよく読んでいるせいか、安倍公房の話なぞは思想というか考えが剥き出しであるように見えてしまう。「剥き出し」というのは、要約して語ってもひどく中身が失われた感じがしない、ということである。で、要約。我々はよき未来を祈りそのために何かをする権利と能力を有するが、どのような未来になろうとも、たとえ異形の世がこようともそれを良いだの悪いだのと言う権利を有さない。むしろ未来が我々を裁く権利を有するのである。
「午後の曳航」。「永遠に遠ざかり行くもの」であったはずの船乗り竜二が陸に上って唾棄すべき凡庸にまみれて行こうとしている。それに失望した、登を初めとする賢くひ弱な13歳の少年たちが竜二を処刑しようとするところで話は終わる。竜二の心が登たちの失望にシンクロし、かつて自分が身をさらした神秘の生活を夢想し、もう少しで「後悔しそうになっていた」。そこへ登が処刑の手始めである睡眠薬入りの紅茶を差し出し、竜二は一気に飲む。
なんだ。こう書いて見ると「豊饒の海」に大いに通じるところがあるな。夢の中、想念の中では断固として実在する、危険ながら荘厳にして美しいヴィジョン。しかしそれを飲み込もうとする薄汚れしかもたくましい現実。豊饒の海よりはストーリーと表現主題が一致しているのでまあわかりやすい。
とはいえ、やはり剥き出しでないから要約しにくいな。三島の情景・心象の秀逸な描写を読んだ気持ちの振幅はなかなか復元しにくくはある。
「第四間氷期」は中学か高校のころ読んだはずだが印象は全く異なっていた。水棲人のイメージはもっと半魚人っぽいと記憶していたし、予言機械や主人公とその周囲を巡るサスペンス風の展開は全く覚えていなかった。
ということで改めて興味深く読んだわけだが、最近三島をよく読んでいるせいか、安倍公房の話なぞは思想というか考えが剥き出しであるように見えてしまう。「剥き出し」というのは、要約して語ってもひどく中身が失われた感じがしない、ということである。で、要約。我々はよき未来を祈りそのために何かをする権利と能力を有するが、どのような未来になろうとも、たとえ異形の世がこようともそれを良いだの悪いだのと言う権利を有さない。むしろ未来が我々を裁く権利を有するのである。
「午後の曳航」。「永遠に遠ざかり行くもの」であったはずの船乗り竜二が陸に上って唾棄すべき凡庸にまみれて行こうとしている。それに失望した、登を初めとする賢くひ弱な13歳の少年たちが竜二を処刑しようとするところで話は終わる。竜二の心が登たちの失望にシンクロし、かつて自分が身をさらした神秘の生活を夢想し、もう少しで「後悔しそうになっていた」。そこへ登が処刑の手始めである睡眠薬入りの紅茶を差し出し、竜二は一気に飲む。
なんだ。こう書いて見ると「豊饒の海」に大いに通じるところがあるな。夢の中、想念の中では断固として実在する、危険ながら荘厳にして美しいヴィジョン。しかしそれを飲み込もうとする薄汚れしかもたくましい現実。豊饒の海よりはストーリーと表現主題が一致しているのでまあわかりやすい。
とはいえ、やはり剥き出しでないから要約しにくいな。三島の情景・心象の秀逸な描写を読んだ気持ちの振幅はなかなか復元しにくくはある。