御託専科

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ジョン・ホーガン『科学の終焉」

2006-04-30 13:35:24 | 書評
大変面白く読んだ。特に4章までの「進歩」「哲学」「物理学」『宇宙論」のそれぞれの終焉は正鵠を得ていると思われた。5章の「進化論生物学」もまあまあ。れらは自分にとっても探求してきた分野であったので余計納得する。
僕自身も齢50に接近しつつあり、これらの分野での一定の知見を見出していると自分では思う。たとえば科学哲学を学んだのは日常のやり取りで見られるくだらぬ「形而上学」をたたきつぶしたいがためだったが、いまやファイアベントのAnything Goes で納得している。若干の疑問はあるが進化論生物学ではドーキンスが僕にとっては「正当」である。物理の超ひもや宇宙論のホーキングは理解しないでよいことがわかり安心した。

ということだ。つまり、僕にとっても探求は一旦終焉した。今はこういう方面で知りたいこともないし探求する気分もない。不機嫌な男は一応の悟りに達したわけである。そのことを思い知らせてくれたようにも思われる。

しかしこれら膨大な知的営みはいったいなんなのだろうか。自分にとってはいったいなんだったんだろうか。科学者は真実を求め、技術者は「よいこと」を求めるとは至言だが、僕は技術者として安心して生きてゆくのだろうか、ゆけるのだろうか、ゆくほかはないのだろうか。

運用の世界も同じかもしれない。運用専門家の終焉は近いように思う。ジェイコムで稼いだ個人投資家は極端な例としても、何も昔ながらの専門家風情に自分の金を預けることはないと思う。MPT、マルチファクターモデル、オプションなどが輝かしき運用の真理探究の枠組みとして君臨した時代は去った。本書の言うように、「皮肉な科学」として運用者は生き残り続けるのだろうが、おそらくそれは演劇評論や書評のようなものとして以上のものではあるまい。