御託専科

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みひろ原作 映画「nude」

2015-02-08 15:37:42 | 書評
映画をみた。「AV男優という職業」を読んでいて調べ物をしていて行き当たった。AV女優のみひろが原作を書いた「nude」という作品である。ありがたいことにネットですべて見ることが出来た。これは実に名作であった。

平凡な高校生が、卒業後華やかな東京で地味な仕事をして、それでもなんとなくモデルとか女優とかをやりたいみたいな気分を持っていて、モデル事務所と称したAV・グラドル事務所にスカウトされる。グラビアだけで始めて結構なところまで進むが、ここですでに彼氏や地元の友達とはギクシャクし始める。そういうことが続いたあとあるときついにAVデビューを決意する。きっかけとなったのは意地の悪い有名プロデューサーのきつい言葉だ。「女優になりたいというがどういう女優になりたい」ときかれ答えられず、「中途半端だ、あなたのようなのははいて捨てるほど居る」といわれる。おそらく、華やかになること・有名になることにぼんやりとあこがれていたに過ぎない自分を深く反省したのだろう、また改めて自分はここでのピークで終りたくはないと考えたのだろう、その後まもなくAV出演を了承する。2社で2年で24本、いわゆる単体女優契約で条件は破格によかったとのこと。ここで彼氏とのつらい別れがあり、また初AVへの苛立ちと恐れを見せ、また故郷での悪評の高まりなどAVのつらいところがあらわれる。しかしAV女優みひろは前進する。AVに出演したことから知名度は大きくあがり、イベントへの参加や歌の披露などもするようになった。いまや有名アイドルである。最後の場面は、強姦演技で首を少々強く絞められ気絶し、そこから目覚めたあと、再びせりふに取り組む姿が映る。傍らの持参したパソコンには書きかけの自伝小説が入っている。みひろはつらいことを乗り越えて自分の場所にたどり着いたのだ。もう迷いはない。

ある意味成功話なのだが、その展開はつらく、重くまた静かである。自分の肌をさらすことと引き換えに実績を積み上げ名声を得なければならない女性の、つらい葛藤と静かな前進への決意が画面からあふれてくる。美しい画像はそれをうまく捉えていると思った。主題と直接関係するわけではないかもしれないが、AV撮影現場の小気味のいいきびきびした現場スタッフたちの動きは印象的であった。
試写会の半分超は女性で、その中にはモデル・タレント・女優もかなり含まれており、涙ぐむ人も多かったという。そりゃそうだね。自分の苦労と成功を彼女に重ね合わせてみているんだろうな。皆何らかの意味で女を売ることで生きてきた人たちだろうから、きっと思い入れはひとしおだったと思う。みんな、がんばれよ!と声をかけたくなるね。

ところでみひろってまだ24歳なんだ。2010年AV引退、っていうから20歳で引退だよね。はやいねえ。まあ名前を確立したなら(AV業界にとどまっていると突入する)この先の下り坂にしがみつくよりは新しいあり方を選んだわけだよね。利発そうな女性だしいろいろやっていけるんだろうなあ。僕の半分以下の年であれだけの経験をしているんだ。たくましく進んでゆくに違いない。
みひろさん、がんばってね!