御託専科

時評、書評、そしてちょっとだけビジネス

牧野武文「ゲームの父・横井軍平伝」

2010-09-14 22:56:01 | 書評
うーん、とうなったねえ。昔、文芸春秋に横井軍平氏の任天堂半生記のような手記がのっていた。確かやめるときのことだったと思う。それが何か軽妙で明るくておもしろいものだったので、とっておかなかったのを残念に思っていた。それでこの本の広告を見て買った。
のだが。もちろん文春に載る程度の手記と違いいろいろなことが書いてはあるが、横井氏本人の手記(だったかインタビューだったか)と比べるとなんだかさびしく暗いトーンで貫かれている。ライターのせいか、あるいは氏の悲劇的な死のあとに書かれたもののためか。なんにしても、これでは山内社長の変な親父ぶりも横井氏のおもしろがりやぶりも伝わってこないなあ。残念である。

坂東真佐子「やっちゃれ、やっちゃれ!」

2010-09-14 22:46:58 | 書評
土佐が独立を宣言する話。独立したとたんに日本国政府の締め付け、策動、経済的困窮が始まりそれなりに大変である。そういうことを具体的に描きつつ、後半は独立つぶしに送り込まれた元自衛隊レンジャーの男女による爆弾テロが発生、事態が進む中、男のほうが独立土佐に協力する側に回る。この男のキャラはなかなか良い。あと、爆殺された首長のあとを勤める親父のゆるい感じだがぶれのない、おおらかな性格がまた良い。
 読み物なので後半はテロを巡るテンポの速い展開となったのはまあ必然か。しかし、できればどこかの県がいつか独立を目指すときのマニュアルになるくらい、前半のリアリティーある部分を書き込んでもらうとまた良かったかなあと思う。