御託専科

時評、書評、そしてちょっとだけビジネス

野口武彦「鳥羽伏見の戦い」

2010-05-30 22:08:37 | 書評
かなり細かな検証をしている話だが、要は鳥羽伏見の戦いはどっちに転んでもおかしくない戦いであったことが論証されている。もし徳川が勝っていれば明治の政治形態はかなり違っていたであろう。歴史は必然というよりも偶然の累積のようなところが実はある、という話と読んだ。

小川哲郎「玉砕を禁ず」

2010-05-30 21:56:01 | 書評
フィリピンのカバルアン丘を守った1000名近い部隊の話。日本軍のいつもの話だが、無能で強がってばかりの上層部と、従順にして勇猛な現場で戦う兵卒のコントラストが著しい。
フィリピンでも50万人が死傷したと言うことだ。50万人といえば200万人の兵卒の戦死者から見ても相当大きい。インパールだとか太平洋の島の話ばかり読んでいたが、フィリピンの陸戦も知っておく必要があると考えた次第。
ところで、全滅したと思われた部隊から帰ってきた人間への当たりの冷たさはひどいね。佐藤忠男の「草の根の軍国主義」の言うとおりだな。「世間」は美談を崩すと思われるものにひどくつらく当たる。

高杉良「不撓不屈」

2010-05-30 21:38:43 | 書評
国家権力の横暴にあくまで筋を通し戦い、そして勝利したTKC創業者飯塚毅の伝記小説。
ご本人の不屈さもすばらしいが、それと同じぐらい家族や取引先などが氏の正義の戦いを支えたことが印象的。国会議員の協力もすばらしい。彼らの協力はもちろん手放しで素直には受け止めかねる点もあるが、渡辺美智雄の論点などはとてもしっかりしたものである。このころの政治家は大したものだ、と思うね。

最近身に覚えのない嫌疑のようなことを言われて、「誣告だ」「冤罪だ」といったら「冤罪は冤罪でも話が出ること自体はひとつの事実だ」と、でたらめを言う側に一理あるがごときことを言う不届き千万な論議をされて気分を害していた。が、これを読んで気を持ち直し。「自ら省みて直くんば、千万人と雖も我行かん」だね。