ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

テルモの補助人工心臓、欧州で販売承認 国内に先駆け

2007年02月28日 | 循環器
 テルモ(東京都渋谷区)グループの開発した補助人工心臓「デュラハート」が26日付で、欧州での販売承認を得たことが分かった。製造と臨床試験を担当してきた米子会社テルモハート(ミシガン州)が27日、明らかにした。国産技術だが、承認に時間がかかる日本に先駆け、海外で使われるようになる。

 患者の腹腔(ふくくう)内に埋め込むデュラハートの本体は、赤松映明・京都大名誉教授らが考案した「磁気浮上型遠心ポンプ」で、磁石の間に浮かせた羽根車を回して血液を押し出す。体外の電池で動き、弱った心臓の働きを補う。軸受けも人工弁もないため、血液が固まりにくく、耐久性に優れており、心臓移植までの「つなぎ」ではない、長期使用できる新しい人工心臓としても期待されている。

 テルモは実用化を急ぐため、承認の遅い日本を避け、欧州からのスタートを選んだ。04年1月からドイツ、オーストリア、フランスの計4病院で臨床試験を始め、33人に埋め込んだ。6カ月以上装着した患者は12人で、うち4人は1年を超えた。13人は心臓移植を受けたが、移植を断ってそのまま装着を続ける患者もいる。人工心臓そのものが原因と見られる死亡はなかった。

 ドイツで承認を得たことでEU(欧州連合)各国で販売できる。米国、日本でも申請準備を進める。

[朝日新聞 / 2007年02月28日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200702270438.html

[テルモ社 ホームページ、プレスリリース]
テルモ、世界初の磁気浮上型左心補助人工心臓 「DuraHeart®」のCEマークを取得
http://www.terumo.co.jp/press/2007/005.html

人間の皮膚組織持つマウス、遺伝子操作で誕生=北海道大学大学院

2007年02月26日 | 遺伝子組替マウス
 マウスの遺伝子を操作して、皮膚の一部に人間の組織を持つ「ヒト化マウス」を作ることに、北海道大大学院医学研究科皮膚科の清水宏教授のグループが成功した。

 従来の動物実験では難しかった、人間の免疫疾患の解明や治療法の開発につながる研究として注目される。26日、米医学誌電子版に掲載された。

 清水教授らは、免疫が自分の皮膚を攻撃し全身に水疱(すいほう)ができる病気「水疱性類天疱瘡(てんぽうそう)」の治療法を研究。その中で、マウスや人間の皮膚にある17型コラーゲンと呼ばれるたんぱく質に注目した。

 マウスの遺伝子を操作し、17型を作る遺伝子を壊したマウスと、人間の17型の遺伝子を組み込んだマウスを作製。これらのマウスを数世代交配させた結果、皮膚の17型だけが人間の組織になった、健康なマウスが誕生した。

 このマウスに患者の血液成分を注射すると、マウスが水疱性類天疱瘡を発症し、患者の免疫が17型を攻撃することも証明した。

 研究を主導した同大大学院生の西江渉さんは「マウスの一部を人間の組織にする技術は、他の自己免疫疾患の研究にも応用できる」と話している。

[読売新聞 / 2007年02月26日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070226it03.htm

人間の皮膚組織持つマウス、遺伝子操作で誕生(読売新聞) - goo ニュース

優秀な盲導犬増やすため、遺伝子解析 精巣などの保存も=帯広畜産大学

2007年02月25日 | 遺伝子
 帯広畜産大の鈴木宏志教授(家畜生命科学)らのチームは4月から、犬の性格にかかわる遺伝子を解析し、盲導犬に適した犬の遺伝子情報などをデータベース化すると同時に、精巣や卵巣の組織を凍結保存する世界初の「バイオバンク」を始める。盲導犬候補の犬は訓練前に去勢されるため、優秀な盲導犬だと分かった時には子どもをつくることができない。そこで将来的には保存しておいた精子や卵子を使って繁殖させ、盲導犬不足の解消を目指したいという。

 さいたま市で開催中の日本獣医師会学会年次大会で23日、発表された。

 日本盲導犬協会によると06年3月現在、国内で働いている盲導犬は952匹。一方、日本財団の98年の調査では、盲導犬を求める人は将来的な希望も含めると約7800人いて、「現在も大幅に不足している」(同協会)。繁殖用の犬は全国に145匹で、年間の育成数は130匹前後だという。

 盲導犬候補の雄は生後半年ごろ去勢、雌は8~11カ月ごろ不妊手術をする。1歳を過ぎたころ適性評価を受け、訓練が始まる。合格して実際に盲導犬になれる犬は、3~4割に過ぎないという。

 鈴木教授のチームは、独立行政法人の理化学研究所と共同で、盲導犬の訓練を受けた「ラブラドルレトリーバー」約200匹の遺伝子を解析。性格を左右すると思われる五つのSNP(DNA配列のわずかな個体差)の型と、盲導犬合格率との間に密接な関連があることを発見した。

 例えば、この五つのSNPをすべて持っている犬は合格率が82%だったのに対し、いずれか一つしか持っていない犬の合格率は6~7割、一つも持っていない犬は20%だった。一般に盲導犬には、人なつっこく集中力がある、ほえないなどの性格が向いているとされる。

 鈴木教授らのチームは、盲導犬を繁殖・育成している全国9団体などに協力を依頼し、犬の遺伝子を解析。「優秀な遺伝子」を持つ犬の情報をデータベース化する。そのうえで精巣や卵巣を保存し、団体から希望があれば、精子や卵子を提供していきたい考えだ。

 同チームはこれまでに、凍結保存精子を雌の犬に人工授精し、出産させることに成功。現在は、凍結卵巣組織を別の雌犬に移植し、子犬が生まれるかどうかを経過観察しているという。

[朝日新聞 / 2007年02月25日]
http://www.asahi.com/national/update/0224/TKY200702240307.html

日本獣医師会ホームページ
http://nichiju.lin.go.jp/

膵臓・スキルス胃がんの治療に手がかり=東京大学、大阪市立大学

2007年02月23日 | 癌、腫瘍
 抗がん剤を入れた極小カプセルとがんの血管形成を妨げる薬の併用が、難治性の膵臓(すいぞう)がんやスキルス胃がんの治療に有効であることを、東京大と大阪市立大が動物実験で突き止めた。

 米科学アカデミー紀要電子版に掲載された。

 これらのがんは早期発見が難しいため、外科手術ができない場合が多く、今回の研究成果が新たな治療法に道を開くと期待される。

 研究チームは、抗がん剤をくるんだ直径約65ナノ・メートル(ナノは10億分の1)の球状カプセルを、大量に静脈注射するがん治療法を開発している。がんが延ばす血管には、普通の血管にはない約100ナノ・メートルのすき間がたくさん開いていて、そこから漏れた抗がん剤カプセルを、がん細胞に蓄積させ、がんをたたくやり方だ。

 ところが、膵臓がんやスキルス胃がんは他のがんより血管の数が少ないため、この手法ではカプセルががん全体に行き渡らず、うまくいかなかった。このためがんの血管形成に必要な因子「TGF―β」の阻害剤をマウスにごく少量投与した結果、がん細胞の血管壁がきちんと形成されず、すき間がより大きくなった。

 カプセルを注射すると、血管が少なくても、がんをたたくのに十分な量のカプセルが、がん細胞内に流れ込むようになった。何もしないマウスと比べ、膵臓がんの大きさは6分の1、スキルス胃がんは半分まで小さくなった。狩野光伸・東大特任助手は「ごく少量のTGF―β阻害剤の投与でがんの血管だけが弱くなるのを発見したことで研究が進んだ」と話している。

[読売新聞 / 2007年2月23日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070223i311.htm

抗がん剤大量生産に期待、有機化合物生成の遺伝子発見=山形大学

2007年02月22日 | 癌、腫瘍
 山形大農学部の豊増知伸助教授(40)らの研究グループが、高機能な抗がん剤開発への活用が期待される有機化合物「フシコクシン」を生成する遺伝子を発見した。フシコクシンは、抗がん作用があるとされる別の有機化合物「コチレニン」と構造が類似しており、フシコクシンを基にして新たな抗がん剤を大量に生産できる可能性があるという。

 研究成果は、総合学術雑誌「米国科学アカデミー紀要」の19日付電子版に掲載された。山形大の研究者が筆頭筆者となった論文が、同誌に掲載されるのは初めて。

 豊増助教授によると、モモ枝折れ病を引き起こすカビから、フシコクシンをつくる酵素の遺伝子を見つけ、採取に成功した。この遺伝子は、違うタイプの酵素機能を併せ持つ連結した遺伝子であることが分かり、さらに他のカビにも存在する菌類特有の珍しい遺伝子だったことも新たに発見された。

 フシコクシンと構造が似ているコチレニンは、白血病などの治療に効果があることが明らかになっているが、生成には化学合成が必要。豊増助教授らの発見を突破口に、フシコクシンの構造を決める遺伝子や酵素などの解明がさらに進めば、化学薬品を使わずにコチレニンを生成することが可能になるという。

 共同研究者で元農学部長の佐々武史同大名誉教授とともに、山形大で記者会見した豊増助教授は「新たな抗がん剤を作る入り口を見つけた。生物の自然な仕組みを利用するため、より安全で安く抗がん剤を作ることが可能になる」と、研究の成果を話した。

 豊増助教授は生化学、分子生物学が専門。1995年に山大農学部助手に採用され、98年から助教授。

[庄内日報ニュース / 2007年2月22日]
http://www.shonai-nippo.co.jp/cgi/0/ad_vw.cgi?p=dy:2007:2:22

ES細胞:マウスの卵子使いクローン胚から作成=理化学研究所

2007年02月20日 | 再生医療
 理化学研究所の研究チームが、体外受精できなかったマウスの卵子を使い、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を効率よく作り出すことに成功した。体外受精に失敗した卵子は通常捨てられるが、研究チームはこれにマウスの体細胞の核を移植し、クローン胚からES細胞を作った。クローン胚由来のES細胞を、新鮮な卵子を使わずに作り出す方法として注目を集めそうだ。19日付の米科学誌「カレント・バイオロジー」に発表した。

 研究チームは、体外受精を実施した920個のマウスの卵子のうち、受精しなかった卵子432個に体細胞の核を移植してクローン胚を作成。特定の化学物質に浸すことによって、クローン胚の6%からES細胞を作成できた。新鮮な卵子を使った場合(7%)とほとんど差がなかった。受精失敗後に24時間保存した卵子でも、4%からES細胞ができた。

 作成されたES細胞は、新鮮な卵子から作ったES細胞と同様に、さまざまな器官や組織に発達する能力が確認された。

 また、体外受精で受精しなかった別の卵子に体細胞の核を移植し、357個のクローン胚をメスのマウスの子宮へ戻したが、子どもは1匹も生まれなかった。体外受精しなかったマウスの卵子は、ES細胞を作る能力はあるものの、子どもまでは成長できないらしい。

 ヒトクローン胚からのES細胞が実現すれば、患者と同じ遺伝情報を持つ器官や組織を作ることができ、難病治療につながると期待されているが、胚を作るための新鮮な卵子の入手方法が課題になっている。研究チームの若山照彦・ゲノム・リプログラミング研究チームリーダーは「体外受精しなかった卵子がES細胞作成に使えることが、ほ乳類で初めて確認できた。ヒトでも体外受精せず廃棄する卵子を使えるようになれば、健康な女性や不妊患者から卵子を新たに採取する必要がなくなるかもしれない」と話している。【永山悦子】

[毎日新聞 / 2007年2月20日]

メス→オス、メダカの性転換に成功=基礎生物学研究所、新潟大学

2007年02月20日 | 生きもの色々
メス→オス、メダカの性転換に成功=基礎生物学研究所、新潟大学

 自然科学研究機構・基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)と新潟大大学院の
研究グループが、遺伝子を操作して人工的にメダカのメスをオスに性転換させ、
その精子を使って子メダカを誕生させる実験に成功した。

 世界初の成果で、米国科学アカデミー紀要電子版に20日掲載された。

 同研究所の長浜嘉孝教授と新潟大大学院の酒泉満教授らは、メダカの性決定
遺伝子を2002年に発見している。今回、オスの性決定遺伝子をメスになるはずの
受精卵に入れたところ、孵化(ふか)した58匹のうち13匹に精巣ができた。
うち8匹は受精可能な精巣で、受精させると、多くの子メダカが誕生した。

 性決定遺伝子は、人間とマウスでも見つかっている。メダカの性決定遺伝子の
構造や働きを詳しく調べることが、哺乳(ほにゅう)類の性決定の仕組みの研究にも
役立つという。

[読売新聞 / 2007年02月20日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070220i406.htm

基礎生物学研究所 プレスリリース
「メダカの性決定遺伝子はDMY遺伝子である」
http://www.nibb.ac.jp/press/070217/070217.html

統合失調症の発症に関与の新遺伝子を確認=理化学研究所、マサチューセッツ工科大学

2007年02月20日 | 脳、神経
 「統合失調症」の発症にかかわる遺伝子を、理化学研究所(理研)、米マサチューセッツ工科大などのチームが新たに確認した。

 20日の米科学アカデミー紀要電子版に発表する。

 神経伝達物質のドーパミンなどが発症にかかわっているとされている統合失調症。

 同工科大の利根川進教授らは、これらの物質の作用を調整するカルシニューリンというたんぱく質が働かないと、統合失調症に似た症状がみられることをマウスの実験で明らかにしており、研究チームは、このカルシニューリンに関連する遺伝子が人の統合失調症の発症に関連しているかどうかを検証した。

 研究チームは、カルシニューリンを作ったり、関連があったりする14種類の遺伝子が患者とその家族、患者同士で配列がどう異なるかを調べた。統合失調症の子供がいる日本人の124家族を対象に調査を試みた結果、14遺伝子のうち4遺伝子については、血縁者であっても、統合失調症ではない親と失調症の子供ではその配列が異なるケースが多いことを突き止め、これらの遺伝子が統合失調症の発症にかかわっていることがわかった。

 ただ、患者同士でも配列の一部は異なっており、発症が遺伝要因だけではなく、環境など他の要因も関与していることをうかがわせているという。

 4遺伝子のうちの1個は利根川教授らがすでに確認しているが、残りの3遺伝子はまったく新しく、統合失調症患者の前頭前野では、その働きが落ちていることも確認された。

[読売新聞 / 2007年2月20日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070220i301.htm

理化学研究所 プレスリリース
- 統合失調症の発症関連遺伝子群を日本人で発見 -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070220_2/index.html
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070220_2/detail.html

細胞から歯と毛が再生、マウスで成功=東京理科大学

2007年02月19日 | 再生医療
 マウスの胎児から歯のもとになる細胞を取り出して培養し、おとなの歯を再生させることに、東京理科大の辻孝・助教授(再生医工学)らの研究グループが成功した。作製の成功率は100%で、歯の中に血管や神経などもできていた。臓器を人工的に再生させる技術につながると期待される。18日付の米科学誌ネイチャーメソッズ電子版で発表する。

 胎児期にはさまざまな臓器や組織が、上皮細胞と間葉細胞という2種の細胞の相互作用でつくられる。辻さんらはこれに着目。マウス胎児のあごの歯胚(はい)から取り出した両細胞を酵素でばらばらにし、どちらも高密度の細胞塊にしたうえで、区分けしてコラーゲンのゲルに入れると、培養に成功することを突き止めた。

 さらに、この細胞塊を50匹のマウスの腎皮膜下に注射。14日後に、すべてで歯の形成を確認できた。歯の再生研究は他にもあるが、作製率は20~25%にとどまっていた。

 また、生体内で育てた歯や、生体の外で人工培養を続けた細胞塊を、おとなのマウスの歯を抜いた跡に移植すると、歯が高い頻度で生着した。この歯の内部には血管や神経のほか、クッションなどの役割を果たす歯根膜も再生できていた。

 グループは今回、同様の手法で毛の再生にも成功した。今後、肝臓や腎臓などの臓器づくりも目指すという。

[朝日新聞 / 2007年02月19日]
http://www.asahi.com/science/news/TKY200702180168.html

[東京理科大学新聞会 / 2007年02月19日]
http://tuspress.jp/archives/2007/02/19-2127.html

[FujiSankei Business / 2007年02月19日]
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200702190017a.nwc

パーキンソン病、ブレーキ役たんぱく質解明=京都大学先端領域融合医学研究機構

2007年02月15日 | 脳、神経
 手足のふるえなど体の動きが不自由になる難病、パーキンソン病の原因物質が脳内にたまるのを抑えるたんぱく質を、京都大先端領域融合医学研究機構の木下専(まこと)助教授、猪原匡史(いはら・まさふみ)特別研究員らのグループが明らかにした。15日付の米専門誌「ニューロン」電子版に発表する。根本的な治療薬開発につながる成果と注目される。

 パーキンソン病は全国に10万人以上の患者がいるとされる難病。中脳の黒質と呼ばれる部分にある神経細胞に悪玉たんぱく質がたまり、その毒性が細胞を殺し、神経伝達物質ドーパミンの分泌が減って起こる。

 木下助教授らはこれまでに神経細胞内では悪玉たんぱく質とともにSept4というたんぱく質も凝集することを確認、このたんぱく質の役割を調べていた。

 その結果、米国でつくられたパーキンソン病症状を起こすネズミで、Sept4をつくれないように遺伝子操作すると、症状は3カ月ほど速く悪化することが判明。Sept4が、悪玉たんぱく質の蓄積のブレーキ役になっていることがわかった。Sept4は、ドーパミンをつくるシステムを安定化させる役割もあり、善玉たんぱく質ともいえる。

 木下さんは「パーキンソン病では、Sept4が欠乏している例も見られ、悪化に拍車をかけているらしい。研究を進めて治療に結びつけたい」と話している。

[朝日新聞 / 2007年02月15日]
http://www.asahi.com/science/news/OSK200702150100.html

遺伝子壊した実験用メダカ 短期間、低コストで=京都大学

2007年02月13日 | 遺伝子組替マウス
 特定の遺伝子を壊した実験用のメダカをつくることに成功したと京都大の武田俊一教授、谷口善仁助手(放射線遺伝学)らが13日、発表した。

 同様の実験動物はマウスが一般的だが、谷口助手は「マウスは1年、1匹約350万円掛かるが、メダカは約4カ月ででき30万-100万円で済む。マウスで発病しにくいがんなどの研究に役立つ」と話している。

 谷口助手らは、メダカに突然変異を起こすように、特殊な薬の水溶液に雄のメダカ100匹を入れた。約80匹が生き残り、これと健康な雌との間で生まれた雄5760匹の精子を凍結保存した。

 メダカのゲノム(全遺伝情報)は解読されており、保存した精子のDNAを解析し、目的の遺伝子が壊れている精子を特定、これを健康な雌の卵子と人工授精した。生まれた世代同士を組み合わせて子どもをつくった。通常は1つの遺伝子を両親からそれぞれ受け継ぐが、この方法で両方の遺伝子が破壊されたメダカができた。

[北海道新聞 / 2007年02月13日]
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20070213&j=0047&k=200702135541

放医研ニュース"放医研のGFPトランスジェニックメダカ"
http://www.nirs.go.jp/report/nirs_news/200310/hik3p.htm

低酸素状態での解糖系の仕組みを解明~慶応大学 先端生命科学研究所

2007年02月13日 | 循環器
 鶴岡市にある慶応大先端生命科学研究所(鶴岡市、冨田勝所長)は13日、ヒト赤血球をモデルに細胞内の代謝反応を予測するコンピューターソフトウエアを独自に開発し、低酸素状態で赤血球の中に含まれるヘモグロビンが特殊な酵素と結び付き、必要なエネルギーを生み出す解糖系の仕組みを解明したと発表した。今後、赤血球の機能の研究が進めば、人工赤血球の開発にもつながる可能性があるという。

 赤血球はヘモグロビンを含有し、酸素の運搬役として機能する。冨田所長と曽我朋義教授、慶応大医学部の末松誠教授、同大大学院の木下綾子さんらの研究グループは、低酸素下での赤血球の働きを調べるため、細胞内の代謝反応を高速でシミュレーションするコンピューターソフトを開発。このソフトを用いて、細胞の機能維持や血流調整に必要なATP(アデノシン3リン酸)などの代謝物質の変化を予測した。だが、メタボローム解析で測定したところ、予測値と実測値は一致しなかった。

 そこで研究グループは、赤血球の膜に付着しているタンパク質のBAND3(バンドスリー)に着目。酸素が外れたヘモグロビンは、バンド3と結合することで、バンド3の中からPFK(フォスフォーフルクトキナーゼ)など3種類の酵素が分離し、解糖系を機能させる仕組みをプログラムに組み込んで予測値を算出。さらに、メタボローム解析したところ、予測値と実測値が一致する結果を得た。

[山形新聞 / 2007年02月13日]

http://yamagata-np.jp/newhp/kiji/200702/13/news20070213_0195.html

慶応義塾大学 プレスリリース
 計算機科学を利用した生命現象の予測と実証
 -慶應義塾大学「細胞生体機能シミュレーションプロジェクト」の成果
http://www.keio.ac.jp/pressrelease/070213.pdf

内臓脂肪で糖尿病、仕組み解明=東京大学

2007年02月10日 | 代謝
 中高年に多い内臓脂肪型の肥満が糖尿病を引き起こす仕組みを、東大病院糖尿病・代謝内科の門脇孝教授らの研究チームが、マウスを使った実験で解明した。

 治療薬の開発につながる研究成果で、米医学誌「ネイチャー・メディシン」電子版に掲載された。

 内臓脂肪が蓄積すると、脂肪細胞から出るアディポネクチンというホルモンの量が減る。アディポネクチンは、血糖値や中性脂肪を下げる働きがあるため、分泌量が減ると糖尿病などの生活習慣病の引き金となるメタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)を起こすことが知られていた。しかし、そのメカニズムは未解明だった。

 門脇教授らは、マウスの肝臓細胞の表面に、2種類のたんぱく質を発見。これらにアディポネクチンが結合すると、血糖値や中性脂肪が下がり、脂肪を燃やす働きも上がることを確認した。ところが、内臓脂肪が蓄積した肥満マウスは、細胞表面にこのたんぱく質が少なくなる。逆にこのたんぱく質を増やすと血糖値が改善することがわかった。

 門脇教授は「内臓脂肪型肥満でアディポネクチンが減少しても、このたんぱく質を増やすことで、糖尿病を治療できる可能性がある」と話している。

[読売新聞 / 2007年02月09日]
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070209ik0b.htm

行うのは足し算?引き算?脳測定で意図の判別に成功=マックスプランク、ロンドン大学、東京大学

2007年02月09日 | 脳、神経
 脳活動の測定実験で、被験者がこれから足し算と引き算のどちらを行おうと考えているか、判別できることが分かった。

 ドイツのマックスプランク研究所や英ロンドン大、東大などの研究チームが9日、米科学誌カレント・バイオロジーの電子版に発表した。

 成功率はまだ7割だが、人間の思考を読み解く初歩的な成果。

 将来、測定機の性能やデータ処理プログラムが向上すれば、身体障害者がロボットの義手や義足を自由に動かしたり、身体を動かさなくても思いを伝えられたりする装置の実現が期待される。

[時事通信 / 2007年02月09日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070209-00000013-jij-soci

認識や愛情行動促す物質を特定、治療へ応用も=金沢大学

2007年02月08日 | 心のしくみ
 相手とのコミュニケーションを取ったり、母親が子どもを守ったりする生き物の「社会行動」に関係するたんぱく質を、東田陽博(はるひろ)・金沢大医学系研究科教授(神経化学)らのグループがマウスの実験で特定した。発達障害の治療に応用できる可能性があるという。7日付で英科学誌ネイチャー電子版に発表する。

 東田教授らは、脳などに多い「CD38」と呼ばれるたんぱく質を作れないマウスが、異常な行動をすることに注目。約30匹で実験を繰り返した結果、記憶能力などは正常にもかかわらず(1)雄が雌を認識する(2)母親マウスが巣から引き離された子どもを巣に戻す――といった行動にかかわる能力が、約9割のマウスで欠けていた。

 さらに、このマウスでは「オキシトシン」と呼ばれるホルモンの脳内濃度が低くなっていた。注射で補充すると行動が正常に戻ったことから、東田教授は「CD38が脳内のオキシトシンの分泌を促し、母親の愛情行動などを支えていることがわかった」としている。

 オキシトシンは、子宮収縮や母乳の分泌などに関係するホルモンとして知られる。最近になって、このホルモンが脳で働くと、「相手への愛情や信頼感が生まれる」可能性が指摘されている。他人とのコミュニケーションがうまく取れない発達障害との関係も研究されている。

[朝日新聞 / 2007年02月08日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200702070403.html

金沢大学Web広報誌
医学系研究科・東田教授 科学誌Natureに論文掲載http://www.kanazawa-u.ac.jp/university/administration/prstrategy/eacanthus/0702/08.html
要約:http://www.kanazawa-u.ac.jp/university/administration/prstrategy/eacanthus/0702/images/08_pdf_01.pdf