ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

ナルコレプシー:関係する遺伝子を発見=東京大学

2008年09月29日 | 脳、神経
 日中でも激しい眠気に見舞われたり、発作的な脱力などに襲われる「ナルコレプシー」の発症に関係する遺伝子を、徳永勝士・東京大教授の研究チームが発見した。診断や治療に役立つ可能性がある。28日付の米科学誌ネイチャー・ジェネティクス電子版に発表した。

 研究チームは、患者と健康な人のゲノム(全遺伝情報)を解析。両者の間で、4種類ある化学物質の塩基の並び方が異なる場所(スニップ=SNP)を調べ、ナルコレプシー発症と最も関係が高い1カ所を特定した。具体的にはチミンという塩基が、シトシンという別の塩基に置き換わっていると、ナルコレプシー発症の危険性が1.8倍高いことが判明した。

 また、このSNPに隣接し、正常な睡眠や脳の働きを担う2種類の遺伝子に注目。シトシンの人は、2種類の遺伝子の働きが低下し、ナルコレプシー発症につながっている可能性が高いことを突き止めた。

 日本には約20万人の患者がいると推定されている。発症の詳しい原因は未解明で、治療は対症療法にとどまっている。

 研究チームの宮川卓東京大助教(人類遺伝学)は「遺伝子が作るたんぱく質の機能を補う物質を開発すれば、新しい治療薬になりうる」と話す。【河内敏康】

[毎日新聞 2008年09月29日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080929k0000m040119000c.html

間葉系幹細胞の新たな機能 脳の神経細胞損傷を抑制=昭和大学ら日米研究チーム

2008年09月28日 | 再生医療
 さまざまな組織の細胞になる「間葉系幹細胞」が、脳梗塞(こうそく)などによる脳の神経細胞の損傷を抑えることを、昭和大など日米の研究チームがマウス実験で突き止めた。再生医療の切り札とされる幹細胞が持つ新たな機能が分かったことで、アルツハイマー病やパーキンソン病など神経難病の進行を抑える治療法の開発につながる可能性がある。

 研究チームは脳梗塞を起こしたマウス12匹のうち6匹の脳に、発症の翌日、ヒトの骨髄から培養した間葉系幹細胞を注射し、注射しなかった残りと比べた。

 注射から3日後に、記憶をつかさどる海馬の神経細胞を調べると、注射したマウスは死んだ神経細胞の量が注射しなかったマウスに比べ約8割少なかった。また、注射したマウスは、細胞の損傷をもたらす炎症や免疫に関連する遺伝子の働きが抑制されていた。

 脳梗塞では、最初に発症した患部から、徐々に神経細胞の損傷が広がり、症状が進行していく。幹細胞は細胞の損傷の拡大を抑えているとみられる。

 大滝博和・昭和大助教(神経学)は「幹細胞が脳に入ると、脳内の細胞や遺伝子の働きが炎症を抑える方向に切り替わるようだ。幹細胞は自らがさまざまな細胞に分化するだけでなく、生体の機能を制御する能力も持つと考えられる」と話す。15日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表した。【永山悦子】

[毎日新聞 2008年09月28日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080928ddm016100016000c.html

オークションに高値入札してしまうのはなぜか 脳画像で研究=ニューヨーク大学

2008年09月26日 | 心のしくみ
オークションに高く入札してしまうのは、「勝利への喜び」ではなく「敗北への恐怖」のためかもしれない。

 オークションについ高値で入札してしまうのはなぜなのか――米ニューヨーク大学が脳画像と行動経済学を組み合わせ、その理由の解明に挑んだ。

 過去の研究によれば、オークション参加者は実際の品物の価値よりも高い値で入札する傾向がある。ニューヨーク大学の神経科学者と経済学者は実験で、オークションに内在する社会的競争で敗北することに対する恐怖が値をつり上げる一因となっている可能性があることを発見した。

 実験では、被験者にオークションゲームとくじ引きゲームをプレイしてもらい、その脳の活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で調べた。オークションゲームの勝敗は対戦相手に競り勝つかどうかで決まり、どちらもゲームでも被験者は負ければお金を失う。

 報酬にかかわる処理を行う脳の線条体を調べたところ、オークションゲームで負けたときの反応が大きかったという。オークションゲームで負けたときの線条体の反応の大きさと、高値で入札する傾向には相関関係があった。このことから研究者らは、「オークションに内在する社会的競争で負けるという予測が、高値入札につながる可能性がある」との仮説を立てた。

 次にこの仮説を検証するため、オークションゲームを使って行動経済学に基づく実験を行った。被験者は、指定の金額で入札するだけの統制群、勝てば実験用通貨15ドルを受け取れるBonus-Frame群、最初に15ドル渡され、負ければ没収されるLoss-Frame群の3グループに分けられた。統制群以外は報酬が同じだが、Bonus-Frame群では「勝利」、Loss-Frame群では「敗北」が強調されている。実験の結果、Loss-Frame群の被験者は、ほかの2グループの被験者よりも入札価格が高かったという。

 「過去の研究では、高値入札の理由をリスクへの嫌悪または勝利の喜びとしているが、われわれは脳画像により、敗北への恐怖という新たな説明に到達できた」と研究者は述べている。この研究結果はScience誌最新号に掲載される。

[ITmedia News 2008年09月26日]
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0809/26/news074.html

先天性難聴の遺伝子診断を開始=信州大学病院

2008年09月25日 | 医療技術
 信大病院(松本市)は24日、先天性難聴の原因を遺伝子レベルで調べる「遺伝子診断」を始めたと発表した。先天性難聴の約半数は遺伝子の変異によるといわれ、遺伝子ごとに発生部位や重症度、将来の進行などが異なることから、原因を特定して治療や療育計画に生かす狙い。同病院によると、先天性難聴の遺伝子診断は全国初という。

 同病院によると、先天性難聴の原因は分からないことが多く、同じ治療をしても言葉の発達に差が生じることがあった。耳鼻咽(いん)喉(こう)科長の宇佐美真一教授らが10年ほど前から、全国の病院と共同で難聴者約4000人分の遺伝子を研究。これまでに、日本人の難聴は10種類の遺伝子に起きる計47の変異によることが分かった。

 こうした成果を診断に活用。乳児の血液から遺伝子を採取し、47の変異の有無を調べる。結果を保護者らに伝える際は、難聴の仕組みや治療について説明する耳鼻科医のほか、遺伝子診療部の医師が同席。今後生まれる子どもや次世代が難聴となる確率なども説明し、疑問や不安に応える「遺伝カウンセリング」を行う。9月1日に開始後、既に2人が受診したという。

 県内の病院は2002年度から、新生児の聴覚スクリーニングを始めている。遺伝子診断は、精密検査などで訪れた保護者が希望した場合に行う。記者会見した宇佐美教授は「言葉の発達には2-3歳が重要な時期。早い診断と適切な治療を行うことで、難聴児の言語発達を助けたい」と述べた。

[信州毎日新聞 2008年09月25日]
http://www.shinmai.co.jp/news/20080925/KT080924FTI090021000022.htm

車の正面が「顔」に見えるワケは?=ウィーン大学(独)

2008年09月25日 | 心のしくみ
【9月24日 パリ/フランス発 AFP】あなたにはフランス車ルノー(Renault)の「トゥインゴ(Twingo)」が、笑った顔に見えますか? フォルクスワーゲン(Volkswagen)の「ビートル(Beetle)」はおっかなびっくりの顔? 旧東ドイツの国産車「トラバント(Trabant)」は悲しそうで、BMWは怒った顔?

 わたしたちがこのように車の正面を見て人間の表情を連想するのは、顔から重要な情報をつかもうとする生来の習性のせいだという研究報告が、今週発売された科学誌「ヒューマン・ネーチャー(Human Nature)」に発表された。

■顔からの情報スキャンは生存メカニズムの名残

 人間はほかの動物同様、他人を一瞬見るだけで、その人が敵対的か協力的か、見知らぬ者か近親者かを判断する能力を発達させてきた。これは先史時代には生死を分けた重要な生存メカニズムの名残だ。

 ウィーン大学(University of Vienna)のカール・グラマー(Karl Grammer)氏率いるチームは、このメカニズムが自動車にも適用されうるのかどうかを実験した。

 男女比半々の成人グループ40人に、同色の38車種の前部の写真を見せ「顔に見えるかどうか、見えるとすれば人間の顔と動物の顔のどちらに近いと思うか」などを質問。さらに「子ども」「大人」「友好的」「敵対的」「男性的」「女性的」「尊大」「幸せそう」「消極的」「積極的」など全19項目の中から、印象として当てはまるものにチェックを入れてもらい、最後に好きな車を選んでもらった。

 結果は、回答者の3分の1以上が、9割以上の車種について「顔に見える」と答えた。また、すべての回答者がヘッドライトが「目」、フロントグリルが「口」に見えると回答した。さらに印象については、コンピューターがそれぞれの車種について人間の顔をもとに分類した「表情」とほぼ一致することがわかった。

■好かれるのは「力強い」顔の傾向

 好みの車については男女ともに、研究チームが「力」を表わす表情だとカテゴリーした「大人っぽい、支配的、男性的、尊大、怒っている」ようなデザインの「顔」を好む傾向があった。こうした車に共通した特徴は、フロントパネルが低く、フロントが幅広で、前から見ると四角くて頑丈なあごを連想させることだった。この「力」を表わすカテゴリーでは、BMWやクライスラー(Chrysler)300などが上位を占めた。 

 対照的に「おとなしい」「友好的」「子どもっぽい」といった項目にチェックが多くついたのは、日産(Nissan)のニューマーチ、フォルクスワーゲンのニュービートル、韓国・起亜自動車(Kia Motors)のキア・ピカントなどだった。

 車を見て人間の顔を連想する傾向についてチームでは、潜在的な危険を判断する際、最も手っ取り早い指標となる「顔」に関するどんな情報も見逃さないようにと発達した「判断ミス管理能力の産物と言えるだろう」とまとめている。

 今後は、こうした「顔」が車の購入や運転にどのような心理的影響をもたらすかを研究したいとしている。(c)AFP/Marlowe Hood

[AFP BB NEWS 2008年09月25日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2520582/3369821

後発薬:世界最大手が興和と合併会社 日本市場へ参入=テバファーマスーティカル・インダストリーズ社

2008年09月25日 | 創薬
 後発(ジェネリック)医薬品世界最大手のテバファーマスーティカル・インダストリーズ(イスラエル)は24日、中堅製薬会社の興和(名古屋市)と年内にも合弁会社を設立し、日本市場に本格参入すると発表した。新薬より割安な後発薬の利用を促し、収益拡大につなげる狙い。

 後発薬は新薬の特許が切れた後、特許内容を利用して別の会社が作る薬で、開発費が少ない分だけ価格が安い。厚生労働省が医療費抑制の切り札として積極利用を呼びかけており、第一三共が後発薬を手がけるインドのランバクシー・ラボラトリーズとの買収手続きを進めるなど、国内での動きは活発化している。

 合弁会社「興和テバ」は、テバが開発した後発薬を医療機関などに販売するほか、後発薬の研究・開発も手がける予定。資本金の額は今後詰めるが、テバと興和が50%ずつ出資する。2015年までに売上高を1000億円に拡大し、国内後発薬市場で1割のシェア獲得を目指す。

 テバの年間売上高は約1兆円。05年に日本に現地法人を設立したが、医薬品原材料を販売する程度だった。【宮島寛】

[毎日新聞 2008年09月25日]
http://mainichi.jp/select/biz/news/20080925k0000m020106000c.html

BSEを脳の電位で診断、早期発見に道=動物衛生研究所

2008年09月24日 | 脳、神経
 動物衛生研究所(茨城県つくば市)、北海道立畜産試験場(新得町)の研究チームは24日、牛に音の刺激を与えた時の脳の反応から、牛海綿状脳症(BSE)を臨床診断する方法を開発したと発表した。

 BSEの発症は従来、牛の動作や症状から臨床診断されているが、感染が疑わしい牛にこの方法を応用することで、より早期に発見することが期待できるとしている。

 同研究所の新井鐘蔵上席研究員によると、利用したのは人でも行われる「聴性脳幹誘発電位」という方法。専用のイヤホンで牛に音を聞かせ、脳幹に起きる電位の変化を調べる。

 実験では、感染牛の脳を健康な牛に接種して人為的にBSEを感染させて育成。12-24カ月後に計5回測定した。

 その結果、BSE感染牛はぼーっとしたり神経質になったりするなどの段階から既に、中脳などへの情報の伝わり方が遅くなり、電位が低下していた。さらに、前脚が震えたり立ち上がれなくなったりする神経症状が現れると、この測定ではっきりした聴覚障害が確認された。

[共同通信47NEWS 2008年09月24日]
http://www.47news.jp/CN/200809/CN2008092401000611.html


【牛の脳波測定でBSE診断=早期発見期待、農場用装置開発へ-動物衛生研】
 牛に特定の音を聴かせて脳波を測定し、BSE(牛海綿状脳症)か診断する技術を動物衛生研究所が開発した。24日から宮崎市で始まった日本獣医学会で発表する。BSEの確定診断は死後の脳を調べる必要があるが、農場で牛に負担を掛けず簡単に診断でき、早期発見に役立つと期待される。農場用の小型診断装置の試作品を来年度中に完成させ、1台300万円以下での市販を目指す。

[時事ドットコム 2008年09月24日]
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200809/2008092400809

赤ワインの抗酸化作用、被ばく治療にも効果か=ジョン・ホプキンス大学

2008年09月24日 | 食品・栄養
 [ワシントン 23日 ロイター] 赤ワインやフルーツに含まれている抗酸化物質が、放射線の被ばく治療に役立つかもしれない。米国の研究者が23日に研究結果を報告した。

 マウス実験によると、抗酸化物質のレスベラトロールをアセチルによって変化させたとき、被ばくによる被害を一部で抑制することができたという。

 放射性腫瘍(しゅよう)が専門で、研究のリーダーであるジョン・ホプキンス大学のジョエル・グリーンバーガー医師は、この方法で製造される薬が、大規模な放射能漏れなどの緊急事態に活用できると考えている。

 同医師は「今のところ、被ばくを食い止めたり、中和したりする薬は存在しない。私たちの目標は、有効かつ中毒作用のない、一般向けの治療を開発することだ」と声明の中で語っている。

[ロイター 2008年09月24日]
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-33914020080924

乳がん手術後、自身の脂肪で乳房 幹細胞注入し再建

2008年09月24日 | 医療技術
 乳がんで乳房温存手術をした後、患者自身の脂肪組織から採った幹細胞を注入すると乳房再建に効果があるようだ。九州中央病院(福岡市)の北村薫副院長(乳腺外科)らの臨床研究で、注入後1年半以上たった10人を調べたところ、膨らみが保たれていた。26日から大阪市で開かれる日本乳癌(がん)学会で発表する。

 脂肪組織から幹細胞などを抽出する機器を開発した米サイトリ社との共同研究で、まず患者の腹部から吸引した脂肪組織を2等分する。一方を処理して、様々な細胞の元になる幹細胞を含む細胞液を抽出し、もう一方の脂肪組織と混ぜ合わせて再建したい場所に注入する。

 06年5月から20~50代の16人の患者に実施した。注入から1年半以上過ぎた10人を調べたところ、がん摘出でくぼんだ場所の厚み(中央値)は再建前は9.8ミリだったが、注入1カ月後は18.1ミリになり、1年半後も15.5ミリと膨らみが保たれていた。

 乳がんが比較的進んでいない場合は乳房をできるだけ残す乳房温存手術が行われることが多いが、術後の放射線治療の影響などで思うように膨らみが戻らないことがある。

 北村さんによると、この手法は、残った乳房の萎縮(いしゅく)が大きい場合の復元は難しいものの、部分的なくぼみであれば十分修復することができた。長期的な効果や副作用はまだわからないが、少なくとも1年半(最長2年2カ月)では8割の患者が満足しており、特段の副作用もみられていないという。

 抽出した細胞液には幹細胞だけでなく、血管新生を促す物質や繊維組織を作る物質なども含まれ、それらが複合的に働いて組織が生着しやすいとみられる。

[朝日新聞 2008年09月24日]
http://www.asahi.com/science/update/0924/TKY200809240062.html

カルシウム+ビタミンD、大腸がんのリスク低減=九州大学、国立国際医療センター

2008年09月22日 | 食品・栄養
 カルシウムとビタミンDをともに多く摂取すると、大腸がんにかかるリスクを下げる可能性があることが、九州大などの調査でわかった。近く米国のがん予防専門誌で報告する。

 古野純典・九大教授らのグループが、福岡市とその近郊に住み、大腸がんと診断された836人と、同じ年代で大腸がんではない861人から食事や生活習慣を詳しくたずね、関連を調べた。

 1日あたりのカルシウム摂取量が平均約700ミリグラムと最多の人たちが大腸がんになるリスクは、同400ミリグラムで最も少ない人たちと比べ、3割ほど低かった。しかし、カルシウムを多くとっても、ビタミンDをあまりとらない人では、違いははっきりしなかった。

 そこで、カルシウムを平均約700ミリグラムとり、かつビタミンDを多くとる人(1日10マイクログラムかそれ以上)で比べると、大腸がんリスクは、カルシウム摂取が少なくビタミンDをあまりとらない人より、6割低かった。

 ビタミンDはサンマやサケといった魚類やキノコ類に多い。日本人のカルシウム摂取量は1日あたり平均540ミリグラム余で不足ぎみ。ビタミンDは8マイクログラムほど。大腸がんは肥満や飲酒でリスクが高まることがわかっている。

 牛乳を飲んでカルシウムを多くとると、大腸がんリスクが2割ほど下がることは、欧米グループが報告している。今回の結果をまとめた溝上哲也・国立国際医療センター部長(前・九大助教授)は「ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるので、大腸がんの予防効果を高めるのかも知れない。さらに効果を調べたい」と話す。(田村建二)

[朝日新聞 2008年09月22日]
http://www.asahi.com/science/update/0922/TKY200809220168.html

魚たちは赤い蛍光色を発し赤色を認識する=(独)チュービンゲン大学ら

2008年09月16日 | 生きもの色々
【9月16日 パリ/フランス発 AFP】多くの魚や海洋生物が、赤色ネオンのような蛍光色を発しているとする論文が、15日発表された。

 太陽の可視波長は最長でも海面下10メートルまでしか届かないため、海中では色のスペクトルが不足し、魚は赤色をほとんどまたは全く認識できないというのがこれまでの定説だった。例えば消防服のような真っ赤なダイビングスーツは、海面下20メートルではダークグレーまたは黒色にしか見えない。魚にとってもそうであろうと魚類学者たちは考えてきた。

 だが、ドイツのチュービンゲン大学(University of Tubingen)のNico Michiels氏らは、そうした考えが間違いであることを偶然、発見した。

 同氏は同僚らととともに、緑と青の光線を遮断して赤の光線だけを通すゴーグルを着けて海中にもぐったところ、赤色に光り輝く世界を目の当たりにした。魚、藻、サンゴ、その他の微小生物が、深紅、ルビー色、チェリー色、さび色に輝いていたという。「日中に海に差し込む緑と青の光線が、われわれに赤色を見えなくさせていた」とMichiels氏は言う。 
 
 研究では、岩礁に生息するハゼやベラなど少なくとも32種の魚類が、太陽光による反射ではなく、自ら「クリスマスの赤い電飾のように」光ることができることもわかり、海中ではなく研究室でも確認された。発光源は、マニキュア液や塗料の光沢として使用されるグアニン結晶であるという。

 蛍光色の赤色を発光すると、たとえ深海であっても、付近の魚に認識されやすくなる。また、多くの魚が赤色を完全に認識できていると考えられる。

 それにはいくつかの理由がある。赤色を発光することで、交尾の相手を探したり、危険を知らせたりすることができる。サンゴ礁では、赤色を出すことがカモフラージュ効果を生む。

 発光することでどのように情報をやりとりしているのかが、今後の研究課題だという。魚が認識できる色スペクトルの実験を重ねて、一部の魚が赤色を実際に認識できていることを立証したいとしている。(c)AFP

[AFP BB News 2008年09月16日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2518039/3346102

人間の目はクラゲ起源か 光とらえる仕組み類似=大阪市立大学

2008年09月16日 | 生きもの色々
クラゲと人間は、目で光をとらえる仕組みがよく似ているとの研究結果を、大阪市立大の寺北明久教授と小柳光正講師(分子生理学)らが16日までにまとめた。

寺北教授は「クラゲは脳を持たない原始的な動物だが、人間の視覚システムはクラゲの祖先から進化した可能性がある」と話している。

クラゲの目にはレンズや網膜がある。寺北教授らは、アンドンクラゲの網膜で光をキャッチする「視細胞」を調べ、情報伝達にかかわるタンパク質などを特定。

その中で、光の信号を神経を伝わる電気的な信号に変換しているタンパク質や、このタンパク質に情報を伝えている「環状ヌクレオチド」という物質は、人間と共通であることを確かめた。

視細胞の仕組みは、無脊椎動物と脊椎動物で異なる。クラゲの目は脊椎動物の目と構造は似ているが、目のレンズが光を効率良く集めることができないこともあり、従来は脊椎動物とは起源が異なると考えられてきた。

寺北教授は「クラゲの目が光をとらえる仕組みは、脊椎動物のグループに近い」と話している。

[中国新聞 2008年09月16日]
http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2008091601000102_Science.html

【科学】雄の求愛などの性行動 脳の“司令塔”を特定=東北大学、北海道教育大学

2008年09月15日 | 心のしくみ
■東北大大学院と北海道教育大

 雌への求愛など、性行動を“男らしく”している脳細胞を、東北大大学院と北海道教育大の研究グループがショウジョウバエで特定した。約10万個の脳細胞のうち特定の場所に形成される20個ほどの「雄型細胞群」が雄の性行動の司令塔となっていた。11日付の米科学誌「ニューロン」に発表した。

 東北大大学院生命科学研究科の山元大輔教授らは、脳細胞のごく一部を雄型に性転換させた雌のキイロショウジョウバエを205匹作り、性行動を調べた。

 1匹ずつ正常な雌と“お見合い”させると、205匹中16匹が雄特有の求愛行動を起こした。性転換した脳の領域を調べると約20個の脳細胞がほぼ共通していた。他の細胞が「完全な雌」でも、この20個の雄型細胞群を組み込んだショウジョウバエは雄としてふるまった。

 これまでの研究で、ショウジョウバエの性決定にかかわる2つの遺伝子が分かっており、連携して雄型の神経回路と雌型の神経回路を作り分けているという。今回の成果で、脳細胞の生物学的な違いが行動の性差のもとになっていることが分かった。研究グループの北海道教育大の木村賢一教授は、「ショウジョウバエで見つかった脳細胞の性差は、ヒトの意識や行動に現れる男女差を解明し、客観的に理解するうえでも大きなヒントになるだろう」と話している。(小野晋史)

[msn産経ニュース 2008年09月15日]
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080915/acd0809150832003-n1.htm

ノーベル賞前哨戦、米ラスカー賞に遠藤氏 臨床研究部門=東京農工大学

2008年09月14日 | 創薬
 血液中のコレステロールを下げる特効薬のもとになる物質「スタチン」を発見した遠藤章・東京農工大名誉教授(74)が、米国で最も権威がある医学賞「ラスカー賞」の臨床医学部門の受賞者に選ばれた。米ラスカー財団が13日(日本時間14日)発表した。授賞式は26日、ニューヨークで開かれる。

 遠藤さんは、東北大を卒業後、製薬会社「三共」に入社した。カビを中心に6千種類の微生物を調べ、73年、コメの青カビが作り出すスタチンを初めて発見した。動物実験で血中のコレステロールの値を下げることを確認した。スタチンは、安全性確認の段階で何度も開発中止の危機に見舞われたが、87年に米国の製薬会社メルクがスタチンの商品化に成功した。その後、三共なども続いた。

 現在では、高脂血症や心筋梗塞(こうそく)、脳卒中などの治療・予防薬として世界100カ国以上で販売され、3千万人が服用し、世界で最も使用されている薬といわれる。

 日本人の受賞は、花房秀三郎・米ロックフェラー大名誉教授、利根川進・米マサチューセッツ工科大教授らに続いて5人目だが、臨床医学部門では初めて。ノーベル賞にも近く、利根川氏はラスカー賞の基礎医学部門の受賞者に選ばれた87年にノーベル医学・生理学賞を受賞している。

 遠藤さんは、「夢がかなってうれしい。野口英世やペニシリンを発見したフレミングのように、世の中に一つは役に立つことをしたいと思ってきた。若い人の夢を広げられるように、80歳までは現役でがんばりたい」と話した。(竹石涼子)

[朝日新聞 2008年09月14日]
http://www.asahi.com/science/update/0914/TKY200809130230.html

食欲増進ホルモン「グレリン」、心筋梗塞を改善=国立循環器病センター

2008年09月13日 | 循環器
 胃から分泌されるグレリンという食欲増進ホルモンが、急性心筋梗塞(こうそく)の症状を改善することを、国立循環器病センター(大阪府吹田市)の研究チームがラットの実験で確認した。

 国内では年間約4~5万人が急性心筋梗塞で死亡しており、治療薬開発への応用が期待される。米国の内分泌学専門誌に掲載する。

 研究チームは、ラット26匹に心筋梗塞を起こさせ、グレリンを注射した群と、しない群とに分けて比較した。その結果、注射したラットは、6時間後に10匹が生存し、不整脈もほぼゼロだったが、注射しないラットは不整脈が頻繁に起き、3匹しか生き残らなかった。

 グレリンには、不整脈を引き起こす心臓の交感神経を鎮静化させる働きがあるらしい。岸本一郎医長は「グレリンはもともと体内にある物質で、心筋梗塞の有効な治療薬になる可能性がある」と話している。

[読売新聞 2008年09月13日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080913-OYT1T00366.htm