ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

ES細胞で作った肝細胞移植で病状改善=京都大学

2007年04月30日 | 再生医療
ES細胞で作った肝細胞移植で病状改善──京大が動物実験、人体へ応用も

 京都大学再生医科学研究所は、あらゆる組織・器官に成長する万能細胞である胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から作った肝臓の細胞をマウスに移植し、病気の症状を改善させることに成功した。ES細胞から肝臓細胞を作る研究は以前からあったが、実際に細胞移植治療の有効性を確認したのは初めてという。将来、生体肝移植の代替医療となる可能性がある。

 石井隆道研究員と中辻憲夫教授らは、マウスのES細胞を約10日間培養。成長して肝臓に特有の遺伝子を持つようになった細胞だけを選び、肝障害を起こしたマウスに移植した。

 細胞は移植後7日目では肝臓の一部に存在するだけだが、35日後には3割超を占めるまでに成長した。肝臓で合成されるたんぱく質で肝臓の働きの指標となるアルブミンも分泌しており、移植したマウスの肝臓に細胞が生着し、きちんと機能しているのが確認できた。

 通常、35日後の肝障害マウスの生存率は20%程度だが、細胞移植したマウスは約67%が生存していた。一方、ES細胞を成長させないまま移植した場合では生存率の改善はみられなかった。

[日経ネット関西版 / 2007年04月30日]
http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/39705.html

がん細胞:0.1ミリでも光らせる物質、日米チームが開発=米国立がん研究所、東京大学

2007年04月30日 | 可視化技術
 がん細胞に取り込まれると光り続ける蛍光物質を、米国立衛生研究所と東京大の研究チームが開発した。マウス実験では、従来の検査では見つけにくい小さながんでも強い光を発することが確認された。微小ながんを正確に見つける新しい診断薬の開発につながる可能性があるという。

 研究チームは、がん細胞に取り込まれると光るスイッチが入り、スイッチが入っている間は、がん細胞の中やがん細胞表面にとどまる物質の開発に取り組んだ。

 その結果、(1)がん細胞に取り込まれると分解されて光り始め、光ると水に溶けにくくなって細胞から排出されにくい(2)事前にがん細胞が取り込んだ酵素で処理されると光り始め、水にも溶けにくくなる(3)がん細胞表面に張り付けた結合分子と結びつくと光り始め、結合が長く続く--という性質を持つ3種の蛍光物質を開発した。いずれも従来の蛍光物質に比べ光が強いという。

 研究チームは、マウスの腹部に多数のがん細胞を植え付け、これらの蛍光物質を散布して観察。0.8ミリ以上のがんの9割以上を見つけることができ、0.1ミリのがんまでとらえることができたという。

 がんの詳細な画像診断法には、がんに集まる性質を持つ造影剤を使う陽電子放射断層撮影(PET)などがある。ただ、PETで見つかるがんは現在3ミリ程度までで、解像度には限界がある。

 蛍光物質を使えば、微小な変化もとらえられるが、体の深い部分にあるがんの場合、蛍光物質の光は体外から確認することができない。研究チームの小林久隆・米国立衛生研究所主任研究員は「最近は内視鏡や腹腔(ふくくう)鏡を使う検査や手術が主流になっており、それらを使って患部に近づけば、がんか否かを正確に確認できるだろう。開発した蛍光物質は、すでに眼科の検査で使われているものに近いので、新たな検査技術への活用も可能。卵巣がんの臨床研究から始め、5年程度での実用化を目指したい」と話している。【永山悦子】

(写真説明:マウスの腸管膜のがんが蛍光物質によって光って見える(左)。白色光下での腸管の写真を重ね合わせた。右側は、スイッチが入らないようにした蛍光物質を投与したマウスの同じ部位の写真=小林久隆・米国立衛生研究所主任研究員提供)

[毎日新聞 / 2007年04月30日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070430k0000m040126000c.html



【がん組織でのみ光る薬開発=微小な病変も見逃さず-米国立がん研究所、東京大学】
 スイッチを切り替えるように、がんのある場所でだけ光を発する蛍光薬剤の開発に、米国立がん研究所(NCI)の小林久隆主任研究員らのチームが29日までに成功した。肉眼では分からないごく小さながんを見ることができ、より的確な診断や、手術の際の取り残し防止が期待できそうだ。
 東大大学院の浦野泰照准教授(薬学)との共同研究。
 研究チームは、特定のがん細胞と結合するたんぱく質に、蛍光色素の分子3つを付けた薬剤を作成。この分子は互いにくっついていると光エネルギーを失う性質があり、そのままでは光らないが、がん細胞の内部に取り込まれ分解されることによって強く光る。

[時事ドットコム / 2007年04月30日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007042900084


炎症反応抑制 たんぱく質発見=理化学研究所

2007年04月30日 | 遺伝子組替マウス
 この研究は、横浜市にある理化学研究所の改正恒康チームリーダーらのグループが30日、アメリカの科学雑誌「ネイチャー・イムノロジー」に発表します。

ウイルスや細菌が体内に侵入すると、免疫細胞の働きでサイトカインと呼ばれる物質などが作られ、炎症反応を引き起こしてウイルスなどを攻撃します。研究グループは、細胞の核の中にある「PDLIM2」というたんぱく質に、このサイトカインを作るのに必要な物質の分解を促進して炎症反応を抑える働きがあることを突き止めました。
「PDLIM2」を作ることができないマウスでは、サイトカインを作る量が通常より2倍から3倍多く、過剰な炎症反応を引き起こすことを確認したということです。

ぜんそくやリウマチなどアレルギーや自己免疫疾患と呼ばれる病気は、過剰な炎症反応が原因で起きるとされています。改正チームリーダーは「炎症反応を抑える物質が特定されたことで、新しいぜんそくやリウマチの薬の開発につながるのではないか」と話しています。

[NHKニュース / 2007年04月30日]
http://www.nhk.or.jp/news/2007/04/30/d20070430000013.html


炎症反応止める酵素発見=理化学研究所

 本来は異物の侵入から体を守る免疫機構の1つなのに、過剰に起こるとアレルギー疾患やリウマチなどの自己免疫疾患につながる炎症反応を、正常に終わらせる働きを持つ酵素を理化学研究所などがマウスで発見、29日付の米科学誌ネイチャーイムノロジー電子版に発表した。

 この酵素の働きを制御できれば、アレルギーなどの治療につながる可能性があるという。

 研究チームは、樹状細胞と呼ばれる白血球の一種が細菌やウイルスへの感染を感知すると、同細胞内でタンパク質「NFκB」が炎症反応を起こす遺伝子の働きを高めることに着目。NFκBの働きが低下した細胞を調べ、ある特定の酵素がNFκBを分解する反応を促進していることを突き止めた。

[共同通信 / 2007年04月30日]
http://www.47news.jp/CN/200704/CN2007042901000611.html


理化学研究所 プレスリリース
 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明
 - アレルギー・炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり -
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2007/070430/index.html

人工血管:絹の繊維を織物技法で筒状に 実験結果は良好=東京農工大学、農業生物資源研究所

2007年04月29日 | 再生医療
 絹の繊維を織物の技法で筒状に編んだ人工血管を、東京農工大や農業生物資源研究所(旧・蚕糸試験場)などの研究グループが作った。ラットでの実験では、移植から1年たっても血栓ができず経過は良好だ。人工血管は海外製がほとんどだが、研究グループは、日本の伝統的な材料と技法の組み合わせで国産の巻き返しを狙う。

 人工血管には、生体になじみやすいことに加え曲がりやすくつぶれにくい特性が求められる。市販品はポリエチレンなどの合成繊維製や合成樹脂製が主流だが、直径2ミリ以下の細い人工血管は血栓ができやすかった。

 朝倉哲郎・東京農工大教授(構造生物学)らは、絹が手術の縫合糸に使われ、生体へのなじみやすさと強度を兼ね備えていることに着目。「組み」や「巻き」と呼ばれる織物の技法を活用し、絹(太さ約30マイクロメートル=マイクロは100万分の1)を筒状に編んだ。これを絹の繊維を溶かした液に浸し、すき間を繊維でふさいだ。

 出来上がった人工血管(直径1.5ミリ、長さ1センチ)は、東大病院でラットの腹部大動脈に移植。1年後も血流は良好で、血栓もなかった。血管の内側には、生体になじんだことを示すたんぱく質の層もできていた。

 グループはブタなどの大型動物で実験を重ね、人での実用化を目指す。絹を軟骨や角膜を再生するための土台に使う研究も進める。朝倉教授は「絹には血栓の形成を抑制する働きがあり、再生医療の素材や生体材料として有用だ」と話している。【西川拓】

[毎日新聞 / 2007年04月29日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070429k0000m040113000c.html

高脂血症の治療薬で早起き?睡眠障害治療薬の開発に期待=産業技術総合研究所

2007年04月25日 | 薬理
 高脂血症の治療薬「フィブレート製剤」に、睡眠のリズムなどを刻む「体内時計」を調節する働きがあることを、産業技術総合研究所生物時計研究グループ(茨城県つくば市)などの研究チームが突き止めた。

 睡眠障害を持つマウスにこの薬を飲ませたところ、いつもより早起きし、正常マウスと同じように活動することがわかった。研究チームは今後、この治療薬を飲んでいる患者に早起きの傾向があるか調べ、睡眠障害の治療薬の開発につなげていきたいとしている。

 研究チームは、この薬を飲む時間帯と効き方との関係をマウスを使って調べた際、薬を飲むマウスが早起きになっていることに気付いた。薬を含むエサを食べたマウスは3時間ほど活動する時間帯が早くなり、起きる時間が遅くなる「睡眠相後退症候群」の症状を持つマウスに与えたところ、症状が改善したという。

 この薬が体内時計を調節する仕組みは不明だが、同研究グループの大石勝隆・主任研究員は「時差ぼけの改善などにも効果が期待できる」としている。

[読売新聞 / 2007年04月25日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070425it11.htm



【高脂血症薬、睡眠障害に効果?マウス、早寝早起きに=産業技術総合研究所、早稲田大学】

 高脂血症治療薬のフィブレートが、マウスの体内時計を早寝早起きに変えることを、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)と早稲田大が突き止めた。まだ動物実験の段階だが、ヒトの睡眠障害の新しい治療薬として期待できるかもしれない。

 産総研の生物時計研究グループの大石勝隆主任研究員らは、ふだんは夜行性のマウスを使って、餌にフィブレートを0.5%混ぜて与え続けてみた。すると、2週間ほどで与える前に比べて活動時間帯が約3時間前倒しになり、明るい時間帯から活動を始めるようになった。常に真っ暗にするなど、光の条件などを変えても結果は同じだったという。

 遺伝子などを調べた結果、フィブレートの受容体である「PPARα」というたんぱく質が、体内時計を調整していることがわかったという。

 リズム障害や時差ぼけなど睡眠障害で悩む人は多い。同グループは今後、ヒトの体内時計への影響を調べれば、治療薬の開発につながる、とみている。

[朝日新聞 /2007年05月02日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200705010444.html



【フィブレート:高脂血症治療薬に体内時計調節の働き】
 血中のコレステロールや中性脂肪濃度を減らす高脂血症治療薬フィブレートに、生物の体内時計を調節する働きがあることを産業技術総合研究所(茨城県つくば市)と早稲田大の研究チームが確認した。マウスはもともと夜行性だが、高脂血症治療薬を餌に混ぜて与えると、“早寝早起き”になった。夜眠れず、朝起きられないといった睡眠障害や、時差ぼけの改善薬の開発などにつながる成果だという。

 生物には時計遺伝子と呼ばれる一連の遺伝子群があり、その働きによって約24時間周期の体内リズムが保たれている。

 マウスの活動時間帯は通常、夜間に限られるが、フィブレートを餌に混ぜて与えると活動時間帯が約3時間前倒しされ、明るい時間帯から活動を始めるようになった。また、時計遺伝子が壊れ、活動開始時間が通常よりも遅い睡眠障害マウスに投与したところ、活動時間帯が正常化した。

 フィブレートは、脂質の代謝にかかわるPPARαと呼ばれるたんぱく質と結合する。PPARαには時計遺伝子を調整する働きがあり、結果的に睡眠障害が改善されるらしい。

 研究チームによると、国内では5人に1人が睡眠障害を持つと疑われる。治療法には、強い光を毎朝浴びる高照度光療法やビタミンB12の投与などがあるが、作用メカニズムは不明で、効果も個人差が大きいという。

 同研究所生物時計研究グループの大石勝隆主任研究員は「今後は、人への効果の検証などを進めたい」と話している。【石塚孝志】

[毎日新聞 / 2007年05月02日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070502k0000e040023000c.html


産業技術総合研究所 プレスリリース
■高脂血症治療薬による睡眠障害の新しい治療効果
 -フィブレート製剤による体内時計の制御-
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2007/pr20070425/pr20070425.html

高脂血症薬、睡眠障害に効果? マウス、早寝早起きに(朝日新聞) - goo ニュース

正解、不正解は“別処理”サルの脳内分析で判明=理化学研究所

2007年04月23日 | 脳、神経
 自分の選んだ答えが「正解」か「不正解」かを認識する際には、脳内でそれぞれ別の神経細胞が反応していることを、理化学研究所(埼玉県和光市)などの研究グループがサルを使った実験で突き止め、23日、米科学誌ネイチャーニューロサイエンス(電子版)に発表した。

 実験ではまず、サルに「○」のマークを見せてから水を飲ませることを繰り返して、正解のマークとして「○」を覚え込ませた。

 その上で、2本のレバーのうち片方を押した時だけ「○」が見える装置を繰り返し操作させ、その際にサルの頭に細い電極を刺して、大脳の最前部に位置する「前頭前野」と呼ばれる領域の神経細胞の活動を調べた。その結果、正解のレバーを押して「○」が出た時と、ほかのマークが出た時で、反応する細胞群が別であることが分かった。

[共同通信 / 2007年04月23日]
http://www.47news.jp/CN/200704/CN2007042201000719.html


【「やったー」細胞と「しまった」細胞 脳に別々で存在か=理化学研究所】

 脳には自分の行動が正しかったときに働く細胞と、間違ったときに働く細胞が、それぞれ別々に存在しているらしいことを、理化学研究所のグループがサルの実験で見つけた。

将来、効果的な学習法の開発につながるかもしれないという。米科学誌ネイチャー・ニューロサイエンスで報告した。

 テレビ画面でサルに正解の図形を覚えさせたあと、左右どちらのレバーが正解か当てさせてみた。最初の1回は当てずっぽうでも、そこで表示された図形を見て選択が正しかっ

たか誤っていたかを知って、2回目以降は正しいレバーを押すようになった。

 この間、おでこの内側にあって、行動の柔軟性と関係が深いとされる大脳の前頭前野内側部での神経細胞の活動を記録した。調べた約350個の神経細胞のうち、16個は正

解が表示できたとき活発に活動し、別の32個は不正解だったときに活動していた。

 正解だけに反応する神経細胞は、左右どちらが正解かわかった後にはあまり反応しなくなった。正解がわからない課題を与えることが、脳細胞を活発に働かせるポイントらしい。

 理研脳科学総合研究センターの松元健二研究員は「学習効果を高めるには正解をほめるだけでなく、間違いを指摘することも大切かも知れない」といっている。

[朝日新聞 / 2007年05月07日]
http://www.asahi.com/science/update/0507/TKY200705070084.html


理化学研究所 プレスリリース 2007.04.23
 正解/不正解から学ぶ脳のメカニズムを発見
 - 脳科学の教育への応用に新たな手がかり -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070423/index.html
(リリース本文)
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070423/detail.html

赤ワインで眼病予防期待、ポリフェノールが目の血管拡張=旭川医科大学

2007年04月21日 | 食品・栄養
 赤ワインなどに含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールに、目の血管を拡張させる機能があることを、旭川医大などの研究チームが突き止め、大阪市で開催中の日本眼科学会で20日発表した。

 成人の失明原因でトップを占める糖尿病網膜症をはじめ、血流障害による病気の予防効果が期待される。

 研究チームは、がんの抑制効果が報告されているレスベラトロールに着目。人が赤ワイン3~4杯を飲んだ場合の血中濃度に相当するレスベラトロール溶液を作り、ブタの網膜血管を5分間浸して血管の直径を測定したところ、通常の状態から約1・6倍にまで拡張した。

 同様の効果は、血中のコレステロールを低下させる「スタチン」にもあるが、スタチンが血管内皮に作用するのに対し、レスベラトロールは、血管内皮とその外側にある平滑筋(へいかつきん)の両方に作用し血管を広げていた。

 研究チームの長岡泰司・同大講師(眼生理学)は「人間で同様の効果が得られるかどうか確かめ、目の病気を予防する薬の開発につなげたい」と話している。


[読売新聞 / 2007年04月21日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070421i202.htm

マウス受精卵の分割経緯 映像で解明=京都大学

2007年04月20日 | 可視化技術
 マウスの受精卵で、細胞が分割して片側(胚(はい)側)に集まるときの動きを、京都大医学研究科の藤森俊彦助教、鍋島陽一教授らのグループが立体映像を用いて解明し、米科学誌サイエンス電子版で19日に発表した。

 細胞の核を光らせたマウスの受精卵を用いて、最初の細胞の分割から子宮内膜に着床する前の胚盤胞になるまでを、顕微鏡画像をデジタル処理して立体的に観察、個々の細胞の動きを追った。

 分割した細胞は、かきまぜられるようにバラバラに動きながら片側に集まり、カエルの受精卵とは違って、分割初期の位置だけでは将来の細胞の役割が決まらないことが分かった。また、細胞を包む透明体のゆがみによって、細胞の偏りの軸が生じることも分かった。

 藤森助教は「カエルは未受精卵の段階で細胞質に偏りがあり、精子が進入する位置から背と腹が決まるが、マウスはもっとゆっくりと体の軸を決めているようだ。栄養を外から取るという進化の結果とも考えられ、他の哺乳(ほにゅう)類でも確かめたい」と話している。

(写真:胚の中の細胞を全て追跡するシステム。全ての細胞の核を緑色の蛍光タンパク質で標識したトランスジェニック(=遺伝子組み換え)マウスを作製し、その胚を顕微鏡下で連続的に観察した。これらの画像を用いて、全ての細胞の挙動を追跡した。これによって、胚盤胞のE-Ab軸は初期の細胞系譜によらず決まることが示唆された。)(京都大学ニュースリリースより)

[京都新聞 / 2007年04月20日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007042000019&genre=G1&area=K10

京都大学 ニュースリリース
「胚盤胞の軸は初期の細胞系譜によらず、透明帯の形に沿うように決められる」
http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/documents/070420_1.htm

海外新薬、1年半で承認・厚労省、5カ年計画

2007年04月19日 | 創薬
 厚生労働省は患者の要望が強い新薬などを使いやすくする仕組みを整える。

 使用の承認に必要な治験(臨床試験)を製薬会社が素早くできるよう、複数の国で同時に効能を検証する「国際共同治験」を推進。海外で開発された薬などの承認までの期間を現在の約4年から1年半程度に短縮する。患者の選択肢を増やし、国内医薬品の質の向上につなげる。
 厚労省は月内に詳細を詰め、医薬品の質の向上に関する5カ年計画をまとめる方針だ。日本は新薬承認に時間がかかり、欧米で一般に使える薬が国内では使えない「ドラッグラグ」と呼ばれる問題が深刻化している。


[日本経済新聞 NIKKEI NET / 2007年04月19日]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2007041810180h1

脳:明暗の分布で質感 NTT研究所、物の質感とらえる仕組み解明=NTT、マサチューセッツ工科大学

2007年04月19日 | 心のしくみ
 人間が物の質感をとらえる仕組みを、NTTコミュニケーション科学基礎研究所(神奈川県厚木市)と米マサチューセッツ工科大の共同研究チームが明らかにした。脳や網膜は、画像の中で明るい部分と暗い部分がどう分布しているかによって、表面の光沢や明るさ、透明感といった質感を感じているという。この発見を応用すれば、簡単な画像処理で、質感をリアルに表現したり、自在に操ることができるという。18日付の英科学誌ネイチャーで発表した。

 同研究所の本吉勇・研究主任らは、物の表面に凹凸があり、明るさや光沢が異なるさまざまな画像で明暗の分布を調べた。すると、光沢が強く全体に暗い画像では、明暗の分布を示すグラフが明るい側に広がっていることが分かった。逆に分布の広がりが小さい場合には、光沢を感じにくくなる。網膜や脳内の視覚神経組織には、それぞれ明るい点や暗い点に反応する2種類の神経細胞(ニューロン)がある。研究チームは、これらの反応の強さのバランスによって、質感を知覚できるとみている。

 本吉さんは「人間が質感を感じ取る仕組みは、意外に簡単だと分かった。この仕組みを応用すれば、低コストかつ高速で画像や映像の質感を変えられる」と話している。【須田桃子】

[毎日新聞 / 2007年04月19日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070419ddm002040017000c.html

日本電信電話株式会社 NTT先端技術総合研究所 ニュースリリース
http://www.ntt.co.jp/news/news07/0704/070418a.html

NTT物性科学基礎研究所 元吉勇さんのページ
http://www.brl.ntt.co.jp/people/imotoyoshi/material-j.htm

「花咲かじいさんの灰」を特定=奈良先端科学技術大学院大学、マックス・プランク研究所

2007年04月19日 | 生きもの色々
 植物に花を咲かせる「開花ホルモン」を、日本、ドイツの研究グループがイネとシロイヌナズナでそれぞれ特定することに成功した。開花ホルモンは、いわば“花咲かじいさんの灰”にあたる物質で、70年にわたって多くの研究者が探し求めてきた。ともに19日付の米科学誌サイエンス電子版に発表される。

 開花ホルモンの候補としては、日照時間が短くなると花をつけるイネなどでは「Hd3a」、日照時間が長くなると花をつけるシロイヌナズナなどでは「FT」というたんぱく質が見つかっている。しかし、日光を受ける葉から、花芽(かが)ができる茎の先に実際にどんな物質が伝わっているのかわかっていなかった。

 奈良先端科学技術大学院大の島本功教授らは、イネの遺伝子の一部を変えてHd3aたんぱく質に目印をつけ、イネの中でどう動いているか追跡したところ、葉で作られ、茎を通って茎の先端へ運ばれている様子が観察できた。このことから島本教授は、このたんぱく質が開花ホルモンであると結論づけた。

 また、ドイツのマックス・プランク研究所のグループも、FTたんぱく質が葉で生成され、茎の先端まで移動したとする研究を発表。Hd3aとFTがよく似た構造であることから、多くの植物に共通の開花ホルモンが存在する可能性も示された。

 開花ホルモンは、旧ソ連の植物生理学者チャイラヒャンが37年にその存在を仮定し、「フロリゲン」と命名。島本教授は「フロリゲン本体が特定できたことで、開花を自由に調節できる夢の薬剤の開発につながるのではないか」と話している。

[朝日新聞 / 2007年04月19日]
http://www.asahi.com/science/update/0419/TKY200704190110.html

C型肝炎ウイルスを抑制する食品成分=岡山大学

2007年04月19日 | 食品・栄養
リノール酸、βカロチン、ビタミンD2
 食品に含まれるリノール酸やβ(ベータ)カロチン、ビタミンD2に、C型肝炎ウイルス(HCV)が肝細胞内で増殖するのを抑える効果があることを、岡山大の池田正徳・准教授(ウイルス学)と矢野雅彦研究員(肝臓病学)らが見つけ、米医学専門誌に発表した。

 グループは、HCVの遺伝子(RNA)が増えやすくしたヒトの肝がん細胞株に、ビタミンやミネラルなど46種類の食品成分を別々に加え、遺伝子の量が減るかどうかを調べた。その結果、リノール酸など3成分が、HCV遺伝子の数を大幅に減らすことを確認した。インターフェロンを併用すると、効果が高まった。

 HCV感染の治療は、インターフェロンと抗ウイルス薬リバビリンの併用が主流だが、貧血などの副作用があるため、服用できない高齢者などに対する治療法が求められている。

[読売新聞 / 2007年04月19日]
http://osaka.yomiuri.co.jp/eco_news/20070419ke03.htm

肥満と糖尿病発症のDNA差異発見=オックスフォード大学

2007年04月13日 | 徒然に
 肥満と糖尿病のなりやすさに関係するDNAの微妙な違い(SNP=スニップ)を英オックスフォード大などのグループが見つけ、13日付の米科学誌サイエンス(電子版)で発表した。新たな治療法につながる可能性がある。

 SNPは、DNAを構成する塩基の配列が1カ所だけ異なっていること。グループは国際協力で見つかってきた49万カ所のSNPについて、糖尿病患者2000人と患者でない3000人とで頻度に差があるものを探した。

 その結果、患者では非患者に比べて、16番染色体にあるFTOと呼ばれる遺伝子で、塩基配列の1カ所がT(チミン)ではなくA(アデニン)の人の割合が高くなっていることがわかった。

 父母からいずれもAを受け継いだ人(研究対象の欧州白人では約16%)は、いずれもTの人に比べ、糖尿病の9割以上を占める2型糖尿病になるリスクが約5割高くなっていた。

 欧州の白人約3万8000人を対象に、体重(キロ)を身長(メートル)で2回割る「BMI」という指標を使って、2型糖尿病になりやすい肥満との関係も調べた。ともにAの人はともにTの人に比べ、平均体重が3キロ重く、BMIが30以上の肥満になるリスクが約7割高いことがわかった。

 欧州では父母のどちらか、あるいは双方からAを受け継いだ人は4~5割程度だが、日本人では1割程度とみられる。FTO遺伝子の働きはまだわかっていない。

 板倉光夫・徳島大ゲノム機能研究センター長は「極めて大規模な解析で注目される。肥満や糖尿病の仕組み解明や治療法の開発につながる可能性がある」といっている。

[朝日新聞 / 2007年04月13日]
http://www.asahi.com/science/update/0413/TKY200704130207.html




科学は、いったい誰のためのものなのでしょうか?
最新のDNAチップ、高精度な試薬と分析器械、高速処理ロボットのスクリーニング・マシーン、清潔で大規模な実験室、5,000人の被験者からのサンプル、490,000か所のSNPの分析‥。
これは膨大な予算が無ければ出来ない事業だと思います。

ただの貧乏庶民の実感として、こんな凄いお金をかけた物量作戦を見ると、なんか納得できない思いがします。
自己矛盾していますが。


ラットは今日も、きみのために頑張っています。
今、この地球上に生きているすべての、きみのために。
そう、信じているんですけれどね。

富士フイルム、ナノ技術でがん治療剤――5年以内に実用化へ

2007年04月12日 | 創薬
 富士フイルムはフィルム製造で培ったナノテクノロジー(超微細技術)を活用し、抗がん剤の効き目を長くする塗り薬技術を開発した。動物実験で安全性を確認したうえで2年後に米国で臨床試験を始め、5年以内の実用化をめざす。同社の医薬品参入の第一弾となる見通しで、医療検査用の画像システムや内視鏡などを中心にした医療事業分野を中核的な事業の柱の一つに育てていく方針だ。
 塗り薬にはフィルムの主材料であるゼラチンを使う。遺伝子組み換えを使った微生物(酵母)を活用して体になじみやすいゼラチンを作ることに成功、これをがん治療用に活用する。牛由来の一般的なゼラチンと異なり、牛海綿状脳症(BSE)など感染症の恐れがない。

 ゼラチンを直径約100ナノ(ナノは10億分の1)メートルの微粒子にして抗がん剤を染み込ませる。肌に塗ると薬の成分が徐々にしみ出て効果が持続する。点滴や注射を繰り返す必要がなく、体の表面に近い部位にできたがんの場合は患部に直接抗がん剤が届く。全身に抗がん剤が行き渡る注射治療に比べて副作用が軽くなる可能性があるという。


[日本経済新聞 NIKKEI NET / 2007年04月12日]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2007041110982h1

富士フィルム株式会社 プレスリリース
http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/article/ffpr00012.html

肝臓がん:進行の仕組み解明=京都大学

2007年04月12日 | 癌、腫瘍
 C型肝炎ウイルス(HCV)が引き起こした慢性肝炎が肝臓がんに進行する仕組みを、人やマウスの細胞を用いた実験で京都大の丸澤宏之助教(消化器内科)らのグループが解明した。HCVに感染することにより、本来は免疫細胞にしか存在しない遺伝子編集酵素の一種「AID」が肝細胞に発現し、がんにかかわる遺伝子異常を継続的に引き起こすことを突き止めた。14日始まる米国がん学会年次総会で発表する。

 国内のHCV感染者は約200万人といわれる。HCVが引き起こす慢性肝炎は肝硬変を経て、肝がんに進行することが分かっており、肝がんの約4分の3はHCV感染が原因。HCVが未発見で対策が不十分だった時代に感染した人が、10~40年後に発がんする例が多い。グループが行った培養細胞の実験などから、HCVに感染すると肝細胞内に発現したAIDにより、がんに関連するさまざまな遺伝子に変異が生じることが分かった。

[毎日新聞 / 2007年04月12日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070412ddm012040161000c.html

京都大学大学院医学研究科 消化器内科学講座
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~gastro/gastro.html