ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

ほめられる子は思いやりも育つ…科学の目が初めて証明=筑波大学

2009年02月28日 | 心のしくみ
 乳幼児期に親からよくほめられる子供は、他人を思いやる気持ちなどの社会適応力が高くなることが、科学技術振興機構の長期追跡調査で明らかになった。育児で「ほめる」ことの重要性が、科学的に証明されたのは初めて。3月7日に東京都内で開かれるシンポジウムで発表する。

 筑波大の安梅勅江(あんめときえ)教授(発達保健学)らの研究チームは、2005~08年、大阪府と三重県の計約400人の赤ちゃんに対し、生後4か月、9か月、1歳半、2歳半の時点で成長の度合いを調査した。調査は親へのアンケートや親子の行動観察などを通して実施。自ら親に働きかける「主体性」や相手の様子に応じて行動する「共感性」など、5分野25項目で評価した。

 その結果、生後4~9か月時点で父母が「育児でほめることは大切」と考えている場合、その子供の社会適応力は1歳半時点で明らかに高くなった。また、1歳半~2歳半の子供に積み木遊びを5分間させたとき、うまく出来た子供をほめる行動をとった親は半数程度いたが、その子供の適応力も高いことも分かった。

 調査では、〈1〉規則的な睡眠習慣が取れている〈2〉母親の育児ストレスが少ない〈3〉親子で一緒に本を読んだり買い物をしたりする――ことも、子供の適応力の発達に結びつくことが示された。

[読売新聞 2009年02月28日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090228-OYT1T00545.htm

膵臓:インスリン分泌細胞 マウスで増殖に成功=東京慈恵会医科大学

2009年02月27日 | 再生医療
 糖尿病のマウスの膵臓(すいぞう)に特定の遺伝子を導入し、血糖値を調節するホルモン「インスリン」を分泌するベータ細胞を大幅に増殖させることに、東京慈恵会医科大が成功した。マウスの血糖値は約4カ月で正常値に戻り、寿命も健康なマウスと変わらなかった。研究チームは「ベータ細胞が少しでも残っている糖尿病患者の有効な治療法につながる可能性が高い」と話している。3月5日から東京都内で開かれる日本再生医療学会で発表する。

 研究チームは、細胞分裂の周期を早める働きを持つ遺伝子を組み込んだウイルスを、生後10週の糖尿病マウスの膵臓に直接注射した。注射前に1デシリットル当たり約400ミリグラムあった血糖値が、16週間後には約200ミリグラムと、マウスの正常値近くまで下がった。ベータ細胞の数を調べたところ、注射前の2.5倍に増えていた。

 実験で使ったウイルスは、遺伝子導入時にだけ働くタイプ。使った遺伝子もベータ細胞でしか働かないことが確認され、ウイルスや導入した遺伝子により、がんになる心配は少ないという。

 糖尿病は、ベータ細胞の数が減ったり働きが落ち、インスリンの分泌量が少なくなり、血糖値が高い状態が続くようになる。東京慈恵会医科大の佐々木敬教授(糖尿病・代謝・内分泌内科)は「遺伝子導入という手法を使うが、極めて高い効率でベータ細胞が再生された。今後、大型動物の実験に取り組み、臨床応用を目指したい」と話している。【永山悦子】

[毎日新聞 2009年02月27日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20090227k0000m040147000c.html

脳の細胞が作られる仕組み解明=奈良先端科学技術大学院大学

2009年02月18日 | 脳、神経
 ほ乳類の脳の細胞が順番に作られる際の詳しいメカニズムを、奈良先端科学技術大学院大の中島欽一教授(神経科学)らが解明し、17日発表した。脳の疾患治療で細胞供給の効率化への応用が期待される研究成果という。

 脳内には情報を伝達して記憶や学習に重要な役割を果たす神経細胞のニューロンや、その働きを助けるとされる細胞のアストロサイトが存在。発達中の脳内では、ニューロン、アストロサイトの順番で細胞が生成する。

 中島教授らは、この「順番付け」を解明するためにマウス実験などを実施。その結果、神経幹細胞から発生したニューロンが残りの神経幹細胞のタンパク質を活性化することで、幹細胞が持つアストロサイトを生み出すための遺伝子の作用を制御している「メチル化」という化学作用を止めて、アストロサイトを生成していることが分かったという。

 脳内細胞が作られる順番付けの仕組みが詳細に解明されたことで、ほ乳類の複雑な脳の発生状況について理解が深まるとともに、脳梗塞(こうそく)などの脳疾患治療時に、細胞供給の効率向上に生かせる可能性があるという。

[msn産経ニュース 2009年02月18日]
http://sankei.jp.msn.com/science/science/090218/scn0902180205000-n1.htm

高血圧治療剤に過去の嫌な記憶を薄める効果も=アムステルダム大学

2009年02月16日 | 心のしくみ
 [ロンドン 15日 ロイター]
 オランダの心理学者らは15日、高血圧治療に広く使用されている薬によって、嫌な記憶を消去できる可能性があるとの研究結果を医学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」に発表した。将来的に、不安障害や恐怖症などの治療に活用できるかもしれないという。

 アムステルダム大学の心理学者、Merel Kindt氏らの研究によると、健康な治験者が高血圧治療剤として知られるプロプラノロールを服用したところ、クモに対する恐怖の記憶が減退したという。

 これまでの動物実験では、恐怖の記憶は思い出す際に変化することがあるという。研究者らは、脳内の神経細胞に働きかけるプロプラノロールにも、記憶を薄める効果があると話している。

[ロイター 2009年02月16日]
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-36498120090216

iPS細胞で心筋梗塞改善=大阪大学

2009年02月13日 | 再生医療
 大阪大学の澤芳樹教授らは、様々な細胞や組織に育つ能力を持つ新型万能細胞(iPS細胞)を活用し、心筋梗塞(こうそく)のマウスの病状を改善することに世界で初めて成功した。マウスのiPS細胞で心臓の細胞を作り、弱った心臓に張った。ヒトのiPS細胞でも同様の効果があれば、患者が多い心筋梗塞の新たな治療法になる。

 3月5日から東京で始まる日本再生医療学会で発表する。澤教授と三木健嗣研究員らはまず、京都大学の山中伸弥教授が開発した手法でマウスの細胞からiPS細胞を作製。培養方法などを工夫し、99%以上の高率でiPS細胞を心筋細胞に変化させた。(18:19)

[日経ネット NIKKEI NET 2009年02月13日]
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090213AT2G1200K13022009.html

エボラ出血熱:ワクチン開発…マウス実験で確認=東京大医科学研究

2009年02月13日 | 医療技術
 感染者の過半数が死ぬエボラ出血熱のワクチンを、河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)らが開発した。マウス実験で効果を確認した。これまで対処しようのなかった感染症だが、拡大を防ぐ可能性が出てきた。米専門誌ジャーナル・オブ・バイロロジー電子版で発表した。

 研究チームは昨年、ウイルスが自ら増殖するのを担う遺伝子を除去するのに成功した。接種しても重篤化を避けられる可能性が出てきたため、このウイルスをワクチンとして使うことができるのかをマウスで試した。

 ワクチンを接種せずに感染させたマウス10匹は6日後にすべて死んだが、接種したマウス15匹は、健康なマウス3匹と同じように2週間以上生き続けた。

 エボラ出血熱は1970年代からアフリカ中央部で発生した。発熱や吐血などの症状が表れ、致死率は65%と高い。日本での感染報告はない。

 ウイルスは他の生物に寄生して生存するが、エボラ出血熱のウイルスは共存している生物も不明だ。研究は遅れ、ワクチンや効果的な治療法はなかった。河岡教授は「医療従事者や研究者がワクチンを必要としている。今後サルで実験し、早期実用化を目指したい」と話す。【関東晋慈】

[毎日新聞 2009年02月13日]
http://mainichi.jp/select/today/news/20090213k0000m040138000c.html

糖尿病根本治療に道 血糖下げる細胞の源を発見=九州大学

2009年02月13日 | 遺伝子組替マウス
血糖値を下げるインスリンを膵臓(すいぞう)内で分泌する「ベータ細胞」の源となる細胞を、九州大大学院医学研究院の稲田明理(あかり)特任准教授らのグループがマウスで突き止め、糖尿病の新たな治療法に道を開く発見と注目されている。

 糖尿病では、ベータ細胞が減少してインスリン分泌が減り、血糖値を調節できなくなる。このため、ベータ細胞を再生できれば根本的な治療になると考えられている。

 ベータ細胞の供給源を探っていた同グループは、膵液を運ぶ膵管の細胞に着目。マウスを使い、遺伝子操作で膵管細胞に印を付けて追跡し、この細胞の一部がベータ細胞へ分化したことを確認した。

 別のマウスの実験では、損傷した膵臓の組織が再生する際、膵管細胞からベータ細胞が供給されることも分かった。

 稲田特任准教授は「人体でも膵管細胞を刺激してベータ細胞の増加を促すことができれば、新たな治療法につながる可能性がある。今後はベータ細胞に分化する仕組みの研究が期待される」と話している。

 ベータ細胞の起源をめぐっては、米ハーバード大のグループがベータ細胞の分裂以外にないとの説を主張していた。稲田特任准教授は、同大に在職中の2002年から研究に取り組み、この説を覆した。成果は昨年12月、米科学アカデミー紀要に掲載された。

 厚生労働省の「2007年国民健康・栄養調査」によると、成人で糖尿病の患者や罹患(りかん)が疑われる人は、推計2210万人で、4・7人に1人の計算。

[スポニチSponichiAnnex 2009年02月13日]
http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20090213015.html

「他人の不幸喜ぶ」「ねたむ」脳の場所特定=放射線医学総合研究所

2009年02月12日 | 心のしくみ
 人をねたむ感情と人の不幸を喜ぶ感情をつかさどる脳の場所がそれぞれ特定され、二つの感情は密接に関係していた――。物語を読ませて被験者の感情を引き起こし、機能的磁気共鳴断層撮影(fMRI)で調べた。放射線医学総合研究所などのグループが、13日付の米科学誌サイエンスに発表する。

 高橋英彦主任研究員らは、大学4年の男女19人に感情を引き起こす物語を読んでもらった。物語には、被験者に加え、ABCという3人の学生が登場する。被験者と同性のAは、進路や人生の目標がほぼ一緒のライバルだが、成績優秀で裕福、異性にもてる。Bは異性で優秀だが、進路や目標は重なっていない。Cは異性で普通の成績で進路は関係ないという設定だ。

 物語を読んだ後に、学生ABCに対するねたみの感情を6段階で答えてもらい、脳の血流の変化をみた。ねたみの感情はA、B、Cの順に高く、身体的な痛みや葛藤(かっとう)などを処理する脳の前部帯状回が働いていることがわかった。

 次に、最もねたましいAとねたましくないCに、不幸が起こる続編を提示。Cには起きなかったうれしい気持ちがAには中程度示された。このとき、脳の線条体が活発に動いた。この領域は、社会的、金銭的な報酬を得たときに活動することがわかっている。

 また、ねたみにかかわる脳の領域の活動が高い人ほど、他人の不幸を喜ぶ領域で反応が強く出た。

 柿木隆介・生理学研究所教授は「ねたみと他人の不幸に対する自己満足は、深い関係があることを示した興味深い結果だ」と話している。(佐藤久恵)

[朝日新聞 2009年02月12日]
http://www.asahi.com/science/update/0212/TKY200902120302.html

統合失調症の治療に道 ラットの脳、薬剤で正常に=放射線医学総合研究所

2009年02月11日 | 可視化技術
 幻覚や妄想を伴う精神疾患「統合失調症」の治療薬開発や発症要因の解明につながる脳の研究成果を、放射線医学総合研究所(千葉市稲毛区)の樋口真人博士(40)らのチームが、十一日付の米科学誌に発表した。覚せい剤を与えて統合失調症を模したラットに特定の薬剤を投与すると、脳内が正常な状態に戻ることを、陽電子断層撮影(PET)で画像化することに成功。同種の薬剤が統合失調症の治療薬として利用できる可能性や、この画像化技術が診断に応用できる道を示した。

 統合失調症の発症メカニズムは未解明だが、脳内での神経伝達物質「ドーパミン」の異常放出が原因の一つとみられている。

 ラットに覚せい剤を投与すると、統合失調症に似た異常行動を示し、脳内のドーパミン放出は増加する。研究チームは、この状態のラットに、脳内の「グルタミン酸神経系」を阻害する薬剤を与えることで、ドーパミンの異常放出を完全に防げることをPETで確認。ドーパミンを出す神経系を、グルタミン酸神経系が制御していることが分かった。

 動物実験では麻酔を使うことが多いため、測定結果に影響が出る可能性が高いが、今回は麻酔をせずにPET測定に成功。より人に近い状態で検証できたため、診断への応用も期待できるという。

 同チームで実験を行った徳永正希博士(37)は「治療薬開発や診断に役立てたい」と展望を語った。

[ちばとぴ千葉日報 2009年02月11日]
http://www.chibanippo.co.jp/news/chiba/society_kiji.php?i=nesp1234327147

「慢性痛」解明へ一歩 ラットで人為的に発症=愛知医科大学

2009年02月10日 | ラット
 愛知医科大(愛知県長久手町)の研究チームが、けがや病気が治った後も痛みが続く「慢性痛」を、ラットで人為的に発症させることに成功した。より実態に近い実験モデルを開発したことで、謎の多い慢性痛の発症メカニズム解明へ前進が期待できそうだ。7月の国際生理学会世界大会(京都市)で発表する。

 研究チームは、2003年に日本で初めて開設された「痛み学講座」の熊沢孝朗教授ら。これまで人為的に慢性痛を発症させるには、神経を直接傷つけていた。しかし、多くの慢性痛は、直接傷つかなくても発症し、メカニズムは謎。現在の研究の焦点となっている。

 ラットの足に炎症物質「リポポリサッカライド(LPS)」を注入。1日後に痛みを起こす濃い食塩水を注入すると、神経を傷つけず慢性痛を起こすことができた。さらに、LPSの濃度が低く炎症が弱い方が慢性痛になり、高濃度のLPSで炎症が強い方が慢性痛を発症しないことも分かった。

 LPS、食塩水それぞれ単独では、急性痛しか起こらない。なぜ組み合わせると慢性痛が起きるかは不明だが、濃度の組み合わせやタイミングが合うと異常な痛み信号が出続けてしまい、発症につながるとみられる。熊沢教授は「この実験モデルで、発症前の(炎症などの)状態がポイントであることが分かった。さらに解析を進めたい」と話した。

 九州大医学研究院の吉村恵教授(神経生理学)の話 慢性痛は、神経損傷ではなく筋肉からくる痛みのケースが多い。実態に近いモデルは極めて珍しく、治療法や薬物開発に有効な研究成果だ。

  【慢性痛】  急性痛が治まった後、痛覚神経系が何らかの原因で“誤作動”し続けている状態。原因である傷病が治っても痛みが続き、鎮痛薬などが効かない。急性痛が長引いている状態とは違い、決定的な治療法、治療薬はない。研究先進国のアメリカでは、患者数は約7500万人と推計されている。

[中日新聞 2009年02月08日]
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2009020802000153.html

乳がん抑制するタンパク質 新治療薬の開発に期待=筑波大学

2009年02月09日 | 癌、腫瘍
 筑波大先端学際領域研究センターの柳沢純教授らのグループは「CHIP」と呼ばれるタンパク質が乳がんの増殖と転移を抑制していることを突き止め、8日付の英科学誌ネイチャー・セル・バイオロジー電子版に発表した。

 柳沢教授は「このタンパク質の量を増やしたり活性化させたりする技術を開発すれば、乳がんの転移を防ぐ新しい治療薬の開発につながる」と期待している。


 CHIPはユビキチンリガーゼと呼ばれる酵素の仲間。これまで特定のタンパク質の分解を促進する機能は知られていた。グループは患者の乳がん組織の中でCHIPが少ないほど、がんが悪化することを確認。ヒトの乳がん細胞内のCHIPの量を増減させてマウスに移植する実験で、CHIPの量を増やした乳がん細胞は腫瘍(しゅよう)の形成も転移も大幅に抑制されることを突き止めた。

[msn産経ニュース 2009年02月09日]
http://sankei.jp.msn.com/science/science/090209/scn0902090915000-n1.htm

骨の破壊を薬で抑制、新治療法に期待=大阪大学、アメリカ国立衛生学研究所

2009年02月09日 | 創薬
 古い骨を破壊する「破骨細胞」が骨の表面にくっつくのを薬剤で抑えると、骨粗しょう症の症状を緩和できることを、大阪大や米国のチームがマウス実験で突き止め、8日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。

 破骨細胞は古い骨が新しい骨に置き換わるサイクルの一端を担うが、働き過ぎると骨密度の低下や関節リウマチを引き起こす。高齢化に伴い国内には1000万人を超える骨粗しょう症患者がいるとみられ、阪大の石井優准教授は「新たな治療法の開発につながりそうだ」と話している。

 チームは、マウスの骨の内部を特殊顕微鏡で観察。血中の脂質の一種が、骨に付いた破骨細胞を引き離す役割を果たしているのを発見した。より強力に破骨細胞を骨から引き離す薬剤を骨粗しょう症のマウスに投与すると、骨の破壊は投与しない場合の4割程度にとどまった。

[共同通信47NEWS 2009年02月09日]
http://www.47news.jp/CN/200902/CN2009020801000374.html

「乳がん転移を抑制」たんぱく質発見=筑波大学

2009年02月09日 | 癌、腫瘍
細胞に含まれる「CHIP」というたんぱく質が、乳がんの増殖や転移を強く抑制することを、筑波大の研究チームが突き止めた。乳がんの転移に関連するたんぱく質が見つかるのは初めて。

 9日英科学誌ネイチャー・セルバイオロジー電子版に掲載された。

 乳がんの死因の9割は、他の臓器への転移。これまで乳がんの増殖を防ぐ、抗エストロゲン剤やハーセプチンといった抗がん剤が幅広く使われているが、転移を防ぐ治療法はない。

 研究チームは、細胞内で不要なたんぱく質に標識をつける役割を持つたんぱく質の一種「CHIP」に着目。この標識で別のたんぱく質が認識し、分解するが、乳がん患者を調べたところ、悪性度が高い乳がんほど、CHIPの量が減少していることを発見した。

 人間の乳がん細胞のCHIPの量を減らして、マウスに移植したところ、がん細胞は大きな塊を作り、盛んに他臓器に転移した。対照的に、CHIPの量を増加させた乳がんだと、乳がんの増殖が抑制され、転移率はCHIPが少ないがんの1割程度に激減した。

 チームの柳沢純教授は「CHIPは乳がんの転移や悪化を防ぐ働きがある。これを活性化する分子を見つければ、乳がんの転移を防ぐ効果的な新薬開発につながる」と話している。

[読売新聞 2009年02月09日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090209-OYT1T00429.htm

がん:抑制遺伝子を特定=国立がんセンター

2009年02月06日 | 癌、腫瘍
 正常な細胞ががん細胞に変わるのを防ぐ遺伝子を、国立がんセンター研究所の大木理恵子研究員(分子生物学)らが特定した。さまざまながんの治療や診断の開発に役立つ可能性がある。6日付の米科学誌セルで発表した。

 すべての正常細胞は遺伝子「Akt」の働きが異常になると、がん化することが知られている。通常、がん抑制遺伝子「p53」が司令塔となって、Aktががん化するのを防いでいるが、指示を受けて働く遺伝子の正体は謎だった。

 研究チームは、がん細胞が死ぬことなく異常に増殖することから、細胞死を引き起こす遺伝子「PHLDA3」ががん化と関係があるのではないかと注目。ヒトの肺がん細胞を調べたところ、この遺伝子が欠けていることを突き止めた。Akt遺伝子の働きも異常に活発化していたことも確認した。【江口一】

[毎日新聞 2009年02月06日]
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/02/06/20090206ddm002040077000c.html

タンパク質が時差ぼけ修正=名古屋大学

2009年02月05日 | 蛋白質
 試験管の中で再現されたバクテリアの「生物時計」が時差ぼけを修正する機能があることを、名古屋大大学院理学研究科の大学院生吉田拓矢さん、村山依子、伊藤浩史両研究員らのグループが突き止めた。生物時計を構成するタンパク質が外界の温度の変化を感知し調整していた。人間を含む生物全般の生物時計の仕組みの解明が期待され、成果は米科学誌に掲載された。

 生物は睡眠と目覚めを規則正しく行う「生物時計」を持っている。同研究科の近藤孝男教授らは、原核生物のシアノバクテリアの3種のタンパク質KaiA、B、Cが24時間周期で、リン酸の結合・分離を繰り返すことを証明。これら3つを時計タンパク質とし、リン酸を供給するATP(アデノシン三リン酸)とともに試験管内で生物時計をつくることに成功していた。

 これまで時計タンパク質には、光や温度の変化を感じ取るセンサーはなく、ずれを修正する能力はないと考えられていた。

 グループは、リン酸の結合・分離のタイミングを6時間ずつずらした試験管を4つ準備。昼夜の変化と同じように12時間ごとに気温30度、45度の変化を与えると、4日目ですべての試験管でタイミングが一致するようになった。グループは「時計タンパク質が温度変化を感じ取り、生物時計をリセットしている」と結論づけた。

 近藤教授は「過去の研究でハエの生物時計も温度変化でリセットする機能がある。すべての生物の生物時計に普遍的なメカニズム解明につながる可能性がある」と話している。

[中日新聞 2009年02月05日]
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2009020502000147.html