ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

高脂血症薬、アルツハイマー病のリスク下げる?=ワシントン大学(米国)

2007年08月29日 | 薬理
 コレステロール値を下げる高脂血症治療薬のスタチン系薬剤には、アルツハイマー病になるリスクを下げる効果があるかもしれない。米ワシントン大グループが28日、米医学誌ニューロロジーに発表した。

 グループは認知能力が正常な65~79歳の110人について、死後、脳を調べた。その結果、スタチンを飲んでいた人はそうでない人に比べて、アルツハイマー病患者の脳に特徴的な、細胞の外にたんぱく質がたまる「老人斑」や、細胞の中にたんぱく質がたまる「神経原線維変化」が少なかった。こうした変化が進むと、神経細胞が死に、記憶障害などが起こると考えられている。

 スタチンによる高脂血症改善が、アルツハイマー病発病のリスクを下げるという報告はこれまでもあった。スタチンは近年、血管の炎症を抑える効果が注目されており、高脂血症の予防と炎症抑制がともにアルツハイマー病の予防と関係しているのではないかとグループはみている。

[朝日新聞 / 2007年08月29日]
http://www.asahi.com/life/update/0829/TKY200708290068.html

高脂血症薬、アルツハイマー病のリスク下げる? 米(朝日新聞) - goo ニュース

成人ぜんそく仕組み解明 免疫細胞が悪玉化=兵庫医科大学

2007年08月28日 | 免疫
 成人に多い難治性ぜんそくは、かぜなどによるのどの炎症で免疫細胞の一種が悪玉化し、特殊なアレルギー反応が起きるのが原因とする研究結果を、兵庫医大の中西憲司教授(免疫学)らがマウス実験でまとめ、米科学アカデミー紀要(電子版)に28日、発表した。

 小児ぜんそくはカビやダニなどが原因で起きることが多いが、成人ぜんそくは自分の体が作り出す炎症関連物質が悪さをしているらしい。中西教授は「この物質の働きを弱められれば深刻な症状の軽減につながる」としている。

 佐賀大、大阪大との共同研究。中西教授はマウスののどに毒素を入れて炎症を起こし、反応を分析。炎症部位から出る物質がリンパ球の一種に働きかけて異常な免疫反応を起こし、呼吸困難や気管支炎を招くことを突き止めた。

 こうした免疫反応は繰り返し起きてぜんそく症状が悪化するが、この物質を抑えると症状が治まることも確認した。

 中西教授は「成人ぜんそくが慢性化する仕組みが解明できた。大型動物でも実験したい」としている。

[産経新聞 / 2007年08月28日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070828-00000104-san-soci

C型肝炎ウイルス:肝細胞の脂肪使い増殖、解明=京都大学

2007年08月27日 | 創薬
 C型肝炎ウイルス(HCV)が細胞内で増えていく仕組みを、下遠野邦忠・京都大名誉教授(現慶応大教授)らのチームが初めて解明した。HCVが持つたんぱく質が、細胞内にある脂肪の塊「脂肪滴」を利用して新たなウイルスを作っていることが分かった。肝臓に脂肪が増えるとHCVも増えるため、下遠野名誉教授は「余分な脂肪滴の蓄積を防ぐ薬剤ができれば、HCVが原因の肝疾患の進行を抑制することが期待できる」と話している。

 HCVに感染すると、高い確率で慢性肝炎や肝硬変などになる。肝臓がんで死亡した人の約8割が感染しているといい、感染すると肝臓に脂肪がたまりやすくなる傾向があることも分かっていた。チームは、培養した肝細胞にHCVを感染させ、ウイルス形成の仕組みを調べた。

 HCVは、自らが持つ10種類のウイルスたんぱく質のうち「コア」と呼ばれるたんぱく質が、水と結合しにくい性質を利用して脂肪滴に近づき、脂肪滴の膜に張り付く。他のウイルスたんぱく質はそこに引き寄せられ、脂肪滴の周辺で新たなウイルスを作っていた。ウイルス形成の足場として、脂肪滴が使われているとみられる。

 成果は肝臓脂肪症の仕組みの解明や、コアが脂肪滴に近付くのを防ぐ薬剤の開発など、HCVの新治療につながるという。研究結果は26日(ロンドン時間)、科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」電子版に掲載された。【中野彩子】

[毎日新聞 / 2007年08月27日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070827k0000m040139000c.html


【C型肝炎ウイルス、細胞油滴表面で増殖 京大研が解明】(朝日新聞)

 国内で約200万人が感染しているといわれ、肝臓がんの大きな原因になっているC型肝炎ウイルスが、肝臓の細胞中にたまった油滴(脂肪滴)の表面で増殖していることを、京都大ウイルス研究所の研究グループが解明した。C型肝炎ウイルスが肝細胞に感染すると脂肪肝になりやすく、増えた油滴表面でウイルスが増殖する悪循環が起こるとみている。英科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」の26日付電子版に発表した。

 研究は、今春まで京都大ウイルス研に在籍していた国立遺伝学研究所の宮成悠介・博士研究員と、下遠野(しもとおの)邦忠・慶応大教授(京大名誉教授)らが中心となった。

 研究グループは、肝がん由来の培養細胞にウイルスを感染させ、ウイルスが細胞のどこで増殖するのかを調べた。その結果、油滴の表面には、ウイルスの核をつくり、発がんに関係するとみられるコアたんぱく質や、ウイルスの遺伝子であるリボ核酸(RNA)、その他の関連たんぱく質があることがわかった。

 藤田保健衛生大の臼田信光教授と協力して電子顕微鏡で観察したところ、油滴の表面で感染力のあるウイルスがどんどんつくられていることが確認できた。コアたんぱく質には、ウイルスをつくるだけでなく、細胞内の脂肪を増やす働きがあることもわかった。

 下遠野教授は「油滴の表面にコアたんぱく質がくっつかないようにしたり、細胞内に脂肪が蓄積するのを阻害したりする新しい薬の開発につながる可能性がある」と話している

[朝日新聞2007年08月27日]
http://www.asahi.com/health/news/OSK200708270024.html

C型肝炎ウイルスは中性脂肪で増殖、京大グループが解明(読売新聞) - goo ニュース

左右混線防ぐたんぱく質、脊髄の運動制御神経で発見-がん新治療法開発に期待=理研、京都大学、産総研

2007年08月25日 | 脳、神経
 身体を左右独立して動かせるのは、神経回路が脊髄(せきずい)の左右で分離しているためだが、マウスの成長過程でこの左右「混線」を防ぐたんぱく質が見つかった。理化学研究所と京都大、産業技術総合研究所の研究チームが24日付の米科学誌セルに発表した。両手が同時に動いてしまう人間の遺伝疾患の原因解明のほか、がん細胞に伸びる新生血管を止める新治療法の開発に役立つと期待される。
 理研脳科学総合研究センターの岩里琢治・副チームリーダーらは、ウサギのように両脚をそろえて跳びはねる突然変異のマウスを発見。脊髄を調べると、運動を制御する神経が正中(せいちゅう)線を越えて反対側に伸び、身体を左右独立に動かせない状態だった。遺伝情報を解析すると、2番染色体にある「αキメリン」の遺伝子が壊れていた。

[時事ドットコム / 2007年08月25日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007082500031

ビタミンDを活性化する酵素、微生物から分離・精製=産業技術総合研究所、メルシャン

2007年08月24日 | 食品・栄養
医薬品の高効率生産への貢献期待

 産業技術総合研究所(産総研)とメルシャンは23日、微生物からビタミンDを活性化(水酸化)する酵素を分離・精製することに成功したと発表した。遺伝子組み換え菌による酵素の大量合成も可能で、骨粗しょう症治療薬など医薬品の高効率生産などに役立つと期待される。

 ビタミンDは、前駆体である7-デヒドロコレステロールが皮膚で紫外線に照射されることで合成される。肝臓と腎臓でそれぞれ活性化されることで、骨格や歯の発育促進や、カルシウムとリンの腸管吸収促進、血中カルシウム濃度の調節などの機能を発揮できるようになる。

 活性型ビタミンDは、骨粗しょう症や、副甲状腺機能亢進(こうしん)症、乾癬(かんせん)の治療薬に使用されている。現在使用されている化学合成による活性型ビタミンDの製造は、コレステロールを原料に約20の工程を必要とし、しかも原材料の1%程度しか生産できない。特に化学合成では部位選択的な水酸化反応は容易でなく、高コストの要因となっている。

 最近では、不活性型ビタミンDを活性化ビタミンDへ変換する能力を持つ微生物「シュードノカルディア属放線菌」による製造法が実用化されている。研究グループは、同菌を培養後に破砕して得た細胞内タンパク質の混合物から、ビタミンDを不活性化する能力を持つタンパク質(酵素)を分離した。

 このタンパク質のアミノ酸配列を解析して、その情報をもとに、タンパク質をコードするDNA(デオキシリボ核酸)を分離。この遺伝子を組み込んだ大腸菌を用いて生産した酵素にも、ビタミンDを活性化する能力があることを確認した。

 今後、両者は、実用に向けた研究を進める。研究グループによれば、骨粗しょう症患者は国内に約1000万人、乾癬の患者は世界で1億2500万人と推定されている。

[FujiSankei Business i / 2007年08月24日]
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200708240045a.nwc

「培養皮膚」の製造販売を承認 再生医療、初の商業化=厚生労働省

2007年08月24日 | 徒然に
 厚生労働省の医療機器・体外診断薬部会は23日、愛知県の企業が申請していた「培養皮膚」の製造販売を承認した。重症やけど患者自身の組織から作った皮膚のシートで、患部に移植して治療する。病気やけがで失った体の一部を再生させる目的でヒト細胞や組織を使った製品が国内で承認されるのは初めて。再生医療が国内でも商業化の段階に入った。

 申請していたのは、ベンチャー企業「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング」(J―TEC)。9月末にも開かれる薬事・食品衛生審議会薬事分科会を経て、正式に承認される。

 培養するのは、皮膚の一番外側の「表皮」と呼ばれる部分。損傷していない皮膚組織を1平方センチほど採取して表皮細胞を分離し、マウスの細胞を加えてウシの胎児血清で培養する。約3週間で、8×10センチの表皮シートが十数枚できる。これを病院に出荷し、医師が患部に移植する。

 重症やけど患者は、全国で年間4000~5000人ほど。やけどが大きい場合は自分や家族の皮膚などを移植することが多いが、自分の皮膚は足りなかったり、他人の皮膚だと拒絶反応が起きたりする問題がある。

 培養皮膚はこれらをクリアでき、3日~1週間で自分の皮膚として生着するという。J―TECは皮膚の培養のほか、出荷検査、輸送までを請け負う。販売価格は現時点で1000万円ほどの見込みで、今後、公的医療保険適用の申請を行う。

 同社は99年、名古屋大の技術協力などを得て設立。培養皮膚は02年から国内2施設で臨床試験を行い、04年10月に製造販売を承認申請していた。

 再生医療は90年代後半からベンチャー企業などが製品開発に取り組んできた。しかし、脳外科手術でヒト乾燥硬膜の移植を受けた人がクロイツフェルト・ヤコブ病に感染する被害が社会問題化したことなどから、厚生省(当時)は00年に規制を強化。審査や安全性の確認に時間がかかるようになった。培養皮膚以外では現在、2製品が臨床試験の段階まで進んでいる。

[朝日新聞 / 2007年08月24日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200708230328.html

株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング社 ホームページ
http://www.jpte.co.jp/


J-TEC社のホームページのトップに「再生医療のおはなし」というバナーを見つけました。
子どもでも分かるように、再生医療の仕組みについて解説されています(ルビをふってないので大人が読んであげなければなりませんが)。学校教材に使っても良いのではと思えるほど良く出来ています。そしてこの最後のページは企業理念で締めくくられており、感心しました。
また、倫理基本方針=倫理委員会議事録についてもサイトの分かりやすいところに貼られており、大変好感が持てました。企業所在地は蒲郡=愛知県の南の方、そういえば、以前大きな民間の研究機関があった場所に近いようですね‥、こういう企業に頑張ってとエールを送りたいものです。

バイアグラに恋愛感情を高める働き?=ウィスコンシン大学マディソン校(米国)

2007年08月24日 | 心のしくみ
ワシントン──男性の勃起(ぼっき)不全治療薬「バイアグラ」に、男性の恋愛感情を高める可能性があると、米ウィスコンシン大学マディソン校の研究チームが23日、米生理学会誌に発表した。バイアグラを投与したラットで、恋愛感情に関連するホルモン「オキシトシン」の増加が認められたという。


社会行動を調節するホルモンとして知られる「オキシトシン」には、養育や出産のほか、性的な喜びに関連するとされている。


ウィスコンシン大学のメイヤー・ジャクソン生理学教授が率いる研究チームは、バイアグラの主成分クエン酸シルデナフィルをラットに投与。その結果、オキシトシンのホルモン・レベルが上がったという。


ジャクソン教授は、「バイアグラのような薬には、勃起不全に効く以上の作用があるかもしれない」と話し、「この論文を読んだ人々が、私たちの研究をさらに発展させて、他の動物や人間でも確認してもらいたい」と述べている。

[CNN/ロイター / 2007年08月24日]
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200708240023.html

がん抑制:細胞殺す“スイッチ”たんぱく質特定=千葉大学、大鵬薬品

2007年08月24日 | 癌、腫瘍
 がん抑制遺伝子の一つ「p53」が、異常をきたした細胞を自殺に導く際に不可欠なたんぱく質を、千葉大医学部や大鵬薬品工業などの研究チームが特定した。肺がんや大腸がんなど約半数の種類のがんで、p53が正常に働いていないことが分かっている。このたんぱく質の機能を詳しく調べれば、正常な細胞には影響を与えず、がん細胞だけを自殺させる新薬の開発につながる可能性がある。がん発症のメカニズムの解明にもつながる成果で、24日付の米科学誌「セル」に発表した。

 p53は人間のあらゆる細胞にあるが、通常はあまり働かず眠った状態にある。体内では常に、DNAが損傷を受けるなどして細胞に異常が起きているが、その細胞ではp53が活性化され、細胞を自殺に導く指令を出したり、増殖を止めて損傷修復の時間をかせぐなど、異常な細胞が増えるのを防いでいる。しかし、正常に働かない場合がある理由は謎だった。

 田中知明・千葉大助教(分子腫瘍(しゅよう)学)らは、細胞の中で遺伝子が働く際、DNAと特定のたんぱく質が「クロマチン」と呼ばれる複合体を作ることに着目した。人間の肺がんの細胞のクロマチンを分析し、p53と結合する分子をすべて調べた結果、「CSE1」というたんぱく質を発見。肺がん、大腸がん、乳がんの細胞を使った実験で、p53とCSE1が結合しないと細胞の自殺が起こらないことを確認した。

 田中助教は「CSE1は細胞の生死を左右するスイッチ的な役割を持つたんぱく質と言える。CSE1をうまく利用し、がん細胞だけを効率的に自殺させることができれば、まったく新しいタイプの薬の開発につながる可能性がある」と話している。【西川拓】

[毎日新聞 / 2007年08月24日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070824k0000e040079000c.html

未知の病気39、毎年1種類67年以降に発生=WHO(世界保健機関)報告

2007年08月23日 | 医療技術
【ジュネーブ=大内佐紀】世界保健機関(WHO)は23日、2007年の「世界健康報告」を発表、1967年以降、毎年1種類のペースで未知の病気が発生しており、一世代前には存在しなかった病気が少なくとも39種類見つかったことを明らかにした。

 同報告によれば、これらの新種の病気は、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)や鳥インフルエンザ、エボラ出血熱、エイズウイルス(HIV)など。

 また、同報告はグローバル化に伴い人やモノの移動が激増する中、世界各地で過去5年間、約1100件の伝染病の流行があったことも指摘した。

 既存の疾患が抗生物質への耐性を強める傾向もある。WHOは特に、既存の薬が効きにくいタイプの結核の流行を懸念している。

 さらに、過去半世紀で食物連鎖が大きく変化した上、グローバル化が進行しているため、安全ではない食物が国境を越え易くなり、食べ物にからんだ病気が一層、増える可能性があるという。すでに、BSE(牛海綿状脳症)のような食に関した疾患が世界的な問題になっている。

 2006年に航空機を利用し、移動した人は世界で延べ21億人。WHOは「一つの場所で発生した伝染病が、ものの数時間で世界中に伝播する恐れがある」と警告し、国際社会に伝染病予防に向けた協力体制を強化するよう求めている。

[読売新聞 / 2007年08月23日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070823it03.htm

二日酔いの原因物質、排出速める薬販売=エスエス製薬

2007年08月22日 | 創薬
 エスエス製薬は9月3日から、二日酔いやだるさを改善する大衆薬「アルケシクール」を販売する。アルコールを分解する酵素を活性化するほか、二日酔いの原因物質の排出を速める。希望小売価格は、12錠入り599円、72錠入り2100円。

[朝日新聞 / 2007年08月22日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200708220288.html

(写真:エスエス製薬の二日酔い治療薬「アルケシクール」)

卵子だけの子マウス誕生、成功率4割達成=東京農業大学

2007年08月20日 | 遺伝子組替マウス
 精子なしで卵子だけを使って、40%以上の高い確率で子マウスを誕生させることに、東京農業大の河野友宏教授(動物発生工学)らが世界で初めて成功し、20日の米科学誌「ネイチャーバイオテクノロジー」電子版に発表する。

 生殖に雄が要らない「単為発生」と呼ばれる技術で、雌雄を決定する精子がかかわらないため、雌のマウスしか誕生しない。河野教授らは2004年に、哺乳(ほにゅう)類では世界初となる単為発生マウス「かぐや」を誕生させたと公表している。

 遺伝子改変を伴うため、ただちに人間には応用できない。だが、マウスの体外受精に匹敵する高い確率で子マウスを誕生させたことで、男性なしでも人類が子孫を残していける可能性がより現実味を増し、生命倫理での議論を呼びそうだ。

 河野教授らは、精子と卵子が作られる過程で発生の際に機能を果たすよう、それぞれの遺伝子に付けられる特有の目印に着目した。遺伝子の2か所について、精子特有の目印があるのと同じ状態に改変した雌マウスを作製。さらに、卵子特有の目印が付かないよう、未熟な卵子(卵母細胞)の段階でこの雌マウスから取り出して、卵子になるまで体外で成熟させた。この卵子の核を精子の代わりに、別の雌マウスの普通の卵子に移植して分裂が始まった胚(はい)を、子宮に戻したところ、40%以上の確率でマウスが誕生。子宮に戻した胚の約30%は大人に育ち、出産し繁殖能力もあった。

 河野教授は「今回の方法を使えば、ほぼ確実に単為発生マウスを誕生させることができるだろう。人間への応用は全く考えていない」と話している。

(2007年8月20日2時0分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070820i501.htm

マウスにCO2検知能力=北京生命科学研究所(中国)

2007年08月17日 | 生理学
 大気に近い二酸化炭素(CO2)濃度をマウスが検知できることを中国の北京生命科学研究所などのグループが見つけ、17日発行の米科学誌サイエンスに発表した。昆虫などではCO2濃度の変化に反応して食べ物を探したり、敵を察知したりすることが知られているが、哺乳(ほにゅう)類のこうした能力の詳細についてはわかっていなかった。人の営みの影響でCO2が増えると、ネズミの行動や生態に影響が出てくるかもしれない。

 CO2は無色無臭で、人は大気に近い濃度では検知できない。研究グループは、マウスの神経細胞の中に、濃度0.1%のCO2に反応するものがあるのを見つけた。CO2を吹きかけて調べてみたところ、0.066%の濃度でも反応できた。

 現在、大気中のCO2濃度は0.038%だが、今世紀中に2倍になるという推定もあり、マウスの行動や生態に影響が出てくる可能性もあるとグループはみている。

[朝日新聞 / 2007年08月17日]
http://www.asahi.com/science/update/0817/TKY200708170178.html

mRNAを核内にとどめる仕組み、エイズ研究にも=京都大学

2007年08月17日 | 蛋白質
 DNAの遺伝情報を細胞の核の外に伝えるm(メッセンジャー、伝令)RNAが作られる過程で、未完成のmRNAを核内にとどめる仕組みの一端を、京都大ウイルス研究所の大野睦人教授(分子生物学)のグループが14日までに見つけ、米科学誌「米国科学アカデミー紀要」で発表する。誤った情報でタンパク質が作られるのを防いでいるとみられる。

 DNAの情報をmRNAに転写する際、合成するタンパク質の情報が入った部分(エキソン)と、情報がない部分(イントロン)が読み取られ、その後イントロンが取り除かれてmRNAが核外に出る。イントロンがついた状態のmRNAが核外に出ると、誤ったタンパク質が合成される危険性があるが、核外に出ない仕組みは詳しく分かっていなかった。

 mRNAの中には、イントロンの除去を促進する塩基配列(ESE)を持つものがあり、大野教授らが、カエルの細胞を使って、ESEを持つmRNAと持たないmRNAを比較したところ、ESEを持つ方が核外に出にくいことが分かった。さらに、核内で「いかり」の役割をするタンパク質複合体とESEが結びつくのを阻害すると、mRNAは核外に出やすくなり、ESEがmRNAを核内にとどめていることが分かった。

 また、ESEは、イントロンが除去されると、「いかり」から解除されることも分かった。

 大野教授は「ESEは、mRNAが正しいタンパク質を作るように制御しているのだろう。エイズウイルスはイントロンを持ったまま増殖することが知られており、ESEの機構の解明がエイズ研究につながる可能性がある」と話している。

[京都新聞電子版 2007年08月14日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007081400067&genre=G1&area=K10

肥満の影響で糖尿病 発病の仕組みを解明=東北薬科大学

2007年08月14日 | 代謝
 肥満の影響で糖尿病になる仕組みの一端を、東北薬科大の井ノ口仁一教授らが解明し、米科学アカデミー紀要電子版で近く、発表する。細胞膜にある糖と脂質のつながったものが異常に増えて、脂肪細胞が糖分を取り込む働きが落ちることがわかった。新たな治療薬の開発につながる可能性がある。

 内臓脂肪が増えると、血液中の糖を取り込むインスリンがうまく働かなくなり、糖尿病になりやすくなることが知られている。

 グループは、インスリンがうまく働かない状態のとき、脂肪細胞の表面にある糖脂質の一種が異常に増えることを見つけた。さらに、糖脂質は、インスリンの信号を受ける受容体を引き寄せてしまうこともわかった。

 インスリン受容体が、本来ある場所になくなると、細胞の糖を取り込む能力は落ちてしまう。薬剤で糖脂質が増えないようにすると、インスリンの働きが戻ることも確かめた。

[朝日新聞 / 2007年08月14日]
http://www.asahi.com/science/update/0814/TKY200708140336.html

受精卵は暗闇が好き、マウスで実験=県立広島大学

2007年08月14日 | 医療技術
 太陽や蛍光灯の光を哺乳類の受精卵に当てると、発育が阻害されて流産などが起きる恐れがあるとの研究結果を、県立広島大の堀内俊孝教授(動物生殖細胞工学)とハワイ大の研究グループが米科学アカデミー紀要(電子版)に14日発表した。

 これまで受精卵の発育に光はほとんど影響しないと考えられてきた。堀内教授は「体外受精を手掛ける不妊治療クリニックでの照明に注意が必要だ」と警告している。

 堀内教授らは、マウスの受精卵にさまざまな光を照射し、子宮内に戻して発育を比較。暗い場所に置いた受精卵は3分の2が胎児に成長したが、太陽光を数秒当てると4分の3が正常に育たなくなり、多くが胎盤に吸収された。

 蛍光灯でも同様の悪影響がみられ、紫外線など短波長の成分が多い照明で影響が大きかった。堀内教授は「光が受精卵にダメージを与え、細胞死を起きやすくしたのではないか」とみている。(共同通信)

[京都新聞電子版 / 2007年08月14日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007081400015&genre=G1&area=Z10