ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

酒で憂さ晴らしは逆効果?ラットで実験=東京大学

2008年02月28日 | 心のしくみ
 憂さ晴らしに、酒の力を借りるのは無駄かも――。東京大学の松木則夫教授(薬品作用学)らが28日、そんな研究結果を発表した。

 ラットを使った実験で、薄れかけた恐怖の記憶をアルコールが鮮明にする役割を示したという。成果は米国の専門誌に掲載された。

 松木教授らは、ラットをふだんの飼育環境と違う箱に移し、電気ショックを与えた。いったん通常の飼育環境に戻し、翌日、恐怖を与えた箱に戻した。ラットが箱の中でじっと動かない時間の長さから、「恐怖記憶」の度合いを測った。

 再び箱に入れて恐怖記憶を呼び覚ましたラットを2グループに分け、片方にアルコールを飲ませた。すると、酔ったラットは、しらふのグループより、箱の中でじっとしている時間が長くなった。恐怖記憶が、アルコールによって強められたと考えられるという。

 松木教授は「記憶はいったん不安定になり、徐々に固定していくとされる。嫌なことを忘れる奥の手は、おぼろげなうちに、楽しい記憶で上書きしてしまうこと」と酒に頼らない忘れ方を勧めている。

[読売新聞2008年02月28日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080228-OYT1T00540.htm



【やけ酒は傷癒やせず、嫌な記憶を固定 ネズミで実験】=東京大学

 嫌な体験を思い出した直後にアルコールを取ると、嫌な記憶を忘れにくくなる――。松木則夫・東京大教授(薬品作用学)らのネズミの実験で意外な結果が出た。米専門誌で報告した。

 何かを体験するときに酒を飲んでいると記憶が残りにくいことはよく知られており、動物実験でも確かめられている。松木さんらは、体験を思い出し再記憶する際にもアルコールは同様に邪魔すると予想したが、結果は逆だった。

 ネズミをふだんとは違う箱に移し、電気ショックを与える。翌日その箱に入れるとショックを思い出し、ショックなしでもすくんで動かなくなる。その直後に一方のネズミには体重1キロ当たり1.5グラムと、人間なら泥酔状態になる量のアルコールを、もう一方のネズミには食塩水を注射する。

 3日目に箱に入れると、予想に反し、アルコールを注射したネズミの方がより長い時間すくんだ。2週間後でも同様の結果だった。

 人間でも当てはまるならば、嫌な出来事を思い出しながら深酒すると、酔いが覚めてもむしろ嫌な記憶が強くなることになる。

 共同研究者で東京大大学院生の野村洋さんは「記憶を思い出したときに、無関係な情報が入ってくると記憶の『再固定』が邪魔される。アルコールは余計な情報が入るのを抑えるのではないか」とみている。

 楽しい経験や試験勉強の再記憶などいいことでも、アルコールに同様の効果があれば役に立つかも知れないが、残念ながらネズミではうまい実験法がなく、確かめられていないという。

[朝日新聞 / 2008年03月07日]
http://www.asahi.com/science/update/0307/TKY200803070223.html

植物の気孔閉じる因子発見 温暖化下の作物開発に期待=九州大学

2008年02月28日 | 生理学
 大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度が高くなると植物の気孔が閉じる要因となるタンパク質を九州大大学院理学研究院(福岡市東区)の射場厚教授(植物生理学)の研究グループが発見、27日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。

 射場教授は「植物がどのようにCO2濃度の変化に適応するか解明する手がかりになる」としている。将来的には、このタンパク質の植物ごとの働きの違いを研究することで、CO2濃度が上昇し、地球温暖化が進む環境下でも生産性を維持できる農作物の開発などに役立つことが期待されるという。

 気孔は葉の表面などでCO2を取り込んだり、水蒸気を放散するなど重要な役割を果たしている。CO2濃度が上昇すると閉じ、濃度が下がると開く性質がある。

 射場教授らは、アブラナ科のシロイヌナズナを使った実験で、気孔の細胞の表面上にあるタンパク質「SLAC1」を発見。空気中のCO2濃度が上がると、SLAC1が活性化し、細胞内部から陰イオンを排出することで気孔が閉じることが分かった。

[北海道新聞 / 2008年02月28日]
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/environment/78603.html

パーキンソン治療薬に突然眠る副作用、交通事故の原因にも

2008年02月28日 | 脳、神経
 パーキンソン病の治療薬を服用した患者が、車の運転中に突然眠り込んだために起きた交通事故が、1996年からこれまでに23件あったことが、製造販売元2社のまとめでわかった。

 うち18件は、日本べーリンガーインゲルハイムが2004年1月に発売した「ビ・シフロール」(一般名プラミペキソール)で起きており、同社は、厚生労働省の指示で医療機関に文書を配り、注意を呼びかけている。

 患者が交通事故を起こした薬は、ビ・シフロールのほか、同社の「ドミン」(同タリペキソール)、グラクソ・スミスクラインの「レキップ」(同ロピニロール)で、両社は注意を強めるよう使用説明書も改定した。

 日本べーリンガーインゲルハイムによると、3年半にわたりビ・シフロールを服用していた40歳代の女性は、時速50キロ・メートルで走行中に眠り込んでガードレールに衝突し、車は大破してあごにけがをした。事故前から、前兆もなく突然眠ってしまうことがあり、事故後に薬を変えたところ症状は消えた。

 この薬の服用開始後、1か月未満で起きた事故は3件、1~3か月では3件、6か月以上たってからも5件起きていた。承認申請のための臨床試験でも、1件報告されていたという。ドミンでは、1996年6月の発売後4件発生。レキップは、06年12月の発売以来、1件が確認されている。

 両社は「服用中には車の運転だけではなく、機械の操作や高い所での作業は控えてほしい」と話している。

[読売新聞 / 2008年02月28日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080227-OYT1T00770.htm

アゲハの幼虫は鳥のフンに擬態する=東京大学

2008年02月25日 | 生きもの色々
【Technobahn 2008/2/25 18:41】アゲハ(Papilio xuthus)の幼虫はホルモンの影響によって4令時までは黒と白の特徴的な紋様によって鳥のフンに擬態し、最後の脱皮によって葉に溶け込む緑色の紋様に切り替わることが東京大学の研究グループが21日、米科学雑誌「サイエンス」に掲載した論文によって明らかとなった。

 この論文発表を行ったのは東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻適応分子機構学研究室の藤原晴彦教授。

 藤原教授は、「昆虫の皮膚、卵などのたんぱく質にはGGYGGというアミノ酸構造が含まれるが、従来この構造が何をしているかは不明瞭だった」とした上で「硬いたんぱく質をつくるための構造と考え架橋実験を行った結果、GGYGGがチロシナーゼにより特異的に架橋できることを発見した。この構造を利用してプロテインチップなどへの応用が可能になる」と述べている。

[Technobahn 2008年02月25日]
http://www.technobahn.com/news/2008/200802251841.html

H2A「きずな」打ち上げ成功 種子島宇宙センター=宇宙航空開発研究機構

2008年02月23日 | 宇宙へ
 三菱重工業と宇宙航空研究開発機構は23日午後5時55分、超高速インターネット衛星「きずな」を載せたH2Aロケット14号機を鹿児島県種子島の宇宙航空研究開発機構種子島宇宙センターから打ち上げ、衛星を予定の軌道へ投入することに成功した。強風や警戒海域に船舶が入ったことで打ち上げは予定より1時間35分遅れた。

 H2Aの成功は8回連続。製造・打ち上げを宇宙機構から移管された三菱重工業にとっては月探査機「かぐや」を載せた13号機に続いて2回目。

 宇宙機構などによると、きずなは高度約250~3万6000キロで地球を回る軌道に投入され、正常に動作しているという。今後、エンジン噴射を繰り返しながら赤道上空約3万6000キロの静止軌道に移る。アジア・太平洋地域でのインターネット通信実験が目的で、開発費は約367億円。

[朝日新聞 / 2008年02月23日]
http://www.asahi.com/science/update/0223/TKY200802230320.html



ん~すみません、生物&基礎医学系の新聞記事だけを紹介って思っていたのですが、やっぱりロケットの打ち上げって感動しますよね。日本は宇宙開発に消極的で国家戦略も不在で予算規模も少ないという話をよく耳にします。インターネット衛星の是非とか、周波数帯の割り当て問題とかはさておき。ゼネコン、天下り等の税金の無駄遣いを少しでも回して、これからの産業育成、研究開発を前進させてもらいたいと思います。
ともあれ、打ち上げ連続成功、おめでとうございます。

たんぱく質:ウイルス撃退増強、新型インフルの新薬に有効か=理化学研究所

2008年02月21日 | 免疫
 体内に侵入したウイルスを撃退するインターフェロンの分泌を増やすたんぱく質を、理化学研究所の研究チームがマウスで発見した。致死量のウイルスに感染したマウスに、このたんぱく質を活性化する物質を投与し、救命することにも成功した。同様のたんぱく質はヒトにもあると考えられ、新型インフルエンザなどに対抗する新薬の開発などにつながる成果だ。18日付の米科学アカデミー紀要に発表した。

 インターフェロンは、ウイルスや細菌に感染した時に細胞から分泌され、病原体の増殖などを抑える。

 理研免疫・アレルギー科学総合研究所の渡会浩志(わたらいひろし)上級研究員らは、インターフェロンを生産するマウスの細胞の細胞膜で、ウイルス感染時だけに現れるたんぱく質を発見し、PDC-TREMと名づけた。PDC-TREMの働きを弱めると、インターフェロンの生産量が10分の1に減ることを確認した。また、PDC-TREMを活性化する物質をマウスに投与したうえで、通常のマウスなら100%死ぬ量のヘルペスウイルスに感染させたところ、約8割は死ななかった。

 渡会さんは「インターフェロンの量を増やせれば、新しいウイルスに対しても感染初期には有効だ。インターフェロンが多すぎて起こると考えられている膠原(こうげん)病など自己免疫疾患の治療にもつながるのではないか」と話している。【西川拓】

[毎日新聞 / 2008年02月20日]
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/02/20/20080220ddm012040012000c.html

理化学研究所 プレスリリース
抗ウイルス反応を増強する重要分子「PDC-TREM」を発見
- 形質細胞様樹状細胞がⅠ型インターフェロンの産生を増幅する仕組みが明らかに -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2008/080219/index.html

『肺がん遺伝子』発見=自治医科大学

2008年02月19日 | 癌、腫瘍
 ヘビースモーカーに多いタイプの肺がんの遺伝子を、自治医科大学の間野博行教授のグループが発見した。見つかったがん遺伝子は急速に増殖する悪性のものだが、治療薬の有力候補も見つかっている。間野教授らは、患者の喀痰(かくたん)から高感度にがん細胞を見つける診断方法もあわせて開発しており、早期の実用化が期待されている。 (引野肇)

 見つかったがん遺伝子「EML4-ALK」は、六十二歳の男性がん患者の組織から見つかった。これは、肺だけに特異的に発生するがん遺伝子で、これまでの解析方法では見つからない。間野教授らは、レトロウイルスを使って肺がん内の遺伝子を他の細胞・臓器でも発現させる方法を開発。このウイルスをマウスの皮膚から取った線維芽細胞に感染させたところ活発に増殖し、中央部がもっこりと盛り上がった。さらにこの細胞をマウスに移植すると、皮下に大きな腫瘍(しゅよう)を形成した。

 この試験方法を使えば、これまで発見が難しかった、臓器に特異的に発現する他のがん遺伝子も多数見つけ出すことができそうだ。間野教授は「私たちは現在、肺がんだけでなく他のさまざまながん腫についても、がん遺伝子を探す研究を進めている」という。

 自治医大関連病院の肺がん患者七十七人を調べたところ、五人からEML4-ALKが見つかった。「肺がんの7%から10%がこのタイプのがんではないか」と間野教授はみている。

 EML4-ALKを詳細に分析したところ、細胞外からの刺激を受けて細胞の増殖を指令する受容体型チロシンキナーゼの遺伝子「ALK」の半分と、まだ役割が分かっていない遺伝子「EML4」の半分が結合した「融合型のがん遺伝子」であることがわかった。

 ALKもEML4も正常な遺伝子だが、何かの拍子に両遺伝子の半分ずつが融合すると、本来、特定の外部刺激がある時だけ増殖の指令を出すALKが、常時休みなく指令を出すようになるらしい。同じような融合型のがん遺伝子として、ALKとNPMという遺伝子同士が融合し、悪性リンパ腫を起こす例がある。

 治療薬としてはまず、ALKの働きを止めるALK阻害剤が考えられる。試験管レベルでは、これが細胞のがん化を食い止めることが確認されている。マウスの実験では、体内のALKの働きを薬剤で止めても、生命に別条ないことが確認された。このタイプの肺がんは早期発見が難しく、有効な治療薬もほとんどないため、ALK阻害剤の実用化が期待されているのだ。

 治療薬以上に注目されるのが、診断方法だ。喀痰などにEML4-ALKがあるかどうかは、遺伝子を急速に増やすPCR(合成酵素連鎖反応)解析を使えば、簡単に分かる。間野教授は「喀痰一ccの中にがん細胞がたった十個しかなくても診断可能で、きわめて高感度な肺がん分子診断法となる。二〇〇九年までには診断サービスを開始したい」という。

[東京新聞 / 2008年02月19日]
http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2008021902088727.html

脳内アミノ酸が目の動き抑制=自然科学研究機構生理学研究所

2008年02月16日 | 脳、神経
 もぐらたたきゲームで、素早い動きのもぐらにピタリと視線が止まるのはなぜか――。自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の金田勝幸助教と群馬大(前橋市)などのグループが16日までに、脳内アミノ酸の一種が眼球の動きにブレーキをかけているとの研究結果をまとめた。

 このアミノ酸は脳内で放出される神経伝達物質のガンマアミノ酪酸「GABA(ギャバ)」で、神経細胞の活動を抑える働きで知られている。

 金田助教によると、見たい物に目を向ける時、中脳の神経細胞が指令を出して筋肉を収縮させ眼球を動かす。研究グループは目が見たい物できちんと止まる仕組みを調べるため、マウスの脳を使って実験した。

 中脳神経細胞に物を見たことに相当する電気刺激を与えると、即座に多くのGABAを放出した。そこで、GABAの働きを妨害すると、神経細胞の指令が抑制されず、目は動き続ける状態のままだった。このことからGABAには目の動きを止める役割があると考えられるという。〔共同〕 (01:04)

[NIKKEI NET / 2008年02月16日]
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080216STXKG023616022008.html

精子:製造に不可欠なたんぱく質突き止める=国立遺伝学研究所

2008年02月15日 | 蛋白質
 哺乳(ほにゅう)類の精巣で精子が作られるのに不可欠なたんぱく質を、相賀裕美子・国立遺伝学研究所教授らの研究チームが、マウスの実験で突き止めた。ヒトにもこのたんぱく質を作る遺伝子があり、研究チームは「精子が作られないなどの不妊症の治療法開発につながるかもしれない」と話している。15日付の米科学誌に発表した。

 哺乳類の精子や卵子は、始原生殖細胞と呼ばれる雌雄共通の細胞が精巣や卵巣に入った後、それぞれ成長して作られる。

 研究チームは、オスのマウスだけが持つ、Nanos2と呼ばれるたんぱく質に注目した。このたんぱく質を作れなくしたマウスのオスは、精巣中で精子が作られなくなった。オスだけで働く遺伝子も働かなくなった。

 一方、メスのマウスでこのたんぱく質が作られるように操作すると、オス特有の遺伝子が働き、始原生殖細胞がオスの精子のような分裂の仕方をした。【永山悦子】

[毎日新聞 / 2008年02月15日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080215k0000m040181000c.html

笑い測定機開発、大爆笑4秒で20「アッハ」=関西大学

2008年02月15日 | 心のしくみ
 笑いの「量」を数値化し、アッハ(AHA)という単位で表す「笑い測定機」を関西大の木村洋二教授(コミュニケーション論)と大学院修士2年の降旗真司さんの研究チームが開発した。笑いは健康にいいといわれるが、それを科学的に検証するために役立てたいという。

 ほお、横隔膜、腹筋の周辺の皮膚にセンサーを張り付け、1秒に3000回の頻度で筋肉の動きをデータ化する。これをパソコンに取り込み、独自開発の専用ソフト「DLA」で解析し、笑いの度合いを判定する。表情だけの「あいそ笑い」や、声だけの「から笑い」など、心から笑っていない人を見破ることもできるという。木村教授によると、大爆笑は1秒あたり5アッハほどで、これが4秒続くと20アッハになる。

 07年1月に研究を始め、同11月に測定器の原理に関する特許を出願した。開発費は約600万円。年内に携帯電話ほどのサイズに小型化したいという。木村教授は「将来はチンパンジーの笑いを測定して人間との違いを比べたい。人の笑いがどう進化してきたかという答えを探ることも、測定器開発の狙いの一つ」と話している。

 23日午後1時から大阪府吹田市の同大で開かれるシンポジウム「笑いを科学する」で公開実験をする。

[朝日新聞 / 2008年02月15日]
http://www.asahi.com/science/update/0215/OSK200802150063.html

過労になると脳下垂体細胞が次々と死滅=大阪市立大学

2008年02月15日 | 脳、神経
 極度の過労によって、脳の中心部にある内分泌器官、脳下垂体の細胞が次々と死滅していることを、大阪市立大の研究チームがラットによる実験でつかんだ。これまでは過労は生体の機能が落ちるだけとみられていたが、実際は生命維持の中心器官の一つが破壊されていることを初めて立証した。熊本市で15日から始まった日本疲労学会で報告した。

 厚生労働省によると06年度の脳・心疾患で死亡した「過労死者」は147人。研究チームは過労を早く見つける「過労マーカー」の開発に役立つと期待している。

 大阪市立大の木山博資(ひろし)教授(解剖学)らは、ラットの飼育箱の底に1センチ強の深さに水を張り、5日間観察した。ラットは体が水にぬれるのをとても嫌う性質があり、立ったまま数分うとうとする程度しか眠れなくなる。徹夜で働く人間と、ほぼ同じ状態だ。

 このような状態のラットの脳下垂体を調べると、5日目に細胞が死滅し始め、下垂体の中葉と呼ばれる部分がスポンジ状になっていた。

 下垂体中葉には、脳の神経核A14という部分から神経伝達物質ドーパミンが供給されている。疲労がつのるにつれて、A14のドーパミン生産能力が減り、下垂体の死滅細胞が増えていた。

 実験後、飼育箱から水を抜くと、ラットはすぐに睡眠をとり、半日後には活動を再開した。しかし、下垂体が元の状態に戻るには数日間かかった。早めの休養が重要であることを示している。

[朝日新聞 / 2008年02月15日]
http://www.asahi.com/science/update/0215/TKY200802150139.html

脳蛋白(たんぱく)の欠損が「レインマン」現象に関与か=マサチューセッツ工科大学

2008年02月12日 | 心のしくみ
特定の脳蛋白(たんぱく)の欠損によって、映画「レインマン」に登場するような特殊な能力に秀でた自閉症患者の現象が説明できる可能性が、米マサチューセッツ工科大学(MIT、ケンブリッジ)の研究者らによって報告された。自閉症患者は時に、機械的記憶や音楽などで傑出した能力をみせることがあり、「自閉症サバン(autistic savant)」と呼ばれる。

医学誌「Journal of Neuroscience」2月13日号に掲載された知見によると、シナプス(脳細胞が連絡し合うための接合部)の形成に利用される重要な蛋白が欠損するように遺伝子操作したマウスは、正常なマウスに比べ空間記憶の課題を早く正確に覚えることができたという。しかし、数週間後の検査では、遺伝子操作マウスが記憶したことを思い出す能力は正常なマウスよりも低く、恐怖心を引き起こすような状況を思い出すのが困難であることがわかった。

このように異なるタイプの学習にみられる正反対の作用は、ある認知領域に障害があるが、別の領域では高い能力が認められる自閉症患者の特徴を思わせると、共同研究者の1人であるマサチューセッツ総合病院(ボストン)のAlbert Y. Hung氏は述べている。

シナプスの骨格となるこの蛋白はShank1と呼ばれるもの。この蛋白が欠損すると、マウスのシナプスは、入力に反応する準備はできているが記憶を長時間保持することはできない状態に陥ってしまうものと思われる。ヒトでは、Shank1とよく似た蛋白であるShank3の変異が、自閉症スペクトラム障害(ASD)に関連するとされている。

[Yahoo!ヘルスケアコラム / 2008年02月12日]
http://health.yahoo.co.jp/news/detail/?idx0=w14080216

がん細胞抑制につながるタンパク質発見=名古屋大学

2008年02月11日 | 癌、腫瘍
 細胞に酸素や栄養素を運ぶ毛細血管の形成を促すタンパク質を、名古屋大大学院医学系研究科の高橋雅英教授と室原豊明教授らのグループが発見、10日付の英科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」(電子版)に発表した。このタンパク質を制御することで、がん細胞など病的な細胞の増殖を食い止める治療薬の開発が期待される。

 がん細胞などが増殖する際、細胞の成長に必要な酸素や栄養素を得るため組織内に新たな毛細血管が多数形成される。血管は血管内皮細胞と呼ばれる細胞が集まってできるが、その細胞の集まりを促すメカニズムは分かっていなかった。

 高橋教授らは3年前、がん細胞の他の組織への転移に重要な働きを持つ「ガーディン」と呼ばれるタンパク質を発見。今回、このタンパク質が血管内皮細胞の中に多く含まれていることに着目し、毛細血管の形成に何らかの関係があると推測した。遺伝子操作してガーディンを欠損させたマウスで、目の網膜や脳などの毛細血管が形成される状況を解析したところ、正常なマウスより4割近く毛細血管が減少したことを確認。ガーディンが、毛細血管形成の決め手になっていることを突き止めた。

 高橋教授は「ガーディンの働きを止め、血管内皮細胞の動きを抑える薬物が開発されれば、がん細胞の増殖を防ぐほか、毛細血管が異常に増え失明にも至る糖尿病性網膜症などの治療に応用できる」と話している。

[中日新聞 / 2008年02月11日]
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2008021102086706.html

フランス:遺伝子組み換えトウモロコシを栽培禁止

2008年02月10日 | 遺伝子
 【パリ福井聡】フランス政府は9日、米・モンサント社の遺伝子組み換えトウモロコシ「MON810」の仏国内での栽培禁止を発表した。仏国内では2万ヘクタール以上で栽培されており、一部農民は裁判で禁止解除を訴える構えだ。

 遺伝子組み換え作物に関する諮問委員会のルグラン委員長は「害虫、ミミズ、微生物への否定的影響を証明する事実が浮かんだ。また、花粉が予想を超え数百キロも飛んでいることへの懸念もある」と指摘している。

 MON810は害虫の殺虫性に優れ収穫増が見込め、欧州連合(EU)が承認したことで数年前からフランスも導入。昨年はEU内でスペインの7万5000ヘクタールに次ぐ2万2000ヘクタールで栽培された。仏トウモロコシ生産者組合によると、禁止命令がなければ今年は10万ヘクタールで栽培予定で、同組合は禁止命令による損害を1000万ユーロ(約15億6000万円)とし、一部組合員の提訴を示唆している。

[毎日新聞 / 2008年02月10日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080211k0000m030041000c.html

(2007年06月14日の関連記事)

成長や内臓機能に影響か 遺伝子組み換えトウモロコシ
http://blog.goo.ne.jp/cinogi/e/a5f99e21cf2327b00916c9ad67f59dee

花粉症:「乳酸菌」が効果ある? ネットなどで注目~毎日.jpサイエンスコラムから

2008年02月09日 | 食品・栄養
 花粉症の季節がやってきた。飲み薬にマスク、花粉が付きにくい衣料などさまざまな花粉症対策グッズが販売される中、「乳酸菌」が注目を集めている。【太田阿利佐】

 ■腸内細菌

 「研究段階では、乳酸菌の一部が、花粉症などのアレルギー症状の緩和に有効である可能性が示されつつあります」。こう説明するのは東大名誉教授で、「免疫と腸内細菌」などの著書がある日本大の上野川修一教授だ。

 アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー症状は、「Th(ティー・エイチ)1」と「Th2」という2種類の免疫細胞のバランスが崩れて起きると考えられている。乳酸菌のうち、いわゆる善玉菌と呼ばれるビフィズス菌やラクトバチルス菌には、このバランスを改善する働きがあるとする研究結果が2000年ごろから相次いで発表されている。

 ただ、成人なら大腸に400種程度、重さにして1キロ以上の腸内細菌がおり、その組み合わせは、その人の免疫遺伝子や生活環境、食生活などによって異なる。また同じビフィズス菌でも、菌種によって働きは異なる。このため、どの菌をどれだけ摂取すればどの程度の効果が出るかについて、研究者や食品各社が研究開発を急いでいる段階だ。

 雑誌やインターネットなどには「乳酸菌の○○がいいらしい」「胃酸で死んでしまうので乳酸菌を食べても無駄だ」などの情報があふれている。上野川教授は「腸内細菌の構成は個人差があり、その人にどの菌が合うかは一概に言えない。確かに菌の中には胃酸で死ぬものもあるが、死んだ菌でも腸に到達し、腸管の免疫系への刺激を通じてバランスを整える可能性もある。また生き残って腸に達し、腸管の免疫系を刺激する菌もある。科学的には、生菌も死菌もそれぞれ内容は異なるが、一定の働きをすると考えられる」と言う。

 ■混乱も

 厚生労働省によると、花粉症患者は人口の約16%(05年推計)で増加傾向にある。2000万人規模の一大市場となっており、食品・飲料各社はすでに独自に研究開発した菌種を利用した飲料やタブレットを発売している。「L-92」(カルピス)や「KW乳酸菌」(キリンヤクルトネクストステージ)など、各社がそれぞれ菌株名をつけているが、現状では薬でも特定保健用食品(特保)でもなく「花粉症に効く」などの表現は一切できない。ドラッグストアの店頭でも、花粉症対策コーナーの一角にひっそりと置かれている一方で、ネット上ではさまざまな菌種名の商品が販売されており、消費者には分かりにくい状況となっている。

 国民生活センター情報分析部は「花粉症関連商品に限らず、健康食品一般に言えること」として(1)業者側の説明をうのみにせず、医師に相談するなど自分でも情報収集する(2)体質に合うか不明なので、一度に大量購入しない(3)マルチ商法など販売方法に問題がないか留意する--などの注意を呼び掛けている。

[毎日新聞 / 2008年02月09日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080209k0000e040054000c.html



 今年もこれから日本全国津々浦々、いやーな花粉症のシーズンに突ですね。wikipediaによると日本人の15%以上の人が花粉症に罹っているようです。目は痒くなるし洗濯物も外に出せなくなるし、薬を飲めば「ぼ~」っとして思考が集中しづらくなるし、ホントに参ります。
スギ、ヒノキなどの植林の側の対策は全く進んでいないようですね。排気ガスや他にも色んな要因があるのでしょうが、その対策でこの症状が軽減するのなら、国にも、もっと本腰を入れてやってもらいたいと切に願います。
‥乳酸菌って、いったいホントに効くんでしょうか?(→ブログ内検索をどうぞ。)