ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

タンパク質が時差ぼけ修正=名古屋大学

2009年02月05日 | 蛋白質
 試験管の中で再現されたバクテリアの「生物時計」が時差ぼけを修正する機能があることを、名古屋大大学院理学研究科の大学院生吉田拓矢さん、村山依子、伊藤浩史両研究員らのグループが突き止めた。生物時計を構成するタンパク質が外界の温度の変化を感知し調整していた。人間を含む生物全般の生物時計の仕組みの解明が期待され、成果は米科学誌に掲載された。

 生物は睡眠と目覚めを規則正しく行う「生物時計」を持っている。同研究科の近藤孝男教授らは、原核生物のシアノバクテリアの3種のタンパク質KaiA、B、Cが24時間周期で、リン酸の結合・分離を繰り返すことを証明。これら3つを時計タンパク質とし、リン酸を供給するATP(アデノシン三リン酸)とともに試験管内で生物時計をつくることに成功していた。

 これまで時計タンパク質には、光や温度の変化を感じ取るセンサーはなく、ずれを修正する能力はないと考えられていた。

 グループは、リン酸の結合・分離のタイミングを6時間ずつずらした試験管を4つ準備。昼夜の変化と同じように12時間ごとに気温30度、45度の変化を与えると、4日目ですべての試験管でタイミングが一致するようになった。グループは「時計タンパク質が温度変化を感じ取り、生物時計をリセットしている」と結論づけた。

 近藤教授は「過去の研究でハエの生物時計も温度変化でリセットする機能がある。すべての生物の生物時計に普遍的なメカニズム解明につながる可能性がある」と話している。

[中日新聞 2009年02月05日]
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2009020502000147.html

世界初、たんぱく質「セプチン」の機能を解明=名古屋大学

2009年01月23日 | 蛋白質
 生物の細胞質分裂や精子の形成などにかかわるとされるたんぱく質「セプチン」に様々な細胞の形を制御する機能があることを、名古屋大学の滝口金吾助教らのグループが世界で初めて突きとめ、米科学誌「カレント・バイオロジー」電子版に発表した。

 セプチンは脳や精巣などに幅広く存在し、その異常がパーキンソン病や男性不妊症などに関係していることはわかっていた。

 滝口助教らが、リン脂質でできたリポソームという人工の生体膜にセプチンを加えたところ、リポソームから多数の突起が伸び、さらにセプチンが突起部分の周囲を巻くようにして糸状の線維を形成した。こうした形状は、動物の神経細胞などに見られることから、セプチンの機能が判明した。

 滝口助教は「セプチンの異常による疾患の発症原因や治療方法の究明につながる」と話している。

[読売新聞 2009年01月23日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090123-OYT1T00878.htm

鳥インフルH5N1が免疫系を無力化する仕組みを解明=ベイラー医科大学(米国)

2008年11月06日 | 蛋白質
【11月6日 AFP】
 高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)のウイルスは、感染時に抗原の一部を隠すため、ヒトの免疫系が病原体の侵入を感知できず、免疫反応が起きないとの米医大の研究チームの報告が、6日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に掲載された。H5N1の致死性の高さを説明するとともに、治療薬の開発につながる発見として期待されている。

 米テキサス(Texas)州ヒューストン(Houston)のベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)大学のプラサド(Venkataram Prasad)教授らの研究によると、H5N1のタンパク質の幾つかが、ヒトへの感染時にウイルスの遺伝物質であるリボ核酸(RNA)のらせん構造を覆い隠すチューブ状の組織を形成しているという。

 研究チームはこの発見で、H5N1ウイルスのヒト感染時の致死性の高さが説明できる可能性があると指摘。ウイルスのタンパク質の反応を食い止め、ヒトの自然免疫能を活かす治療薬の開発につながると期待を寄せている。

 H5N1の毒性の強さについては、これまでの研究でいわゆるNS1タンパク質が重要な役割を果たしていることがわかっている。

 世界保健機関(World Health Organisation、WHO)によると、H5N1ウイルスは2003年にアジアで初めて確認され、感染したとみられる患者のうち60%以上に相当する245人が死亡している。研究者らの間では、H5N1が最終的にヒト同士での感染力が非常に高いウイルスに変異し、世界的な大流行を引き起こす懸念が指摘されている。(c)AFP

[AFP BB NEWS 2008年11月06日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2535894/3500498

タンパク質の「鍵」構造解明、不要なDNAを調節=京都大学

2008年09月04日 | 蛋白質
 不要なDNAが読み込まれることがないようにDNAに「鍵」をかける「DNAメチル化」の維持で働くタンパク質の構造を、京都大工学研究所の白川昌宏教授(分子生物学)、有吉眞理子助教らのグループが解明した。メチル化のパターン変化は、がん細胞やiPS(人工多能性幹)細胞と深くかかわっており、創薬や再生医療につながる成果という。英科学誌ネイチャーで3日に発表した。

 どんな細胞もDNA総体は同じだが、細胞の種類ごとに読み取られる遺伝情報は違い、不要なDNAは塩基の一部がメチル化して堅く畳まれている。細胞の機能が決まる分化によってメチル化のパターンが決まるが、そのパターンが変わると、がん細胞になって暴走したり、iPS細胞のように再びさまざまな細胞に分化する能力を獲得する。

 細胞分裂では、親から引き継いだ片方のDNAのみがメチル化されており、メチル化パターンの維持には、新しく複製されたDNAのメチル化が必要。

 白川教授らは、親のDNAのメチル化塩基の場所を認識するタンパク質UHRF1の構造を解析した。

 UHRF1にはDNAを抱え込み、メチル化塩基をDNAらせん構造の外に放り出す「手」があり、「ポケット」の構造に塩基を取り込んでメチル化を正確に認識していることが分かった。

 UHRF1は塩基を認識してメチル化酵素を呼び込み、新しいDNAを親と対応するようにメチル化しているらしい。

 白川教授は「タンパク質を操作してメチル化を調節することで、がん細胞を抑えたり、iPS細胞の産生効率の向上や、がん遺伝子やウイルスを使わない安全な作成法の開発が期待できる」と話している。

(写真:タンパク質がDNAと複合体を作ってメチル化塩基を認識するメカニズム(白川昌宏京大教授提供の資料から作成))

[京都新聞 2008年09月04日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008090400042&genre=G1&area=K00

京都大学 プレスリリース
細胞分化を決定するゲノム中のメチル化塩基は、2重らせんの外に引き出されて認識される
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2008/080904_1.htm

疲労感じる原因たんぱく質を発見=東京慈恵会医科大学

2008年09月04日 | 蛋白質
 疲れを感じる原因となるたんぱく質を、東京慈恵会医科大がマウスを使った研究で突き止めた。このたんぱく質は、徹夜や運動の直後に心臓や肝臓、脳などで急激に増え、休むと減る。元気なマウスに注射すると、急に疲れた。疲労の謎を解く鍵として、科学的な疲労回復法の開発につながりそうだ。沖縄県名護市で開かれている国際疲労学会で4日、発表する。

 近藤一博教授と大学院生の小林伸行さんは、人が疲れると体内で増殖するヘルペスウイルスに関係するたんぱく質に注目、疲労因子を意味する英語からFFと名付けた。水があると眠れないマウスを、底に1センチほど水を張った水槽に一晩入れて徹夜状態にし、その直後に臓器を取り出し、FFの量を調べた。

 その結果、睡眠をとったマウスに比べ、徹夜マウスでは、FFが脳、膵臓(すいぞう)、血液で3~5倍、心臓と肝臓では10倍以上も増えていた。2時間泳がせた場合も、同様に変化した。どちらも休息後は平常値に戻った。

 さらに、FFを元気なマウスに注射すると、大好きな車輪回し運動をほとんどしなくなった。疲れの程度に応じて増減し、かつ、外から与えると疲れが出現するという「疲労原因物質」の二つの条件を満たした。

 FFは、細胞に対する毒性が強い。心臓、肝臓で特に増えるため、過労に陥ると心不全や肝障害が起きやすくなる、という現象に関係している可能性が高い。

 人が疲れを感じる仕組みは、まだ十分解明されていない。運動疲労の原因とされていた乳酸は、運動すると筋肉中に増えるが、疲労の程度とは関係せず、筋肉に注射しても疲れが出現しないため、原因物質ではないことが数年前に実証されている。

 近藤教授は「FFは、疲労が起きるとすぐに反応するため、疲労に対し最初に働く回路だろう。正確な疲労の測定装置や、科学的な疲労回復法の開発につながる」と話す。(編集委員・中村通子)

[朝日新聞 2008年09月04日]
http://www.asahi.com/science/update/0903/OSK200809030091.html

インフルエンザ新薬に道?ウイルス増殖の仕組み発見=東京大学医科学研究所

2008年07月10日 | 蛋白質
 インフルエンザウイルスが人の細胞に感染して増えるために欠かせない複数のたんぱく質を、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス感染)らのグループが突き止めた。新薬の開発に道を開く成果として注目されそうだ。10日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。

 ウイルスは感染した細胞がもともと持っているたんぱく質を利用して増殖している。しかし、インフルエンザの場合、どんなたんぱく質がかかわっているかはほとんどわかっていなかった。

 ショウジョウバエの細胞に感染するように遺伝子を改変したインフルエンザウイルスを作製。細胞のどのたんぱく質が増殖にかかわっているかを調べた。

 すると、人と共通して持っているたんぱく質のうち、エネルギーを生み出したり、細胞の呼吸を助けたり、リボ核酸(RNA)の輸送にかかわったりする三つのたんぱく質の働きを抑えると、ウイルスが増殖できないことがわかった。

 現在、インフルエンザの治療薬として使われているタミフルは、すでに薬が効かない耐性ウイルスが報告されている。河岡教授は「今回特定したたんぱく質とウイルスの相互作用を抑えることができれば、新しい薬や治療法の開発につながる」と話している。

[朝日新聞 2008年07月10日]
http://www.asahi.com/science/update/0710/TKY200807100163.html

鉄分アップでコメ収穫6倍に、運搬促進たんぱく質特定=東京大学

2008年05月06日 | 蛋白質
 植物が成長に欠かせない鉄分を吸収し、必要な部位に運ぶ際に働くたんぱく質を、東京大大学院農学生命科学研究科の西澤直子教授(新機能植物開発学)らがイネで特定した。オオムギなど他のイネ科植物にもあり、働きを高めることで収量増が期待できるという。9日付の米国生化学会誌に発表する。

 西澤教授らは、このたんぱく質をIDEF2と名付けた。植物では、鉄分の取り込みに関する複数の遺伝子が働いている。IDEF2は、これらの遺伝子と結合し、働き始めるようにスイッチを入れる元締役として機能するという。

 IDEF2の働きを抑えたイネは、鉄分がうまく利用できなくなる一方、働きを高めると、収量は同じ条件で栽培した普通のイネの4~6倍になった。

 鉄分は葉緑素を作るのに不可欠で、不足すると光合成が不十分になる。アルカリ性土壌では鉄分はほとんど水に溶けないため、植物に吸収されにくく、成長が抑制される。こうした土壌は世界の陸地の約3割を占める。

 西澤教授は「IDEF2の働きを詳しく調べ、植物が鉄分を利用する仕組みの全容を解明したい。食糧の増産や鉄分の豊富な栄養価の高い穀物作りにつながる」と話している。【関東晋慈】

[毎日新聞 2008年05月06日]
http://www.mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/05/06/20080506ddm002040029000c.html

細胞の繊毛ができる仕組み解明=大阪バイオサイエンス研究所

2008年03月26日 | 蛋白質
 細胞の表面に生えている繊毛が形作られる仕組みを、大阪バイオサイエンス研究所と米ハーバード大の研究グループが明らかにした。繊毛ができないために、目の網膜色素変性症がおきたり、腎臓に多発性の嚢胞(のうほう)ができたりすることが知られており、病気の解明につながる可能性がある。英科学誌ネイチャー・セル・バイオロジー(電子版)に掲載した。

 繊毛は細胞1個に1~数十本あり、長さは0.001~0.01ミリ。目の細胞は光、鼻の細胞はにおいを感じるなど、アンテナの役目をしている。

 大阪バイオサイエンス研究所の大森義裕研究員(発生生物学)らは、繊毛に異常のある熱帯魚ゼブラフィッシュを使い、繊毛の形成に必要な遺伝子を特定した。その遺伝子からできるたんぱく質を「エリプサ」と名付け、酵母菌で役割を調べた。細胞内でつくられた繊毛の材料のたんぱく質は、別のたんぱく質と結びつき、細胞内を移動。繊毛の根元でエリプサと結びつき、繊毛の先端部に運ばれることがわかった。

 エリプサに相当するたんぱく質は人にもあり、大森研究員は「人にも同様の繊毛形成の仕組みがあると考えられる」と話している。

[朝日新聞 / 2008年03月26日]
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200803260070.html


精子:製造に不可欠なたんぱく質突き止める=国立遺伝学研究所

2008年02月15日 | 蛋白質
 哺乳(ほにゅう)類の精巣で精子が作られるのに不可欠なたんぱく質を、相賀裕美子・国立遺伝学研究所教授らの研究チームが、マウスの実験で突き止めた。ヒトにもこのたんぱく質を作る遺伝子があり、研究チームは「精子が作られないなどの不妊症の治療法開発につながるかもしれない」と話している。15日付の米科学誌に発表した。

 哺乳類の精子や卵子は、始原生殖細胞と呼ばれる雌雄共通の細胞が精巣や卵巣に入った後、それぞれ成長して作られる。

 研究チームは、オスのマウスだけが持つ、Nanos2と呼ばれるたんぱく質に注目した。このたんぱく質を作れなくしたマウスのオスは、精巣中で精子が作られなくなった。オスだけで働く遺伝子も働かなくなった。

 一方、メスのマウスでこのたんぱく質が作られるように操作すると、オス特有の遺伝子が働き、始原生殖細胞がオスの精子のような分裂の仕方をした。【永山悦子】

[毎日新聞 / 2008年02月15日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080215k0000m040181000c.html

木の抗菌物質を作る酵素解明=京都大学

2007年12月11日 | 蛋白質
 スギやヒノキなど針葉樹の色のついた心材に蓄積している抗菌成分ヒノキレジノールを作る酵素を、京都大生存圏研究所の梅澤俊明教授(樹木代謝機能化学)らのグループが突き止めた。

 立体構造が違うヒノキレジノールを作り分けることもでき、これまで知られていなかった植物の機構の一端が明らかになった。米国科学アカデミー紀要で11日、発表する。

 ヒノキレジノールはスギなどのほか、化学式は同じだが立体構造の違う幾何異性体のヒノキレジノールがアスパラガスにもある。梅澤教授はアスパラガスからヒノキレジノールを作る酵素を構成する2種類のタンパク質(α、β)を発見し、タンパク質を作る遺伝子を特定した。遺伝子を働かせて耐久性の高い木材にしたり、逆に働きを抑えることで心材の色を抑えたりすることが期待できるという。

 この酵素はαとβが結びついたペアの構造で働いているが、αかβどちらか1種類だけのペアだとスギなどと同じ構造のヒノキレジノールを作ることも分かった。「タンパク質の組み合わせを変えるだけで幾何異性体ができるのはこれまで知られていない現象。それぞれが特定の幾何異性体だけを作っている理由は分からないが、興味深い機構だ」(梅澤教授)という。

[京都新聞電子版 / 2007年12月11日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007121100100&genre=G1&area=K10

マイコプラズマ:細胞にクラゲ構造の“骨組み”発見=大阪市立大学

2007年11月20日 | 蛋白質
 細菌の一種で肺炎などを起こすマイコプラズマの細胞内に、クラゲのような形をしたたんぱく質の“骨組み”があることが分かった。発見した大阪市立大の宮田真人教授(生物物理学)の研究グループによると、マイコプラズマに数百本ある「足」の動きを止めて病原性をなくす薬の開発につながる可能性があるという。研究成果は近く、米科学誌「米国科学アカデミー紀要」のオンライン版に掲載される。

 マイコプラズマは長さ約1万分の10ミリの病原体で、ひょうたんに似た形をしている。人間や魚などの気管やえらの細胞に生えた繊毛の先端に取り付き、繊毛の根元まで移動して病気を起こす。

 宮田教授らは魚のマイコプラズマを使い、表面の細胞膜を薬品で溶かし、電子顕微鏡で内部を観察した。その結果、直径約1万分の2ミリのかさ状のたんぱく質に、約20本のひも状のたんぱく質が取り付き、クラゲに似た形を作っていた。

 マイコプラズマは、ひょうたん形のくびれ部分に数百本生えた「足」を使って動くことが、宮田教授らのこれまでの研究で知られていた。しかし足を支えるマイコプラズマ内部の様子は不明だった。宮田教授は「クラゲ構造は、マイコプラズマを内部から支えるフレームだ。この構造には、体外に数百本ある足一本一本を、タイミングを合わせて動かす役目もあるのではないか」と話している。【高木昭午】

[毎日新聞 / 2007年11月20日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20071121k0000m040079000c.html

炎症抑制タンパク質、感染症予防に効果=香川大学、ハーバード大学

2007年11月16日 | 蛋白質
 炎症反応を抑える作用があるタンパク質「ガレクチン9」に、体内に侵入した細菌やウイルスを退治する働きを強める作用があるらしいことを、香川大の平島光臣教授(免疫病理学)と米ハーバード大などの研究チームが突き止め、16日付の米科学誌サイエンスに発表した。

 炎症が関係するリウマチや膠原(こうげん)病など、自己免疫疾患の新たな治療薬として期待される。平島教授は「インフルエンザなどの感染症治療にも役立ちそうだ」としている。

 平島教授らは、ガレクチンが結合する細胞表面の受容体に着目。白血球の一種マクロファージの受容体にガレクチンがくっつくと、細菌やウイルスを食べるマクロファージの働きが強まることを確かめた。

 一方でガレクチンは、炎症関連物質を出す別の白血球の働きを抑制。生体内で二種類の白血球のバランスを取りながら制御しているらしい。

 バランスが崩れて炎症が過剰になると、リウマチなどの自己免疫疾患が起きる。平島教授は「ガレクチンを投与すれば、炎症を抑えながら感染症を防ぐ新たな治療のアプローチが可能だ」と話す。

[四国新聞社 香川NEWS / 2007年11月16日]
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/social/article.aspx?id=20071116000148

異常たんぱく質の処理解明、アルツハイマー病治療に光明か=奈良先端科学技術大学院大学

2007年10月08日 | 蛋白質
 細胞内にたまった異常なたんぱく質を見つけ、修復機構を発動させるメカニズムを、奈良先端科学技術大学院大の木俣行雄・助教(動物細胞工学)らのグループが解明し、8日付の米科学誌セルバイオロジーに発表した。

 アルツハイマー病など、異常なたんぱく質が蓄積する病気の治療につながる可能性があるという。

 細胞内に立体構造が変形した異常たんぱく質が作られると、センサー物質「Ire1(ワン)」が検知し、たんぱく質の構造を正常に戻すのを助ける分子「シャペロン」の合成量を増やして修復する。

 Ire1にはふだん、シャペロンの一種「BiP」が結合しており、異常たんぱく質が増えると分離することが知られていたが、Ire1がどうやって活性化するかは不明だった。

 木俣助教らは酵母を使った研究で、BiPが分離すると、Ire1が集合し、その中に取り込んだ異常たんぱく質に直接、結合することでIre1が活性化することを発見した。活性化したIre1は遺伝子に情報を伝え、シャペロンの合成を促す。

 木俣助教は「修復機構の各段階が明確になったことで、病気の原因解明や、異常たんぱく質の処理を人為的に調節する方法の開発が進むのでは」と話している。

[読売新聞 / 2007年10月08日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071008i114.htm

鳥インフルエンザ、アミノ酸変異で大増殖=東京大学医科学研究所

2007年10月05日 | 蛋白質
 新型インフルエンザウイルス大規模流行につながる恐れがある鳥インフルエンザウイルス中のアミノ酸の変異を、河岡義裕・東大医科学研究所教授の研究チームが突き止めた。

 新型インフルエンザの流行を予測する際の有力な手がかりになるとして注目されそうだ。5日のオンライン科学誌に掲載される。

 研究チームは、人に感染した2種類のH5N1型の鳥インフルエンザウイルスを構成するたんぱく質を比較。ウイルスの増殖に関係している「PB2」と呼ばれるたんぱく質を分析したところ、627番目のアミノ酸が、人の鼻粘膜での増殖に大きくかかわっていることを見つけた。

 さらに、このアミノ酸を人工的にリジンという別のアミノ酸に変えたウイルスを作り、マウスに感染させたところ、感染後3日間で、鼻の粘膜でのウイルス数が変異前に比べて1万倍以上に増えることが判明。一方、627番目がもともとリジンであるもう片方のウイルスを改造し、ここをグルタミン酸というアミノ酸に変えた場合は、鼻粘膜ではほとんど増殖しなかったという。

 河岡教授は「鼻の中でウイルスが増えれば、くしゃみなどによりウイルスが周囲に飛び散り、人同士で感染する可能性が高まる。新型インフルエンザの流行を最小限に抑えるためにも、この部分のアミノ酸の変化に注意を払い、監視する必要がある」と話している。

[読売新聞 / 2007年10月05日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071005i307.htm

mRNAを核内にとどめる仕組み、エイズ研究にも=京都大学

2007年08月17日 | 蛋白質
 DNAの遺伝情報を細胞の核の外に伝えるm(メッセンジャー、伝令)RNAが作られる過程で、未完成のmRNAを核内にとどめる仕組みの一端を、京都大ウイルス研究所の大野睦人教授(分子生物学)のグループが14日までに見つけ、米科学誌「米国科学アカデミー紀要」で発表する。誤った情報でタンパク質が作られるのを防いでいるとみられる。

 DNAの情報をmRNAに転写する際、合成するタンパク質の情報が入った部分(エキソン)と、情報がない部分(イントロン)が読み取られ、その後イントロンが取り除かれてmRNAが核外に出る。イントロンがついた状態のmRNAが核外に出ると、誤ったタンパク質が合成される危険性があるが、核外に出ない仕組みは詳しく分かっていなかった。

 mRNAの中には、イントロンの除去を促進する塩基配列(ESE)を持つものがあり、大野教授らが、カエルの細胞を使って、ESEを持つmRNAと持たないmRNAを比較したところ、ESEを持つ方が核外に出にくいことが分かった。さらに、核内で「いかり」の役割をするタンパク質複合体とESEが結びつくのを阻害すると、mRNAは核外に出やすくなり、ESEがmRNAを核内にとどめていることが分かった。

 また、ESEは、イントロンが除去されると、「いかり」から解除されることも分かった。

 大野教授は「ESEは、mRNAが正しいタンパク質を作るように制御しているのだろう。エイズウイルスはイントロンを持ったまま増殖することが知られており、ESEの機構の解明がエイズ研究につながる可能性がある」と話している。

[京都新聞電子版 2007年08月14日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007081400067&genre=G1&area=K10