ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

ザクロに前立腺がん抑制成分=名古屋市立大学

2006年09月28日 | 食品・栄養
 果物のザクロに、前立腺がんの細胞を死滅させる成分が含まれていることが、名古屋市立大の朝元誠人・助教授らの研究で分かった。

 横浜市で開催中の日本癌(がん)学会で28日発表した。

 朝元助教授らは、人間の初期の前立腺がん細胞を培養し、濃度5%のザクロ果汁の溶液に入れて影響を調べた。すると、わずか30分で激しい反応を起こし、がん細胞が死滅した。前立腺がんにこれほど強く作用する天然物質は例がないという。他のがん細胞には効果がなかった。

 また、前立腺がんのラットに、5%濃度のザクロジュースを飲ませたところ、がん縮小効果がみられた。ザクロの何の成分が効いているかは不明。

 朝元助教授は「普通の食品に、こんな作用があるのは珍しい。成分が分かれば、前立腺がんの予防や治療への応用が期待できる」と話している。

[2006年9月28日/読売新聞]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060928i315.htm

血管拡張に特定タンパク鍵 ED、はげ治療薬に道=京都大学

2006年09月25日 | 循環器
 一酸化窒素(NO)が血管を拡張する作用は、血管の細胞にあってカルシウムイオンの通り道となる特定のタンパク質が鍵になっているとの研究結果を森泰生京都大教授(生物化学)らがまとめ、米科学誌ネイチャー・ケミカルバイオロジーに25日、発表した。
 「TRPC5」というタンパク質で、NOを生産するスイッチになっており、勃起(ぼっき)不全(ED)や、はげの治療薬開発につながるのではないかという。
 森教授らはウシの血管内皮細胞を分析。このタンパク質による約3ナノメートル(ナノは10億分の1)の穴が開き、カルシウムイオンが細胞内に入るとNOができた。NOは内皮細胞を取り巻く平滑筋細胞に作用、血管を広げた。このタンパク質はNOを検知するとNO生産をさらに増幅させた。
 ニンニクのアリシンという成分にこのタンパク質の穴を開ける作用があることを確かめた。ニンニクに血圧を安定させるなどの作用があるのは、この仕組みによると考えられるという。
 森教授は「狭心症治療でニトログリセリンの服用を続けると耐性ができるが、このタンパク質を標的にすると新たな薬の開発につながるのではないか」と話している。

[2006年09月25日/山梨日日新聞社]
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=soci&NWID=2006092501000010

インスリンが脳の「学習」に関与=東京大学

2006年09月07日 | 脳、神経
 脳で学習機能が働くには、体内で糖分の消費や貯蔵にかかわるインスリンが欠かせないらしいことを、飯野雄一・東京大助教授(行動遺伝学)らの研究グループが、動物実験で示した。7日付の米医学誌ニューロンで発表した。将来、認知症の治療などに役立つ可能性もあるという。

 飯野さんらは、土の中で細菌を食べる体長1ミリほどの線虫が通常、細菌のいるところに多い食塩を、えさ探しの手がかりの一つにしていることに着目。えさの細菌なしに食塩だけを与え続けると、「学習」して食塩には寄りつかなくなることを確かめた。

 一方、遺伝子操作でインスリンを作れなくした線虫に同じ実験をすると、変わらず食塩に集まり続けた。

 どちらも学習に関係する中枢神経そのものは問題なく働いていることを確かめ、「学習に、インスリンが必要であることがわかった」とした。実験には、約10万匹の線虫を使ったという。

 インスリンは、糖代謝を制御するホルモンの一種。人間では膵臓(すいぞう)でつくられ、血液を通じて全身に送られて筋肉などにぶどう糖を送り込む。分泌が悪くなると血糖値が上がり、糖尿病の原因となることが知られている。少量だが脳でも作られており、インスリンと結合する受容体も脳に広く存在している。

 飯野さんは「今回の発見を糸口にして、人間の脳でのインスリンの働きが明らかになれば、将来、認知症や記憶障害などの治療に役立つ可能性があるのではないか」と言っている。

[朝日新聞 / 2006年09月07日]
http://www.asahi.com/science/news/TKY200609070086.html

The Insulin/PI 3-Kinase Pathway Regulates Salt Chemotaxis Learning in Caenorhabditis elegans
Neuron, Vol 51, 613-625
http://www.neuron.org/content/article/abstract?uid=PIIS0896627306005897