ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

血糖値抑制に肝臓が関与 糖尿病の新治療法に道=東北大学

2008年11月21日 | 代謝
 肝臓で特定のタンパク質を活性化させ、血糖値を抑えるインスリンを作る膵臓の細胞を増殖させる仕組みを、東北大の片桐秀樹教授(代謝学)らのグループがマウス実験で発見した。糖尿病の新しい治療法につながる成果で、21日付の米科学誌サイエンスに発表した。

 グループは肥満になると(1)肝臓にあるタンパク質「ERK」が刺激を受け活性化(2)インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が増殖-することに着目。

 ERKの活性化がβ細胞増殖の引き金ではないかと考え、ERKが活性化しやすくなるようにマウスの肝臓に遺伝子を導入。その結果、β細胞が増え血糖値が下がることを確認した。多くのβ細胞が死んだ糖尿病のモデルマウスでは同じ方法でβ細胞が再生した。

 この現象は肝臓や膵臓と脳をつなぐ特定の神経回路を閉ざすと生じず、β細胞の増殖を導く神経ネットワークの存在を示している。ERKの活性化はがんを招く恐れがあるが、神経ネットワークのどこかを刺激することでERKと同じ効果が期待できるという。

 片桐教授は「体が元来備えている仕組みを用いて、β細胞を再生できることを示せた。新たな再生医療の確立に結び付けたい」と話している。

[共同通信47NEWS 2008年11月21日]
http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008112001000982.html



【インスリン:分泌量3倍に マウスの肝臓機能利用 糖尿病治療に応用も=東北大学】(毎日新聞)

肥満時に肝臓で作られるたんぱく質の働きを利用し、血糖値を下げるインスリンの分泌細胞を膵臓(すいぞう)で増殖させることに、東北大学の片桐秀樹教授(代謝学)らのチームがマウス実験で成功した。糖尿病の新たな治療法につながる成果と期待される。21日付の米科学誌サイエンスに掲載された。

 インスリンは膵臓のベータ細胞から分泌される。チームは、肥満になるとベータ細胞が増えることに注目。肥満時に肝臓で作られるたんぱく質を増やす遺伝子を正常なマウスに導入したところ、膵臓でベータ細胞が急増した。糖尿病を発症させたマウスでもベータ細胞が増殖。導入しない糖尿病マウスに比べ、インスリン分泌量が約3倍になった。

 また、肝臓から脳、膵臓へとつながる神経を切断して同じ実験をするとベータ細胞は増えなかった。チームは、肝臓が肥満状態を感知するとこのたんぱく質が作られ、信号が脳を経由して膵臓に伝わり、ベータ細胞を増殖させると考えている。片桐教授は「臓器間の神経ネットワークを使うことによって、ベータ細胞を増殖できた。将来、インスリン注射や移植が不要になるかもしれない」と話す。【斎藤広子】

[毎日新聞 2008年11月23日]
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/11/23/20081123ddm007040090000c.html

肥満の影響で糖尿病 発病の仕組みを解明=東北薬科大学

2007年08月14日 | 代謝
 肥満の影響で糖尿病になる仕組みの一端を、東北薬科大の井ノ口仁一教授らが解明し、米科学アカデミー紀要電子版で近く、発表する。細胞膜にある糖と脂質のつながったものが異常に増えて、脂肪細胞が糖分を取り込む働きが落ちることがわかった。新たな治療薬の開発につながる可能性がある。

 内臓脂肪が増えると、血液中の糖を取り込むインスリンがうまく働かなくなり、糖尿病になりやすくなることが知られている。

 グループは、インスリンがうまく働かない状態のとき、脂肪細胞の表面にある糖脂質の一種が異常に増えることを見つけた。さらに、糖脂質は、インスリンの信号を受ける受容体を引き寄せてしまうこともわかった。

 インスリン受容体が、本来ある場所になくなると、細胞の糖を取り込む能力は落ちてしまう。薬剤で糖脂質が増えないようにすると、インスリンの働きが戻ることも確かめた。

[朝日新聞 / 2007年08月14日]
http://www.asahi.com/science/update/0814/TKY200708140336.html

アディポネクチン:善玉ホルモンに悪役の顔 動物実験で解明、脳内で食欲増進作用=東京大学

2007年07月12日 | 代謝
 脂肪燃焼や血糖値低下を促す善玉ホルモンのアディポネクチンには、食欲の増進や脂肪の蓄積を促す“悪玉”の働きもあることを、東京大などの研究チームが動物実験で突き止め、10日付の米科学誌「セル・メタボリズム」に発表した。アディポネクチンは血液中でいくつも結び付き、複合体となる。悪玉となるのは小型の、善玉となるのは大型の複合体という。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)や糖尿病対策につながる成果として注目されそうだ。【大場あい】

 アディポネクチンは脂肪細胞から分泌される。筋肉や肝臓では脂肪の燃焼を促し、血糖値を下げるインスリンの効きを助ける。肥満すると分泌量が減り、脂肪が燃えにくくなる。脳内にも存在するが、そこでの働きはよく分かっていなかった。

 研究チームの門脇孝・東大教授(糖尿病・代謝内科学)らは、マウスで働きを詳しく調べた。

 アディポネクチンを注射したマウスの脳の視床下部を調べると、食欲を高める酵素が増えていた。アディポネクチンを投与したマウスは、実際に食べる餌の量が増える一方で、エネルギー消費量は減り、体重増加を招く状態になっていた。

 また、脳内で働くアディポネクチンは、結合数が3~6個と少ない低分子型複合体のアディポネクチンだと分かった。

 門脇教授は「アディポネクチンは、エネルギーを効率よく蓄え、飢餓に備える倹約遺伝子として働く。肥満で血中濃度が減るのは高分子型で、食欲を高めずに肥満や糖尿病を改善するには、高分子型だけを増やす薬などの開発が必要だ」と話す。

[毎日新聞 / 2007年07月11日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070711ddm012040049000c.html

内臓脂肪で糖尿病、仕組み解明=東京大学

2007年02月10日 | 代謝
 中高年に多い内臓脂肪型の肥満が糖尿病を引き起こす仕組みを、東大病院糖尿病・代謝内科の門脇孝教授らの研究チームが、マウスを使った実験で解明した。

 治療薬の開発につながる研究成果で、米医学誌「ネイチャー・メディシン」電子版に掲載された。

 内臓脂肪が蓄積すると、脂肪細胞から出るアディポネクチンというホルモンの量が減る。アディポネクチンは、血糖値や中性脂肪を下げる働きがあるため、分泌量が減ると糖尿病などの生活習慣病の引き金となるメタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)を起こすことが知られていた。しかし、そのメカニズムは未解明だった。

 門脇教授らは、マウスの肝臓細胞の表面に、2種類のたんぱく質を発見。これらにアディポネクチンが結合すると、血糖値や中性脂肪が下がり、脂肪を燃やす働きも上がることを確認した。ところが、内臓脂肪が蓄積した肥満マウスは、細胞表面にこのたんぱく質が少なくなる。逆にこのたんぱく質を増やすと血糖値が改善することがわかった。

 門脇教授は「内臓脂肪型肥満でアディポネクチンが減少しても、このたんぱく質を増やすことで、糖尿病を治療できる可能性がある」と話している。

[読売新聞 / 2007年02月09日]
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070209ik0b.htm