アルツハイマー病の原因物質アミロイドを脳から取り除くワクチンの開発を進めていた国立長寿医療センター研究所(田平武(たびら・たけし)所長、愛知県大府市)と名古屋大などのチームが、マウスを使った実験で発症後に飲むと認知能力が戻ることを確かめた。脳炎や出血などの危険な副作用もなかった。4月6日から大阪市で始まる日本医学会総会で発表する。完成すれば、欧米で開発中のワクチンの難点である安全性やコストの問題を解決した新ワクチンになる。研究チームは次の段階として、少人数の患者を対象にした臨床試験の準備を進めている。
このワクチンは、病原性がないウイルスの殻にアミロイドというたんぱく質を作る遺伝子を入れてある。口から飲むと、腸の細胞がこの「偽ウイルス」に反応してリンパ球がアミロイドを攻撃する抗体を作る。この抗体が脳にたまったアミロイドにくっつき、ばらばらにして取り除く。
研究チームは、月齢を重ねると必ずアルツハイマー病を発症するよう遺伝子を変化させたマウス28匹を使って、効果を試した。アルツハイマー病を発症した生後10カ月の時点で、半数の14匹にはワクチンを飲ませ、残りには飲ませなかった。
その結果、ワクチンを飲んだマウスはほぼすべて、3カ月後、記憶力や学習能力など認知力を試す4種類のテストすべてで成績が発症前のレベルまで戻った。一方、ワクチンを飲まなかったマウスは全テストで成績が落ち、認知力の大半を失っていた。
03年にワクチンを飲んだマウスの脳内のアミロイドが消えることを明らかにしていたが、今回初めて、実験で症状が改善することまで確認した。
アイルランドの製薬会社が開発した世界初のアルツハイマー病ワクチンは、臨床試験中の02年に患者の6%が重い脳炎を起こしたため、開発中止になった。今回名古屋大などが開発したワクチンは直接たんぱく質などを注射する方法ではないため安全性が高く、大量生産が可能なうえ、薬液を飲むだけで簡単という利点がある。
実験をした名古屋大の鍋島俊隆教授(医療薬学)は「アミロイドはたまり始めているが症状はまだ出ていない、という段階で使えば予防効果も期待できる」と話す。
(写真説明)上は、ワクチンを飲んでいない発病マウスの脳。赤く見えるのがアミロイドで、シミのようになっている。下はワクチンを飲んだマウスの脳。アミロイドはほとんど消えている=名古屋大大学院生の毛利彰宏さん提供
[朝日新聞 / 2007年03月29日]
http://www.asahi.com/life/update/0329/005.html
このワクチンは、病原性がないウイルスの殻にアミロイドというたんぱく質を作る遺伝子を入れてある。口から飲むと、腸の細胞がこの「偽ウイルス」に反応してリンパ球がアミロイドを攻撃する抗体を作る。この抗体が脳にたまったアミロイドにくっつき、ばらばらにして取り除く。
研究チームは、月齢を重ねると必ずアルツハイマー病を発症するよう遺伝子を変化させたマウス28匹を使って、効果を試した。アルツハイマー病を発症した生後10カ月の時点で、半数の14匹にはワクチンを飲ませ、残りには飲ませなかった。
その結果、ワクチンを飲んだマウスはほぼすべて、3カ月後、記憶力や学習能力など認知力を試す4種類のテストすべてで成績が発症前のレベルまで戻った。一方、ワクチンを飲まなかったマウスは全テストで成績が落ち、認知力の大半を失っていた。
03年にワクチンを飲んだマウスの脳内のアミロイドが消えることを明らかにしていたが、今回初めて、実験で症状が改善することまで確認した。
アイルランドの製薬会社が開発した世界初のアルツハイマー病ワクチンは、臨床試験中の02年に患者の6%が重い脳炎を起こしたため、開発中止になった。今回名古屋大などが開発したワクチンは直接たんぱく質などを注射する方法ではないため安全性が高く、大量生産が可能なうえ、薬液を飲むだけで簡単という利点がある。
実験をした名古屋大の鍋島俊隆教授(医療薬学)は「アミロイドはたまり始めているが症状はまだ出ていない、という段階で使えば予防効果も期待できる」と話す。
(写真説明)上は、ワクチンを飲んでいない発病マウスの脳。赤く見えるのがアミロイドで、シミのようになっている。下はワクチンを飲んだマウスの脳。アミロイドはほとんど消えている=名古屋大大学院生の毛利彰宏さん提供
[朝日新聞 / 2007年03月29日]
http://www.asahi.com/life/update/0329/005.html