ラットは今日も、きみのために。

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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

アルツハイマー病ワクチン、マウスで効果確認=国立長寿医療センター、名古屋大学

2007年03月29日 | 遺伝子組替マウス
 アルツハイマー病の原因物質アミロイドを脳から取り除くワクチンの開発を進めていた国立長寿医療センター研究所(田平武(たびら・たけし)所長、愛知県大府市)と名古屋大などのチームが、マウスを使った実験で発症後に飲むと認知能力が戻ることを確かめた。脳炎や出血などの危険な副作用もなかった。4月6日から大阪市で始まる日本医学会総会で発表する。完成すれば、欧米で開発中のワクチンの難点である安全性やコストの問題を解決した新ワクチンになる。研究チームは次の段階として、少人数の患者を対象にした臨床試験の準備を進めている。

 このワクチンは、病原性がないウイルスの殻にアミロイドというたんぱく質を作る遺伝子を入れてある。口から飲むと、腸の細胞がこの「偽ウイルス」に反応してリンパ球がアミロイドを攻撃する抗体を作る。この抗体が脳にたまったアミロイドにくっつき、ばらばらにして取り除く。

 研究チームは、月齢を重ねると必ずアルツハイマー病を発症するよう遺伝子を変化させたマウス28匹を使って、効果を試した。アルツハイマー病を発症した生後10カ月の時点で、半数の14匹にはワクチンを飲ませ、残りには飲ませなかった。

 その結果、ワクチンを飲んだマウスはほぼすべて、3カ月後、記憶力や学習能力など認知力を試す4種類のテストすべてで成績が発症前のレベルまで戻った。一方、ワクチンを飲まなかったマウスは全テストで成績が落ち、認知力の大半を失っていた。

 03年にワクチンを飲んだマウスの脳内のアミロイドが消えることを明らかにしていたが、今回初めて、実験で症状が改善することまで確認した。

 アイルランドの製薬会社が開発した世界初のアルツハイマー病ワクチンは、臨床試験中の02年に患者の6%が重い脳炎を起こしたため、開発中止になった。今回名古屋大などが開発したワクチンは直接たんぱく質などを注射する方法ではないため安全性が高く、大量生産が可能なうえ、薬液を飲むだけで簡単という利点がある。

 実験をした名古屋大の鍋島俊隆教授(医療薬学)は「アミロイドはたまり始めているが症状はまだ出ていない、という段階で使えば予防効果も期待できる」と話す。




(写真説明)上は、ワクチンを飲んでいない発病マウスの脳。赤く見えるのがアミロイドで、シミのようになっている。下はワクチンを飲んだマウスの脳。アミロイドはほとんど消えている=名古屋大大学院生の毛利彰宏さん提供

[朝日新聞 / 2007年03月29日]
http://www.asahi.com/life/update/0329/005.html

アルツハイマー 発症抑制酵素を発見=大阪バイオサイエンス研究所、大阪大学

2007年03月27日 | 遺伝子組替マウス
根治療薬開発に光

 大阪バイオサイエンス研究所の裏出良博研究部長と大阪大学大学院生の兼清貴久さんの研究グループは、認知症のアルツハイマー病を発症段階で抑えるタンパク質(酵素)が脳脊髄(せきずい)液に含まれていることを見つけ26日、米国科学アカデミー紀要に発表した。この病気の治療法はいまだ確立されておらず、発症予測の方法や治療薬の開発に役立ちそうだ。

 アルツハイマー病は、今では早期発見し、症状の進行を遅らせることができるが、根治させる治療薬の開発が待たれている。

 この病気は脳内でつくられるアミロイド・ベータという小さなタンパク質が神経細胞の周囲に取り付き、細胞を死滅させることが原因のひとつ。裏出部長らは、脳脊髄液の主要なタンパク質であるリポカリン型プロスタグランジンD合成酵素が、アミロイド・ベータと固く結合し、凝集を抑えることを発見。

 この酵素を作る遺伝子を欠いたマウスと正常のマウスで比較したところ、脳内にアミロイド・ベータを加えると、遺伝子を欠いたマウスでは3倍以上も凝集した。逆に、この酵素を遺伝的に多量につくるマウスでは数分の1に減った。さらに、ヒトの脳脊髄液からこの酵素を除くと、凝集を抑制する効果が半減した。

[産経新聞 2007年03月27日]
http://www.sankei.co.jp/seikatsu/kenko/070327/knk070327002.htm

富有柿:皮の成分に「美白効果」=岐阜県国際バイオ研、岐阜薬科大学

2007年03月26日 | 食品・栄養
 岐阜県特産の富有柿の皮などに含まれるポリフェノールの一種「クエルセチン配糖体」にメラニン色素の生成を抑制する「美白効果」があることが、同県国際バイオ研究所(各務原市)と岐阜薬科大(岐阜市)などの共同研究で分かった。既に特許の出願をしており、28日から富山市で開かれる日本薬学会で発表する。県は今後、詳細なメカニズムを解明し、県内の企業と協力して実用化を目指す。

 研究は産官学が連携して研究開発に取り組む県のプロジェクトの一環。研究グループは、葉やへたが薬として利用される富有柿の皮に着目し、皮のエキスを分析したところ、メラニン色素の生成を抑える作用が見つかった。

 さらに皮の成分を分析した結果、クエルセチン配糖体がメラニン合成に必要な酵素の量を減少させることが分かった。マウスの細胞やヒトの培養皮膚を使った実験でも、化粧品の成分となるコウジ酸よりも強いメラニンの生成抑制作用があることが確認された。

 岐阜県は富有柿発祥の地で、06年産の富有柿の収穫量は1万4800トンで全国1位だった。【秋山信一】

[毎日新聞 / 2007年03月26日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/news/20070326k0000e040021000c.html
http://www.mainichi-msn.co.jp/photo/news/20070324k0000e040078000c.html

オキナワモズク抽出物に発毛効果、日本薬学会で発表=ライオン株式会社

2007年03月26日 | 食品・栄養
 ライオンは26日、海藻のオキナワモズクの抽出物に脱毛症の原因となるタンパク質の増加を抑え、発毛を促す効果があることを確認したと発表した。28日から富山市で開催される日本薬学会で発表する。同社は、この抽出物を使った育毛剤の開発を目指す。

[時事通信 / 2007年03月26日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007032600709

ライオン株式会社 プレスリリース
http://www.lion.co.jp/press/2007018.htm

炎症を起こすたんぱく質 発見=大阪大学

2007年03月23日 | 遺伝子組替マウス
アレルギー性の皮膚炎などの病気で炎症の引き金になるたんぱく質を大阪大学の研究グループが発見し、将来、病気の治療につながる可能性がある成果として注目されています。この研究成果はイギリスの科学誌「ネイチャー」のオンライン版に22日に掲載されます。

研究を行ったのは大阪大学微生物病研究所の菊谷仁教授らのグループです。
金属アレルギーなどの皮膚炎や関節リューマチでは、細菌などから体を守る免疫が過剰に働いて強い炎症が起きるとされています。
研究グループは、免疫の働きをする「T細胞」と呼ばれる細胞の表面に炎症が起きるときに現れる「セマフォリン7A」というたんぱく質に注目しました。
研究グループがこのたんぱく質の遺伝子がないマウスの耳に皮膚炎を引き起こす化学物質を塗って実験したところ、ふつうのマウスと違って耳はほとんど腫れず、このたんぱく質が炎症の引き金になっていることがわかったということです。
また、免疫の働きが原因で起きる難病の多発性硬化症についても調べたところ、正常なマウスは2週間で症状が悪化したのに対し、たんぱく質の遺伝子がないマウスは軽い症状で済んだということです。

研究グループの菊谷教授は「このたんぱく質の働きを抑えられれば、関節リューマチなどさまざまな炎症性の病気の治療につながる可能性がある」と話しています。

[NHKニュース / 2007年03月22日]

http://www3.nhk.or.jp/news/2007/03/23/k20070322000022.html

森林浴に免疫向上効果=都市旅行と比較-日本医科大学、森林総合研究所

2007年03月23日 | 免疫
 日本医科大と独立行政法人森林総合研究所は23日、森林浴に免疫機能を向上させ、一定期間維持する効果があることを実証したと発表した。都市部の観光旅行に比べ、がん抑制などの機能があるナチュラル・キラー(NK)細胞の働きが活性化されるという。

 同大の李卿講師らは、35~56歳の男性11人を対象に、昨年5月には名古屋市などの観光地を巡る旅行を、同9月には長野県上松町で森林浴を行う旅行を、いずれも2泊3日の日程で実施。旅行前後に参加者から採血し、それぞれ人工的に加えたがん細胞を、血液中のNK細胞が減らす割合を調べた。
 その結果、観光旅行では旅行の前後でがん細胞を減らす割合に変化は見られなかったが、森林浴では、がん細胞を殺す割合が、旅行から1日後は43%、2日後は56%、一週間後は45%それぞれ上昇。30日後も旅行前に比べ23%高かった。李卿講師は「森林浴によるリラックス効果がNK細胞の働きを活性化し、免疫機能を高めたのではないか」と話している。

[時事通信 / 2007年03月23日]
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%bf%b9%ce%d3%cd%e1&k=2007032300712

林野庁 プレスリリース(2005年10月13日)
http://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h17-10gatu/1013sinrinyoku.html

「細胞の頑強性」の定量的実証に成功=慶應義塾大学 先端生命科学研究所

2007年03月23日 | 遺伝子
「細胞の頑強性」を世界で初めて定量的に実証
~史上最大規模の細胞分析実験に成功し、米科学誌「サイエンス」に掲載(*)~


 慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)は、最先端のバイオ技術を駆使して、生物学史上最大規模の細胞分析実験を実施した結果、大腸菌の細胞内における振る舞い(代謝)を安定化するための様々な戦略を持っているという「細胞の頑強性」の定量的実証に成功しました。(**)

 ヒトからバクテリアまですべての細胞は、糖をエネルギー分子のATP(アデノシン三リン酸)に変換する「エネルギー代謝」という機構を持っています。これは最も基本的な生命活動のひとつとされており、約100個の遺伝子で構成されています。
 研究グループはまず、4288個ある大腸菌の遺伝子をひとつずつ欠失させた突然変異体を3984種類作成。その中からエネルギー代謝にかかわる遺伝子を欠失した大腸菌を選出しました。また、通常の菌体については、様々な異なる条件で生育させました。これらの大腸菌の細胞内物質を、最先端の分析技術と遺伝子工学などのバイオテクノロジーを駆使して徹底分析し、数千種もの細胞内分子(代謝物質、タンパク質、RNA)を網羅的に計測しました。さらに、代謝物質130種,タンパク質57種とRNA85種について詳細な解析を行い、それらのデータをもとにエネルギー代謝の各ステップにおける代謝流束(酵素反応の速度)をコンピュータで計算しました。
 その結果、エネルギー代謝のような重要プロセスを担っている遺伝子が欠失していても、細胞の生存に影響がないだけでなく、細胞内の各種の物質量の変化にもほとんど影響が出ませんでした。また、生育条件を変化させた場合、RNAやタンパク質の量は大きく変化しましたが、代謝物質の量はほとんど変わりませんでした。このように「大腸菌は状況に応じて様々な手段で代謝を安定に保っている」ということが世界で初めて定量的に実証されました。
 これは当研究所が5年間独自に開発してきた先端技術を組み合わせて行った世界に類のない大規模な実験であり、今後はこの技術を医療、環境、食品分野に応用していくことになります。

 冨田勝先端生命科学研究所長は、「我々のグループが鶴岡でこの5年間に独自に開発してきた先端技術を組み合わせて、世界の誰も真似のできない大規模な実験を実施することができました。山形の自然豊かな環境が、独創的な研究を育んでくれたのだと思います。今後はこの技術を医療、環境、食品分野に応用して世界があっと驚く成果を出していきたいです。」とコメントしています。


* この論文は米科学誌「サイエンス」2007年4月27日号に掲載予定です。またそれに先がけて、日本時間3月23日にScience Expressウェブサイトに掲載されます( http://www.sciencexpress.org および http://www.aaas.org )。サイエンスおよびScience Expressは世界最大の総合科学機関である米国科学振興協会(AAAS)により発行されています。

** 代謝物質の分析には研究グループが独自に開発した「メタボローム解析技術」を応用。キャピラリー電気泳動と質量分析計を組み合わせた「CE-MS」という技術で、同時に数千種類の代謝物質を測定できます。またタンパク質の解析にも独自に開発した測定技術を応用しました。これらの大規模な細胞分析の手法は、様々な分野での応用が期待できます。たとえば、がん細胞に特有の代謝系を突き止め、その代謝系に特異的に働く抗がん剤を開発したり、バイオエタノールやバイオプラスチック生産菌など工業用の有用微生物の代謝系を改善して生産性を大幅に向上することが可能と考えられます。

[日経プレスリリース / 2007年03月23日]
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=156127&lindID=4

慶應義塾大学先端生命科学研究所 ホームページ
http://www.iab.keio.ac.jp/ja/

神経難病:原因たんぱく質の構造を発見=大阪大学

2007年03月19日 | 糖鎖
 ハンチントン病(舞踏病)や脊髄(せきずい)小脳変性症などの神経難病の原因となる異常なたんぱく質の構造を、大阪大大学院医学系研究科の永井義隆助手(神経病学)と戸田達史教授(遺伝医学)らが発見した。異常なたんぱく質が病気を引き起こす構造へと変化するのを防ぐ治療薬の開発につながる成果といい、米科学誌「ネイチャー・ストラクチュアル・アンド・モレキュラー・バイオロジー」(電子版)に19日、掲載される。

 ハンチントン病など神経難病の患者は国内に数万人いるとみられるが、有効な治療法はない。アミノ酸の一種のグルタミンの数が大変多い異常なたんぱく質が、その構造を変化させた後、脳内の細胞に蓄積して発症すると考えられているが、詳細は分からなかった。

 永井助手らは、グルタミンの数が多い異常なたんぱく質を溶液中で構造解析。異常たんぱく質が蛇腹のような「βシート」構造に変化し、異常たんぱく質を数多く結合させ固まりを作ることを突き止めた。βシート構造の異常たんぱく質が細胞に毒性を持つことも判明。「QBP1」と呼ばれる分子がβシート構造への変化を阻害することも確認した。

 永井助手らは「QBP1を応用すれば治療薬の開発が期待できる。アルツハイマー病やパーキンソン病などでも同様の構造変化が発症の原因と考えられ、新薬開発につながる可能性がある」と話している。【河内敏康】

[毎日新聞 / 2007年3月19日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070319k0000m040124000c.html

大阪大学21世紀COEプログラム「疾病関連糖鎖・タンパク質の統合的機能解析」
より戸田達史Dr.のページ
http://www.glycocoe.med.osaka-u.ac.jp/coe21/jp/mem_toda.html

大腸がん転移に骨髄が関与、促進たんぱく質を確認=京都大学

2007年03月19日 | 遺伝子組替マウス
 悪性化する大腸がん細胞は、“サイン”を出して骨髄細胞を呼び寄せ、増えたり転移したりするのに利用していることが、武藤(たけとう)誠・京都大大学院医学研究科教授(遺伝薬理学)らのグループによって明らかになった。

 骨髄への働きかけを止める物質を見つければ、がん治療薬の開発に応用できるかもしれない。米科学誌ネイチャー・ジェネティックス電子版に19日掲載される。

 グループは遺伝子操作したマウスを用いて、大腸がんの増殖などにかかわるたんぱく質の働きを分析。その結果、大腸がん細胞が「CCL9」と呼ばれるたんぱく質を大量に放出すると、骨髄細胞の一種が骨髄から血液に溶け出し、がん細胞の周囲を取り巻くように集まることがわかった。骨髄細胞は、がん細胞の増殖を促進する2種類のたんぱく質を出していた。

 CCL9がうまく働かないように改造したマウスでは、がん細胞の周りに骨髄細胞が集まらなくなり、悪性化しなかった。

 武藤教授は「がんは体内機能をうまく利用して生き延びている。この仕組みを逆に利用し、がんの増殖を抑える新たな治療法へつなげたい」と話している。

[読売新聞 / 2007年03月19日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070319i501.htm




 京都大大学院の武藤誠教授(遺伝薬理学)のグループは、大腸がんが周囲の組織に広がる「浸潤」の仕組みを解明した。がん細胞は「CCL9」というホルモンを使って血液中にある極少量の免疫細胞を引き寄せた後、免疫細胞が出す酵素を使って正常細胞の中に潜り込んでいた。武藤教授は「CCL9の受容体を阻害する薬剤ができれば、免疫細胞ががんに引き寄せられるのを防げる。浸潤を抑制し、がんの拡大を防ぐ新治療法につながる可能性がある」と指摘する。成果は19日、米科学誌「ネイチャー・ジェネティックス」(電子版)に掲載される。

 同グループは、人為的に大腸がんを発症させたマウスで、がん細胞の先端に免疫細胞の一種である未分化の骨髄球が集まり、がん細胞の浸潤を促進する酵素を作り出すことを確認した。骨髄球はCCL9の受容体を持っているため、がん細胞が出すCCL9に引き寄せられる。この骨髄球は骨髄内にあることが知られていたが、血液中にもわずかに存在していることが新たに分かった。また、人の大腸がんの一部でも同様の仕組みが働いていることも確認した。

 浸潤は、良性腫瘍(しゅよう)が悪性化する際の特徴で、転移の兆候でもある。このため以前、浸潤促進酵素の働きを直接阻害する薬剤の開発が進められたが、頭痛など強い副作用が出るため失敗していた。【中野彩子】

[毎日新聞 / 2007年3月19日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070319k0000m040123000c.html

京都大学医学研究科 生体制御医学講座 遺伝薬理学教室のページ
http://www4.mfour.med.kyoto-u.ac.jp/frameTOP(J).htm

動脈瘤肥大を抑える物質を開発、ネズミで効果確認=大阪大学

2007年03月17日 | ラット
 腹部や胸部の大動脈がこぶのように膨らむ大動脈瘤(りゅう)は、破裂すると突然死する恐れが高い。その大動脈瘤が大きくなるのをとどめる物質を、大阪大の三宅隆医師や森下竜一教授(ともに遺伝子治療学)らが開発し、ネズミで効果を確認した。小さいままにできれば破裂の恐れが低くなる。脳動脈瘤などへの応用も考えられ、森下さんは「患者の不安が和らぐ。安全性を確かめ臨床応用につなげたい」という。
腹部大動脈瘤が大きくなるのをとどめる仕組みのイメージ


 動脈瘤は、加齢や動脈硬化に伴って、炎症が起きたり組織が壊れたりして血管の壁がもろくなった動脈が、血圧の影響で膨らんで起きる。

 炎症や組織の破壊は、それぞれ誘因物質が知られている。森下さんらは誘因物質を直接壊したりするのではなく、誘因物質が働きかける核酸とよく似た「おとり核酸」を合成し、動脈瘤の近くに入れる戦略をとった。誘因物質の大半が「おとり」に引っかかって、炎症や組織の破壊が進まなくなると考えた。

 腹部大動脈瘤を発症させたネズミで実験したところ、「おとり核酸」を大動脈近くの腹腔(ふくくう)内に注入した場合のこぶの断面積は、1週間後で平均3平方ミリ(注入しなかったネズミでは5平方ミリ)、2週間後で6平方ミリ(同13平方ミリ)と膨らみ具合が抑えられ、4週間後も維持された。

 近年、健康診断で直径3センチ前後の小さな腹部大動脈瘤が見つかるケースが増えている。治療に危険を伴うこともあり、破裂の恐れが高まる5~6センチになるまで待ってから手術やステントという器具で治療することが多い。その間、患者は不安と隣り合わせになる。

 胸部大動脈瘤や脳動脈瘤などへの応用をにらみ、静脈内に注入できるよう「おとり核酸」の微小粒子化に取り組んでいるほか、薄膜状や寒天状にして細い管(カテーテル)で患部に入れることも検討している。

 成果は17日、神戸市で開催中の日本循環器学会で発表される。
[朝日新聞 / 2007年03月17日]

http://www.asahi.com/life/update/0317/004.html

睡眠薬「マイスリー」に“夢遊病”の副作用 米FDA報告

2007年03月16日 | 心のしくみ
 【ワシントン=渡辺浩生】米国の薬局で最も処方されている睡眠薬「アンビエン」(日本名マイスリー)を服用すると、睡眠中に車を運転しようとしたり、食事をするなど異常な行動をひき起こす危険性があることが、米食品医薬品局(FDA)の報告で分かった。米国では不眠症に悩む人が増加し、睡眠薬はテレビ広告で積極的に宣伝されているが、FDAはアンビエンを含む13種類の睡眠薬について、危険な症例を患者に周知させるよう製薬会社に求めた。

 FDAによると、異常行動は、睡眠時遊行症(夢遊病)の一種とみられ、非常にまれだが、睡眠中に起きあがって車を運転する▽夜中に過食する▽電話をかける▽インターネットで買い物する-などの内容の報告があった。いずれも本人には全く記憶がなかった。

 米紙ニューヨーク・タイムズによると、路上でパジャマ姿のまま逮捕されて初めて目を覚ます「睡眠ドライバー」もいた。飲酒前後に薬を服用すると、異常が発生する確率が高くなるという。

 FDAに報告されたこうした異常行動の多くが、「アンビエン」の服用と関連していることも分かった。この薬は、仏サノフィ・アベンティス社が開発、世界約100カ国で販売され、日本でもアステラス製薬が商品名「マイスリー」で販売している。

 昨年5月には、民主党のパトリック・ケネディ下院議員が運転する車が連邦議会議事堂の外のさくに衝突する事故が発生。本人は「アンビエンの服用後で、記憶がなかった」と訴えたという。

 FDAは今回、同様の異常を懸念し、アンビエンに限定せず、「ルネスタ」(米セプラコール社)など計13種の睡眠薬について、表示や医師による説明を求めた。

 米国では、昨年の睡眠薬の売り上げが2000年に比べ60%も増加。テレビでの処方薬の広告が影響しているとの見方も出ている。医薬品業界は昨年、睡眠薬の宣伝費で6億ドルも投じており、ミネソタ大学のマーク・マホワルド博士は「広告の規模は常軌を逸している」と批判している。

 FDAの報告に対し、仏サノフィ社は、夢遊病の症例は確率が1000人に1人以下のまれな副作用で、表示もしているという声明を発表している。

[産経新聞 Sankei-Web / 2007年03月16日]
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070316/usa070316002.htm

Wikipedia「マイスリー」のページ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%BC

人工リンパ節:マウスに移植、免疫力20倍=理化学研究所

2007年03月16日 | 癌、腫瘍
 人工的に作成したリンパ節を免疫力の低下したマウスに移植し、免疫機能を正常マウスの約20倍に高めることに理化学研究所が成功した。高い免疫力は1カ月以上持続した。免疫力の強化は、エイズなどの重症感染症やがんなどの治療に有効だという。15日付の米基礎医学専門誌(電子版)に掲載される。

 リンパ節はわきの下や頚部(けいぶ)などにあり、ヒトの体に入ったウイルスなどの異物(抗原)が運ばれてくる組織だ。リンパ節中の免疫細胞が異物と結合すると免疫反応が始まり、異物を排除する抗体を作り出す。

 研究チームは、たんぱく質の一種のコラーゲンを3ミリ角のスポンジ状にし、免疫反応に重要な2種類の細胞を染み込ませた。これを正常なマウスの体内に移植すると、リンパ節に類似の組織ができた。複数の免疫細胞が本物と同じ比率で存在し、血管も形成された。

 この人工リンパ節を、免疫不全症を起こしているマウスに移植したところ、異物に対する血中の抗体量が正常マウスの約20倍にも高まり、1カ月以上持続した。

【下桐実雅子】

[毎日新聞 / 2007年3月16日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070316k0000e040002000c.html

[理化学研究所プレスリリース]
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070316/index.html

魚のDHAはうつ病に有効 脳の神経細胞を増大=ピッツバーグ大学

2007年03月15日 | 食品・栄養
 魚に豊富な不飽和脂肪酸オメガ3のドコサヘキサン酸(DHA)に鬱(うつ)病への効果が期待できるとする見解が表明された。ひどい鬱病の人は脳の神経細胞の細胞体が存在する灰白質(かいはくしつ)が縮小するが、DHAはこれを増大させるという。
 ピッツバーグ大医学部の脳科学者、サラ・コンクリンさんが、55人の成人を対象に、ランダムに選んだ2日の食事の内容を聞くとともに、脳の磁気共鳴画像(MRI)による観察を行った。その結果、DHAの摂取が多い人ほど、感情と関連する3つの部分(小脳扁桃、海馬、帯状回)の灰白質が多いことが分かった。
 過去の研究でも、DHAが鬱病の兆候を鎮めることが確認されている。また、この分野の研究では有名なフラミンガム・スタディーは、血中のDHA濃度の高い人は、認知症やアルツハイマー病のリスクが少ないと指摘している。
 コンクリンさんは「鬱病には遺伝、環境、ドラッグの使用、飲酒などの要因もあり、DHAが万能だとは言い切れない」と話している。
 DHAが豊富に含まれるのは、サケ、イワシ、サバ、ニシン、アンチョビー、マグロ、ニジマスなど。(ワシントン マリリン・エリアス)

[産経ニュースiZa / 2007年03月15日]
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/life/health/43370/

朗報!育毛細胞を守る化合物を確認、今夏にも育毛剤として発売=ノエビアと慶応大学

2007年03月15日 | 食品・栄養
 ノエビア(東京都中央区)は、慶応大医学部との共同研究で、生体内にあるタンパク質の一種「Wnt(ウィント)5a」が、発毛・育毛に重要な毛乳頭細胞の死を抑制することを発見した。さらに、精油(植物から抽出した揮発性のエキス)に含まれる化合物のひとつである「フェニルエチルアルコール」が、Wnt5aを増加させることも発見。同社はこの研究成果を応用し、今夏にも育毛剤を発売する。

 毛乳頭細胞は、毛の伸長にかかわる毛母細胞の機能を調節し、発毛や育毛に重要な役割を果たす。低栄養状態では通常死んでしまうが、Wnt5aを作用させたところ、毛乳頭細胞死を防ぐ効果が確認された。
 Wntはこれまで19種類見つかっており、そのうち数種類は毛根組織の形成にかかわるとみられていたが、詳細は未解明だった。この研究成果は、3月28日から富山で行われる日本薬学会で発表する。

[産経iZaニュース / 2007年03月26日]
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/life/health/44878/

株式会社ノエビア ホームページ
http://www.noevir.co.jp/index.htm

角膜組織、細胞1個から再生に成功=東京大学病院

2007年03月14日 | 再生医療
 薬品や薬の副作用で角膜の表面が大きく傷ついたため起きる視力低下の治療に欠かせない角膜上皮組織を、1個の角膜の細胞から作製することに東京大病院の研究チームが成功した。

 これまでは角膜の正常な部分を2平方ミリ・メートル採取して培養する必要があったが、今回の方法を使えば、組織のもとになる幹細胞が1個でも採取できれば、視力回復につなげることが期待できるという。横浜市で開かれている日本再生医療学会で13日、発表した。

 同病院角膜組織再生医療寄付講座の山上聡客員助教授と横尾誠一助手らは、人間の角膜から黒目周辺の角膜輪部という部分を採取し、酵素でバラバラにして培養した。その結果、約1週間で直径約0・3ミリの塊になり、3週間後には直径約2センチのシート状の角膜上皮組織ができた。この組織は通常の角膜上皮組織と同じ三次元構造をしていた。

 山上客員助教授は「数年以内の臨床応用を目指したい」と話している。

[読売新聞 / 2007年03月14日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070314i407.htm

[薬事日報 / 2007年03月14日]の記事
http://www.yakuji.co.jp/entry2505.html

東京大学 医学部 眼科学教室のページ
http://plaza.umin.ac.jp/oph/index.html