ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

ゴボウの種、膵臓がん増殖抑制=国立がん研究センター東病院

2010年04月25日 | 癌、腫瘍
 国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)は、漢方薬の解熱剤などに使われるゴボウの種子「牛蒡子(ごぼうし)」に、抗がん剤が効きにくい膵臓(すいぞう)がんの増殖を抑える作用があることを、マウスの実験で突き止めた。

 患者を対象に臨床研究を行い、新しい治療法の実現化を目指す。

 がん細胞のうち、酸素や栄養分が少ない環境で生き残るタイプは、抗がん剤が効きにくく、がん再発の原因になる。江角浩安院長らは、酸素や栄養分が少ない環境で培養したがん細胞に、牛蒡子に含まれるアルクチゲニンを加えると、がん細胞が激減することを発見。膵臓がんのマウスは通常、生後55日ですべて死ぬが、牛蒡子を1回50~100マイクロ・グラムずつ週5回投与すると、生後100日を過ぎても半数が生き残った。

 江角院長は「膵臓がんの患者にも効果があるか、早く検証したい」と話している。

[読売新聞 2010年04月25日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100425-OYT1T00022.htm

早期発見がむつかしく、進行も早いすい臓がん、毎年2万2千人の患者さんが命を落とされています。良い治療法が確立されることを願います。。

ダイエットで人気、「αリポ酸」で低血糖症に=厚生労働省研究班

2010年04月16日 | 食品・栄養
 ダイエットや老化防止に効果があるとして広く使われているサプリメント「α(アルファ)リポ酸」で、震えや動悸を引き起こす「自発性低血糖症」を招くケースが相次いでいる。

 厚生労働省研究班(主任研究者・内潟安子東京女子医大糖尿病センター教授)がまとめた全国調査で、2007年から3年間で少なくとも17件起きていたことがわかり、注意を呼びかけている。

 自発性低血糖症は、血糖値を下げる薬を使っているわけではないのに低血糖になるものをいう。重症になると、昏睡状態に陥る。

 原因は様々だが、特定の白血球の型を持つ人が、SH基と呼ばれる構造を持つ薬やサプリメントを服用すると、発症しやすい。αリポ酸にもSH基がある。

 この白血球の型を持つのは日本人の約8%だが、SH基のある薬やサプリメントによって自発性低血糖症が起きた患者は、9割以上がこの白血球の型を持っていた。

 研究班によると、全国の主要病院207施設で、07年から3年間に自発性低血糖症と診断された患者187人のうち、サプリメントとの関連が報告されたのは19人で、うち17人がαリポ酸だった。摂取した量や期間は不明だが、服用を始めてから一、二か月で震えや動悸などの症状が出て、受診するケースが多いという。

 内潟教授は「サプリメントは健康増進をうたっているが、使い方によって薬と同じような副作用が起こる恐れがある。異常が起きたらすぐ服用をやめ、受診の際はどんなサプリメントを服用しているかも医師に必ず伝えてほしい」と話す。

 ◆αリポ酸=ビタミンのように、体内で代謝を助ける働きを持つ補酵素の一つ。もともとは医薬品だが、2004年の基準改正でサプリメントとして売られるようになった。
(2010年4月16日15時49分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100416-OYT1T00779.htm

体内のメカニズムが働いてインシュリン濃度が急変するのでしょうか。健康食品の服用も油断することなく注意を払う必要があるよ、ということですね。

脳神経形成の仕組み解明 タンパク質複合体が鍵=慶應義塾大学

2010年04月16日 | 脳、神経
 大人の成熟した脳で神経回路が形成、維持されるのに、2種類のタンパク質の複合体が重要な役割を果たしていることをマウスの実験で解明したと、慶応大の柚崎通介教授(神経生理学)らが16日付の米科学誌サイエンスに発表した。

 この複合体は、小脳で神経細胞の接着や成熟を促すことを確認。小脳の病気による運動障害の新たな治療法開発につながるのではないかという。

 人間の脳は、1千億個を超える神経細胞が結合し神経回路をつくっている。細胞と細胞のつなぎ目である「シナプス」は発達に伴って形成され、大人になってからも学習によって改変されるが、大人の脳でシナプスがどのように形成、維持されるかはよく分かっていなかった。

 柚崎教授らは大人のマウスを使った実験で、小脳にある顆粒細胞とプルキンエ細胞という2種類の神経細胞の間で、「Cbln1」と「GluD2」という2種類のタンパク質が複合体を形成し、細胞と細胞の間で「のり」のように働いて接着を促していることを突き止めた。

 これらに似たタンパク質は、記憶や学習に関係する海馬や大脳皮質にもあり、柚崎教授は「将来は、認知症や精神神経疾患の治療法開発にも役立つのではないか」と話している。

[共同通信47NEWS 2010年04月16日]
http://www.47news.jp/CN/201004/CN2010041501000670.html

Science Web版
Cbln1 Is a Ligand for an Orphan Glutamate Receptor {delta}2, a Bidirectional Synapse Organizer
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/328/5976/363

シナプスの可塑性、‥たくさんの謎のうちの一つが分かったのですね。老後も記憶など衰えることなく健康でいたいものです。
良い医薬品を見つけるヒントになると良いと思います。

田辺三菱製薬=業務停止25日…子会社が製剤データ改ざん

2010年04月14日 | 創薬
 田辺三菱製薬(大阪市)の子会社バイファ(北海道千歳市)が昨年、試験データなどを改ざんした血液製剤を自主回収した問題で、厚生労働省は13日、薬事法に基づき、田辺三菱に第1種医薬品(処方せん薬)の製造販売業務を17日から25日間停止する命令を出した。バイファには14日から30日間の業務停止を命じ、両社に業務改善命令も出した。

 大手製薬会社が承認手続きの不正で業務停止処分を受けるのは異例。ただし販売済みの医薬品の安全管理業務や、代替性がなく安定供給に支障が出る恐れがあるリウマチ治療の点滴薬などは対象外。厚労省は「バイファでは品質試験や製造工程で不適切な行為が組織ぐるみで行われていた。田辺三菱も不適切な行為を漫然と見逃した」と理由を説明した。

 問題となったのは、両社が共同開発した世界初の遺伝子組み換え人血清アルブミン製剤「メドウェイ注」。血液が原料の従来品に比べ、感染リスクを排除できるメリットがあり、大量出血のショック時などに使われる。厚労省によると、バイファはラットで行ったアレルギー反応実験で一部陽性反応が出たデータを陰性に差し替えるなど両社で計16項目の試験データや生産管理システムの記録改ざんなどの違反行為を行った。田辺三菱は07年10月に国の承認を受けて販売し、約1700人が使ったが健康被害は確認されていない。

 田辺三菱は旧ミドリ十字などが合併を繰り返して現在に至り、バイファ96年に旧ミドリ十字が設立。今月公表された両社の社外調査委員会(委員長・郷原信郎弁護士)の報告書は、旧ミドリ十字が薬害エイズ事件で多額の損害賠償請求を受け厳しい経営状況にあったことが不正の背景にあると指摘した。[佐々木洋]


◇「規制順守を徹底」…田辺三菱製薬の社長

 田辺三菱製薬の土屋裕弘(みちひろ)社長は13日夜、藤井武彦バイファ社長とともに会見し「生命にかかわる製薬会社としてあってはならないことで深くおわび申し上げる。グループ各社の規制順守の徹底を図り再発防止に努める」と陳謝した。[松本惇]

[毎日新聞 2010年04月14日]
http://mainichi.jp/select/biz/news/20100414k0000m040060000c.html



悲しい気持ちでいっぱいです。
クスリはヒトの体に入ってその人の命に関わるものです。医薬開発に携わる者の常識があれば、こんな不正行為が出来るはずありません。データの隠蔽、改ざん、ねつ造、サンプル差し替え、しかも31件もあったそうで、組織的にとか、どうしてあり得ましょうか!?生命の重さをご存じですか!?自分の会社を潰す気ですか!?
以前この会社に合併した「ミドリ十字」は薬害エイズを始め、良くない噂の多かった会社でした。それにしても、あまりに杜撰、あまりに悪質、ホントに信じられません。

これから、田辺三菱はお金では購えない、失ってしまった信頼を取り戻すために、大変な苦労をすることでしょう。それでも、患者さんの安心のためにあらゆる証明をしていかなければなりません。
中の人、どうか堪えて頑張ってください。それから今回は薬害が起きなかったことに安堵します。

(ああ、こんな残念なニュースでエントリー追加とは‥。
でも実験に供されたラットだって浮かばれませんよね、データ改ざんされたなんて、最低です。

私事で、家庭の事情でこのブログも更新の必要がなくなっていました。
ウチのラットたちも元気です。)

アルツハイマー病:脳の老人斑なくても発症、マウスで実証=大阪市立大学

2010年04月13日 | 脳、神経
 アルツハイマー病の特徴の一つとされる脳の「老人斑(アミロイド斑)」がなくてもアルツハイマー病の症状が起きることを、大阪市立大などの研究チームがマウスで実証した。老人斑を抑制するだけでは有効な予防や治療にならない可能性がある。米神経科学会誌(電子版)に掲載された。

 老人斑はアミロイドベータ(Aβ)というたんぱく質が繊維状につながったもので、アルツハイマー病の原因の一つと考えられている。だが、実際の患者の症状の重さと老人斑の数が比例しなかったり、老人斑がなくても発症するケースがヒトで報告されている。

 富山貴美(とみやまたかみ)・大阪市立大准教授(脳神経科学)らは、患者の脳では老人斑だけでなくAβの分子が数個~数十個集まった「重合体」も蓄積されていることに着目した。

 そこで重合体はできるが老人斑はできない遺伝子改変マウスを作製。8カ月ごろからAβの重合体が目立って増えた。それに伴い、記憶中枢である海馬では神経細胞が減少し、平均寿命に近い24カ月(ヒトの80歳程度)では普通のマウスの半分近くになった。

 プール内の休憩場所を覚えさせる記憶テストでも、8カ月の遺伝子改変マウスは同月齢の普通のマウスが1週間程度で覚える課題をこなせなかった。チームはこうした症状から、老人斑のないマウスもアルツハイマー病を発症したと結論づけた。【大場あい】

[毎日新聞 2010年04月13日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20100413dde041040024000c.html

大阪市立大学 プレスリリース
「アルツハイマー病の老人斑説を否定!マウス実験で確認」
http://www.osaka-cu.ac.jp/news/20100407143913/press.html

これは発見、
アミロイドベータ単独犯説が明らかになったのですね、治療薬を開発する道筋も見つけやすくなると思います。
どうしてアミロイドベータが増えるのか、そちらの研究もこれから盛んになるのでしょうか。