ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

タミフルの脳への興奮作用、ラットで実証 米の邦人教授=ワシントン大学

2007年09月29日 | 心のしくみ
 インフルエンザ治療薬タミフルに脳細胞を興奮させる作用があることを、米ワシントン大学(ミズーリ州)の和泉幸俊教授(精神医学)らがラットを使った実験で初めて明らかにした。内容は10月9日発行の医学専門誌「ニューロサイエンス・レターズ」に掲載される。

 タミフル服用と異常行動の関係については、タミフルを飲んだ10代の子が自宅マンションから飛び降りて死亡するなどの問題が相次いだ。

 和泉教授らは、ラットの脳から取り出した神経細胞を、タミフルと、タミフルが体の中で分解された時にできる薬効成分のOCBという化学物質の水溶液にそれぞれ浸した。すると、どちらも約10分後に神経細胞の活動が過剰に盛んになった。各薬物を洗い流した後も、40分以上神経細胞の興奮は続いた。タミフルそのものよりも、OCBの方が約30倍も作用は強かった。人間で未成年に異常行動が相次いでいるため、今回は思春期前の子どもに相当する生後1カ月の幼いラットの神経細胞を使った。

 また、エフェドリンという風邪薬に含まれる成分や、アルコールを、タミフルと同時に幼いラットに摂取させると神経興奮作用が強まることもわかった。

 脳には、血中の物質を脳内に通すかどうかを選別する血液脳関門という脳を守る特別な機能があるが、エフェドリンやアルコールは、血液脳関門のガードを緩めることがわかっている。

 和泉教授は、思春期前の子では血液脳関門の機能が未熟であることや、ガードを緩める作用があるものと一緒に飲むことで、タミフルが関門をすり抜けて脳に到達し、神経細胞に作用するのではないか、と推測している。

 タミフル輸入販売元の中外製薬広報IR部の話 現在、厚労省の指示に従いながら、タミフルや代謝産物が血液脳関門を通るかどうかなどの基礎研究を進めているところだ。

[朝日新聞 / 2007年09月29日]
http://www.asahi.com/science/update/0929/TKY200709290068.html

カロリー摂取の削減は万病に効く? メカニズムを発見=ハーバード大学

2007年09月23日 | 生活習慣病
【9月23日 シカゴ発=AFP】栄養分は減らさず摂取するカロリーだけを大幅に減らすと、ヒトに限らず、イースト菌も、ネズミも、サルも、長生きするのはなぜか―、その謎が解き明かされたとハーバード大学医学部(Harvard Medical School)のデービド・シンクレア(David Sinclair)教授の研究チームが20日、医学雑誌「Cell」に発表した。

 研究によれば、食餌制限と長寿に相関関係があるのは、「摂取カロリーが減る」というストレスに分子レベルの反応がおこり、これにより重要な細胞機能が維持され、身体が加齢に伴う病気に抗するのを助けるからだという。

 人体の細胞を用いた実験によって、人間の細胞に必要な栄養分は確保した上で摂取カロリーを減らすと、細胞の動力源ともいえるミトコンドリア内部で連鎖反応が始まり、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)と呼ばれるコエンザイム(補酵素)が増強されるのが示されたという。

 それがSIRT3、SIRT4という2つの遺伝子から生まれる酵素の活動を活発化させ、ミトコンドリアのエネルギー出力が上昇し、細胞の老化を妨げるという。

 Sinclair教授は、「NADの増加によりいかなるメカニズムが作用するのかについてはまだ確認できていない」としつつも、「(加齢とともに作動するように)あらかじめ人体にプログラムされている細胞の死滅が、これにより大幅に阻害されるということは示された」とする。

 また、「SIRT3、SIRT4と細胞の生存との関係が明らかとなったのは今回が初めてだ」と語る。

 つまり、カロリー摂取量を減らすとミトコンドリアが強化され、加齢とともに生じる病気を避けることができることになる。

 これまでもアルツハイマー、卒中、心臓病、糖尿病には、ミトコンドリアのDNAが損傷を受けて細胞が死滅することが関係すると見られており、健康維持にミトコンドリアが重要であることはわかっていたものの、今回の研究で細胞の燃料庫ともいえるミトコンドリアが細胞の生命に決定的であることが改めて証明された。

 またSinclair教授は、「ミトコンドリアは細胞の守護神である。ミトコンドリア内部のNADを増やし続ければSIRT3とSIRT4を刺激し、長期間にわたり他には何も要らないことになる」と語る。

 細胞核など、細胞内のその他のすべてのエネルギー源が消滅しても、ミトコンドリアさえきちんと機能していれば細胞は生き続けるのだという。(c)AFP

[AFP BB-News / 2007年09月23日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2287533/2173899

心不全にからむたんぱく質発見=国立循環器病センター

2007年09月22日 | 循環器
 心臓が正常に動くために必要で、不足すると心不全につながるたんぱく質を国立循環器病センターと大阪大などの研究グループが発見した。心臓への負担が少ない心不全治療薬の開発につながる可能性がある。米医学誌ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション電子版に21日、発表した。

 発見されたたんぱく質はミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)と呼ばれる酵素の心臓特異型。12人の重症心不全患者から治療のために切り取った心筋を使い、そこで働く遺伝子を調べた。すると、心不全の症状の重さと関連の深い遺伝子が特定され、その遺伝子が作りだすMLCKが少ないと、心不全になる傾向が強いことがわかった。

 心筋内のMLCKが足りない熱帯魚を遺伝子操作でつくったところ、心臓収縮の原動力となる筋細胞内の配列が乱れ、心臓が大きくなって拍動に異常が現れ、心不全と同じ症状になった。ラットの実験でも、MLCKが心筋細胞内の規則的な配列を維持し、心臓が正常に収縮するために必要なことがわかったという。

 循環器病センターの北風政史・心臓血管内科部長は「弱った心筋を酷使する従来の強心剤は心臓への負担が大きい。心臓のMLCKの働きを活性化することで壊れた心筋を修復し、副作用も少ない心不全治療薬の開発につながる」と話す。

[朝日新聞 / 2007年09月22日]
http://www.asahi.com/science/update/0922/OSK200709220018.html

透明ガエルできた、病気の研究に期待=広島大学

2007年09月21日 | 可視化技術
 外から内臓が透けて見える透明なカエルを誕生させることに、広島大両生類研究施設の住田正幸教授らが成功した。

 解剖せず生きたままで臓器や血管の状態を観察できるため、さまざまな病気の研究や治療法開発に役立ちそうだ。透明な生き物は魚類などで例があるが、4足動物では極めて珍しいという。

 青森県弘前市で開催中の日本動物学会で22日、発表する。

 住田教授によると、国内に広く生息するニホンアカガエルでは、体色が薄くなる遺伝子の突然変異がこれまでに2種類見つかっていた。教授らは変異を持つカエルを掛け合わせ、変異遺伝子を2つ持つカエルをつくった。さらにこのカエル同士を掛け合わせた結果、オタマジャクシから成体まで生涯を通じ皮膚が透明な個体が生まれた。

 特定の遺伝子に蛍光タンパク質の遺伝子をつないで透明ガエルに組み込めば、問題の遺伝子が働いたときにリアルタイムで体が光るカエルもつくることができるという。(共同通信)

[京都新聞 電子版 / 2007年09月21日]
http://kyoto-np.jp/article.php?mid=P2007092100010&genre=G1&area=Z10

「ネコのおしっこ」か「バニラの香り」か? においの感じ方は遺伝子の違いが決定=ロックフェラー大学

2007年09月18日 | 心のしくみ
【9月18日 パリ/フランス発=AFP】同じ「におい」でも人によっては感じ方が違うのは、その人が持つ1つの遺伝子の違いによる可能性が高いという研究報告が、16日発行の英科学誌「ネイチャー(Nature)」で発表された。

 ヒトの嗅覚と味覚は極めて主観的なものであることは知られている。ある人が素晴らしい匂いだと感じる香水でも、別の人にとっては不快だし、ある人が究極の美酒と思うワインも、別の人にとっては単なる安酒に感じられる。さらに、そのどちらとも感じない人もいる。なぜ人によってにおいや味に対する感じ方が違うのかは、これまで解明されていなかったが、このほどニューヨークのロックフェラー大学(Rockefeller University)のLeslie Vosshall氏が行った実験により、この謎を解く鍵の1つが提供された。

 実験では、被験者に「アンドロステノン(androstenone)」など、数十種類の臭気の「強さ」と「不快度」を判断してもらった。アンドロステノンは、男性の尿や汗に含まれる臭気の原因物質。8割の被験者はアンドロステノンを「古い尿のようなにおい」だと評価したが、残りの2割は同じにおいを「バニラかハチミツのようで心地よいにおいだ」と評価した。

 一方、ノースカロライナ州のデューク大学(Duke University)で松波宏明(Hiroaki Matsunami)氏が率いる研究チームが行った実験により、アンドロステノンにより「OR7D4」と呼ばれる嗅覚受容体遺伝子の1つが作動することが分かった。ヒトの嗅覚受容体遺伝子は数百種類あるが、鼻腔の神経細胞は一度に1個の遺伝子しか作動できない。

 そこで2つの研究チームは共同研究を行い、互いの実験で入手した被験者のDNAサンプルを用いて「OR7D4」を調査した。その結果、一部の被験者の中で、「OR7D4」は一塩基多型と呼ばれるわずかな突然変異を起こし、基本的なDNAのブロックの一部が変化していたことが判明した。

 このDNA分析結果を、実験結果と対照してみると、アンドロステノンを「ネコの古いおしっこのようだ」と感じたグループと「バニラのようだ」と感じたグループの区分と、「OR7D4」遺伝子が従来どおりのグループと変化したグループとの区分とが、一致していることが確認されたという。

 これを受けて共同研究の総責任者のアンドレアス・ケラー(Andreas Keller)氏は、「同一の臭気が人によって感じ方が異なるのは、嗅覚受容遺伝子OR7D4の微妙な違いによって決定されると言える」と説明している。(c)AFP

[AFP BB-News /2007年09月18日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2284578/2153303

鳥のさえずり、学習制御 脳内の特有物質を発見=理化学研究所

2007年09月17日 | 心のしくみ
 親鳥の鳴き声をまねて多彩なさえずりを身につける鳥は、脳に特有の物質が存在していることを、理化学研究所脳科学総合研究センターの生物言語研究チームが突き止めた。さえずりの学習能力を遺伝子レベルで解明する成果で、日本神経科学学会(今月10~12日)で発表した。

 鳥類には、生まれながらに持っている鳴き声しか出せない種類と、親から学び、成長するにつれて、さまざまな歌声を出せるようになる種類がある。両グループの脳機能の違いは、詳しく分かっていなかった。

 岡ノ谷一夫チームリーダーと松永英治研究員は、歌声の学習能力があるジュウシマツとセキセイインコの大脳を分析。学習領域の遺伝子の働きを調べた結果、アンドロジェンという性ホルモンの受容体と、細胞接着分子のカドヘリンが作られていることが分かった。学習能力がないウズラやハトでは、これらの物質は検出されなかった。

 鳥のさえずりは、雌を引き寄せる性行動の一種。性ホルモンが関係しているのはそのためとみられ、カドヘリンは脳の神経回路をつなぐ役割を果たしているらしい。

 岡ノ谷リーダーは「鳥が歌声を学ぶ脳の仕組みは、人間が言葉を学ぶ仕組みとよく似ている。人間がどのように言語を獲得したのかを解明する糸口になる」と話している。(長内洋介)

[産経新聞 / 2007年09月17日]
http://www.sankei.co.jp/culture/kagaku/070917/kgk070917000.htm

薬剤耐性遺伝子、海の細菌から人体へ移動も=愛媛大学

2007年09月16日 | 遺伝子
 抗生物質を効かないようにする薬剤耐性遺伝子は、自然界の海洋細菌から、人の体内にもいる大腸菌や腸球菌に移動しやすいことが分かった。耐性菌を含んだ生魚などを食べると、使ったことのない抗生物質でも効かなくなる可能性を示す結果だという。松山市で開催中の日本微生物生態学会と国際微生物生態学シンポジウムアジア大会の合同学会で、愛媛大沿岸環境科学研究センターの鈴木聡教授らが17日、発表する。

 実験では、魚の養殖でも利用される抗生物質の一つであるテトラサイクリンが効かなくなる耐性遺伝子を持った5種類の海洋細菌を使った。これらの海洋細菌と、大腸菌や腸球菌を一緒に培養した。すると、細胞の膜構造が互いに似ている場合に、耐性遺伝子が大腸菌や腸球菌に取り込まれる確率は最高1000分の1程度あった。

 似た細菌が接触して細菌間で遺伝子が移動する確率は、100万分の1から10万分の1程度だとされる。ところが、耐性遺伝子では100~1000倍高い値になった。

 鈴木教授は「環境中の菌から、人の体内の病原性の大腸菌などに耐性遺伝子が移ると、抗生物質が効かなくなる恐れがある」と話している。

[朝日新聞 / 2007年09月16日]
http://www.asahi.com/science/update/0915/OSK200709150076.html

アルツハイマー病進行の仕組み解明=熊本大学

2007年09月13日 | 創薬
 熊本大薬学部付属創薬研究センターの水島徹教授(39)らの研究グループは10日、アルツハイマー病の原因となるたんぱく質「ベータアミロイド」の生成を促進させる物質を突き止めたと発表した。アルツハイマー病は脳挫傷や脳卒中などで症状が進行することが知られており、水島教授は「脳内の炎症が病気を進行させる仕組みが分かった。今後の新薬開発に役立てたい」としている。

 研究は2005年7月から、小野薬品工業(大阪市)と共同で実施。今回の成果は今月3日、米国生化学会誌の電子版に掲載された。

 水島教授によると、ベータアミロイドの生成を促進するのは、「プロスタグランジンE2」と呼ばれる生理活性物質。炎症の発生を細胞に伝える働きをすることで知られているが、新たに神経細胞の表面にある「受容体」と呼ばれるたんぱく質と結合し活性化することで、脳にベータアミロイドを蓄積させることがわかった。

 受容体はEP1~EP4の四つがあり、マウスを使った実験でEP2とEP4がベータアミロイドの生成を促進することが判明。一方、受容体の働きを止める薬を使うと、ベータアミロイドの生成が抑制されることが確認されたという。

 アルツハイマー病の国内患者は約200万人。炎症などが原因で引き起こされる場合が多いと見られている。アルツハイマー病に詳しい北海道大大学院薬学研究院の鈴木利治教授(51)は「進行のメカニズム解明は大きな成果。治療薬開発へ新たな道が開かれることを期待したい」と話している。

[読売新聞・九州発 / 2007年09月13日]
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/ne_07091104.htm

「進歩派と保守派では、神経細胞の反応が異なる」=ニューヨーク大学

2007年09月11日 | 生きもの色々
【9月10日 AFP】「政治観の違い」の一部は、生まれつき持ち合わせたものによるとする研究結果が、9日付けの英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス(Nature Neuroscience)」に掲載された。「人間は政治的動物である」と述べた哲学者アリストテレス(Aristotle)は、本人が認識していた以上に、人間の本質をついていたのかもしれない。

 研究を発表したのは、米ニューヨーク大学(New York University)の政治学者デビット・アモーディオ(David Amodio)率いる研究チーム。研究によると、進歩主義者と保守主義者では、厳しい選択に直面した際の脳神経細胞の反応の仕方が異なる。

 研究チームは、進歩主義者と保守主義者の脳が、ある刺激に対し異なる反応を示すか否かを突き止める実験を行った。

 実験は43人の右利きの被験者に対し、定着した型どおりの行動を崩すことを促す合図を送り、考えることなく反応を返すよう設計された一連のコンピューターテストを実施するというもの。

 神経細胞の反応を測定する脳波計を用いて、脳の前帯状皮質の活動を調査したところ、活動が「矛盾を監視する自己調整プロセス」と密接に関連していることが分かったという。

 この関連性は明白で、状況が「型どおりの行動を破る要求」をしたとき、進歩主義者の反応は「型を破ろうとする神経作用」が明らかに大きかった。一方、保守主義者は進歩主義者に比べ柔軟性に劣り、「変えるべきだ」との兆しは示しながらも、古い慣習から逸れることを拒否する作用が働いたという。

 この結果は進歩主義者は融通が利き、保守主義者は杓子定規で頑固だと読むこともできる。逆に、優柔不断な進歩主義者は自身の主義を貫かず、保守主義者は信念を持ち忠実だと見ることも可能だ。(c)AFP/Marlowe Hood

[AFP BB News /2007年09月11日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2280550/2121347

スプリンターか、マラソンランナーかを左右するのは「ACTN3」遺伝子(シドニー、オーストラリア)

2007年09月10日 | 遺伝子
【9月10日 パリ/フランス発AFP】(一部修正)あなたは短距離を速く走りたいと思うだろうか? それとも長距離を快適に走りたいだろうか? その希望を左右するのは、「ACTN3」として知られる、いわゆる「速く走ることに関係する遺伝子」によって握られている。

 「ACTN3」は、速い動きを生み出す「速筋」の新陳代謝を司るタンパク質の遺伝暗号を持つ遺伝子だ。

 世界の人口の18%は、このタンパク質を阻止する変異体を保有しているという。中でも「R577X」と呼ばれる変異体は、優れた長距離ランナーによく見られることが、過去の研究で明らかになっている。

 逆に、瞬発力が求められる一流の短距離ランナーは、「R577X」を持たない傾向にあるという。

 オーストラリア・シドニー(Sydney)のウエストメッド(Westmead)にある小児病院のキャスリン・ノース(Kathryn North)教授率いる研究チームはさらに研究を進めるため、遺伝子操作により「ACTN3」が欠如したマウスを作り出し、実験を行った。

 実験は、「ACTN3」を欠いたマウスと「ACTN3」が機能している普通のマウスを電動踏み車に乗せ、マウスが疲れ果てるまで速度を上げ続けるというもの。

 その結果、「ACTN3」が欠如したマウスは普通のマウスの3倍以上もの距離を走ることができた。

 理由は、「ACTN3」の欠如は、筋肉の新陳代謝をより滑らかかつ効果的に有酸素系に変換する「αアクチニン2」と呼ばれる別のタンパク質によって補われていたからだ。その結果、「速筋」は疲労することなく、繰り返し伸縮することができたのだ。

 研究結果は9日付の英科学誌「ネイチャー(Nature)」の姉妹誌、「ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)」に掲載される。(c)AFP

http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2280556/2121349

脳内の情報伝達コントロールするタンパク発見P=三菱化学生命科学研究所、自然科学研究機構・生理学研究所

2007年09月08日 | 脳、神経
情報を伝える担い手である神経伝達物質の流れをコントロールしているタンパクを、三菱化学生命科学研究所と自然科学研究機構・生理学研究所の研究者たちが見つけた。脳神経精神疾患の新たな治療薬開発にもつながる成果と期待されている。

瀬藤光利・生理学研究所助教授(三菱化学生命科学研究所グループリーダー兼務)、矢尾育子・三菱化学生命研究所研究員らは、ユビキチン・プロテアソーム系と呼ばれるタンパク分解の仕組みが、神経細胞と神経細胞の間で情報の受け渡しを担っている神経伝達物質の放出にかかわっているのでは、と狙いをつけた。ヒトゲノムのデータベースに基づいて探索した結果、“壊し屋タンパク質(SCRAPPER)“と名付けた分解酵素を発見、実際にこの酵素が、生体内において神経細胞の先端から神経伝達物質が異常に放出するのを抑えて、適度に放出されるよう調節していることを突き止めた。

脳内の情報のやりとりは、シナプスと呼ばれる神経細胞同士のつなぎ目を介して行われることが早くから知られている。脳梗塞、アルツハイマー病、統合失調症、うつ病などの精神疾患で、神経伝達物質の異常放出が起きていることも推測されている。しかし、このシナプス中にあるシナプス小胞に入った神経伝達物質が、次の神経細胞に放出される仕組みは分かっていなかった。

この研究成果は、7日発行の米国の医学生物学誌「CELL」に掲載されたが、“壊し屋タンパク質”をイメージした漫画家、荒木飛呂彦氏によるイラストが、同誌の表紙を飾っている。

[サイエンスポータル / 2007年09月07日]
http://scienceportal.jp/news/daily/0709/0709071.html

科学技術振興機構 プレスリリース
脳内の壊し屋タンパク質を発見(脳梗塞や精神神経疾患の治療に期待)
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20070907/

イラストは"CELL"誌2007年09月07日号表紙
http://www.cell.com/

脳神経の伝達回路、一部解明=統合失調症研究に期待=理化学研究所

2007年09月08日 | 脳、神経
 脳で細長い樹木のような神経細胞同士が接合するシナプスでは、情報を送る軸索側の表面にある2種類のたんぱく質に応じて、情報を受ける樹状突起側の2種類のたんぱく質の分布が決まり、1対1の対応関係で結合することが分かった。理化学研究所脳科学総合研究センターの西村幸子研究員らがマウスの実験で突き止め、8日までに米科学アカデミー紀要電子版に発表した。
 この軸索の先端部にあるたんぱく質「ネトリンG1」と、根元部にある「ネトリンG2」は、統合失調症に関連する可能性があることが患者の調査で分かっている。シナプスの複雑な送受信回路の一端が明らかになり、発症メカニズムの解明が進むと期待される。

[時事ドットコム / 2007年09月08日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007090800288

理化学研究所 プレスリリース
 2組のタンパク質のペアが脳の神経回路を“区画化”していることを発見
 - 複雑な脳における情報伝達経路を整理するシンプルな仕組み -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070904/index.html

女性ホルモン:「破骨細胞」調節し骨量維持=東京大学

2007年09月07日 | 創薬
 骨を作る細胞に作用していると考えられていた女性ホルモンが、骨を分解する「破骨細胞」の寿命を調節して骨量を維持していることを、東京大などの研究グループが突き止めた。これにより、女性ホルモンの欠乏によって閉経後に骨粗しょう症を発症するメカニズムの一端が明らかになった。新しい治療薬開発にもつながる可能性があり、7日付の米科学雑誌「セル」(電子版)に掲載される。

 健康な人では、骨をつくる骨芽細胞と、骨を分解・吸収する破骨細胞との働きが釣り合い、一定の骨量が保たれる。閉経などにより女性ホルモンが欠乏するとこのバランスが崩れ、骨がすかすかになる骨粗しょう症を引き起こす。しかし、そのメカニズムは分かっていなかった。

 研究グループは、さまざまな細胞に存在し、女性ホルモンに結合する受容体に着目。骨表面の破骨細胞からこの受容体をなくしたマウスを、遺伝子操作によって作った。

 このマウスは足の骨と背骨で骨量の低下がみられ、通常のマウスに比べて破骨細胞の数が増えていることが分かった。

 通常のマウスの破骨細胞に女性ホルモンを投与すると、「アポトーシス」と呼ばれる細胞死を引き起こす遺伝子の働きが活発になり、破骨細胞の細胞死が進んだ。しかし、女性ホルモン受容体を持たないマウスの破骨細胞では、遺伝子の働きに変化はなく、細胞死も進まなかった。

 グループの同大分子細胞生物学研究所の加藤茂明教授は「女性ホルモンは骨を吸収する細胞が長く居座らないようにする働きをしていた。破骨細胞の女性ホルモン受容体を活性化させる物質が見つかれば、新たな治療薬につながるかもしれない」と話している。【下桐実雅子】

[毎日新聞 / 2007年09月07日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070907k0000m040166000c.html

精子:おおもと細胞が特定場所に存在=京都大学

2007年09月07日 | 遺伝子組替マウス
 京都大医学研究科の吉田松生(しょうせい)助教(生殖細胞学)らのチームは、精巣内で精子を作るおおもととなる細胞「未分化型精原細胞」が、血管近くなど特定の場所に存在することを発見した。また、この細胞が分裂しながら分化する際、精巣全体に広く移動する様子の動画撮影にも成功した。精子の形成過程の解明や、将来的には男性不妊の問題解決などにつながる基礎となるという。成果は6日(米東部時間)、米科学誌「サイエンス」(電子版)に掲載される。

 哺乳(ほにゅう)類の精子は、精巣内に曲がりくねった状態で詰まっている「精細管」の中で形成される。チームは、マウスに蛍光遺伝子を組み込んで“おおもと細胞”が光るようにしたうえで、露出させた精巣の一部を顕微鏡に固定。3日間、コマ送りでビデオ撮影した。

 その結果、おおもと細胞は、精細管を取り巻く血管や、男性ホルモンを作る細胞の近くに多く存在していることが判明。血管の場所を移すと、おおもと細胞もその近くへ移った。また分化して精子になるにつれ、精細管内で分布が均一になるように動いていった。

 吉田助教は「精子の形成過程はいまだに謎が多い。次の課題は、おおもと細胞が好む場所で、どんな物質が出ているかを探ること」と話している。【鶴谷真】

[毎日新聞 / 2007年09月07日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070907k0000m040167000c.html

食べ物のにおい認識、カギ握る細胞を解明=東京大学

2007年09月06日 | 心のしくみ
 脳の中には、いくつかの特徴的なにおいの組み合わせを認識する神経細胞があることを、森憲作・東京大教授らのグループが解明し、米専門誌に発表した。においを識別する仕組みの解明につながりそうだ。

 一つの食べ物からは100種以上のにおい分子が出ており、それらは鼻の奥でばらばらに受け止められる。だが、その情報が脳で統合され、においとして感じる仕組みは解明されていない。

 食品業界などは、食べ物のにおいを分子構造と主観的な特徴から14のカテゴリーに分け、個々の食べ物のにおいは、その組み合わせで表現できるとしてきた。例えば、リンゴは「青葉のようなカテゴリー」と「フルーティーなカテゴリー」の組み合わせだ。

 グループの大学院生、吉田郁恵さんらは、嗅覚(きゅうかく)と関係する脳の嗅皮質にある神経細胞とこのカテゴリーの関係を、ラットで調べた。その結果、さまざまなにおいをかがせた時、個々の細胞は、一つあるいは複数のカテゴリーの組み合わせに対して、特異的に活動することがわかった。

 食べ物のにおいは、情報がさらに脳の別の場所に送られて識別されるが、第1段階の情報はこのようなカテゴリーの組み合わせとして統合されているらしい。

[朝日新聞 / 2007年09月04日]
http://www.asahi.com/science/update/0904/TKY200709040414.html