ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

有酸素運動で食欲抑制ホルモン増、効率的ダイエットに期待=英ラフバラ大学

2008年12月28日 | 生活習慣病
 ジョギングや水泳などの有酸素運動は、短距離走や重量挙げなどの無酸素運動に比べ、胃から分泌される食欲刺激ホルモン「グレリン」を減らすのは同じだが、腸管から分泌される食欲抑制ホルモン「ペプチドYY」をより増やすことが分かった。英ラフバラ大の研究チームが28日までに実験結果を米生理学会の専門誌電子版に発表した。

 有酸素運動は空腹感を一時的に抑える効果が高いことが知られるが、そのメカニズムの解明につながる成果。無酸素運動には筋肉を増やしてエネルギー消費を高める効果があり、研究が進めば、体重をコントロールするのにより効率的な運動法の開発が期待される。(2008/12/28-19:56)

[時事ドットコム 2008年12月28日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008122800136

糖尿病治療に「適度な空腹」必要、マウス実験で確認=東京大学

2008年07月02日 | 生活習慣病
 生活習慣がおもな原因とされる2型糖尿病を治すには、適度な空腹が必要であることが、発症にかかわるたんぱく質の働きの解明から裏付けられた。東京大学などの研究チームによるマウスの実験で、このたんぱく質は空腹が続くと増え、血糖値を下げるインスリンの働きを仲介していることをつかんだ。2日付の米代謝学専門誌で発表する。

 東京大の窪田直人准教授(糖尿病・代謝内科)らは、インスリンの働きにかかわる、IRS2というたんぱく質が肝臓にないマウスをつくり、調べた。

 その結果、IRS2は、肝臓が体内の脂肪などを分解して糖をつくるのを抑えるインスリンの働きを促し、空腹が続くほど増え、食後にほとんどなくなることがわかった。インスリンは、肝臓が食後に糖から脂肪をつくってためこむのを助ける働きもあり、これにはIRS1という別のたんぱく質がかかわっていた。

 IRS1の量はほぼ一定なので、食べ続けることで肝臓には脂肪がためこまれる。2型糖尿病患者に高血糖と脂肪肝が同時に起こる原因とみている。治療薬開発につながる成果という。

 共同研究者の門脇孝・東大教授は、「間食をせずに3食リズムよく食べることが大切」と話している。(鍛治信太郎)

[朝日新聞 2008年07月02日]
http://www.asahi.com/science/update/0702/TKY200807010538.html

酸化悪玉コレステロール、動脈硬化進行に関与=東北大学

2008年07月02日 | 生活習慣病
 動脈硬化を起こして心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞の原因となる悪玉コレステロール(LDL)のうち、酸化LDLだけが動脈硬化の進行にかかわっていることを、東北大大学院医学系研究科の片桐秀樹教授(代謝学)と岡芳知教授(同)らの研究グループが解明した。動脈硬化の治療法開発につながる研究成果として注目される。

 グループは、(1)酸化LDLに結合するタンパク質の遺伝子を肝臓に注入して酸化LDLを吸着させ、血液中の酸化LDLの濃度を抑えたマウス(2)コレステロールに作用しないタンパク質の遺伝子を肝臓に注入したマウス―の2匹を比較した。
 2匹とも高脂血症マウスで、総コレステロール、LDLの数値は変わらない。

 1週間後、(1)は酸化LDLの血中濃度が(2)の3割に低下した。4週間後、血管の変化を観察したところ、(2)は動脈硬化が15%増えたのに対し、(1)は進行が止まっていた。

 片桐教授は「酸化LDLの値が低いマウスの動脈硬化が進まなかったことから、酸化LDLが動脈硬化の原因と特定できる」と説明する。

 心筋梗塞などは動脈硬化の病変部の破裂をきっかけに、血管が詰まって発症する。酸化LDLが少ないと病変部を平滑筋が覆い、破れにくくなることも分かった。

 LDL全体のうち酸化LDLは数%程度。現在はLDLを減少させる内服薬が普及しているが、下げすぎるとがんの発症リスクや死亡率が高まるとの指摘もある。

 片桐教授は「酸化LDLだけを取り除く薬剤が開発されれば、動脈硬化の改善も可能」と話す。

 酸化LDLが動脈硬化に影響するのは、細胞レベルの実験で確認されていたが、動物体内での作用を突き止めたのは初めて。研究成果は1日、米科学誌に掲載された。

[Yahoo! ニュース(河北新報) 2008年07月02日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080702-00000003-khk-l04

肥満原因たんぱく質の構造解明=理化学研播磨研究所

2008年04月01日 | 生活習慣病
 食べ過ぎた食物を脂肪に変える時に働くたんぱく質複合体の構造を、理化学研究所播磨研究所の国島直樹・上級研究員らのグループが解明した。このたんぱく質を活性化する酵素の働きを妨害できれば、肥満など生活習慣病の予防が期待できるという。米専門誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」電子版に発表された。

 炭水化物や糖などを脂肪に変える反応で働く特定のたんぱく質は、BPLとよばれる酵素の仲介で、ビタミンの一種ビオチンと結びついて活性化し、脂肪の合成が始まる。このたんぱく質がつくれないマウスは、食べ過ぎても太らないことが知られている。

 たんぱく質が活性化する様子を知るには、たんぱく質、ビオチン、BPLが結びついた複合体の立体構造を調べる必要がある。研究チームは、短時間で形が変わる複合体を、安定化させる工夫をして、大型放射光施設「SPring8」(スプリング8)で構造を解析。BPLの立体構造の一部が活性化の前後で大きく変わり、たんぱく質の活性化に重要な役割を果たしていることがわかった。

[朝日新聞 / 2008年04月01日]
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200804010031.html

“睡眠不足は肥満のもと”5時間未満だと1・4倍に=日本大学

2008年03月12日 | 生活習慣病
 睡眠時間が短いと肥満や糖尿病などの生活習慣病になりやすいことを、日本大学の兼板佳孝講師(公衆衛生学)らが大規模調査で明らかにし、12日、発表した。

 兼板講師らは、地方公務員2万1693人に、1999年と2006年に睡眠時間などを尋ね、両時点での健康診断データと比較した。

 その結果、いずれの時点でも睡眠時間が5時間未満の場合、5時間以上に比べて肥満の人が約1・4倍であることがわかった。逆に、99年で肥満の人は06年に睡眠時間が短くなっている傾向があり、肥満と短時間睡眠が悪循環の関係になっていることがうかがわれた。

 また、高血糖には睡眠時間が5時間未満の方が約1・3倍なりやすく、99年時点では5時間以上寝ていたのに、06年時点で5時間未満に睡眠時間が減少した人は、中性脂肪の数値が高い状態に約1・4倍なりやすいことがわかった。

 兼板講師は「生活習慣病の予防に向け、食事や運動などだけでなく睡眠も重視していく必要がある」と話している。

[読売新聞 / 2008年03月12日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080312-OYT1T00590.htm

インスリン生産細胞保護分子を特定=東北大学

2008年03月05日 | 生活習慣病
 東北大学の研究チームが、血糖を下げるホルモン・インスリンの生産細胞(β細胞)を保護する分子を特定した。国内に多い2型糖尿病患者の場合、長期間の高血糖にさらされたβ細胞が“過労死”して徐々に減少し、症状が悪化する。今回の成果は細胞過労死を抑制し、糖尿病の悪化を防ぐ新しい治療法につながる可能性が期待される。

 大学院医学系研究科の岡芳知教授と石原寿光講師(分子代謝病態学)らは、2型糖尿病を発症させたネズミの膵島(ランゲルハンス島)にあるβ細胞で、これまで役割のよく分かっていなかった4E―BP1という分子(たんぱく質)が増えることを発見した。

 高血糖でインスリンの大量生産を続ける過労状態になると、β細胞は内部にごみがたまり死んでしまう。しかし、通常は過労ストレスがかかると、β細胞の休眠遺伝子が目覚めて4E―BP1を増加させ、細胞死しないようにブレーキをかけることを突き止めた。

 国内では、糖尿病患者と予備軍は、計1620万人を超えると推計される。その大半を占める2型糖尿病では、インスリンが生産されても、血糖が十分に下がらず、さらに生産が促される悪循環が続き、最終的に膵島の機能が失われる。研究チームは今後、新薬開発に役立てられるように、この分子の詳細な立体構造と、ブレーキ部分の仕組みの解明を目指す。今回の成果は、米科学誌電子版に掲載される。

 石原講師は「インスリン生産を促すことを目的とした既存薬は、過労状態のβ細胞に負担をかけてしまう。逆にβ細胞を保護できれば、長期的な血糖管理に新しい道が開ける可能性がある」と話している。

[読売新聞 / 2008年03月05日]
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyagi/news/20080305-OYT8T00316.htm

カロリー摂取の削減は万病に効く? メカニズムを発見=ハーバード大学

2007年09月23日 | 生活習慣病
【9月23日 シカゴ発=AFP】栄養分は減らさず摂取するカロリーだけを大幅に減らすと、ヒトに限らず、イースト菌も、ネズミも、サルも、長生きするのはなぜか―、その謎が解き明かされたとハーバード大学医学部(Harvard Medical School)のデービド・シンクレア(David Sinclair)教授の研究チームが20日、医学雑誌「Cell」に発表した。

 研究によれば、食餌制限と長寿に相関関係があるのは、「摂取カロリーが減る」というストレスに分子レベルの反応がおこり、これにより重要な細胞機能が維持され、身体が加齢に伴う病気に抗するのを助けるからだという。

 人体の細胞を用いた実験によって、人間の細胞に必要な栄養分は確保した上で摂取カロリーを減らすと、細胞の動力源ともいえるミトコンドリア内部で連鎖反応が始まり、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)と呼ばれるコエンザイム(補酵素)が増強されるのが示されたという。

 それがSIRT3、SIRT4という2つの遺伝子から生まれる酵素の活動を活発化させ、ミトコンドリアのエネルギー出力が上昇し、細胞の老化を妨げるという。

 Sinclair教授は、「NADの増加によりいかなるメカニズムが作用するのかについてはまだ確認できていない」としつつも、「(加齢とともに作動するように)あらかじめ人体にプログラムされている細胞の死滅が、これにより大幅に阻害されるということは示された」とする。

 また、「SIRT3、SIRT4と細胞の生存との関係が明らかとなったのは今回が初めてだ」と語る。

 つまり、カロリー摂取量を減らすとミトコンドリアが強化され、加齢とともに生じる病気を避けることができることになる。

 これまでもアルツハイマー、卒中、心臓病、糖尿病には、ミトコンドリアのDNAが損傷を受けて細胞が死滅することが関係すると見られており、健康維持にミトコンドリアが重要であることはわかっていたものの、今回の研究で細胞の燃料庫ともいえるミトコンドリアが細胞の生命に決定的であることが改めて証明された。

 またSinclair教授は、「ミトコンドリアは細胞の守護神である。ミトコンドリア内部のNADを増やし続ければSIRT3とSIRT4を刺激し、長期間にわたり他には何も要らないことになる」と語る。

 細胞核など、細胞内のその他のすべてのエネルギー源が消滅しても、ミトコンドリアさえきちんと機能していれば細胞は生き続けるのだという。(c)AFP

[AFP BB-News / 2007年09月23日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2287533/2173899

糖尿病は万病のもと アルツハイマー発症4.6倍=九州大学

2007年09月02日 | 生活習慣病
 糖尿病やその「予備群」の人は、そうでない人よりアルツハイマー病になる危険性が4.6倍高いことが、九州大の清原裕教授(環境医学)らの研究でわかった。福岡県久山町の住民約800人を15年間、追跡して分析した。がんや脳梗塞(こうそく)、心臓病も発病しやすいという。糖尿病が、失明などの合併症に加え、様々な病気の温床になることが浮かび、その対策の重要性が改めて示された。

 九大は久山町で1961年から住民健診をして、生活習慣や体質と病気の関係を研究。死亡した場合には解剖への協力を求めている。

 清原さんらは85年時点で、神経疾患などを研究する米国立衛生研究所の研究機関の基準で認知症ではないと判断した65歳以上の826人を追跡。00年までに集めたデータの解析を進めてきた。

 15年間に188人が認知症を発症し、うち93人がアルツハイマー病だった。画像検査のほか、死亡した145人は9割以上を解剖して確定診断をした。

 同じ826人について、ブドウ糖の代謝能力である耐糖能の異常も調査。生活習慣が主な原因とされる2型糖尿病の病歴がある▽空腹時血糖が血液0.1リットルあたり115ミリグラム以上――などの人らをアルツハイマー病調査と合わせて分析した。これら糖尿病やその予備群の人は、耐糖能異常のない人に比べて4.6倍、アルツハイマー病になる危険性が高かった。

 清原さんによると、脳にたまってアルツハイマー病を引き起こすとされる物質は、インスリン分解酵素によって分解される。耐糖能異常の人はインスリンが少ない場合が多く、分解酵素も減るので、アルツハイマー病の危険性が高まるという。

 解剖などによる確定診断に基づいたアルツハイマー病研究で、これほどの規模のものは世界でも例がないという。

 また、別に40~79歳の約2400人を88年から12年間追跡し、糖尿病とがん、脳梗塞などとの関係も調べた。その結果、糖尿病の人は、そうでない人よりがん死亡の危険性が3.1倍高く、脳梗塞も1.9倍、心筋梗塞など虚血性心疾患も2.1倍高かった。

 清原さんは「糖尿病対策がアルツハイマー病予防につながる可能性がある。国内ではここ十数年で耐糖能に異常がある人が女性で2割、男性で4割増えており、対策を急ぐ必要がある」と話す。

[朝日新聞 / 2007年09月02日]
http://www.asahi.com/science/update/0901/TKY200709010236.html

肥満は伝染する?=ハーバード大学、カリフォルニア大学(米国)

2007年07月26日 | 生活習慣病
【ワシントン25日AFP=時事】肥満は社会的に伝染する現象であるとの研究結果が、25日発売の「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メデシン」に発表された。米ハーバード、カリフォルニア両大学の研究者が発表した。(写真は、サンドイッチ店の前に立つ肥えた女性)

 研究によると、肥満の友人を持つ人は、自身も肥満になる確率が57%増大する。研究は友人や親戚関係を中心として、1万2067人を対象に1971年から2003年までに行われ、この32年間の対象者の体重の推移をモニターした。
 研究者はその結果として、1人の人の肥満は身近な人の体重増加に影響を与えるとの結論に達した。研究者は、もりもり食べている人を見ることによって、見ている人の食べることをつかさどる脳の部分が刺激を受けるようだとしている。
 また研究は、さらに「伝染性」が強いケースがみられたと指摘している。同性の友人や兄弟、姉妹の場合で、異性の場合よりも体重の増加への影響が強かった。伴侶が肥満になった場合は、夫もしくは妻が肥満になる確率は37%増加したという。
 研究者はしかし、この結果は逆に言えば、1人の人が健康的な食事や運動で肥満を防げば、他の人の肥満を防ぐことにもなると指摘している。 〔AFP=時事〕

[時事ドットコム / 2007年07月26日]
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_sci&k=20070726013551a

脂肪蓄積の酵素確認──肥満防ぐ薬剤開発に道=大阪薬科大学、大阪バイオサイエンス研究所

2007年07月16日 | 生活習慣病
 大阪薬科大学と大阪バイオサイエンス研究所のグループは、体内の脂肪細胞が脂肪を蓄えるときに働く酵素を見つけた。細胞実験で酵素の働きを抑えたところ、ためこむ脂肪の量が大幅に低下した。飲むだけで肥満を防げる薬剤の開発に結びつく可能性もあるという。

 大阪薬科大の藤森功講師と大阪バイオサイエンス研の裏出良博研究部長らのチームが見つけた。「プロスタグランジンD合成酵素」という名前。藤森講師は「人間にも同様の仕組みが働いており、太りにくくする薬の開発に将来つながるかもしれない」と話している。

[日経ネット関西版 / 2007年07月16日]
http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/

肥満、腸内細菌で決まる=米ワシントン大学

2006年12月21日 | 生活習慣病
動物の腸の中にすむ細菌が太りやすさに関係していることを米ワシントン大のチームが突き止めた。
21日発行の英科学誌ネイチャーに発表する。

人間など哺乳(ほにゅう)類の腸内には、1000種類以上の細菌がすみ、消化吸収の補助などに
役立っている。ほとんどの細菌が、バクテロイデス(B)類かファーミキューテス(F)類のいずれかの
グループに属している。

研究チームが、太ったマウスとやせたマウスの腸内細菌について、B類とF類の割合を比べたところ、
太ったマウスは、B類が50%以上も少なかった。人の場合も、太った人ほどB類が少なかった。
カロリー制限で体重を減らすとB類が増え、F類が減った。さらに、無菌状態で育てたマウスに、
肥満マウスと、やせたマウスの腸内細菌を与えて影響を比べた。2週間後の体脂肪増加率は、
肥満マウスの腸内細菌を与えた場合は約47%だったが、やせたマウスの腸内細菌を与えた場合は
約27%にとどまった。

研究チームは、B類が減ってF類が増えると、食事からのカロリー回収率が高まり、体重増に
つながると推測。腸内細菌の状態を変えることで、肥満を治療できる可能性があると考えている。

[読売新聞 / 2006年12月21日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20061221i201.htm?from=main2

肝臓から脳に「肥満注意信号」=東北大学

2006年06月15日 | 生活習慣病
 肥満で脂肪肝になると神経を通して肝臓から脳に「肥満注意信号」が伝わり、体のエネルギー消費を増やしたり、脂肪を減らしたりして、肥満が進むのを抑える調節機構が働くらしい。東北大の片桐秀樹教授や岡芳知教授(いずれも代謝学)らが動物実験で明らかにした。新しい肥満改善薬の開発にもつながりそうだ。16日付の米科学誌サイエンスで発表する。

 片桐さんらは、高脂肪の餌を4週間食べたネズミを2群に分け、肝臓の特定遺伝子の働きを活発にして脂肪肝状態にした「脂肪肝群」と、この遺伝子を活発化しなかった「対照群」で、違いを調べた。

 遺伝子操作の1週間後に比べると、脂肪肝群の体重増加は対照群の3分の1にとどまり、内臓脂肪は半減していた。脂肪肝群の方が、肥満が抑えられていたことになる。脂肪肝群では、酸素消費量が3割増え、エネルギーを活発に消費するようになっていた。

 しかし、肝臓から脳につながる迷走神経を手術で切断して実験すると、脂肪肝にしても内臓脂肪は減らず、酸素消費量も増えなかった。

 片桐さんは、脂肪肝になると神経を通して脳に肥満注意信号が伝わり、体重が増えないような調節が働くとみている。人間でも同様の仕組みがあると考えられるが、脂肪肝で肥満の人も多い。「この調節の範囲を超える食べ過ぎ、運動不足で肥満になるのかも知れない。肝臓からの神経信号をうまく使えば、新しい肥満改善薬につながる」と言っている。

[朝日新聞 / 2006年06月15日]
http://www.asahi.com/national/update/0616/TKY200606150523.html