ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

心臓の弁を体内で再生(イヌで成功)自己移植に道=国立循環器病センター、日本大学

2010年03月27日 | 再生医療
 自分の細胞だけからなる心臓の弁を体内で作り出させる方法を、国立循環器病センターと日本大のグループが開発した。体内で再生させた弁を自分に再移植すれば、拒絶反応が起きない。心臓の弁障害のある犬で臨床研究を重ね、人への応用を目指すという。

 グループは、心臓の弁をかたどった直径約2センチのシリコーン製の「鋳型」を犬の背中の皮下組織に埋め込んだ。二つの円柱を組み合わせた形をしており、接続部が弁の形になるように設計されている。

 埋めた鋳型の周囲を犬の皮下組織の細胞が覆うようになった1カ月後に摘出。シリコーンの円柱を抜くと、血管状の筒の中に弁の構造を持った組織ができていた。

弁を再生させた2頭の犬自らに移植して、正常に働くことも確認した。国立循環器病センターの中山泰秀研究機器開発試験室長は、「体が培養器になることにより、安全で確実に作ることができる」と話す。

 日本大学の上地正実教授(獣医循環器学)は、「肺動脈に異常がある犬で、臨床応用の長期成績を確かめてから、人への応用も考えたい」と話している。

[朝日新聞 2010年03月27日]
http://www.asahi.com/science/update/0327/TKY201003270205.html

人工弁の置換手術をすると、血栓溶解剤の服用を続けなければいけません。いったん出血したら一大事ですので、脳内出血などの危険と隣り合わせの生活になります。
自家組織なら安心ですね、でも、心臓の弁のような強靭なしなやかさを長期間保てるのでしょうか。
もし耐久性安全性の問題が解決したら画期的ですね。


脊髄損傷のマウスが歩く…幹細胞移植と抗てんかん薬の併用で=奈良先端大

2010年03月09日 | 再生医療
 脊髄(せきずい)損傷の症状を、神経幹細胞の移植と抗てんかん薬の併用によって大きく改善させることに、奈良先端科学技術大学院大の中島欽一教授、あべ松昌彦研究員らがマウスの実験で成功した。後ろ脚のマヒしたマウスの7割が歩けるようになった。18日に広島市で開かれる日本再生医療学会で発表する。

 神経幹細胞は、信号を伝えるニューロン(神経細胞)、そこに栄養を供給する細胞、神経を包むさやなどのもとになるが、脳や脊髄の損傷部では大半が栄養供給細胞になり、新たなニューロンはほとんど作られない。グループはこれまでに、抗てんかん薬として使われているバルプロ酸が、神経幹細胞のニューロンへの変化を促すことを発見した。

 今回、脊髄の傷ついたマウスの損傷部に、遺伝的に同系の胎児マウスから採った神経幹細胞を移植し、バルプロ酸を注射すると、6週間後には21匹中、15匹が後ろ脚を使って歩けるまで回復した。幹細胞の移植だけでは後ろ脚は少し動くものの体重を支えられず、バルプロ酸だけでは、ほとんど動かないままだった。

詳しく調べると、神経幹細胞を移植してニューロンに変化するのは1%以下だが、バルプロ酸を併用すると約20%まで向上。断裂した神経回路を、新たな複数のニューロンがリレーするように再建していた。

あべ松研究員は「拒絶反応のない自分のiPS細胞(新型万能細胞)から神経幹細胞を作れば、有望な治療法になりそうだ」と話す。

(あべ=「木」偏に「青」)

[読売新聞 2010年03月09日]
http://osaka.yomiuri.co.jp/science/news/20100309-OYO8T00213.htm

まだマウスレベルでの実験です。ですが、
将来、脊髄損傷で歩けなくなった患者さんが歩けるようになる。そういう治療法が確立するのならば、とても素晴らしいことですよね。その日が待ち遠しいです。

脂肪細胞から血管再生 共同臨床試験着手へ=信州大学

2009年04月01日 | 再生医療
 信大医学部(松本市)は国内で初めて、患者の皮下脂肪にある幹細胞を血管再生に使う臨床試験を始める。4月中に厚生労働省の審査委員会に申請し、承認され次第着手する。現在は骨髄細胞を使う手法が主流だが、患者の体にかかる負担が大きいことが課題だった。皮下脂肪ならば比較的容易に採取できる上、治療効果も高いと期待されている。実現すれば、再生医療の普及に弾みがつきそうだ。

 臨床試験は、信大、名古屋大(愛知県)、熊本大(熊本県)、福岡徳洲会病院(福岡県)の4施設で行う。いずれも糖尿病などで手足の末梢(まっしょう)血管が詰まる「末梢閉塞(へいそく)性動脈疾患」の重症患者を対象にする。

 患者の皮下脂肪100-300グラムを採取し、共同研究者である米サイトリ・セラピューティクス社が開発した機器で「脂肪組織由来幹細胞(ADSC)」を分離。病気で血液が流れなくなった部分の筋肉数10カ所に注射器で移植する=図。脂肪採取から移植終了まで数時間で済む。

 信大は2003年以降、骨髄細胞による血管再生を26例行った。骨髄採取には全身麻酔が必要で、患者への負担が大きい。一方、皮下脂肪は局所麻酔だけで簡単に採取できる点がメリットだ。

 さらに、共同研究者の室原豊明・名古屋大医学部教授(循環器内科)は「マウスを使った動物実験の結果によると、ADSCによる血管再生の効果はヒトでもかなり期待できる」とみている。

 臨床試験は、希望する患者を対象に実施。3年間で各施設10人ずつ計40人に行い、安全性や有効性を見極める。効果が確認されればさらに参加施設を増やし、将来は骨髄細胞による血管再生と同様、「高度先進医療」として医療保険適用を目指す。4月中にも、厚労省の「ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会」に申請する予定だ。

 信大は、付属病院の循環器内科、形成外科、心臓血管外科、先端細胞治療センターがチームを組む。池田宇一教授(循環器内科)は「ADSCは骨髄細胞に置き換わり、血管再生にとどまらず、再生医療の中心的な『細胞源』になる可能性がある」としている。

[信濃毎日新聞 2009年04月01日]
http://www.shinmai.co.jp/news/20090401/KT090331LVI090011000022.htm


絹で再生医療 素材を研究=東京農工大学

2009年03月31日 | 再生医療
 手術用縫合糸など長年医療現場で使われてきた絹を、人工血管などの再生医療材料として利用する研究が、東京農工大(東京都小金井市)で進められている。医療材料として有用な遺伝子をさらに導入したカイコが吐き出す新素材の絹。朝倉哲郎・同大教授は「血管、角膜、皮膚、耳、骨、歯などの再生医療材料が安定かつ安価に得られる可能性がある」と、幅広い応用に期待している。 (引野肇)

 【ラットに人工血管】
 研究開発が一番進んでいるのが人工血管。絹で作った直径一・五ミリの細い人工血管を、ラットの大動脈に移植。通常細い人工血管として使われているフッ素樹脂製の人工血管と比較した。その結果、フッ素樹脂製はすぐに詰まったが、絹製では一年間、85%のラットの血管が詰まらず正常に働いた。現在、生物系特定産業技術研究支援センター(さいたま市)の助成を受け、さらにブタへの移植実験も進められている。

 【角膜、骨、耳も】
 一般に絹は高強度で生体になじみやすい。さらに絹をいったん溶かして再度、分解されやすい再生繊維にしたり、フィルムやスポンジ、不織布にすることで、多様な再生医療材料にすることができる。フィルムは、傷の治療や目の角膜再生の足場材として、再生繊維や不織布は人工血管や吸収性の縫合糸に、スポンジは骨や歯の足場材に使える。耳や骨の形をした絹のスポンジ上で軟骨細胞や骨芽細胞を培養し、移植することも検討されている。歯に埋め込めば虫歯の再生も夢ではない。

 【二つのナゾ】
 朝倉教授がこの研究を始めたきっかけは「絹は同じ断面積の鋼鉄より強い。カイコがつくるタンパク質がなぜこんなに強いのか」という疑問。そして「カイコ体内にある絹の水溶液が、どうして口から出た瞬間に強い糸になるのか」ということだった。

 このナゾは八年前、最新の構造解析手法、核磁気共鳴分光法(NMR)を駆使してついに解明できた。二十年間追い続けたナゾが解明できた時、朝倉教授は「一週間ほど興奮して眠れなかった」と言う。

 絹は基本的に、グリシンとアラニンという二つの単純なアミノ酸が交互につながっている。これらのアミノ酸が、カイコの体内では、分子内での水素結合と分子間での水素結合を交互に繰り返し、ゆるく巻かれた構造となって水に溶けている。カイコが絹を吐く直前に受ける「ずり」(粘性流体内の摩擦)と、カイコが頭を8の字に振ることで発生する「延伸」の二つの力が絹分子にかかることで、水素結合の部分が切断され、瞬間的にすべて分子間の水素結合に移行する。これで、絹分子同士が強く引きつけられた構造となり、強い絹糸になる。

 【高機能絹へ】
 高強度の絹を作る「仕組み」が解き明かされれば、遺伝子を操作したり、再生繊維やフィルムへの加工プロセスを工夫することで、絹糸をさらに丈夫にしたり、再生医療用として細胞との接着性を高めたり、生分解性を高めたりできる。

 かつて、絹産業は日本の「お家芸」だった。バイオの力を借りて、再び新しい絹産業を興すことも夢ではない。朝倉教授は「社会の高齢化が進む中、絹の優れた特徴を背景に、それをさらに改変することで再生医療材料の基幹産業として創生することを目指す」と意気込む。

 絹は鋼鉄より強いが、クモの糸はさらに絹の三倍も強く、クモの糸も有力な再生医療材料。カイコはかつて「おカイコさま」と尊ばれた。朝倉教授の夢が実現すれば、「おカイコさま」や「おクモさま」など、カイコやクモが世界中から感謝される日がくるかもしれない。

[東京新聞 2009年03月31日]
http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2009033102000146.html

脊髄損傷:リハビリの不快な痛み、神経の伸び方原因=自治医科大学

2009年03月11日 | 再生医療
 脊髄(せきずい)損傷患者がリハビリテーションで感じる不快な痛みは、リハビリによって再生した神経が誤った方向に伸びるため起きることを、自治医科大の遠藤照顕(てるあき)医師(整形外科)らの研究チームがラットの実験で突き止めた。神経を伸ばす物質の働きを抑えることで痛みを減らせることも確認した。欧州の神経内科学誌電子版に発表した。

 実験は、脊髄損傷を起こしたラットに、損傷1週間後から8週間、機械を使ってリハビリさせた。この間、刺激に対する足の動きから痛みの程度を分析すると、訓練期間が長くなるほど小さな刺激でも痛みを感じやすくなった。損傷個所では、痛みを脳に伝える末梢(まっしょう)神経が、正常なラットとは異なり、深い方向に伸びていた。人間の脊髄損傷でもリハビリによって痛みが強まることが知られている。

 末梢神経の増殖にかかわる物質の働きを抑える物質をラットの脊髄内に注入すると、痛みの感受性が正常ラットとほぼ同じに戻り、神経細胞の深い部分への伸びも抑えられた。

 重い脊髄損傷の治療法として、幹細胞移植による神経再生の研究が進んでいるが、この過程でも痛みが起きることがラットの実験で指摘されている。チームの小林英司教授(移植・再生医学)は「同様の仕組みで痛みが起きている可能性がある。今後、人工多能性幹細胞(iPS細胞)など万能細胞を使った治療にも成果を応用できる可能性がある」と話す。【永山悦子】

[毎日新聞 2009年03月08日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20090308k0000m040100000c.html


膵臓:インスリン分泌細胞 マウスで増殖に成功=東京慈恵会医科大学

2009年02月27日 | 再生医療
 糖尿病のマウスの膵臓(すいぞう)に特定の遺伝子を導入し、血糖値を調節するホルモン「インスリン」を分泌するベータ細胞を大幅に増殖させることに、東京慈恵会医科大が成功した。マウスの血糖値は約4カ月で正常値に戻り、寿命も健康なマウスと変わらなかった。研究チームは「ベータ細胞が少しでも残っている糖尿病患者の有効な治療法につながる可能性が高い」と話している。3月5日から東京都内で開かれる日本再生医療学会で発表する。

 研究チームは、細胞分裂の周期を早める働きを持つ遺伝子を組み込んだウイルスを、生後10週の糖尿病マウスの膵臓に直接注射した。注射前に1デシリットル当たり約400ミリグラムあった血糖値が、16週間後には約200ミリグラムと、マウスの正常値近くまで下がった。ベータ細胞の数を調べたところ、注射前の2.5倍に増えていた。

 実験で使ったウイルスは、遺伝子導入時にだけ働くタイプ。使った遺伝子もベータ細胞でしか働かないことが確認され、ウイルスや導入した遺伝子により、がんになる心配は少ないという。

 糖尿病は、ベータ細胞の数が減ったり働きが落ち、インスリンの分泌量が少なくなり、血糖値が高い状態が続くようになる。東京慈恵会医科大の佐々木敬教授(糖尿病・代謝・内分泌内科)は「遺伝子導入という手法を使うが、極めて高い効率でベータ細胞が再生された。今後、大型動物の実験に取り組み、臨床応用を目指したい」と話している。【永山悦子】

[毎日新聞 2009年02月27日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20090227k0000m040147000c.html

iPS細胞で心筋梗塞改善=大阪大学

2009年02月13日 | 再生医療
 大阪大学の澤芳樹教授らは、様々な細胞や組織に育つ能力を持つ新型万能細胞(iPS細胞)を活用し、心筋梗塞(こうそく)のマウスの病状を改善することに世界で初めて成功した。マウスのiPS細胞で心臓の細胞を作り、弱った心臓に張った。ヒトのiPS細胞でも同様の効果があれば、患者が多い心筋梗塞の新たな治療法になる。

 3月5日から東京で始まる日本再生医療学会で発表する。澤教授と三木健嗣研究員らはまず、京都大学の山中伸弥教授が開発した手法でマウスの細胞からiPS細胞を作製。培養方法などを工夫し、99%以上の高率でiPS細胞を心筋細胞に変化させた。(18:19)

[日経ネット NIKKEI NET 2009年02月13日]
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090213AT2G1200K13022009.html

ES細胞:がん化防止にコラーゲン活用…マウス実験で成功=ハーバード大学

2009年02月01日 | 再生医療
さまざまな組織や臓器になる万能細胞「胚(はい)性幹細胞(ES細胞)」で、実用化への課題だったがん化防止に、米ハーバード大研究員の八巻真理子・松本歯科大講師(幹細胞生物学)らがマウス実験で成功した。骨や皮膚に含まれるたんぱく質「コラーゲン」を使った。人工多能性幹細胞(iPS細胞)への適用も可能とみられ、再生医療実現に新たな道を開くと注目されそうだ。1日付の日本再生医療学会誌で発表する。

 ES細胞やiPS細胞は、分化する過程で「テラトーマ」という腫瘍(しゅよう)を作ることがある。このため、ES細胞やiPS細胞を特定の組織や臓器にして患者に移植する場合、がん化させない手法の開発が重要になっている。

 研究チームは、ES細胞から立体的な細胞や臓器を作るのに使われる牛のコラーゲン製の人工素材で実験を重ねた。素材は無数の小さな穴が開いたスポンジ状構造をしている。

 その結果、マウスのES細胞を増殖させた人工素材49個をマウスの腎臓に移植すると、約3カ月後までにがん化したのは2例だったが、ES細胞のみを移植した15例では100%がん化した。また、神経細胞になったES細胞で試しても、人工素材を使った場合は全くがん化しなかったが、使わないと6割以上でがんができた。高効率でがん化を抑えたのは初めてという。

 抑制できた仕組みは未解明だが、皮膚や骨に多い1型という種類のコラーゲンで効果を発揮した。八巻講師は「このタイプのコラーゲンがES細胞と結合する際に何らかの腫瘍化抑制機能が働くのではないか」と話す。【奥野敦史】

 ◇分化に向いた素材
 久保木芳徳・北海道大名誉教授(生化学)の話 細胞は種類に応じて分化と増殖に適した環境がある。「居心地のいい家」がないと腫瘍化などの異常が起きる。今回の人工素材は適切な分化に向いていたのだろう。腫瘍化対策の重要性は高まっており、画期的だ。

[毎日新聞 2009年02月01日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20090201k0000m040093000c.html

マウス皮膚細胞:極小ビーズで人形=東京大学

2009年01月23日 | 再生医療
 マウスの皮膚細胞を集めた極小のビーズ約10万個を立体的につなげ、大きさ5ミリの人形を作ることに、東京大学生産技術研究所の竹内昌治准教授(マイクロデバイス工学)らが成功した。この技術を使えば、異なる種類の細胞を生きたまま整然と並べることが可能になり、ヒトの内臓などに近い状態を再現できるようになるという。

 ヒトの内臓は異なる細胞が何層にもわたり整然と並んでいる。しかし、人工的に作成しようとすると、同じ細胞同士が塊を作ったり、内部に栄養分が行き届かずに死んでしまうなどの課題があった。

 竹内准教授らは、マウスの皮膚細胞を集めた直径約0.1ミリの丸いビーズを作成。厚さ1.25ミリの型に入れて培養し、24時間後でも細胞が生きた状態の人形を作った。

 さらに、ヒトの肝臓の細胞2~4個の周囲にマウスの皮膚細胞数十個がくっついたビーズの作成にも成功した。竹内准教授は「数種類の細胞を組み合わせてより臓器に近い状態を作り、動物実験を行わなくても薬が臓器に与える影響などを調査できるようにしたい」と話している。26日からイタリアで開かれる国際会議で発表される。【斎藤広子】

[毎日新聞 2009年01月23日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20090123k0000e040014000c.html

ひざ半月板:再生に道…関節の幹細胞を移植、ラットで成功=東京医科歯科大学

2008年12月28日 | 再生医療
 ひざの半月板損傷を、関節部分から採取した間葉系幹細胞を移植して治すことに、東京医科歯科大などの研究チームがラットで成功した。米科学誌「ステムセルズ」に発表する。

 半月板はひざの内部にあり、大腿(だいたい)骨とすねの骨の間でクッションの役割を担う軟骨組織。けがや加齢で半月板を損傷した場合、半月板を切除する治療が一般的だが、関節症などを起こしやすい。

 チームは半月板を再生させるため、骨や軟骨になる性質がある間葉系幹細胞を使った。同細胞は骨髄から取るのが一般的だが、関節の滑膜という組織から採取した。

 半月板を損傷させた14匹のラットの患部に幹細胞を移植すると、約12週間で半月板と同じ性質の軟骨になった。小林英司・自治医科大教授(移植・再生医学)らが開発した、細胞を遺伝子改変によって光らせる技術で調べたところ、半月板が再生し関節を保護する様子が確認できた。

 また、半月板が再生した後の間葉系幹細胞は過剰に増殖する心配がないことも分かった。人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使う再生医療では、目的の組織ができた後も増殖が止まらず、腫瘍(しゅよう)になったり他の臓器に移動して奇形を生む恐れがあり、課題となっている。関矢一郎・東京医科歯科大准教授(軟骨再生学)は「滑膜からの幹細胞は採取しやすく取り扱いも簡単だ。数年以内にヒトでの臨床応用を始めたい」と話す。【永山悦子】

[毎日新聞 2008年12月28日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20081228k0000m040096000c.html

骨再生促す補てん材開発 骨移植の代替期待=東北大学

2008年12月24日 | 再生医療
 東北大大学院歯学研究科の鈴木治教授=顎口腔(がくこうくう)機能創建学=と医学系研究科の井樋栄二教授(整形外科学)らの研究グループは、従来より高い骨再生促進効果のある骨補てん材を開発した。骨の腫瘍(しゅよう)摘出による欠損を補うなど、骨移植が必要な患者に適用が期待されるという。

 開発した人工合成の骨補てん材は低結晶性のリン酸オクタカルシウム(OCP)。従来のOCPの組成割合をわずかに調整して実現した。

 グループはラットの頸(けい)骨に開けた直径3ミリの穴に、直径300―500ミクロンの粒状の低結晶性OCPと従来のOCPを埋め込み、骨組織が再生する様子を観察。8週間後を比較すると、低結晶性OCPの場合、従来のOCPに比べて平均1.69倍、新しい骨組織が形成されていた。

 骨再生には、自分の骨を移植する方法が最も優れている。ただ、量が限られ、健康な部分を傷付けてしまう恐れがあることから、人工材料の開発が進められている。

 骨補てん材としては、骨の主成分であるヒドロキシアパタイトを模した人工合成材料などが使われている。OCPはまだ実用化されていない。

 鈴木教授は「今回の実験で、低結晶性OCPは骨をよく形成することが判明した。今後は人への応用に向けて研究を重ねたい」と話している。
 研究結果は英科学誌の電子版に掲載された。

[河北新報 2008年12月24日]
http://www.kahoku.co.jp/news/2008/12/20081224t15021.htm

早期実用化へ競争より協力 iPS細胞発表1年、京都大学・山中教授

2008年12月01日 | 再生医療
 京都大iPS細胞研究センター所長の山中伸弥教授が1日、ヒトiPS(人工多能性幹)細胞樹立の発表から1年を迎え、京都市左京区の京大時計台記念館で記者会見した。多忙を極めた1年間を振り返りつつ、「目標は一日でも早い実用化」とし、競争ではなく海外の研究機関と協力し、より多くの研究成果を発信することに強い意欲を見せた。

 山中教授は1年の成果として、全国のiPS細胞の研究拠点や企業との連携など「オールジャパン」の体制づくり、iPS細胞の基本特許の国内成立、iPS細胞研究センターによる特許出願体制の整備、より安全なiPS細胞の樹立の4点を挙げた。

 今後1年間の目標として、国内だけでなく海外の研究機関とも積極的に協力することを掲げた。

 iPS細胞研究で独自の成果を挙げているカナダ・トロント大と10月に、特定の患者の細胞から作製したiPS細胞についての情報交換を内容とした協定を締結し、米ハーバード大の研究者とも来年1月に非公開で会合を持つ予定で、「一日も早い実用化という共通の願いの下、研究データを交換し、場合によっては共同研究もしたい」と抱負を述べた。

 かつて臨床医として患者を診てきた経験から「論文を出すことも大切だが、患者が治ることの方がうれしい」と強調。治療の難しい病気の女児の親から「iPS細胞研究の報道があって初めて、娘に『10年たったら治るかもしれない』と本当に(自信を持って)伝えることができた」という感謝と励ましを受けたことを打ち明け、感極まって涙ぐむ場面もあった。

[京都新聞 2008年12月01日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008120100175&genre=G1&area=K00

ひざ軟骨の自然再生に成功、スポーツ治療に光明=北海道大学

2008年11月30日 | 再生医療
 運動で負荷が掛かり、故障しやすいひざやひじの関節。北海道大大学院の安田和則教授(整形外科)らの研究グループは、不可能とされてきた関節軟骨の自然再生に、ウサギを使った実験で成功したと30日までに発表した。ひざを痛めた中高年層やスポーツ選手のけがの治療に応用できる可能性があるという。論文はドイツの学術専門誌「マクロモレキュラー・バイオサイエンス」電子版に掲載された。

 安田教授によると、2種類のゲル状高分子化合物を北大が開発した独自の手法で組み合わせ、軟骨に分子構造が似た新たなゲル素材を開発。ウサギのひざ関節軟骨の欠損部に埋め込んだところ、4週間で軟骨が再生した。副作用は出ていない。 
 研究グループは、軟骨細胞の成長を促進するたんぱく質が骨髄から生じ、ゲル素材に吸着した結果と推定するが、解明はこれから。体外で細胞を培養し患部に戻すといった既存の治療法に比べ、治療期間や費用など患者の負担が大幅に軽減されるとみられ、実用化に向け研究を進める。

 地元のプロ野球日本ハムのチームドクターを務める教授の下には、故障した選手が駆け込んで来る。「野球ひじなど局所型の関節症に効果が期待できる」と話している。(安田和則)

[時事ドットコム 2008年11月30日]
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%a4%d2%a4%b6%c6%f0%b9%fc%a4%ce%bc%ab%c1%b3%ba%c6%c0%b8&k=200811/2008113000073

人のES細胞から大脳組織を作製、世界初=理化学研究所

2008年11月06日 | 再生医療
 様々な臓器の細胞に変化できる人の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から、大脳の組織を作り出すことに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の笹井芳樹グループ・ディレクターらが世界で初めて成功した。

 新型万能細胞(iPS細胞)でも可能といい、アルツハイマー病などの原因解明や再生医療、新薬開発への応用が期待される。科学誌セル・ステムセル電子版で6日、発表する。

 研究グループは約3000個の人のES細胞を直径0・2ミリ・メートルの粒状に固め、神経細胞に変化しやすくなる成分を加えて50日間培養。粒は大きさ1~2ミリ・メートルのマッシュルームのような形に成長し、内側に胎児の大脳皮質と同じ4種類の神経細胞の層ができていた。大脳皮質特有の電気信号を出すなど、神経活動も自発的に行うようになった。

 今後、大人の大脳皮質と同じ6層構造の組織作製を目指す。笹井さんは「生体により近い環境で、薬の副作用やワクチン開発などの研究を進められる。将来は傷んだ神経の再生医療にもつながる」と話している。

[読売新聞 2008年11月06日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20081106-OYT1T00009.htm?from=main1


理化学研究所 プレスリリース
ヒトES細胞から層構造を持った大脳皮質組織の産生に成功
- 次世代の幹細胞医学応用を大きく拓く組織形成技術 -
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008/081106/index.html
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008/081106/detail.html



ホンのちょっと前(1990年頃?)までは、成人したら脳の神経細胞は新生しない、中枢神経に再生能力は殆ど無いといわれていました。
それがES肝細胞を上手に操作して、大脳まで組織として構築する実験に成功したのですから素晴らしいと思います。
将来、安全な人工神経を形作ることが出来るようになったら、移植治療によって脳梗塞の後遺症、ALS患者さんへ運動神経を移植する、などといった治療方法も実現することでしょう。

iPS細胞使いマウスの神経難病治療に成功=慶應義塾大学

2008年11月01日 | 再生医療
 さまざまな細胞や組織に分化する能力を持つ「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を使ってマウスの神経難病を治すことに、慶応大が成功した。岡野栄之・同大医学部教授(再生医学)は「ヒトの治療への応用には時間がかかるが、iPS細胞の効果を確認できた」と話している。

 実験に使ったのは「ミエリン形成不全症」という難病を発症させたマウス。神経から腕のように伸びる軸索を覆う「ミエリン(髄鞘=ずいしょう))」と呼ばれる細胞が生まれつき作れないため、脳からの命令がうまく伝わらず、震えや歩行困難などを起こす。

 研究チームは、別のマウスの体細胞に四つの遺伝子を導入して作ったiPS細胞から神経幹細胞を作り出し、病気のマウスの脊髄(せきずい)に移植した。8週間後、脊髄の神経細胞にミエリンができているのを確かめた。また、脊髄損傷で歩けなくなったマウスにこの神経幹細胞を移植したところ、歩けるようになったという。

 同大などは、ミエリン形成不全症のほか、アルツハイマー病、パーキンソン病などの患者から体細胞を提供してもらい、iPS細胞を作る研究を進めている。【永山悦子】

[毎日新聞 2008年11月01日]
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081102k0000m040044000c.html



ES細胞や、iPS細胞による再生医療の実用化が日に日に身近に感じられるようになってきました。
この技術の問題点は感染症と細胞がガン化してしまう割合が高いこと、などだそうです。このようなハードルをクリアしていくと同時に、厚生労働省やFDA(アメリカ食品医薬品局)の指針といった法的なハードルもあるようですね。
「一日も早く」、と待ち望む人たちの願いがかないますように。