ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

乳製品カルシウム、脳卒中を予防=大阪大学

2008年07月30日 | 食品・栄養
 カルシウムを乳製品で多くとる人は脳卒中になりにくいことが、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)による約4万人規模の調査で分かった。摂取の多いグループは、少ないグループより脳卒中になる確率が3割ほど低かった。

 大阪大の磯博康教授らが岩手、秋田、長野、沖縄各県の40~59歳の男女を対象に90年から約13年間、追跡調査。食生活を尋ね、カルシウム摂取量を推計した。期間中に脳梗塞(こうそく)や脳出血など脳卒中を発症したのは1321人だった。

 乳製品による摂取量で5グループに分けると、最も多いグループ(1日当たり約120ミリグラム)は、最も少ないグループ(同0ミリグラム)に比べて発症リスクが0.69倍と低くなった。

 総カルシウム摂取量でも、多いグループ(同750ミリグラム)と少ないグループ(同230ミリグラム)で同様の結果だったが、乳製品以外からの摂取量が増えても明らかな効果は見られなかった。

 磯教授によると、乳製品のカルシウムは吸収率が5割と高いのに対し、大豆類や野菜、魚介類などからは1~2割しか吸収できない。「乳製品をふだんの食事に無理なく取り入れれば、脳卒中予防につながる可能性がある」と話している。

 厚労省によると、カルシウム摂取は30~60代で1日600ミリグラムが目標。牛乳1本約200ミリグラム、ヨーグルト1個は約100ミリグラム、スライスチーズ1枚で約100ミリグラムが目安になる。(佐藤久恵)

[朝日新聞 2008年07月30日]
http://www.asahi.com/science/update/0729/OSK200807290024.html

ダイエット:適度な食事制限は遺伝子の傷治す…ラット実験=浜松医科大学、三菱化学生命科学研究所

2008年07月22日 | 食品・栄養
 適切なダイエットは遺伝子の傷を修復するたんぱく質の量を増やすことを、浜松医科大と三菱化学生命科学研究所(東京都町田市)がラット実験で突き止めた。遺伝子の傷は老化やがんなどの原因になりうる。老化防止を探る糸口として注目される。23日発行の欧州の専門誌に掲載される。

 過去の動物実験では、適度に食事の量を抑えると長生きすることが分かっている。研究チームは、遺伝子の傷を修復するたんぱく質「WRN」に着目し、食べ物の摂取量との関係を調べた。

 その結果、WRNの量は、1カ月間自由に餌を食べたラット6匹に比べ、摂取カロリーを3割減らしたやせ気味のラット6匹の方が約3倍多いことが分かった。また、長寿に関与するたんぱく質「SIRT1」も約3倍に増えていた。

 一方、ヒトの細胞を使った実験で、SIRT1の働きを抑える薬剤を入れるとWRNの量が減った。適度にカロリー制限するとSIRT1が増え、WRNが失われるのを抑制すると考えられるという。

 瀬藤光利・浜松医科大教授(分子解剖学)は「遺伝子の傷を回復しやすくする仕組みが分かった。若返りの手段を見つける糸口になるかもしれない」と話している。【須田桃子】

[毎日新聞 2008年07月22日]
http://www.mainichi.jp/select/science/news/20080722k0000m040149000c.html

海洋研究開発機構:海底下の泥に大量微生物、英誌に発表=海洋研究開発機構ら

2008年07月21日 | 生きもの色々
 酸素や栄養分に乏しい海底下350メートル前後までの泥(堆積=たいせき=物)の中に、大量の微生物が生息していることを、海洋研究開発機構などが突き止めた。地球全体でみると、地上の全植物の6分の1に相当する量と推計される。陸上や海中に匹敵する「第3の生命圏」を明らかにし、生命の進化や環境適応の解明につながる成果で、20日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。

 海底下については、約1000メートルの深さまでの堆積物から、1立方センチ当たり10万~10億個の生物細胞が、遺伝子の形で見つかっていた。しかし、生きているのか死んでいるのかは分からなかった。

 海洋機構高知コア研究所の諸野祐樹研究員(微生物生態学)らは独ブレーメン大と共同で、世界16カ所から採掘された海底堆積物を分析。生きた細胞の指標となる細胞膜の脂質を抽出し、10センチ~365メートルの深さまでに、アーキアと呼ばれる微生物が大量に生息していることを発見した。海底下のアーキアの総量は地球全体では、炭素換算で900億トンに上ると推定され、地上の全土壌中に住む微生物の3倍以上に相当するという。

 アーキアは通常の細菌(バクテリア)より細胞膜が硬く、物質を透過しにくい特徴がある。諸野さんは「厳しい環境に適応し、独自に進化したのではないか」と話している。【西川拓】

[毎日新聞 2008年07月21日]
http://www.mainichi.jp/select/science/news/20080721k0000m040120000c.html


同じ星に棲む生きものとしては、とつぜん家族が増えたようで嬉しいニュース。
なんとまあ!海底にはこんなにたくさんの生命がまだ隠れていました。
いわゆる「地球温暖化ガスの削減」対策、「海底への二酸化炭素貯留」の試みなどは、技術的な問題以外の面からも、一考しなければならないと思います。

動体視力左右するたんぱく質発見…ピカチュウもじり命名=大阪バイオサイエンス研究所

2008年07月21日 | 遺伝子組替マウス
 視覚の情報を脳へ効率よく伝えるために必要なたんぱく質を、大阪バイオサイエンス研究所チームがマウスで発見した。

 動体視力の優劣に関係しているとみられることから、素早い動きが特徴の人気アニメキャラクター「ピカチュウ」をもじって「ピカチュリン」と名付けられた。

 網膜色素変性症などの治療につながる可能性がある。20日付の科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス電子版で発表する。

 古川貴久・第4研究部(発生生物学部門)長らは、マウスを使って、光を感じる網膜の視細胞ができる際に働く遺伝子を解析し、ピカチュリンを発見した。視細胞から脳へ信号を送る神経への「つなぎ目」だけに存在するという。

 ピカチュリン遺伝子を壊したマウスでは、正常なつなぎ目ができず、信号の伝達時間が約3倍かかった。速い動きに対する眼球の反応も遅くなり、動体視力にかかわっているらしい。古川部長は「イチロー選手のように動体視力に優れた一流の運動選手は、ピカチュリンの働きに違いがあるのかもしれない」と話している。

[読売新聞 2008年07月21日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080721-OYT1T00070.htm


【「ピカチュリン」と命名 網膜の神経回路つくる物質 】

 目の奥にあって光を感じる網膜の神経回路がきちんとつくられるのに必要なタンパク質を、大阪バイオサイエンス研究所の古川貴久研究部長らのチームがマウス実験で突き止め、米科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス電子版に21日発表した。

 光を発するネズミに似た人気アニメキャラクター、ピカチュウにちなんで「ピカチュリン」と名付けた。

 古川部長は「網膜の神経回路ができる仕組みの一端が分かった。人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを使った目の病気の再生医療にも応用できそうだ」と話している。

 チームは、視神経の周りで働いているピカチュリンを特定。これが働かないよう遺伝子操作したマウスでは、受光細胞から中枢神経につながる視神経に異常が起きるのを確かめた。通常のマウスに比べ神経伝達が遅れ、動くものを見る視力が落ちていた。(共同通信)

[京都新聞 2008年07月21日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008072100014&genre=G1&area=O10


この命名はなんか納得いかない気がするー(苦笑)。でも、これで子どもたちが科学に興味を持ってくれたらそれで良しとしましょう。

夏休み子ども科学電話相談の季節ですね。

カエル・ツボカビ症、原因菌分離に成功 発症解明に期待=麻布大学ら

2008年07月20日 | 生きもの色々
 世界各地で両生類の激減を招いているカエル・ツボカビ症の原因菌を単独分離することに、宇根有美・麻布大准教授(獣医病理学)らのグループが成功した。ツボカビ症は06年末、日本に上陸、生態系の危機だとして16の関係学会などが非常事態を宣言しているが、発症の仕組みや対策を探るための原因菌の分離が進んでいなかった。19日に大阪市である野外保全活動の研究会で発表した。

 麻布大に集められた感染したカエルを、研究グループの製品評価技術基盤機構に提供。今年1月、同機構バイオテクノロジー本部の稲葉重樹研究員が、国内でペットとして飼われていた外国産のカエルから原因菌を単独分離した。別のカエルでも成功した。他の微生物などの混入が多く、培養が難しかった。

 海外でも原因菌は分離されているが、今回とは遺伝子配列が違っており、これで国内のカエルへの影響を見極める研究に着手できる。原因菌を分離したことで、感染ルートや潜伏期間、脳や内臓へのダメージの大きさ、自然界への影響度など具体的な研究ができるようになる。

 カエル・ツボカビは、両生類だけに感染する真菌の一種。人には感染しない。ただ、カエルが発症すると致死率は90%にのぼるともいわれるが、発症しない種類もある。パナマやオーストラリアなど世界各地でカエルが激減した原因とされ、国内では06年末に外国産のペットのカエルで初めて確認された。環境省の調査で、国内の自然界にも原因菌が広がっていることがわかっている。

 宇根准教授は「国内に広がり始めたツボカビに在来のカエルが耐えられるのかどうか、より詳細に調べられる」と話している。(田之畑仁)

[朝日新聞 2008年07月20日]
http://www.asahi.com/science/update/0719/OSK200807180094.html


 動物実験に利用される一部のカエルも海外からの輸入が止まってしまいました。
 特別天然記念物のオオサンショウウオにも陽性反応が出て問題になっていましたが、こちらで発見されたのは毒性の低いタイプで、無事解決したようです。早く毒性の高いタイプに対する解決方法が見つかりますように。

高齢でも若者の半分は存在、脳神経細胞のもと、学習で増加-サルで判明=東京大学、理化学研究所ら

2008年07月20日 | 脳、神経
 学習や記憶を担う脳の海馬と呼ばれる部分にある神経細胞のもとの幹細胞は、高齢になっても若い時の半分程度はあることが、東京大と医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター、理化学研究所が20日までに行ったカニクイザルの研究で分かった。幹細胞が分裂して新たに神経細胞になる割合はサルによって違いが大きく、学習能力が高いサルでは、神経細胞がよく増えていた。(2008/07/20-14:56)

[時事ドットコム 2008年07月20日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008072000087

ヒトが声を出すとき…アンコウと同じ脳の動き=コーネル大学

2008年07月20日 | 生きもの色々
 魚類のガマアンコウが鳴き声を出す際の脳の働きが、ヒトなど陸上の脊椎(せきつい)動物とよく似ていることが、コーネル大学などのグループによる研究でわかった。魚とヒトの共通の祖先が、発声のための脳の仕組みをもっていたようだ。これにより、ヒトの発声能力の起源は約4億年前にさかのぼることになるという。18日付の米科学誌サイエンスに発表した。

 ガマアンコウは北米の浅い海に住む。求愛行動や縄張りを守るため、浮袋を使って「グエッ、グエッ」「ブーン」などの鳴き声を出す種類がある。

 コーネル大のアンドリュー・バス博士らは、ガマアンコウの稚魚に麻酔をかけ、脳の神経細胞を染めて観察した。発声に関係しているのは後脳から脊髄にかけてで、発声器官を動かす神経細胞や、隣接する鳴き声の間隔などを調整する神経細胞の働き方が、鳴き声を出す哺乳(ほにゅう)類、鳥、カエルなどと、使う器官は違うのによく似ていた。

 ガマアンコウなどの浮袋をもつ硬骨魚類と、肺をもつ陸上の四肢動物はどちらも脊椎動物で、約4億年前に祖先の魚から分かれたとされる。このため、発声器官や使う筋肉は種ごとに別々に進化したが、発声をつかさどる脳の機能は分かれる以前からの原始的なものと考えられるという。(鍛治信太郎)

[朝日新聞 2008年07月20日]
http://www.asahi.com/science/update/0719/TKY200807190218.html

ガマアンコウ、何度もスペースシャトルに乗せられて、宇宙での実験動物として活躍していたのを思い出しました。発音魚の研究はまだまだ発表も少ないようですね。

水素水に記憶力低下抑制効果、マウスで確認=日本医科大学

2008年07月19日 | 脳、神経
 水素水を飲むことで、記憶力(認知機能)の低下を抑えられることを日本医大の太田成男教授らが動物実験で確認した。

 認知症の予防や治療にも道を開く成果で、科学誌ニューロサイコファーマコロジー電子版に発表した。

 ストレスによって記憶力が低下することは知られている。研究チームは、マウスを狭い空間に閉じ込め、餌を与えないなどのストレスを加えたうえで、記憶力が、水素が大量に溶け込んだ水と通常の水を飲ませた場合でどのくらい違うか、10匹ずつ、三つの方法で6週間かけて比較した。

 その結果、いずれの場合も水素水を飲ませた方が記憶力が顕著に高く、ストレスのないマウスとほぼ同等だった。記憶をつかさどる脳の領域(海馬)における神経幹細胞の増殖能力も同様の傾向だった。

 研究チームは昨年、水素が活性酸素を取り除き、脳梗塞(こうそく)による脳障害を半減させることを確認。認知症は活性酸素などによって神経細胞が変性する病気とされるが、太田教授は「水素水を飲まないマウスの海馬には活性酸素によって作られた物質が蓄積していた。水素水が活性酸素によって低下した神経細胞の増殖能力を回復させ、記憶力低下も抑制したと考えられる」と話している。

[読売新聞 2008年07月19日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080718-OYT1T00613.htm



「活性水素水」ではなくて今度は「水素水」(やはりアヤしいと感じてしまうのですが、はてさて?)。

(「活性水素水」は「マイナスイオン水」と同様、科学用語ではなく、疑似科学のたぐいであり、これに関連した商品は公正取引委員会からも排除命令が出ています。)
ところで水素分子は常温では安定な気体ですから、水に通して溶け込ませ「水素水」として飲んでも殆ど無害ではあります。しかし還元力がそれほど弱いのなら、わざわざそんなことしなくても‥。だいたいそんな水素分子が選択的に「悪玉活性酸素」を都合良く取り除けるのでしょうか。
体の中には他にも酸化されやすい有機物はたくさん流れています。ヒドロキシラジカル(・OH)を除去するものとしては、ベータカロチン、ビタミンE、リノール酸、フラボノイドなどが知られています。

狭いところに入れられて空腹で頑張ったマウスたち、ご苦労さま。

脳梗塞治療に水素が効果、動物実験で確認=日本医科大学
http://blog.goo.ne.jp/cinogi/e/c5f7a931afcb4308f051e8f4bde4bb64

ダニの体内から特効薬?貧血起こす「バベシア症」に関する酵素発見=鹿児島大学、農研機構

2008年07月19日 | 生きもの色々
 家畜やペット、ヒトの赤血球に寄生し、重い貧血を起こす「バベシア症」を媒介するマダニが、自らの体内では病原体を増殖させずに、動物などに感染させる仕組みを、鹿児島大と農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)の共同研究チームが解明した。血液を吸うダニや昆虫が媒介する感染症には、マラリアなど重い症状を伴うものも多く、抑制の仕組みの解明は、治療薬開発にもつながるという。
 バベシア症は、マダニの体内に住むバベシア原虫が、マダニが血を吸う際に動物の体内に入り込み、赤血球に寄生。ヘモグロビンを分解し、重い貧血になる。牛や犬などで死亡する例が増えているほか、欧米ではヒトへの感染例も増えており、有効な治療薬がないため、死者も出ている。
 鹿児島大の藤崎幸蔵教授らは、マダニの腸で作られ、吸った血液の中の赤血球を消化する過程で使われるたんぱく質分解酵素を発見し、「ロンギパイン」と名付けた。

[時事ドットコム 2008年07月19日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008071900059

「アトピー」のかゆみ抑制するたんぱく質発見=横浜市立大学

2008年07月18日 | 免疫
 横浜市立大学医学部の五嶋良郎教授や池沢善郎教授らの研究チームは、アトピー性皮膚炎のかゆみを抑える効果のあるたんぱく質を見つけた。マウスの実験で、アレルギー反応にかかわる炎症細胞や皮膚の神経の量が減ってかゆみが抑えられるのを確認した。治療薬への可能性を探る。
 神経細胞の成長を妨げる働きをする体内のたんぱく質「セマフォリン3A」に注目した。アトピー性皮膚炎のモデル動物であるマウスの皮膚に投与すると、皮膚炎が改善し、皮膚をひっかく回数が減った

[NIKKEI NET/日経産業新聞 2008年07月18日]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2008071708214h1



【かゆみ抑制物質:横浜市立大の研究グループが発見 アトピー治療薬に期待】

 アトピー性皮膚炎などの皮膚のかゆみを抑えるたんぱく質を、横浜市立大の五嶋良郎教授と池沢善郎教授らの研究グループが、マウスの実験で突き止めた。このたんぱく質には、かゆみを悪化させる神経細胞の過度な成長を抑える働きがあり、治りにくい皮膚のかゆみを改善する治療薬につながると期待される。国際皮膚科専門誌「ジャーナル・オブ・インベスティゲーティブ・デルマトロジー」に掲載された。

 ヒトがかゆみを感じてひっかくと、その刺激によって神経細胞の成長が促進され、かゆみに過敏になる。これをさらにひっかくと、神経が一層増える悪循環に陥り、アトピー性皮膚炎などの慢性化につながるという。

 研究グループは、神経の成長を妨げる「セマフォリン3A」というたんぱく質に着目。アトピー性皮膚炎のモデルマウスに、このたんぱく質を皮下注射すると、投与していないマウスに比べ皮膚炎が改善し、患部をひっかく回数が減った。

 投与していないマウスの神経細胞は表皮まで入り込んでいたが、投与したマウスは神経の伸びが少なかった。このたんぱく質はヒトの表皮からも分泌され、アトピー性皮膚炎の患者は分泌が少ないことが知られている。

 五嶋教授は「このたんぱく質を塗ることで補い、かゆみを抑えられる可能性がある。ただ、このたんぱく質は構造的に不安定なため、今後、安定して大量生産できるかが課題になる」と話す。【下桐実雅子】

[毎日新聞 2008年07月22日]
http://www.mainichi.jp/select/science/news/20080722dde041040025000c.html

おれが嫌われ者?とんでもない、ハチの用心棒ダニ=森林総合研究所

2008年07月16日 | 生きもの色々
 ハチに寄生しているダニが、実は“用心棒”として活躍していることを、森林総合研究所(茨城県つくば市)の岡部貴美子チーム長らの研究チームが15日発表した。

 嫌われ者というイメージのあるダニが、寄生先の生物を助け共生関係を築く例を明確に示したのは世界で初めてという。

 このハチは体長1センチほどのアトボシキタドロバチで、関東などで一般的に見られる。ドロバチの成虫は、羽の付け根など4か所にダニが寄生する小部屋を用意しているが、なぜ住み家を提供するのかは謎だった。

 岡部さんらが野外の巣を観察した結果、ドロバチの幼虫の天敵となる小型のクロヒラタコバチの幼虫を、ダニが撃退していることを突き止めた。

 小型バチはドロバチの巣に卵を産み付け、ダニがいない巣では卵からかえった幼虫がドロバチの幼虫を食べてしまう。

 ダニはドロバチの幼虫やさなぎから体液を吸って成長するが、深刻なダメージは与えずに、寄生先を天敵から守る用心棒の役割を果たしているようだ。

[読売新聞 2008年07月16日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080716-OYT1T00284.htm


「一寸の虫にも五分の相棒、そして五分のダニだって大活躍」ヤドリバチの幼虫は返り討ちに。小さな昆虫たちの世界でも繊細な仕組みがちゃんと働いているんですね。感心しました。

がん:抑制の化合物開発 特許申請、すい臓用新薬として期待=金沢大学

2008年07月15日 | 創薬
 がんの中でも治療が難しいすい臓がんなどに見られるがん細胞の増殖を抑え、死滅させる新たな化合物の開発に、金沢大の研究グループが成功。6月19日に特許申請した。すい臓がんの新たな抗がん剤創薬につながると期待される。試験管レベルだが、今後、動物実験で安全性などを確かめる。研究成果は10月に名古屋市である日本癌学会で発表する。【野上哲】
 向田直史・がん研究所教授(腫瘍(しゅよう)学)と石橋弘行・医薬保健研究域薬学系教授(有機化学)らの研究。「学部」の垣根を超えた、学内での“医薬連携”が成果に結びついた。
 向田教授らは03年に発見した、マウスの肝臓がんで特異的に働くたんぱく質「Pim―3」が、ヒトのすい臓、肝臓などのがんでも働いていることを確認。これが、がん細胞の増殖を促すと同時に、不要な細胞を死に至らせるアポトーシスという機能を妨げる働きがあることを突き止めた。
 一方、石橋教授らは「Pim―3」が働くメカニズムや分子構造を踏まえ、その働きを阻む物質を人工的に合成することに成功。実際に試験管内でヒトのすい臓がんの細胞などに加えたところ、死滅することを確認したという。
 向田教授は「特にすい臓は体の深部にあり、臓器自体も小さく、外科手術が難しい。新しい抗がん剤が求められている」と指摘。「新開発の化合物は特定のたんぱく質に働き、副作用も少ないと考えられる。安全性などの課題をクリアしていきたい」と話している。

[毎日新聞/Yahoo!ニュース 2008年07月15日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080715-00000265-mailo-l17

複数薬剤:動きを体内で同時画像化=理化学研究所

2008年07月13日 | 可視化技術
 複数の薬剤の動きを動物の体内で一度に画像化する手法を、理化学研究所などが開発した。現在、がんの診断などに使われているPET(陽電子放射断層撮影)は単一の薬剤しか追跡できないが、複数の薬剤の動きを同時に見ることで、がんと潰瘍(かいよう)を見分けるなど、より精密な診断が可能になるという。

 PETは、薬剤に含まれる陽電子が出すガンマ線を検出し、体内での薬剤の場所を画像化する。理研の榎本秀一ユニットリーダーらは、さまざまな放射性同位元素から放射されるガンマ線を元素ごとに識別できる装置を開発。ヨウ素、亜鉛、ストロンチウムの放射性同位体で標識をつけた3種類の薬剤をマウスに投与し、それぞれの場所を画像化することに成功した。

 榎本さんは「5年後をめどに、人間に使える試作機を作りたい」と話している。【西川拓】

[毎日新聞 2008年07月13日]
http://www.mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/07/13/20080713ddm016040050000c.html

理化学研究所 プレスリリース (2008年07月03日)
 マウスで複数の放射性薬剤の同時イメージングに世界で初めて成功
 - 世界に先駆けて分子イメージング技術を活用した新診断装置を創出 -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2008/080703/index.html
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2008/080703/detail.html

白血病研究、「患者同意」偽り論文 倫理委承認も虚偽=東京大学医科学研究所

2008年07月11日 | 生命&倫理
 東京大医科学研究所(医科研、東京都港区)は11日、分子療法分野の東條有伸教授=血液・腫瘍(しゅよう)内科学=らが発表した白血病の論文5本に、実際には受けていない学内の倫理審査委員会の承認や、血液など検体を提供した患者の同意があったかのように偽った内容が記載されていたと発表した。東條教授らはうち3本の虚偽記載を認め、1本の論文を先月取り下げたという。

 医科研によると、東條教授らは、検査時に採取した患者の血液などに含まれる腫瘍細胞を研究に使っていた。

 取り下げた論文は、伊の医学誌「ヘマトロジカ」(電子版)で今年5月に発表した。論文には「患者の同意書も取得し、医科研の倫理審査委の承認を得た」と記載していたが、実際には同意書はなく、倫理審査は申請すらしていなかった。

 また04年の米医学誌「ブラッド」に掲載された論文でも、倫理審査の申請をしていないのに、手続きをしたかのように記載し、患者の同意書の存在も確認できていないという。

 東條教授は医科研の調査に対し、「他の研究で行った倫理審査申請が適用できると考えていた」と説明したが、その後に3本の論文の虚偽記載を認めた。これらとは別に、事実と異なる内容の論文が2本あり、医科研が調べている。医科研は患者への謝罪も始めた。

 ヒト対象の臨床研究では、世界医師会の「ヘルシンキ宣言」が倫理委による審査や被験者(研究に協力した人)の自由意思でのインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)の取得を求めている。厚生労働省の臨床研究に関する倫理指針(03年)も、文書でのインフォームド・コンセント取得を義務づけている。

 東條教授は白血病など難治性の血液疾患が専門で、医科研付属病院血液腫瘍内科長も兼任している。

 医科研の清木元治所長は「研究倫理に関する見識の低さが招いた結果。臨床研究では患者の権利保護が重要なのに、その手続きが不十分だった」と陳謝した。【大場あい、関東晋慈、斎藤広子】

[毎日新聞 2008年07月11日]
http://www.mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/07/11/20080711dde001040068000c.html


インフォームドコンセントと生命倫理について熟慮することはとても重要だと思います。
なにかと手続きが面倒な時代ではありますが(説明責任とか責任所在の明確化とか)、これは情報の進化した社会からの要求です。
薬害や医療訴訟、安全性の担保、さまざまなハードルがあります。一方では、法的な問題点を見つけ出し、取り沙汰して訴訟に持っていくのが得意な人たちもいるのかも知れません。

しかしそういう状況は、今すぐの切実な難病治療を待ちこがれている人たちにとっては、残念なことだ、とも思います。

永遠のナゾがついに解明、恐竜時代の化石のオリジナルの色の判別に成功=イェール大学

2008年07月11日 | 生きもの色々
【Technobahn 2008/7/11 15:01】化石の研究から恐竜など古生物の生態の解明はかなり進んできているが、それでも未だに判らないことがある。果たして恐竜はどういう色をしていたかということだ。

 しかし、この恐竜の色を巡るナゾを解明する手掛かりを米研究者が見つけ、専門誌に研究発表を行っていたことが8日、米研究機関の発表により明らかとなった。

 この研究発表を行ったのは米イェール大学のヤコブ・バンター研究員。

 バンター研究員はブラジルとデンマークで発見された1億年前の恐竜時代の羽の化石を電子顕微鏡を使って分析することで化石の中に、当初は化石化したバクテリアだと思われていた構造部分が、実はメラニン色素を含む細胞「メラノソーム(melanosomes)」であることを発見。

 その上で、バンター研究員はメラニン色素の構造は数百万年から数億年が経過しても化石化することで原型を止めることが可能なこと、更に、化石化メラノソームの構造を分析することで、オリジナルの色がどのようなものだったのか、判別することに成功した。

 バンター研究員は羽に覆われた恐竜の皮膚組織の保存状態の良い化石が見つかれば、化石化したメラノソームの構造を分析することで恐竜はどのような色をしていたのか、解明することも可能だと述べている。

[Technobahn 2008年07月11日]
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200807111501