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ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

難病の一部、実は新疾患=金沢大学

2009年01月24日 | 免疫
 金沢医科大の正木康史准教授(血液免疫制御学)らの研究グループは二十三日までに、免疫性の難病シェーグレン症候群の一部とされていた中に、抗体タンパク質の増殖で発症する新たな別の疾患が含まれていることを突き止めた。今後、適切な診断法を確立し、早期に症状の進行を防ぐ。研究成果をまとめた論文は英科学誌ネイチャーなどに紹介された。
 シェーグレン症候群は口や目が乾燥し、重度になると肺や肝臓などの内臓疾患も併発する難病で、国内の患者数は十万―二十万人といわれている。同症候群の中にはミクリッツ病と呼ばれ、特に涙腺や耳下腺の腫れがひどくなる疾患があるが、従来は同症候群の一部と考えられていた。

 正木准教授らは、ミクリッツ病が同症候群とは別の疾患ではないかと考え、二〇〇四(平成十六)年に金大や富大を含む全国の専門家による検討会を設置。全国の病院から八十四症例を集めて解析した結果、同症候群と比べ、「IgG4」と呼ばれる抗体タンパク質と、それをつくる細胞の増殖が分かった。

 さらに、別の疾患である自己免疫性膵炎(すいえん)の中でも特に「IgG4」の数の多くなる症例があるため、これらをまとめて新たに「IgG4関連リンパ増殖性多臓器疾患」として提唱することにした。

 同検討会によると、同疾患はステロイドの投与により、腺機能の荒廃や多臓器不全の進行を防げるという。一方、副作用に注意が必要で、同検討会は適切な投与量や時期などを研究し、治療法の確立を目指す。

[北国新聞 2009年01月24日]
http://www.hokkoku.co.jp/_today/H20090124101.htm

たんぱく質:アトピーなど誘発、仕組み解明=大阪大学

2009年01月12日 | 免疫
 免疫細胞やがん細胞を活性化させるたんぱく質で、過剰に働くとアトピー性皮膚炎やがんなどを招くと考えられている「NF-κ(カッパー)B」が、活動を始める仕組みの一つを、大阪大の岩井一宏教授(生化学)と徳永文稔准教授(同)らが発見した。治療薬開発の手がかりになる成果という。12日、英科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」に論文が掲載される。

 岩井教授らは、人体の中で、不要になったたんぱく質の分解を担っているたんぱく質の一種「ユビキチン」に着目した。マウスの細胞を使った実験で、ユビキチンの分子が直列にいくつもつながった「ポリユビキチン」が、別のたんぱく質と結びついて、NF-κBに活動を始めさせることを確認した。

 NF-κBの活性化を抑える薬には、ステロイド剤などがある。しかし他のたんぱく質にも作用するため、さまざまな副作用が生じる。ポリユビキチンはNF-κBだけを活性化させているとみられるため、岩井教授は「ポリユビキチンの働きを抑えることができる物質を見つければ、今よりは副作用の少ない薬になる可能性がある」と話している。【野田武】

[毎日新聞 2009年01月12日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20090112k0000m040102000c.html

「花粉症」3か月で改善、新治療法=チューリヒ大学病院ら

2008年11月11日 | 免疫
 【ワシントン=増満浩志】花粉症などのアレルギー患者に原因物質を繰り返し注射する「減感作療法」を、3か月で済ませることに、チューリヒ大学病院(スイス)などの研究チームが成功した。

 皮下でなく、そけい部のリンパ節に注射する方法で、副作用も従来の方法より少ないという。米科学アカデミー紀要電子版に10日、発表された。

 減感作療法は通常、原因物質のエキスを少量ずつ、約3年かけて注射する。研究チームは、皮下注射したエキスが体内の免疫システムをつかさどるリンパ節へは一部しか達しないことに注目。58人の花粉症患者に対し、リンパ節へ直接、1か月おきに計3回だけ注射する新手法を試してみた。

 開始から4か月後に検査したところ、アレルギー症状が劇的に緩和され、治療前に比べ平均10倍の花粉量がないと鼻炎が起きなくなっていた。効果は開始から3年後も持続していた。

 従来の減感作療法を行った別の54人では、じんましんなどの軽い副作用が18件、入院の必要なぜんそくの副作用が2件起きた。新手法では、軽い副作用が6件起きただけだった。

[読売新聞 2008年11月11日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20081111-OYT1T00391.htm

オゾン殺菌でバクテリア退治、免疫治療に期待=京都大学

2008年10月26日 | 免疫
 水道水の浄水などで行われているオゾン(O3)殺菌が人の体内でも行われていることが、京都大医学研究科の山下浩平助教(血液内科学)らの研究で分かった。白血球の一つの「好中球(こうちゅうきゅう)」が自分の細胞内でオゾンを作り、バクテリア退治の「武器」にしているという。米国科学アカデミー紀要に21日発表した。

 白血球「好中球」

 好中球は、「スーパーオキシド」などの活性酸素を細胞内で作り、体内に侵入したバクテリアや細菌を食べ活性酸素の力で分解して殺している。

 山下助教は、スーパーオキシドを作ることができない病気の患者の好中球の働きを調べ、好中球がオゾンを作っていることを見つけた。体内の細胞がオゾンを作っていることが分かったのは世界で初めて。バクテリアが増えて殺菌が追いつかなくなると、活性酸素に加えてオゾンも作って武器を増やしているらしい。

 好中球にアミノ酸「トリプトファン」などを投与すると、オゾンをたくさん作ることも分かった。山下助教は「白血病などで好中球が減っている患者にアミノ酸を使って免疫力を向上させる治療法も可能性がある」と話している。

[京都新聞 2008年10月26日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008102100102&genre=G1&area=K00

たばこの煙、ぜんそく起こす仕組み解明=山梨大学

2008年10月23日 | 免疫
山梨大医学部グループ、学会誌に掲載 研究者「発症予防につながる」

 山梨大は22日、同大医学部の中尾篤人教授(45)の研究グループが、たばこの煙がぜんそくを引き起こすメカニズムを解明し、研究内容が米アレルギーぜんそく免疫学会誌電子版に掲載された、と発表した。喫煙がぜんそくの発症原因になることは確認されていたが、その仕組みはこれまで分かっていなかった。
 中尾教授の研究グループは、体内で免疫の働きを調節するタンパク質の1つで、アレルギー型の免疫反応を起こさせる「TSLP」に注目。マウスの鼻にたばこの抽出物を付けて喫煙状態にし、ぜんそくを引き起こす過程を調べることで、喫煙によって肺の中にTSLPがつくられることを証明した。
 さらに、たばこの煙だけではぜんそくは発症せず、ダニなどアレルギーの原因物質(アレルゲン)を喫煙時に吸い込むことが、発症条件になることも分かった。
 喫煙するとアレルゲンが体内に入りやすくなり、TSLPの作用とともにアレルギー型の免疫反応を引き起こす。たばこの煙成分が細胞の障壁機能を弱めている可能性があるという。

[山梨日日新聞WEB版 2008年10月23日]
http://www.sannichi.co.jp/local/news/2008/10/23/5.html

「アトピー」のかゆみ抑制するたんぱく質発見=横浜市立大学

2008年07月18日 | 免疫
 横浜市立大学医学部の五嶋良郎教授や池沢善郎教授らの研究チームは、アトピー性皮膚炎のかゆみを抑える効果のあるたんぱく質を見つけた。マウスの実験で、アレルギー反応にかかわる炎症細胞や皮膚の神経の量が減ってかゆみが抑えられるのを確認した。治療薬への可能性を探る。
 神経細胞の成長を妨げる働きをする体内のたんぱく質「セマフォリン3A」に注目した。アトピー性皮膚炎のモデル動物であるマウスの皮膚に投与すると、皮膚炎が改善し、皮膚をひっかく回数が減った

[NIKKEI NET/日経産業新聞 2008年07月18日]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2008071708214h1



【かゆみ抑制物質:横浜市立大の研究グループが発見 アトピー治療薬に期待】

 アトピー性皮膚炎などの皮膚のかゆみを抑えるたんぱく質を、横浜市立大の五嶋良郎教授と池沢善郎教授らの研究グループが、マウスの実験で突き止めた。このたんぱく質には、かゆみを悪化させる神経細胞の過度な成長を抑える働きがあり、治りにくい皮膚のかゆみを改善する治療薬につながると期待される。国際皮膚科専門誌「ジャーナル・オブ・インベスティゲーティブ・デルマトロジー」に掲載された。

 ヒトがかゆみを感じてひっかくと、その刺激によって神経細胞の成長が促進され、かゆみに過敏になる。これをさらにひっかくと、神経が一層増える悪循環に陥り、アトピー性皮膚炎などの慢性化につながるという。

 研究グループは、神経の成長を妨げる「セマフォリン3A」というたんぱく質に着目。アトピー性皮膚炎のモデルマウスに、このたんぱく質を皮下注射すると、投与していないマウスに比べ皮膚炎が改善し、患部をひっかく回数が減った。

 投与していないマウスの神経細胞は表皮まで入り込んでいたが、投与したマウスは神経の伸びが少なかった。このたんぱく質はヒトの表皮からも分泌され、アトピー性皮膚炎の患者は分泌が少ないことが知られている。

 五嶋教授は「このたんぱく質を塗ることで補い、かゆみを抑えられる可能性がある。ただ、このたんぱく質は構造的に不安定なため、今後、安定して大量生産できるかが課題になる」と話す。【下桐実雅子】

[毎日新聞 2008年07月22日]
http://www.mainichi.jp/select/science/news/20080722dde041040025000c.html

炎症性腸疾患の仕組み解明 、根本的治療の可能性=北海道大学

2008年05月12日 | 免疫
 北海道大遺伝子病制御研究所の西村孝司教授(54)らの研究チームは12日、厚生労働省が難病指定する炎症性腸疾患を引き起こす原因が、体内にあるリンパ球の一種「CD8T細胞」の異常増殖により生み出される物質だとマウス実験で突き止め、疾患発生の仕組みも解明したと発表した。

 同疾患はクローン病や潰瘍性大腸炎などに代表され、患者は全国に約10万人いるとされるが、これまで原因は解明されていなかった。研究グループは「根本的な治療薬の開発につながることが期待できる」としている。

 発表によると、CD8T細胞はもともと体内にあるが、大腸内で何らかの理由で異常増殖すると「インターロイキン17」という物質を生み出し、この物質が炎症を引き起こすことが分かった。

 腸などの消化管で生み出されている「インターロイキン6」はCD8T細胞増殖を手伝う物質だが、この物質に対する抗体をマウスに投与することにより、CD8T細胞の異常増殖が抑えられ、マウスの大腸内の炎症がほぼ無くなったことも確認されたという。

[共同通信47NEWS / 2008年05月12日]
http://www.47news.jp/CN/200805/CN2008051201000723.html

ヘルペス感染の仕組み解明=免疫抑制の受容体を利用=大阪大学

2008年03月21日 | 免疫
 皮膚などにただれを起こし、角膜に感染すると場合によっては視力低下などの重い症状になる単純ヘルペスウイルス(HSV)が、感染する際に細胞の表面の免疫抑制にかかわる受容体(レセプター)を利用していることを大阪大免疫学フロンティア研究センターの荒瀬尚教授(免疫学)らの研究グループが突き止め、米科学誌セルに20日、発表した。
 HSVの国内の年間患者数は約8万人とされ、症状が治まってもウイルスが神経節に潜伏して再発を繰り返すなど、完治が難しい。荒瀬教授は「さらに解明が進めば、感染を防止する治療薬の開発が期待できる」と話している。

[時事ドットコム / 2008年03月21日]
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200803/2008032100032

アナフィラキシーショック:白血球「好塩基球」が原因=東京医科歯科大学

2008年03月16日 | 免疫
 ハチ刺されや食べ物が原因で起きる急性アレルギー反応「アナフィラキシーショック」の新たな発症メカニズムを、烏山一・東京医科歯科大教授(免疫アレルギー学)らが突き止めた。白血球の一種の「好塩基球」が活性化することで、ショックが起きていた。予防法などの開発につながる成果で、米医学誌「イミュニティ」電子版に13日掲載された。

 烏山教授らは、アトピー性皮膚炎など慢性アレルギー反応の引き金となる好塩基球に着目した。抗生物質のペニシリンでアナフィラキシーショックを起こすマウスから好塩基球を除去すると、ペニシリンを投与してもショックを起こさないことを確認した。

 一方、ショックを起こしたマウスの好塩基球を調べると、表面のIgGと呼ばれるたんぱく質(抗体)がアレルゲン(原因物質)と結合し、アレルギー症状を引き起こす血小板活性化因子を放出することが分かった。

 これまで、アナフィラキシーショックは、皮膚や粘膜などの細胞の表面にあるIgEという抗体とアレルゲンが結び付いて起きることが知られていた。

 重症のアナフィラキシーショックを起こした患者は、血液中の血小板活性化因子の濃度が増加しており、従来の発症メカニズムよりもショックの重症度が高い可能性がある。

 烏山教授は「血液中のIgGを調べれば、アナフィラキシーを起こすアレルゲンを事前に判定できるかもしれない」と話している。【大場あい】

[毎日新聞 / 2008年03月14日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080314k0000m040139000c.html?inb=rs

たんぱく質:ウイルス撃退増強、新型インフルの新薬に有効か=理化学研究所

2008年02月21日 | 免疫
 体内に侵入したウイルスを撃退するインターフェロンの分泌を増やすたんぱく質を、理化学研究所の研究チームがマウスで発見した。致死量のウイルスに感染したマウスに、このたんぱく質を活性化する物質を投与し、救命することにも成功した。同様のたんぱく質はヒトにもあると考えられ、新型インフルエンザなどに対抗する新薬の開発などにつながる成果だ。18日付の米科学アカデミー紀要に発表した。

 インターフェロンは、ウイルスや細菌に感染した時に細胞から分泌され、病原体の増殖などを抑える。

 理研免疫・アレルギー科学総合研究所の渡会浩志(わたらいひろし)上級研究員らは、インターフェロンを生産するマウスの細胞の細胞膜で、ウイルス感染時だけに現れるたんぱく質を発見し、PDC-TREMと名づけた。PDC-TREMの働きを弱めると、インターフェロンの生産量が10分の1に減ることを確認した。また、PDC-TREMを活性化する物質をマウスに投与したうえで、通常のマウスなら100%死ぬ量のヘルペスウイルスに感染させたところ、約8割は死ななかった。

 渡会さんは「インターフェロンの量を増やせれば、新しいウイルスに対しても感染初期には有効だ。インターフェロンが多すぎて起こると考えられている膠原(こうげん)病など自己免疫疾患の治療にもつながるのではないか」と話している。【西川拓】

[毎日新聞 / 2008年02月20日]
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/02/20/20080220ddm012040012000c.html

理化学研究所 プレスリリース
抗ウイルス反応を増強する重要分子「PDC-TREM」を発見
- 形質細胞様樹状細胞がⅠ型インターフェロンの産生を増幅する仕組みが明らかに -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2008/080219/index.html

花粉症やぜんそくに朗報、発症関与の新たんぱく質発見=理化学研究所

2007年12月03日 | 免疫
 花粉症やぜんそくなどのアレルギー疾患の発症に関与する新たなたんぱく質を、理化学研究所の研究チームが発見し、3日の米科学誌「ネイチャー・イミュノロジー」(電子版)に発表した。

 日本人の約3割は何らかのアレルギーに悩まされているとされ、このたんぱく質を制御することで、新たな治療法の開発が期待される。

 アレルギーの症状は、体に入った異物(抗原)に刺激された特定の細胞から「ヒスタミン」という物質が分泌されて起きる。ヒスタミンは、細胞内のカルシウムが多くなると分泌されることが知られているが、カルシウム量がどのような仕組みで制御されているのか、よくわかっていなかった。

 研究チームが発見したのは「STIM1」というたんぱく質。遺伝子操作でSTIM1がないマウスを作り、その細胞を抗原で刺激すると、カルシウムの量が抑えられ、ヒスタミンの分泌量も著しく低下した。

 研究チームは、このたんぱく質が抗原の刺激で細胞表面近くに移動し、外からカルシウムを取り込む関門のような小器官を開く働きをしていると突き止めた。

 一方で、STIM1がないマウスはすぐに死亡し、細胞の生存に重要な役割を果たしていることもわかった。理研の黒崎知博グループディレクターは「新たな治療法の開発には、カルシウムの役割をより細かく突き止める必要がある」と話している。

[読売新聞 / 2007年12月03日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071203i401.htm

<掃除屋細胞>センサーのように要不要を区別=京都大学

2007年10月25日 | 免疫
 体内の“掃除屋”細胞と言われる「マクロファージ」が不要になった細胞を取り除く際、アレルギーなど免疫にかかわるたんぱく質がセンサーのように要不要を見分けていることを、京都大医学研究科の長田重一教授らが突き止めた。ぜんそくやアレルギー、アトピーなど自己免疫疾患の解明や治療法の開発に役立つ成果という。25日付の英科学誌ネイチャーに発表された。

 古くなり不要になった細胞が死ぬと、有害な物質が放たれて周囲に炎症が起きないように、マクロファージが細胞を丸ごと取り込んで分解する。死んだ細胞の表面にリン脂質の物質が現れるが、マクロファージがどのように目印を見分けるかは未解明の部分が多かった。

 マクロファージの表面にあり、この目印と結合するたんぱく質を探したところ、免疫にかかわる「Tim1」と「Tim4」が当てはまると判明。これらを抗体で働けなくすると、マクロファージは細胞を取り込めなくなり、Timたんぱく質が死細胞を取り除くために必要だと分かった。

 研究グループの大阪大医学系研究科、内山安男教授は「マクロファージがうまく掃除できないことと、自己免疫疾患など免疫の病気が関係すると分かった。治療法を考えるうえで重要な発見だ」と話している。【根本毅】

[毎日新聞 / 2007年10月25日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071025-00000008-mai-soci

免疫反応の「制御役」特定 アレルギー構造解明=九州大学

2007年09月03日 | 免疫
 ぜんそくや花粉症、アトピー性皮膚炎の原因となるアレルギー反応を制御する分子メカニズムを、九州大生体防御医学研究所の福井宣規(よしのり)教授(免疫遺伝学)らの研究グループが世界で初めて解明し、2日付の米科学誌ネイチャー・イムノロジー(電子版)に発表した。アレルギー疾患の研究や、リウマチなど自己免疫疾患の治療への応用が期待される。

 抗原(ダニや花粉、食物などアレルギー反応の原因)が体内に入ると、免疫をつかさどるヘルパーT細胞(リンパ球)は、侵入物を直接攻撃するTh1細胞やTh17細胞、抗体を使って排除するTh2細胞に分化。ヘルパーT細胞のバランスが崩れ、Th1細胞やTh17細胞に過度に偏ると自己免疫疾患、反対にTh2細胞が増えすぎるとアレルギー疾患に陥る。

 インターロイキン4と呼ばれるサイトカイン(細胞間の情報伝達をするタンパク質)がTh2細胞への分化を促すことは分かっていたが、抗原の刺激がインターロイキン4の生産につながる仕組みは不明だった。

 福井教授らは、抗原を認識するT細胞受容体からインターロイキン4受容体への信号伝達を、リンパ球を活性化させる分子DOCK2が制御していることを突き止めた。遺伝子操作でDOCK2を欠損させたマウスは、アレルギー疾患を自然発症するという。

 福井教授は「DOCK2に作用する医薬品ができれば、ヘルパーT細胞のバランスを整えて自己免疫疾患や移植後の拒絶反応の予防など、さまざまな疾患の治療に貢献できる」と話している。

[西日本新聞 / 2007年09月03日]
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/science/20070903/20070903_001.shtml

成人ぜんそく仕組み解明 免疫細胞が悪玉化=兵庫医科大学

2007年08月28日 | 免疫
 成人に多い難治性ぜんそくは、かぜなどによるのどの炎症で免疫細胞の一種が悪玉化し、特殊なアレルギー反応が起きるのが原因とする研究結果を、兵庫医大の中西憲司教授(免疫学)らがマウス実験でまとめ、米科学アカデミー紀要(電子版)に28日、発表した。

 小児ぜんそくはカビやダニなどが原因で起きることが多いが、成人ぜんそくは自分の体が作り出す炎症関連物質が悪さをしているらしい。中西教授は「この物質の働きを弱められれば深刻な症状の軽減につながる」としている。

 佐賀大、大阪大との共同研究。中西教授はマウスののどに毒素を入れて炎症を起こし、反応を分析。炎症部位から出る物質がリンパ球の一種に働きかけて異常な免疫反応を起こし、呼吸困難や気管支炎を招くことを突き止めた。

 こうした免疫反応は繰り返し起きてぜんそく症状が悪化するが、この物質を抑えると症状が治まることも確認した。

 中西教授は「成人ぜんそくが慢性化する仕組みが解明できた。大型動物でも実験したい」としている。

[産経新聞 / 2007年08月28日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070828-00000104-san-soci

人体へのウイルス侵入 細胞内で察知の分子特定=北海道大学、東京大学

2007年07月09日 | 免疫
 感染症を引き起こすウイルスのヒトの細胞内への侵入を察知し、自然免疫を活性化させる分子の特定に、北大遺伝子病制御研究所の高岡晃教(あきのり)教授(39)=分子免疫学・腫瘍(しゅよう)学=と東大大学院医学系研究科の谷口維紹(ただつぐ)教授(59)=免疫学=の共同研究班が成功した。高岡教授によると、この分子の特定は世界で初めて。ウイルス感染の初期段階の解明につながり、感染症などの治療分野への貢献が期待される。八日付(現地)の英科学誌「ネイチャー」(電子版)で発表する。

 高岡教授らは、自然免疫の活性化に重要な役割を果たしているインターフェロンによって発現が誘導される分子があることに着目。そのうち、細胞の中にあり、ウイルスの核酸(DNA)と結合するものの特定に成功、DNAを感知するこの受容体(分子)を「DAI(ダイ)分子」と名づけた。研究では、蛍光共鳴エネルギー移動法と呼ばれ、蛍光物質を付けた特定のもの同士が接近した場合に波長が変化する手法などを用いた。

 従来の研究では、細胞外でDNAを認識する受容体は特定されていたが、細胞内でDNAを認識する受容体は分かっていなかった。

 DAI分子の発現を増強させ、インターフェロンとの相互作用で生体の免疫系を活性化させることによって、ウイルスや細菌などの病原体を効果的に排除し感染を防ぐ方法の確立が期待される。

 また、DAI分子は細胞内に侵入した病原体のDNAだけではなく、自己の細胞のDNAも認識することが分かったため、自己のDNAが過剰に作用していると考えられる自己免疫疾患の病態を明らかにすることにもつながるという。

 高岡教授は「感染症や難病の患者の治療に役立てるため、この結果を臨床応用していきたい」と話している。

[北海道新聞 / 2007年07月09日]
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/environment/36879.html?_nva=6

(写真:細胞内に侵入したウイルスのDNAを感知する分子を特定した高岡教授)