ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

ヒトゲノム 遺伝子制御の仕組み解明=東京工業大学ら

2008年01月31日 | 遺伝子
 ヒトゲノム(全遺伝情報)に存在するニ万数千個の遺伝子が、相互に干渉せず秩序を維持して働く仕組みを、東京工業大大学院の白髭克彦教授らの日欧共同研究チームが解明した。環状のタンパク質がDNAを約1万3000カ所で区切り、遺伝子の機能を場所ごとに制御していることを突き止めた。英科学誌「ネイチャー」(電子版)に30日、発表した。

 人体の設計図であるヒトゲノムを機能別のブロック単位で理解できるようになる成果で、遺伝病の原因究明や遺伝子治療の進歩につながると期待される。

 タンパク質をつくる遺伝子は、スイッチ役の制御配列から「オン」(活性化)や「オフ」(抑制)の情報を受け、機能を制御されている。この情報は個々の遺伝子ごとにきちんと区別して伝達され、“混線”することはないが、その仕組みは分かっていなかった。

 白髭教授らは、ゲノム上のタンパク質の働きを網羅的に解析。細胞分裂の際に働く「コヒーシン」という環状のタンパク質が、遺伝子の機能制御に深く関係していることを発見した。

 コヒーシンは、輪ゴムで縛るようにDNAをループ状に区切っていると推定。遺伝子の制御情報は、区切られた領域内で同時に伝わるが、他の領域にはコヒーシンによって遮断されて伝わらないという。

 遺伝子治療では、導入した遺伝子が本来の機能を発揮せず、治療効果が得られない場合がある。今回の成果を基に、遺伝子が活性化される領域を狙って導入すれば、効果が高まる可能性があるという。

[msn産経ニュース / 2008年01月31日]
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080131/acd0801310302000-n1.htm

アンナハチドリは尾翼で求愛の音を出す=カリフォルニア大学バークレー校

2008年01月30日 | 生きもの色々
【1月30日 AFP】ハチドリの雄が雌に求愛するときの口笛のような音をどのように出すか解明したとする、米動物学者チームの研究成果が英国王立協会生物学会報(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された。

 米西海岸原産のアンナハチドリの雄は、縄張りに入ってきた雌の関心を引くために、急降下しながら短く大きな口笛のような音を出す。

 研究を発表したのは、米カリフォルニア大学バークレー校脊椎(せきつい)動物博物館(Museum of Vertebrate Zoology at the University of California at Berkeley)のクリストファー・クラーク(Christopher Clark)と、テレサ・フェオ(Teresa Feo)両氏。

 2人はアルバニー(Albany)の公園でアンナハチドリが使っている止まり木の近くに高速度ビデオカメラとマイクを設置。その後、雄のハチドリ10羽を捕まえ、5種類ある尾扇のうち1種類を引き抜いた。そして風洞の中でさまざまな速度の風を送り、アンナハチドリがどの尾羽を使って音を出すのかを観察した。

 その結果、口笛のような音は尾翼の最も外側の羽から出されていることが分かった。わずか幅4ミリの特徴的な形をした羽が、急降下中の微妙な調整により乱気流を作り出し、降下速度が時速65キロ以上に達すると口笛のような音を立てているのだ。

 鳥類学者の間では、口笛のような音は尾翼から出るという説や、ほかのハチドリと同様にのどから出しているとする説などが唱えられていた。

 クラーク、フェオ両氏は、アンナハチドリが雌の関心を引くための音を尾翼で出すようになった理由について、「鳴管、つまり鳥類の喉頭(こうとう)はこの音量の音を出すには脆弱(ぜいじゃく)すぎたからだ」と考えており、進化の過程で生み出されたものだと主張している。(c)AFP

[AFP BB News / 2008年01月30日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2343898/2575271

アゲハの色覚は4原色、赤緑青に加え紫外線区別=総合研究大学院大学

2008年01月30日 | 生きもの色々
 総合研究大学院大学の蟻川謙太郎教授らの研究グループは、アゲハチョウの色覚が4原色であることを実験で明らかにした。人間の目には赤・緑・青の3原色を見分ける細胞があるが、アゲハでは紫外線を担当する細胞も加えた計4種類だった。30日付の英王立協会紀要(電子版)に論文が掲載される。

 アゲハの目には光を受け取るセンサー役の細胞が6種類あり、このうち何種類が色を見分ける機能を担っているのかよく分かっていなかった。アゲハが紫外線を見分けることは知られていたが、これは4原色でなくても可能なので、何原色かははっきりしなかった。

 研究グループは様々な色の光を見せながらミツを吸わせる実験をして、色覚にかかわる4種類の細胞を突き止めた。(30日 16:01)

[日本経済新聞 NIKKEI NET / 2008年01月30日]
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080130AT1G3000F30012008.html

抗がん剤使って関節リウマチ治療=東京医科歯科大学

2008年01月28日 | 創薬
 東京医科歯科大学の上阪等准教授(膠原(こうげん)病・リウマチ内科)らの研究チームは28日、抗がん剤で関節リウマチを治療する方法を開発したと発表した。

 マウスの実験で有効性を確認しており、10年で臨床試験実施にこぎつけたいという。成果は米免疫学会誌に掲載された。

 関節リウマチは、過剰な免疫反応が原因で分泌された物質が、関節内にある滑膜細胞を異常に増殖させ、骨の破壊、関節の変形などを起こす病気。国内に60~80万人の患者がいると推定される。

 上阪准教授らは、一部の抗がん剤が、滑膜細胞の増殖に重要な役割を果たしている酵素の働きを妨げることに着目。リウマチのマウスにこの抗がん剤を投与し、症状が改善することを確認した。投与量はがんの場合の3分の1で済み、副作用も少ない。

[読売新聞 / 2008年01月28日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080128-OYT1T00561.htm

東京医科歯科大学 プレスリリース
「関節リウマチ制圧に向けた新しい抗リウマチ薬の発見」
-従来薬と異なる作用メカニズムをもつ新種類の抗リウマチ薬-
http://www.tmd.ac.jp/cmn/soumu/kouhou/kisyakaiken20080128-1.html
http://www.tmd.ac.jp/cmn/soumu/kouhou/news20080128-1.htm

糖尿病治療に朗報か、インスリン分泌「幹細胞」発見=ベルギーなどの研究チーム

2008年01月26日 | 医療技術
 【ワシントン=増満浩志】血糖値を下げるインスリンを分泌する膵臓(すいぞう)のベータ細胞のもとになる幹細胞を、ベルギーなどの研究チームがマウスで見つけた。幹細胞が人間でも見つかれば、ベータ細胞の破壊で起こる1型糖尿病の治療の可能性も広がる。科学誌セル最新号に発表された。

 肝臓や血球など体の様々な細胞は、それぞれに特有の幹細胞から作られるが、ベータ細胞の幹細胞は見つかっていなかった。研究チームは成熟したマウスを使った実験で、傷ついた膵臓ではベータ細胞が増えることを発見。その仕組みを詳しく調べ、分泌物を運ぶ導管の近くに幹細胞を見つけた。ベータ細胞を含む「ランゲルハンス島」(膵島(すいとう))の様々な細胞を生み出すらしい。

 糖尿病の治療では、膵島移植が行われるが、膵島を培養して増やさなければならない。幹細胞の発見で膵島移植が効率よく実施できると期待される。

[読売新聞 / 2008年01月26日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080126-OYT1T00333.htm

アリ誘う種子のにおい、化学物質を特定 日本人研究員ら=ノースカロライナ州立大学

2008年01月26日 | 生きもの色々
 アマゾンの熱帯雨林で、アリがヤドリギの種を樹上に運んで「アントガーデン」と呼ばれる独特の巣を作るのは、種にアリを誘引するにおいがあるのが一因と分かった。米ノースカロライナ州立大の野島聡上席研究員らがにおいの化学物質を特定し、26日までに米科学アカデミー紀要の電子版に発表した。研究成果は謎が多い熱帯雨林の生態系の解明に役立つと期待される。(時事)

[朝日新聞(時事通信) / 2008年01月26日]
http://www.asahi.com/science/update/0126/JJT200801260006.html

がん防ぐ酵素を特定 DNAの傷すぐ察知=名古屋市立大学

2008年01月26日 | 遺伝子組替マウス
 細胞内にある特定の酵素が、がんの原因となるDNAの損傷をいち早く察知し、がんの発生・増殖を防いでいることを、名古屋市立大大学院医学研究科の中西真教授(細胞生物学)と島田緑研究員らのグループが世界で初めて解明した。がんを予防する治療法は現在ないが、がん発病を防止するメカニズムを解明したことで、がんを根源から絶つ治療法の確立につながる可能性がある。論文は25日の米有力科学誌セルに掲載される。

 がん細胞は、放射線やたばこなどの発がん性物質によりDNAにできた傷が修復されず、欠陥細胞が増殖していって発生する。人間などはDNAに傷ができると、DNAを読み取ってコピーすることを中断し、その細胞を増殖させない機能があるが、その具体的な仕組みはこれまで不明だった。

 中西教授らは、細胞の核内でDNAが巻き付くヒストンと呼ばれるタンパク質が、遺伝子を読み取る転写に関与していることに着目。これまで存在は分かっていたが、どんな作用を持つ酵素か不明だったChk1(チェック1)を調べた。

 ヒストンに付着するChk1を人工的に欠損させ、マウスで実験したところ、マウスが高い確率でがんになることを確認。Chk1が遺伝子の読み取りをつかさどるスイッチの働きをしていることを突き止めた。

 DNAに傷ができると、Chk1がヒストンから分離し、ヒストンを構成する一部のアミノ酸が化学変化することでスイッチがオフ状態となり、転写が起こらない。一方、何らかの理由でこの酵素が機能しなくなると、傷ついた遺伝情報を持った欠陥のある細胞が増殖し、がんが発生する。

 中西教授は「このメカニズムを念頭に置いた研究が進めば、酵素の機能を回復させてがんを予防する薬物の開発が将来、可能になる」と話している。

[中日新聞 / 2008年01月25日]
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008012590103702.html

マウスiPS細胞で角膜再生へ=東北大学、京都大学

2008年01月26日 | 再生医療
 東北大の西田幸二教授(眼科)らのチームが、マウスの体細胞から作られた万能細胞(iPS細胞)を使い、角膜になる幹細胞にまで分化させて培養することに、京都大との共同研究で成功した。今後、人間のiPS細胞を使った実験を計画、すでに臨床応用されている角膜移植などと組み合わせることで拒絶反応のない再生治療の実現をめざすという。

 西田教授らは、京都大の山中伸弥教授からマウスのiPS細胞の提供を受けて、1年半前から研究を始めた。iPS細胞を1カ月ほどかけて増やした後、薬剤を使って分化を誘導し、角膜細胞の前の段階の細胞を取り出し、培養することに成功した。今後、角膜の細胞に完全に分化させる手法を確立し、臨床応用につながる細胞シートの作製につなげたい考えだ。

 角膜の治療は、他人の角膜や角膜の細胞を培養して作ったシートを移植する方法と、患者本人の角膜細胞から作ったシートを移植する方法の2種類がある。ただ、他人の角膜を使う方法では拒絶反応を避けられず、患者本人の角膜からシートを作る方法は病気のためにうまく細胞が増えないなどの問題がある。患者の健康な部位からiPS細胞ができれば、そうした課題を克服できる。

 今回はマウスでの成果だが、原理的には人も同じ手法で分化・誘導を実現できると考えられるという。西田教授は「ヒトのiPS細胞でも再現できれば、拒絶反応がなく、質が高い細胞シートを使った治療法を比較的早く実現できるのではないか」と話している。

[朝日新聞 / 2008年01月26日]
http://www.asahi.com/science/update/0125/TKY200801250329.html

骨髄移植併用で拒絶反応回避 免疫抑制剤なしで成功=ハーバード大学

2008年01月26日 | 医療技術
 腎臓移植の手術を受けた患者に、免疫抑制剤なしでも拒絶反応が起きないようにすることに米ハーバード大の研究チームが成功した。骨髄移植を併用する新しい治療法で、24日発行の米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表した。

 臓器移植を受けると、患者の免疫系が移植臓器を攻撃するのを避けるため、患者は免疫抑制剤を一生飲み続けなければならない。だが、感染症にかかりやすくなるなどの副作用があった。

 チームの河合達郎・准教授らは、重い腎臓病の22~46歳の患者5人に親族から生体腎移植をする際、免疫系で働くリンパ球などになる幹細胞を含んだ骨髄も提供者から採り、同時に移植した。

 骨髄移植の併用は、提供者の身体的負担を増やすことになるが、患者5人のうち4人は手術の9~14カ月後から、免疫抑制剤なしでも拒絶反応が起きなくなり、手術後2~5年たっても腎機能は良好という。1人は手術から10日で拒絶反応が起こり、再移植を受けた。

 通常の骨髄移植と違い、患者の骨髄を放射線などで殺さずに提供者の骨髄を移植した。一時的に患者のリンパ球と提供者のリンパ球が混在した状態ができ、拒絶反応を抑えているらしい。

 河合准教授は「同じ手法が肺や心臓の移植に応用できるかどうかをサルで調べている」と話す。

[朝日新聞 / 2008年01月26日]
http://www.asahi.com/science/update/0126/TKY200801260242.html

利根川教授ら「ダイスケ」開発 神経回路をオン・オフ=理化学研究所、マサチューセッツ工科大学

2008年01月25日 | 遺伝子組替マウス
 複雑な脳のネットワークの働きを解明するために、マウスの特定の神経回路を一時的に遮断する技術を、理化学研究所・米マサチューセッツ工科大学脳科学センターの利根川進センター長らが開発した。25日、米科学誌サイエンス電子版に発表した。同センターのあるボストンが本拠地の大リーグ・レッドソックスの松坂大輔投手にちなみ、この技術を「DICE―K(ダイスケ)」と名付けた。

 利根川さんらはマウスの遺伝子を操作して、特定の神経回路で毒素を働かせ、回路を遮断することに成功した。薬をえさに混ぜて、回路を回復させることもできる。各回路のスイッチを自在にオン・オフすることで、その働きを調べられる。

 学習や記憶にかかわる海馬と呼ばれる脳の領域には、二つの重要な神経回路があることが知られている。その一方の回路をダイスケを使って遮断すると、新しい環境で素早く記憶する力が衰えることも突き止めた。

 「老化などで記憶力が衰えるときにも、この回路がかかわっている可能性がある」と利根川さん。ダイスケは学習や記憶の解明に威力を発揮しそうだ。

[朝日新聞 / 2008年01月25日]
http://www.asahi.com/science/update/0125/TKY200801250033.html


【その名は「DICE―K」…利根川教授が遺伝子操作技術開発】

 ノーベル生理学・医学賞を受賞した米マサチューセッツ工科大の利根川進教授が、脳の神経回路のスイッチを自在に「オン」「オフ」する遺伝子操作技術を世界で初めて開発することに成功した。

 脳の神経がどのように働いているかを調べるための研究に有用な技術で、利根川教授は、大学と同じマサチューセッツ州を本拠地とする米大リーグ、ボストン・レッドソックスの松坂大輔投手にちなんで、英文の頭文字をつなぎ、この手法を「DICE―K(ダイスケ)」と名付けた。25日の米科学誌「サイエンス」(電子版)に掲載される。

 これまでの方法では、実験動物の脳の一部を回復できないように人為的に壊して調べるため、広範に壊すことによる影響が出る。脳の機能を維持したまま、神経回路をピンポイントで操作できる今回の手法を使えば、状態がより正確に把握できるという。

 利根川教授は、マウスの実験で、3種類の遺伝子を組み換えて、記憶を担う脳の「海馬」という領域にある特定の神経細胞だけを操作した。この神経細胞は、「ドキシサイクリン」という抗生物質に反応して回復するようになっている。

[読売新聞 / 2008年01月25日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080125-OYT1T00003.htm


[理化学研究所 プレスリリース]
神経回路を遮断し回復する技術を世界で初めて開発
- 複雑な神経回路の仕組みを解く革新基盤技術の誕生 -
http://www.riken.go.jp/r-world/research/results/2008/080125/index.html

細菌ゲノム、完全合成 米チーム「人工生命」に前進=クレイグ・ベンター研究所

2008年01月25日 | 遺伝子
 細菌のゲノム(全遺伝情報)を人工的に合成することに、米クレイグ・ベンター研究所のチームが成功した。これまで、より原始的なウイルスでの成功例はあったが、自己増殖能力を備えた生物である細菌のゲノムを人工合成したのは初めて。人工合成ゲノムを実際に働かせることができれば、細菌の人工合成につながるだけに、「人工生命」づくりに向けた大きな前進だ。米科学誌サイエンス(電子版)に25日、発表する。

人工合成したのは「マイコプラズマ・ゲニタリウム」という細菌のゲノム。

 チームはまずゲノム全体の8分の1~4分の1の大きさの分子を試験管内で化学合成。これらの「部品」を大腸菌に入れ、遺伝子組み換えでくっつけ、大きな部品をつくった。さらに大きな部品を酵母の中で同様にくっつけ、完全なゲノムを合成した。

 生物の設計図であるゲノムの人工合成は、特定の能力を備えた「人工生命」づくりの前提となる技術。バイオ燃料を製造したり、有害廃棄物を分解したりするのに必要な人工微生物づくりなどへの応用が期待されている。

 人工生命づくりには、合成したゲノムをどうやって働かせるかなどの課題はあるが、チームは昨年、ある細菌のゲノムと別の細菌のゲノムを入れ替えることにも成功しており、こうした技術との組み合わせで「人工生命」が誕生するのも時間の問題、という見方も広まってきている。

 しかし、人工生命はテロへの悪用、自然界への悪影響などの懸念がつきまとう。

 国立遺伝学研究所の小原雄治所長は「生命のデザインを可能にする大きな一歩だ。ただ、人工微生物を人間が制御できなくなったときにどう対応するのかなど、二重、三重の安全対策を考えていく必要がある」と話す。

[朝日新聞 / 2008年01月25日]
http://www.asahi.com/science/update/0124/TKY200801240478.html

耳の“電池”が音を増幅 難聴治療に期待=大阪大学、京都府立医科大学

2008年01月24日 | 生理学
 耳の奥にあって小さな音を増幅する働きがある器官「蝸牛」の内部に、電解質の濃度差を利用した“生体電池”があることを、大阪大の倉智嘉久教授や京都府立医大のチームが突き止め、米科学アカデミー紀要電子版に22日発表した。

 蝸牛は鼓膜の奥にある渦巻き状の内耳器官。内部を満たしているリンパ液の電位差がなくなると難聴になることが知られているが、電位差が生じる詳しい仕組みは不明だった。

 チームは「難聴の原因解明や治療法開発につながるかもしれない」としている。

 倉智教授らは蝸牛の内壁に、カリウム濃度の差を利用して高い電位を生み出す電池に似た構造があることを確認。このエネルギーが、鼓膜から骨を通じて伝わって来た音を増幅するのに使われていた。

[中日新聞(共同) / 2008年01月22日]
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008012201000020.html

「iPS細胞で心筋再生」共同研究、始動=京都大学、大阪大学

2008年01月22日 | 再生医療
 人間の皮膚から様々な細胞に変化できる万能細胞(iPS細胞)を作製した京都大の山中伸弥教授と、筋肉から作った細胞シートで重い心臓病の治療に成功した大阪大の澤芳樹教授が、iPS細胞を使った共同研究を始めることになった。

 世界初の二つの成果を組み合わせ、心筋の再生医療を目指す。

 一方、京都大は22日、山中教授をトップとする「iPS細胞研究センター」の設置を正式に発表、再生医療の実現に向け、万能細胞研究が大きく動き出した。

 澤教授らは昨年、患者の足の筋肉の細胞をもとにシートを作製。心臓移植が必要だった患者の心臓の周囲に張り付け、心機能の回復に成功した。シートは心筋にはなっていないため、iPS細胞から変化させた心筋でシートを作り、治療に生かしたい考えだ。

 京大の研究センターは、昨年10月に開設された「物質―細胞統合システム拠点」の一部門。教授や研究員、技術職員ら10~20人でつくる「専任チーム」と、京大再生医科学研究所などから参画する「兼任チーム」数チームで構成される。

 当面は、京都市内にある民間研究施設「京都リサーチパーク」内の研究室を借り、2年後をめどに専用研究棟を建設する。iPS細胞の研究は、国内の研究者を結集したコンソーシアム(共同体)を設け、オールジャパン体制で取り組む予定で、京大のセンターがその中心になる。

 山中教授はこの日の記者会見で「世界に開かれた研究施設にしたい。iPS研究は10年、20年と息の長い取り組みが必要なので、若い研究者を積極的に育てたい」と語った。

[読売新聞 / 2008年01月22日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080122-OYT1T00307.htm

iPS細胞研究センターを設置=京都大学

2008年01月22日 | 再生医療
 京都大は22日、山中伸弥教授らが世界で初めて作製したヒトの万能細胞(iPS細胞)の研究拠点「iPS細胞研究センター」(センター長・山中教授)を発足させた。基礎から臨床応用の研究まで担う。世界的な競争に対抗するオールジャパンの研究態勢を築くための中核になる。

 センターは「世界トップレベル研究拠点」として昨年文部科学省から選ばれた京都大の「物質―細胞統合システム拠点」の柱の一つとの位置づけだ。人材の雇用や予算など、運営の権限は山中教授に任せる。京都市内の民間研究施設「京都リサーチパーク」内にオフィスを借り、2年後をめどに拠点施設を建設する。

 国内外から選ぶ教授陣らによる複数の専任チームのほか、京都大の研究者が兼任で参加する。まず、専任のうちの山中チームと5チームほどの兼任チームが、万能細胞のさまざまな細胞、組織への分化・誘導や、人体への安全性の確認などの研究に取り組む。

 会見で、山中教授は「10年、20年という息の長い研究にするために若い人が切磋琢磨(せっさたくま)できる、世界に貢献するセンターにしたい」と述べた。

    ◇

 重い心臓病をもつ患者の心臓に「心筋シート」を張る臨床研究をしている大阪大の澤芳樹教授らは、山中教授らからiPS細胞の提供を受けて共同研究に乗り出す。iPS細胞を使うことで、質の高い心筋細胞を増やせる可能性があり、心臓の収縮力を高めることが期待できるという。

 iPS細胞を使った京都大との共同研究は、慶応大や理化学研究所などもすでに始めている。

[朝日新聞 / 2008年01月22日]
http://www.asahi.com/science/update/0122/TKY200801220407.html

京都大学 ニュースリリース
物質-細胞統合システム拠点 iPS細胞研究センターを設置
http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/documents/080122_1.htm
トピックス
http://www.kyoto-u.ac.jp/GAD/topic/data07/tpc080122_1/tpc080122_1.htm

エボラウイルスを無毒化=東京大学医科学研究所

2008年01月22日 | 創薬
 感染すると致死率が50-90%と高く、ワクチンも治療薬もないエボラ出血熱の原因であるエボラウイルスを遺伝子操作で無毒化し、実験用の特殊な人工細胞の中でしか増えないようにすることに、東京大医科学研究所の河岡義裕教授、海老原秀喜助教らが世界で初めて成功し、米科学アカデミー紀要に22日、発表した。

 ウイルスの危険性が研究のネックだったが、この無毒化ウイルスを使えば、治療薬探しなどの研究が進むと期待される。このウイルスをワクチンとして使う道も考えられるという。

 チームは、遺伝子からウイルスを合成する「リバースジェネティクス」という手法を使い、エボラウイルスが持つ8個の遺伝子のうち、増殖に欠かせない「VP30」という遺伝子だけを取り除いたウイルスを作製した。 できたウイルスは、通常の細胞の中では増えず、毒性を発揮しないが、VP30遺伝子を組み込んだサルの細胞の中でだけ増殖。それ以外の見た目や性質は、本物のエボラウイルスと変わらず、治療薬探しなどの実験に使えることを確認した。

[中日新聞(共同) / 2008年01月22日]
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008012201000015.html