ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

「暑がり遺伝子」を発見 ハエで実験=京都大学

2009年03月27日 | 生理学
 温度が高い所を避けて低い所で活動するのを好むようになる「暑がり遺伝子」を、京都大の梅田真郷教授のチームがショウジョウバエの実験で特定し、27日付の米科学誌サイエンスに発表した。

 エネルギー代謝が活発になり、低温に向いた体の仕組みになるらしい。なかには零下2度の極寒で生存できるハエもいた。梅田教授は「人にも同じ遺伝子があり、人体での働きを解明する糸口になるかもしれない」と話している。

 チームは、遺伝子操作したハエの幼虫で好みの温度を研究。その結果、人では筋ジストロフィーに関係するDmDGという遺伝子の活性が下がると、通常より温度が5度程低い場所に好んで移動することを突き止めた。

 遺伝子は代謝機能に関係している可能性があるが、人の病気との関係は不明。梅田教授は「生物がさまざまな温度環境に適応するための仕組みにかかわっているのでは」とみている。

[共同通信47NEWS 2009年03月27日]
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009032601001111.html

細胞のイオン取り込み阻害化合物を発見、心肥大の治療に光=京都大学

2009年03月17日 | 生理学
 細胞生体膜のイオンの出入り調節弁「イオンチャネル」の一つ、TRPC3の機能を阻害する化合物を、京都大工学研究科の清中茂樹助教、森泰生教授らのグループが見つけた。イオンチャネルの機能解明と、TRPC3の異常で引き起こされる心肥大などの治療薬開発につながるといい、米国科学アカデミー紀要で17日に発表した。

 TRPC3は、細胞膜の受容体が刺激を受けると働く受容体活性型チャネルの一つ。受容体の信号を細胞の核に伝えるとともに、細胞の活動に不可欠なカルシウムイオンを取り込み、細胞の増殖や分化、タンパク質の産生を調節する。

 清中助教、森教授らは、免疫細胞のカルシウムイオンチャネルを阻害し、免疫反応を抑える化合物に注目。化合物ライブラリーから似た構造の化合物を選んで実験し、TRPC3だけを阻害する化合物Pyr3を見つけ、信号伝達を阻害することを確かめた。

 TRPC3が過剰に働くと心肥大になることが分かっている。人工的に高血圧にして心肥大になりやすくしたマウスにPyr3を投与すると、心肥大を抑えることができた。

 TRPCは1から7まであるが分からない機能が多く、特定の種類に働く阻害剤発見も初めて。清中助教は「Pyr3の構造を一部変えると他のTRPCを選択的に阻害する化合物になる可能性があり、TRPCの機能解明や治療薬開発の糸口になる」と話している。

[京都新聞 2009年03月17日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2009031700094&genre=G1&area=K00

注射液の痛み=ワサビの刺激 アルカリ溶液の反応仕組み解明=自然科学研究機構・生理学研究所

2008年11月14日 | 生理学
 アルカリ性の注射液が起こす痛みはワサビの刺激と同じ仕組み――。自然科学研究機構・生理学研究所(愛知県岡崎市)の富永真琴教授らの研究グループがこうした研究結果をまとめ、13日付の米医学実験雑誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」電子版に論文が掲載された。

 抗けいれん剤やヘルペスの化学療法剤の注射剤はアルカリ度が高く鋭い痛みを感じる。酸による刺激の解明は進んでいるが、アルカリへの反応の仕組みを解明したのは初めてといい、「痛くない注射」の開発に役立つ可能性がある。

 富永教授らはワサビなどの辛み成分によって活性化する「トリップ・エーワン」というたんぱく質に注目。このたんぱく質は細胞表面にあり、刺激されると、痛みを伝える電流が流れることがわかった。(15:02)

[NIKKEI NET 2008年11月14日]
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20081114AT1G1400K14112008.html

生理学研究所 リサーチトピックス
アンモニアの“ツン”とワサビの“ツン”は同じ
— アルカリ性物質を「痛み」と感じるメカニズム解明 —
http://www.nips.ac.jp/news/2008/20081114/

尿崩症の仕組みを解明 新薬開発に光=東京医科歯科大学

2008年08月12日 | 生理学
 大量の尿が出て脱水状態に陥る病気「尿崩症」が起きる仕組みを、東京医科歯科大などが解明し、11日付の米の科学誌「ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー」電子版に発表した。尿から水を吸収する役割を果たす物質の移動に、不可欠なたんぱく質を突き止めた。この仕組みを利用することによって、尿崩症の新薬開発が期待できるという。

 尿崩症の患者は、数万人程度いるとみられる。1日最大10リットル近く尿が出るため、水を補給しないと昏睡(こんすい)状態になることもある。遺伝性の尿崩症の場合、尿を調節するホルモンを補充する治療があるが、精神系の薬の副作用が原因の場合、治療法はない。

 脱水時は一般に、細胞に水分を取り入れるたんぱく質「アクアポリン」が尿細管の細胞内部から細胞の表面へ移動し、尿から水を吸収する。しかし、尿崩症患者は、脱水状態でもアクアポリンが細胞表面に移動せず、尿からの水の取り入れができないため、脱水状態が続くとみられる。

 通常はアクアポリンを細胞内部にとどまらせる「柵」の働きをするたんぱく質「トロポミオシン」が、脱水をきっかけにアクアポリンと結びつき、柵の役目をしなくなり、アクアポリンが自由に移動できるようになることが分かった。研究チームの野田裕美・同大助教は「トロポミオシンの量や働きを調節することで、今まで治療できなかった患者のための新薬が開発できるかもしれない」と話している。【永山悦子】

[毎日新聞 2008年08月12日]
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/08/12/20080812ddm012040090000c.html

植物の気孔閉じる因子発見 温暖化下の作物開発に期待=九州大学

2008年02月28日 | 生理学
 大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度が高くなると植物の気孔が閉じる要因となるタンパク質を九州大大学院理学研究院(福岡市東区)の射場厚教授(植物生理学)の研究グループが発見、27日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。

 射場教授は「植物がどのようにCO2濃度の変化に適応するか解明する手がかりになる」としている。将来的には、このタンパク質の植物ごとの働きの違いを研究することで、CO2濃度が上昇し、地球温暖化が進む環境下でも生産性を維持できる農作物の開発などに役立つことが期待されるという。

 気孔は葉の表面などでCO2を取り込んだり、水蒸気を放散するなど重要な役割を果たしている。CO2濃度が上昇すると閉じ、濃度が下がると開く性質がある。

 射場教授らは、アブラナ科のシロイヌナズナを使った実験で、気孔の細胞の表面上にあるタンパク質「SLAC1」を発見。空気中のCO2濃度が上がると、SLAC1が活性化し、細胞内部から陰イオンを排出することで気孔が閉じることが分かった。

[北海道新聞 / 2008年02月28日]
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/environment/78603.html

耳の“電池”が音を増幅 難聴治療に期待=大阪大学、京都府立医科大学

2008年01月24日 | 生理学
 耳の奥にあって小さな音を増幅する働きがある器官「蝸牛」の内部に、電解質の濃度差を利用した“生体電池”があることを、大阪大の倉智嘉久教授や京都府立医大のチームが突き止め、米科学アカデミー紀要電子版に22日発表した。

 蝸牛は鼓膜の奥にある渦巻き状の内耳器官。内部を満たしているリンパ液の電位差がなくなると難聴になることが知られているが、電位差が生じる詳しい仕組みは不明だった。

 チームは「難聴の原因解明や治療法開発につながるかもしれない」としている。

 倉智教授らは蝸牛の内壁に、カリウム濃度の差を利用して高い電位を生み出す電池に似た構造があることを確認。このエネルギーが、鼓膜から骨を通じて伝わって来た音を増幅するのに使われていた。

[中日新聞(共同) / 2008年01月22日]
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008012201000020.html

体温維持:寒い時に震える仕組み解明

2008年01月12日 | 生理学
 人など体温を一定に保つことのできる恒温動物が寒い時に震えて体温を上げる仕組みを、中村和弘・日本学術振興会海外特別研究員らがラットの実験で解明した。生命維持の謎を解明する研究として注目される。米科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」1月号に掲載された。

 恒温動物は、皮膚で感じた温度を体温調節中枢である脳の視床下部に伝えている。寒冷時には手足の骨格筋を震えさせて体温を上げている。しかし、温度情報が体温調節中枢に伝わる仕組みは未解明だった。

 研究チームは、皮膚が感じた刺激が脊髄(せきずい)を介して視床下部に伝わることに注目。特殊なたんぱく質を使い、情報が脊髄から視床下部に伝わる経路を特定したところ「寒い」と認識する経路と別だったことが判明した。また、その経路の神経細胞を薬剤で働かないようにすると、皮膚を氷水で冷やしても、震えも体温上昇も起こらなかった。一方、特定した経路を構成する神経細胞の働きを高めると、体温とともにエネルギー消費量が上昇していた。

 中村さんは「低体温症治療などの開発に役立てたい」と話す。【大場あい】

[毎日新聞 / 2008年01月12日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080112k0000e040023000c.html

マウスにCO2検知能力=北京生命科学研究所(中国)

2007年08月17日 | 生理学
 大気に近い二酸化炭素(CO2)濃度をマウスが検知できることを中国の北京生命科学研究所などのグループが見つけ、17日発行の米科学誌サイエンスに発表した。昆虫などではCO2濃度の変化に反応して食べ物を探したり、敵を察知したりすることが知られているが、哺乳(ほにゅう)類のこうした能力の詳細についてはわかっていなかった。人の営みの影響でCO2が増えると、ネズミの行動や生態に影響が出てくるかもしれない。

 CO2は無色無臭で、人は大気に近い濃度では検知できない。研究グループは、マウスの神経細胞の中に、濃度0.1%のCO2に反応するものがあるのを見つけた。CO2を吹きかけて調べてみたところ、0.066%の濃度でも反応できた。

 現在、大気中のCO2濃度は0.038%だが、今世紀中に2倍になるという推定もあり、マウスの行動や生態に影響が出てくる可能性もあるとグループはみている。

[朝日新聞 / 2007年08月17日]
http://www.asahi.com/science/update/0817/TKY200708170178.html

細胞内タンパク質、リズムで増殖=京都大学

2007年06月26日 | 生理学
 細胞内で、2時間周期で増減して生体活動のリズムを作っているタンパク質を、京都大ウイルス研究所の影山龍一郎教授(分子生物学)らのグループが見つけた。細胞の増殖や分化にかかわる情報伝達に関わっており「情報がリズミックに伝わることが、増殖の効率化や調節につながっているのではないか」(影山教授)という。米国科学アカデミー紀要電子版で26日、発表した。

 生物には24時間周期の「概日時計」のほか、より短いリズムを刻む分子の存在が知られている。影山教授らはこれまでに、遺伝子の働きを調節するタンパク質Hes1とHes7が2時間周期で増減しており、Hes7は卵からの発生段階に背骨や胸骨などの元になる体節を作ることを見つけている。

 今回、マウスの繊維芽細胞の活動から、発現量を増減する遺伝子を網羅的に探した。細胞の増殖や分化で働くSocs3とSmad6の2分子も、2時間周期で増減していることが新たに分かった。Socs3が働く情報伝達経路はHes1と相互依存しながらリズムを刻んでおり、Hes1がリズムを刻めないと、細胞増殖が半分以下になることが分かった。

 リズムがあることで、細胞増殖がうまく行われているらしく、再生医学で研究が進む幹細胞の増殖を効率よく進める手法につながる可能性もあるという。影山教授は「細胞の増殖だけでなく、さまざまな生体活動が短周期のリズムで働いているのではないか」と話している。

[京都新聞 / 2007年06月26日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007062600060&genre=G1&area=K10

タンパク質2時間周期で増減 細胞増殖に重要な役割か(共同通信) - goo ニュース

細胞の新移動法発見 先天性脳障害など予防や治療に期待=名古屋大学

2007年01月23日 | 生理学
 細胞が脳内を移動する新たなメカニズムを、名古屋大医学系研究科の宮田卓樹教授らのチームが発見した。米科学誌カレント・バイオロジーに23日掲載される。先天性脳障害治療や脳再生医療技術の確立に向けた第一歩として期待される。

 宮田教授らは、胎児マウスの大脳皮質をスライスし、培養。大脳皮質内の神経細胞の元となる前駆細胞の動きを、顕微鏡を使って観察した。前駆細胞からは、糸状の突起が伸び、大脳皮質の外面と結合している。

 観察の結果、細胞が2つに分裂すると、外面に伸びている突起が、コイル状に巻き上げられ、分裂したうちの1つの細胞が引っ張られ、移動していることが、世界で初めて分かった。

 従来は、細胞内にあるモーターの役割を果たしているタンパク質などの働きで移動するとの説だけが有力視されていた。

 宮田教授は「神経細胞が、脳内の機能するべき場所に配置されないことで起きる先天性の脳形成異常の予防や治療につながる成果が期待できる」としている。

[中日新聞 / 2007年01月23日]
http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20070123/mng_____sya_____014.shtml