ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

マウスES細胞から神経細胞生成=東北大学・先端医工学

2006年04月30日 | 再生医療
 マウスのES細胞から脳や脊髄の神経細胞を創出することに、東北大先進医工学研究機構の加藤英政・助教授(幹細胞生物学)らのグループが成功した。ES細胞に加えるタンパク質の濃度などを調節することで、数千種類と言われる神経細胞のほぼすべてを安全に作り出せることが証明されたという。

 「万能細胞」として知られるES細胞は、あらゆる細胞に変身する性質を持つ。多くの研究者が動物のES細胞から神経細胞を作ってきたが、がん細胞に転化してしまうケースがあり、臨床応用は難しかった。

 グループはマウスのES細胞で「大脳皮質」と呼ばれる神経細胞を培養し、細胞の分化を促すタンパク質やビタミン類似体を投与。その濃度を調整したり、投与後の経過時間を変えるなどして、大脳基底核や中脳、脊髄の神経細胞、細胞に栄養を補給する「グリア細胞」を生成した。

[YAHOO!JAPAN ニュース / 2006年4月30日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060430-00000011-khk-toh

ビタミンCが老化を抑制する マウスの実験で確認=東京医科歯科大学、東京都老人医学総合研究所

2006年04月30日 | 食品・栄養
 ビタミンCに、生物の老化の進行を抑える可能性があることを、東京医科歯科大や東京都老人総合研究所などのチームがマウスによる動物実験で確認し、米科学アカデミー紀要(電子版)に4日発表した。ビタミンCによる抗老化作用はこれまでも指摘されていたが、同チームは「ビタミンCが加齢に関係することを科学的に証明したのは初めてだ」としている。

 チームは、老化が進むと減少することが知られているSMP30と呼ばれるタンパク質に注目。このタンパク質が、多くの哺乳(ほにゅう)類が体内でビタミンC合成に使っている酵素と同一であることを突き止めた。SMP30を作ることができないマウスをビタミンCを含まない餌で育てると、発育が止まり、壊血病の症状となったことなどから、SMP30がビタミンC合成に欠かせない物質であることが確認された。

 このマウスは、正常のマウスに比べて約4倍早く老化が進むことも判明、ビタミンCが老化の進行に関連していることが分かった。

 人間はマウスと違って体内でビタミンC合成ができないため、この結果を直接当てはめることはできないが、老人総合研の石神昭人(いしがみ・あきひと)主任研究員は「人間でもビタミンCが老化に影響しているだろう」としている。

[2006年04月30日/中国新聞]

http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2006040301003564_Science.html

Senescence marker protein 30 functions as gluconolactonase in L-ascorbic acid biosynthesis,
and its knockout mice are prone to scurvy
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 10.1073/pnas.0511225103
http://www.pnas.org/cgi/content/abstract/0511225103v1

脳細胞:死なないメカニズムを解明=東京大学

2006年04月21日 | 脳、神経
 年齢とともに脳細胞は減るが、頭をよく使うと脳細胞が死なないのはなぜか。このメカニズムを解明することに、東京大の緑川良介特別研究員と広川信隆教授(分子細胞生物学)らが成功した。脳細胞が死ぬのを食い止めたり、神経の再生が可能になるかもしれないという。21日発行の米科学誌「セル」で発表する。

 広川教授らは、細胞内で物質を運ぶ役割を担う「KIF4」というたんぱく質に着目し、マウスなどで調べた。あまり使われない神経細胞では、損傷した遺伝子の修復にかかわる酵素「PARP1」と結合し、酵素の活性が失われ細胞死を導くことが分かった。一方、よく使う神経細胞では、細胞の活動によりカルシウムが多く流れ込み、酵素が変形(リン酸化)してKIF4と結合しないため細胞死を免れていた。

 広川教授は「神経細胞の生死の鍵はKIF4が握っていることが分かった。細胞内の“運び屋”という本来の役割とは違う機能は驚きだ」と話している。


 ▽長田重一・大阪大教授(生化学)の話 神経の生き死にに予想外の物質を使って調整が行われており、思いもよらない発見だ。今回は神経細胞だが、リンパ球など他の細胞ではどうか。この結果、何が起きているのか調べていくことで応用面にもつながるだろう。


[2006年04月21日/毎日新聞]
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060421k0000m040148000c.html
Cell -- Summary : KIF4 Motor Regulates Activity-Dependent Neuronal Survival by Suppressing PARP-1 Enzymatic Activity
http://www.cell.com/content/article/abstract?uid=PIIS0092867406003734&highlight=KIF4

パーキンソン病、ピーマン・納豆が含む物質に効果=東京農工大学

2006年04月11日 | 食品・栄養
 手足がふるえたり、歩きづらくなったりする難病パーキンソン病の原因とされるたんぱく質に、ピロロキノリンキノン(PQQ)という物質を与えると、このたんぱく質の凝集、蓄積が抑えられることを東京農工大の早出(そうで)広司教授(生命工学)らが見つけ、11日発表した。今後、細胞レベルで抑制効果を確かめるなどし、将来は新薬の開発につなげたいという。

 パーキンソン病は1000人に1人程度の割合で発症し、脳内でドーパミンという神経伝達物質をつくる細胞が壊れる病気だ。たんぱく質のαシヌクレインが凝集し、この細胞に蓄積することが主な原因とされる。

 早出教授らは蓄積を防ぐことが発症予防につながると考え、効果のある物質を探索。ピーマンや納豆などに含まれるPQQを、試験管内のαシヌクレインに投与すると、凝集が通常の10分の1以下に抑えられた。

 水野美邦・順天堂大教授(脳神経内科)の話 αシヌクレインの凝集を抑制できた結果は関心が持てる。今後、動物実験で効果が確認できれば、期待は大きい。

[朝日新聞 / 2006年04月11日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200604110457.html

白血病治療薬で心筋回復、梗塞壊死3割が助かる=千葉大学

2006年04月05日 | 循環器
 心臓の冠動脈が血栓などで詰まる「急性心筋梗塞(こうそく)」を起こした患者に、 白血病などの治療で使われる薬を皮下注射で投与し、壊死(えし)しかけた心筋を
回復させることに千葉大大学院の小室一成教授(循環病態医科学)と千葉県救急医療センター、君津中央病院などのチームが成功した。


 小室教授らは、急性心筋梗塞を起こした50~70歳代の男女16人に対し、血液中の造血幹細胞を増やす薬剤「顆粒(かりゅう)球コロニー刺激因子(G―CSF)」を
5日連続で投与した。投与4日後と6か月後の心臓の状態を比べると、冠動脈が詰まり血液量が著しく減少して一部が壊死してしまった部分が平均3割ほど減少。
心臓の収縮力も正常値近くまで回復した。

 G―CSFが活性酸素の一種によってダメージを受けた心筋細胞を保護して細胞死を防いだり、心臓の血管を増やしたりしたとみられる。一方、G―CSFの代わりに生理食塩水を注射した患者では変化がなかった。

 急性心筋梗塞の治療は現在、冠動脈を広げる手術や、血栓溶解剤の使用などが一般的。一方、G―CSF注射は簡便で、危険性も比較的低い。

 小室教授は「今後、G―CSFが心筋梗塞に使えるよう、製薬会社が適用の拡大を厚生労働省に申請することになる。認められれば、広く使用されるようになるだろう」と期待している。

[読売新聞 / 2006年04月05日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060405it01.htm