ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

子宮内膜細胞から筋肉細胞を作成=国立成育医療センター

2007年01月24日 | 再生医療
 国立成育医療センター研究所の梅沢明弘・生殖医療研究部長らのグループは、細胞治療技術を使い、筋ジストロフィーの治療につながる基礎実験に成功した。女性の子宮内膜の細胞から筋肉細胞を作り、欠損するとこの病気になるたんぱく質をマウスの中で作り出した。患者への負担や倫理的な課題のない治療技術につながるとみている。
 研究グループはまず、女性ボランティアに提供してもらった月経血を培養した。この血液中には子宮内膜の組織が混ざり、分化の機能を備えた間質細胞も含まれる。この中から約12%の比率で骨格筋の細胞を分化、成長させた。


[日経産業新聞 / 2007年1月24日]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2007012308016h1

国立成育医療センター研究所ホームページ

細胞の新移動法発見 先天性脳障害など予防や治療に期待=名古屋大学

2007年01月23日 | 生理学
 細胞が脳内を移動する新たなメカニズムを、名古屋大医学系研究科の宮田卓樹教授らのチームが発見した。米科学誌カレント・バイオロジーに23日掲載される。先天性脳障害治療や脳再生医療技術の確立に向けた第一歩として期待される。

 宮田教授らは、胎児マウスの大脳皮質をスライスし、培養。大脳皮質内の神経細胞の元となる前駆細胞の動きを、顕微鏡を使って観察した。前駆細胞からは、糸状の突起が伸び、大脳皮質の外面と結合している。

 観察の結果、細胞が2つに分裂すると、外面に伸びている突起が、コイル状に巻き上げられ、分裂したうちの1つの細胞が引っ張られ、移動していることが、世界で初めて分かった。

 従来は、細胞内にあるモーターの役割を果たしているタンパク質などの働きで移動するとの説だけが有力視されていた。

 宮田教授は「神経細胞が、脳内の機能するべき場所に配置されないことで起きる先天性の脳形成異常の予防や治療につながる成果が期待できる」としている。

[中日新聞 / 2007年01月23日]
http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20070123/mng_____sya_____014.shtml

アルツハイマー病ワクチンを開発=埼玉医科大学、南フロリダ大学他

2007年01月23日 | 創薬
 埼玉医科大学、南フロリダ大学などの国際チームは、アルツハイマー病を治療するワクチンを開発、マウスの実験で安全性と有効性を確認した。脳内にたまる原因とされるたんぱく質が半減した。成果は近く米科学アカデミー紀要(電子版)に掲載される。

 注射で投与するタイプを中心に国内外でアルツハイマー病ワクチンの研究開発は盛んだが、髄膜炎や軽い脳内出血などの副作用が出るとの報告もある。今回開発したワクチンは、皮膚に直接塗ったりパッチにして張ったりして体内に吸収させることが可能で、実現すれば治療時の患者への負担も少なくて済むという。

 埼玉医科大学の森隆・助教授らは、脳にたまってアルツハイマー病を起こすとされるたんぱく質アミロイドベータ(抗原)と免疫反応を促進する薬剤として微量のコレラ毒を混ぜてワクチンを作った。

 アルツハイマー病を発症したマウスで実験。4カ月間、ワクチンを塗り続けると体内でアミロイドベータにくっつく抗体ができ、塗らなかったマウスに比べてこのたんぱく質の量が約半分になった。逆に血液中では増えた。

[日本経済新聞社 NIKKEI NET / 2007年01月23日]
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070123AT1G2300Q23012007.html


脊索動物のナメクジウオ、発生段階の体の軸が決まる時、脊椎動物と同じ遺伝子が働いている=京都大学

2007年01月22日 | 生きもの色々
 最も原始的な脊索(せきさく)動物のナメクジウオで、卵からの発生段階に体の軸が決まる時、脊椎(せきつい)動物とほぼ同じ遺伝子群が働いていることが、佐藤矩行京都大理学研究科教授や米スクリプス海洋研究所などの研究で分かった。ナメクジウオがヒトなど脊椎動物の祖先に極めて近いことが、遺伝子レベルで実証された。英科学誌ネイチャー電子版で22日に発表した。

 体の軸となる柔らかな脊索をもつ脊索動物は5億年以上前に地球に現れた。形態を保ったままのナメクジウオなど頭索動物や生態にあわせて形態を変えたホヤなど尾索動物、一部が魚やほ乳類など脊椎動物に進化したと考えられている。

 佐藤教授らは、ナメクジウオと脊椎動物のカエルを比較。細胞層の一部が内部に入る原腸胚(はい)の時期に、体の前後や背腹を決める遺伝子を調べた。

 Wnt遺伝子群やBMP遺伝子群など多くの遺伝子で働く場所が一致し、体の軸を形成していることが分かった。このことから、ナメクジウオと脊椎動物は体の形をつくる「基本設計図」は同じで、脊椎動物はナメクジウオに近い祖先から脊椎や頭部を発達させて進化したことが確認された。

 佐藤教授は「形態から推測されていた脊椎動物への進化を遺伝子レベルで確かめられた。ホヤでは遺伝子群は同じように働いていないようで、脊椎動物とはまったく違う方向で進化したと考えられる」と話している。


 ■ナメクジウオ 体長4センチほどの半透明の生物で、瀬戸内海など浅い海に生息。幼生は浮遊しているが成体になると海底の砂地について暮らす。5億年以上前のカンブリア紀の地層から、よく似た生物の化石が見つかり、「進化の生き証人」と呼ばれているが、環境の変化で数が減っている。

[京都新聞 2007年01月22日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007012200018&genre=G1&area=K1D

合併は今年10月・社長に田辺の葉山社長=三菱ウェルファーマと田辺製薬

2007年01月18日 | 創薬
 合併に向けて最終調整に入った国内製薬9位の三菱ウェルファーマと11位の田辺製薬は18日、合併期日を今年10月とする方針を固めた。合併会社の社長には田辺製薬の葉山夏樹社長(67)が就任する。両社は今後、合併比率や社名などを詰め、2月上旬の基本合意を目指す。

 三菱ウェルファーマと田辺製薬は18日、「合併の可能性について協議・検討を進めている」とのコメントをそれぞれ発表した。三菱ウェルファーマ株を全株保有する親会社の三菱ケミカルホールディングスも同日、「田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併を検討していることは把握している」との談話を公表した。

 三菱ウェルファーマと田辺製薬は今年6月の株主総会でそれぞれ合併を決議したうえで、10月の合併を目指す方針。東証1部上場の田辺製薬が存続会社となって非上場の三菱ウェルファーマを吸収合併し、合併会社に三菱ケミカルが50%超出資する方向で交渉している。合併会社の売り上げ規模は国内製薬6位に浮上し、研究開発力や資金力が大幅に高まる。

[日本経済新聞社 NIKKEI NET / 2007年01月18日]
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20070118AT1D1800B18012007.html

幹細胞で脳梗塞の新治療、国内初=札幌医科大学

2007年01月12日 | 医療技術
 札幌医大の宝金清博教授(中枢神経治療学)らの研究グループは12日、患者本人の骨髄の幹細胞を使って脳神経細胞の再生を促す国内初の脳梗塞(こうそく)の治療を発症後約2カ月の50代の女性に実施したと発表した。
 受精卵を壊してつくる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)と比べ倫理的に問題も少なく、拒絶反応が起きない利点がある一方、改善効果の詳しいメカニズムなど解明されていない点もある。国内の脳梗塞の発症者は年間約30万人に達していると言われており、今回の治療で期待した効果が得られるか今後の経過が注目される。
 治療を受けたのは昨年11月に脳梗塞を発症した北海道の女性。女性の骨盤から12月下旬に骨髄液を採取し、幹細胞を抽出した。この幹細胞を約2週間かけて培養し、細菌やウイルスに感染していないか検査した上で、12日午前に腕に点滴で投与した。拒絶反応は見られないという。
 脳に達した幹細胞から放出されたタンパク質の一種「サイトカイン」が血管や神経の再生を促す。回復が見られるのは数カ月後という。
 宝金教授は「脳梗塞の症状を完全に治すことはできないが、生き残った神経細胞の保護や血管の再生を促すことで脳機能の促進が期待される」と話している。

[産経ニュースiZa / 2007年01月12日]
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/life/health/34734/

DHA:脳内の神経細胞再生促進の働き=島根大学

2007年01月12日 | 食品・栄養
 青魚に多く含まれる物質「ドコサヘキサエン酸」(DHA)に、脳内の神経細胞(ニューロン)の再生を促進する働きがあることを、島根大医学部の橋本道男助教授(環境生理学)らの研究グループが、ラット実験で確認した。認知症やアルツハイマー病などの治療に応用が期待される成果で、同グループは国内の製薬会社と共同で国際特許を出願している。

 グループは、生後20週の壮齢ラットに7週間、DHAを経口投与した。短期の記憶をつかさどる「海馬」の神経細胞を調べたところ、情報伝達網の広がりを示す突起状の軸索が、DHAを与えていないラットは増えなかったのに対し、与えたラットは約60%増えた。

 また、神経細胞へ分化する材料となる神経幹細胞をラットの脳から直接抽出してDHAを加えると、DHAを加えなかったものより、神経細胞へ分化する度合いが約1.5倍に促進されることも分かった。

 橋本助教授は「従来の治療薬と比べ、DHAは食品から簡単に取れる。認知症の予防や副作用のない治療薬として期待が持てる」と話している。【酒造唯】

[毎日新聞 2007-01-12]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070112k0000m040154000c.html

犬にも抗肥満薬、米FDAがファイザーに初の認可

2007年01月06日 | 生きもの色々
 米食品医薬品局(FDA)は5日、犬の肥満を治療する薬の販売を製薬世界最大手の米ファイザーに初めて認可した。新薬は食欲を減退させ、脂肪の吸収を抑制してダイエット効果を引き出す。
 食べ過ぎや運動不足で太ると、人間だけでなく犬も心臓病などにかかりやすくなる。米国内でペットとして飼われている犬のうち5%は、理想的な体重を2割超上回る肥満。2―3割の犬も太り気味で注意が必要とされる。

 人間が服用すると頭痛や腹痛になるため、飲まないようラベルに警告を記載する。犬にも嘔吐(おうと)などの副作用が発生することがあるという。使用には獣医の処方が必要。ファイザーは年商世界一の高脂血症治療薬を抱えている。ペット市場も開拓し業績向上を目指す。(シカゴ=毛利靖子)

[日本経済新聞社 NIKKEI NET / 2007年01月06日]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2007010603335h1

ファイザー、より健やかなペットライフのために

皮下脂肪から肝臓細胞を作製=国立がんセンター

2007年01月06日 | 再生医療
 国立がんセンター研究所と国立国際医療センターの研究チームが、人体の皮下脂肪から、肝臓細胞を作製することに成功した。

 肝炎や肝硬変など国内に350万人以上いる肝臓病患者の肝臓を修復する再生医療の実現に近づく成果として注目されそうだ。チームは「数年以内に臨床応用を検討したい」という。

 同研究所の落谷孝広・がん転移研究室長=分子腫瘍(しゅよう)学=とアグネス・バナス研究員らは、皮下脂肪に含まれている「間葉系幹細胞」という細胞に着目した。さまざまな臓器や組織の細胞に変化する可能性を秘めており、皮下脂肪の細胞の約10%を占める。

 研究チームは、国際医療センターで腹部の手術を受けた患者7人から皮下脂肪を5グラムずつ採取、この幹細胞を分離し、成長を促す3種類のたんぱく質を加えて約40日間培養したところ、ほぼすべてが肝細胞に変化した。

 得られた肝細胞の性質を調べてみると、血液の主成分の一つであるアルブミンをはじめ、薬物代謝酵素など肝臓でしか合成されないたんぱく質が14種類以上検出された。人工的に肝機能不全に陥らせたマウスに、この肝細胞約100万個を注射で移植したところ、上昇していたアンモニア濃度が1日で正常レベルに低下した。

 皮下脂肪から再生した細胞は、乳房の修復などにも用いられているが、肝臓の持つ複数の機能が確認されたのは世界で初めて。

 再生医療の研究では、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)が有名だが、受精卵を壊して作るため批判を受けやすい。皮下脂肪を使えば倫理的な障害は少なく、患者自身から採取した細胞なので拒絶反応も起きないという利点がある。

 落谷室長は「皮下脂肪から作製した肝細胞は、機能などの点からみると、合格点ぎりぎりの60点程度。より本物に近い機能を持った肝細胞を作製したい」と話している。

[2007年1月6日 / 読売新聞]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070106i406.htm

数はこめかみの奥で理解?脳の「専門領域」発見=京都大学 霊長研

2007年01月04日 | 心のしくみ
 人の脳に数を理解する領域があることを、京都大学霊長類研究所の正高信男教授らが突き止め、3日付の米学術誌ブレーン・アンド・ランゲージ電子版に発表した。言葉を扱う脳の領域とは別で、なじみの薄い数字を使い、数字を素早く理解できるようになるほど神経細胞が盛んに活動していることを確認した。数の認識を専門に担う部位を特定したのは初めてという。

 特定した場所は脳の左半球(右利きの場合)の前頭葉で、こめかみの奥。研究成果は、脳の働きで習熟度を確かめる数学の効果的な教育法や、数学が極端に苦手な学習障害の治療法の開発などに役立ちそうだという。

[日本経済新聞 2007年01月04日]
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070104AT1G0300U03012007.html

【右利きの人の脳、言葉と数 認識は別=京都大霊長類研究所】

 右利きの人は脳の左半球の前頭葉で数を認識しており、言葉をつかさどる言語中枢とは別の領域が担当しているとの研究結果を京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)の正高信男教授(認知科学)らがまとめ、米科学誌に三日発表した。

 正高教授らは日本人が日常使う算用数字(アラビア数字)ではなく、なじみの薄いローマ数字で実験した。
 23歳~25歳の大学院生14人に、通常は文字の列としか思えないローマ数字を提示。「CMXCIX」だと「999」を表す。
 次にローマ数字の計算の法則を説明、50問を計算してもらった。「C」「M」などはこの場合、文字ではなく数字であることを明確に認識するよう実験を工夫した。

 脳の血流を機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で調べると、理解が進むにつれて広範囲で血流が飛躍的に増えた。正答率が8割を超えた段階で左のこめかみ付近の内側に当たる部分だけが増え、ここが数を認識するのに重要な部位と判明した。

 正高教授は「ヒトが言葉を使いだしたのは約十万年前で、それ以前から数を数えていた。歴史が古く、言語中枢と認識する場所が異なるようだ」と話した。
 左利きの人は、認識する領域が人によって異なるため、研究対象にはしていない。

[東京新聞 2007年01月04日]
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070104/mng_____sya_____004.shtml

京都大学霊長類研究所ホームページ
「数字を理解する脳の領域を解明」正高 信男教授研究グループ

日本イーライリリー:中皮腫向けの薬「アリムタ」承認、厚労省

2007年01月04日 | 創薬
 医薬品会社の日本イーライリリー(神戸市)は4日、アスベスト(石綿)が原因で引き起こされるがんの一種、悪性胸膜中皮腫向けの薬「ペメトレキセド(商品名アリムタ)」の製造販売が、同日付で厚生労働省から承認されたと発表した。

 悪性胸膜中皮腫は進行が進んでから診断されるために治療が難しく、有効な治療法がなかった。同社によると、治験では、アリムタと抗がん剤のシスプラチンを併用すると、シスプラチンの単独療法に比べ生存期間が約3カ月延びた。薬価基準が決まり次第、発売するという。
[2007.01.04./朝日新聞]
http://www.asahi.com/life/update/0104/009.html

統合失調症の発症に関与する遺伝子の機能を解明=名古屋大学

2007年01月04日 | 脳、神経
 統合失調症の発症に関与しているとみられる遺伝子「DISC1」は、脳内の情報伝達にかかわるタンパク質の「適正配置」に重要な役割を果たしていることを、名古屋大医学系研究科の貝淵弘三教授と田谷真一郎助手らのグループが世界で初めて解明した。新しい治療薬の開発に道を開く成果として期待される。
3日付(現地時間)の米神経科学学会誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に掲載される。

 DISC1は、イギリスの統合失調症が多発している家系の遺伝的解析から、発症に密接に関与していることが報告されていたが、具体的な働きは分かっていなかった。

 生物の神経細胞は木の枝のように分かれた複数の樹状突起(じゅじょうとっき)と1本の軸索(じくさく)を持っている。樹状突起が他の細胞から信号を受け取ると、軸索が別の細胞の樹状突起の方に伸びて神経回路を形成し、信号を伝える。軸索の伸びは、複数のタンパク質が軸索内の決められた場所に適正に配置されることによりコントロールされている。

 軸策が伸びる際、複数のタンパク質は「キネシン1」と呼ぶ貨車役のタンパク質に乗って軸索内を運ばれる。貝淵教授らは、ラットの脳の神経細胞を使い、DISC1がどのように働いているのかを分子レベルで調べ、DISC1は「積み荷」である複数のタンパク質を貨車に載せる「コンテナ」の役割を果たしていることを突き止めた。

 DISC1の機能が壊れると、軸索の伸びが抑制されて神経回路の形成に支障が起こり、発症すると考えられるという。貝淵教授は「現在の治療薬は、陽性症状には比較的有効だが、陰性症状にはほとんど効果がない。この研究を進めれば、陰性症状に対する新薬の開発につなげられる可能性が高い」と話した。

[中日新聞 / 2007年01月04日]
http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20070104/mng_____sya_____010.shtml

てんかん薬、パーキンソン病にも効果=国立精神神経センター武蔵病院

2007年01月02日 | 薬理
 てんかんの治療薬「ゾニサミド」が、運動機能が低下する難病・パーキンソン病にも効果があることが、村田美穂・国立精神・神経センター武蔵病院神経内科長らの研究でわかった。これまでのパーキンソン病の治療薬とは異なった効き方をすることから、新しい治療法につながる可能性があるという。2日付の米神経学会誌で発表した。

 パーキンソン病は、手が震えたり、体が硬くなって歩けなくなったりする難病。国内で約14万人の患者がいるとされる。はっきりした原因は不明だが、脳内の神経細胞が死んでしまうため、運動や記憶に関連するドーパミンという脳内物質の分泌量が減り、運動機能の低下につながるらしい。

 村田さんたちは、てんかん発作を起こすパーキンソン病患者がゾニサミドを飲むと、てんかんだけでなくパーキンソン病の症状も改善することを発見。347人のパーキンソン病患者に、てんかんの治療で使う量よりも少ない量のゾニサミドを12週間飲み続けてもらった。その結果、パーキンソン病の診断基準で運動機能が30%以上改善した人が3~4割に上った。

 パーキンソン病の治療は現在、ドーパミンのもとになる物質を脳内に直接投与する方法が中心。ゾニサミドを使うと、ドーパミンの産生を促すとみられる。村田さんは「これまで、あまり効果がなかった人にも、効果的な治療法につながる可能性がある」としている。

[2007.01.02/朝日新聞]
http://www.asahi.com/national/update/0102/TKY200701020118.html

心臓病治療に「心筋シート」=大阪大、東京女子医科大学

2007年01月02日 | 再生医療
 重い心臓病の治療で、患者自身の筋肉の細胞から「心筋シート」を作り心臓に張って心筋再生を図るという、世界でも例のない臨床研究を、大阪大や東京女子医大のグループが実施する。対象には、補助人工心臓を着けて心臓移植を待っている患者6人を予定。重い副作用がなく人工心臓を外せるようになるなど安全性と効果が確認できれば、より多くの患者に広げるという。

 大阪大病院未来医療センター長の澤芳樹教授(心臓血管・呼吸器外科学)らが計画。医学部の倫理委員会と、同センターの審査評価委員会の承認をすでに得ている。

 対象は、拡張型心筋症の70歳以下の患者。同症は心筋が弱って薄く伸び、心臓内の空間が広がって血液がうまく送り出せなくなる。重症になると心臓移植しか治療法はなく、患者は補助人工心臓を着けながらドナーからの提供を待つ。

 具体的には、まず患者の太ももから5~10グラムの筋肉を摘出。筋芽細胞という、筋肉が損傷を受けた時に分裂、分化して損傷を補う細胞を探し出す。その細胞を特殊な培養液で24時間培養して増やし、直径3~4センチ、厚さ50マイクロメートルのシートを10枚ほど作る。これを3枚重ねにして、左心室の表面に張る。

 イヌなどの動物を使った実験では、心筋が再生され、心臓のポンプ機能が回復することが確認されている。

 筋芽細胞を培養し、そのまま心筋内に注入する臨床研究は、欧米ですでに実施され、大阪大も取り組んでいる。一定の効果も報告されているが、欧米では注入した細胞の一部しか機能しないうえ、重い不整脈などの副作用も指摘されている。

 澤教授は「シートは、弱った心臓を覆うように張れるので効果も広く期待できる。シートを作る技術も確立している。慎重に研究を進めて結果を分析し、ほかの心臓病にも広げたい」と話す。

[2007.01.02/朝日新聞]
http://www.asahi.com/science/news/TKY200612300207.html