ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

高塩食で血圧上昇の仕組み=岡山大学、熊本大学、デューク大学

2008年11月25日 | 循環器
 食事などで塩分を取りすぎた際に、「コレクトリン」というタンパク質が腎臓で働いてナトリウムを体内に取り込み、血圧を上昇させているのを岡山大の和田淳講師(代謝内科学)らの研究チームが25日までに突き止め、米医学誌に発表した。

 食塩に含まれるナトリウムが血圧を上げるのはよく知られているが、体内調節の詳しい仕組みは分かっていなかった。和田さんは「コレクトリンの働きを調節する物質が見つかれば、新たな高血圧治療法につながりそうだ」と話している。

 チームはラット実験で、高塩食による代謝の変化を観察。塩分が乏しい時にナトリウムを体内に取り込む仕組みとは別に、塩分が多いと腎臓の細胞膜の表面にあるコレクトリンが活性化し、血圧を上げる仕組みがあるのを発見した。

 高血圧は脳卒中や心筋梗塞など生活習慣病の一因だが、発症には個人差がある。和田さんは「人によってコレクトリンの働きが違うのが理由ではないか」とみている。

 熊本大や米デューク大との共同研究。

[共同通信47NEWS 2008年11月25日]
http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008112501000046.html

カロリー制限で血流増大に効果、マウスで確認=名古屋大学

2008年11月05日 | 循環器
 カロリーの摂取制限(ダイエット)をすると、血管が作られて血流が良くなることを、名古屋大医学系研究科の室原豊明教授らのグループが動物実験で突き止めた。6日に米医学誌電子版に発表する。肥満症になると、心筋梗塞(こうそく)や閉塞(へいそく)性動脈硬化症の発生頻度が高まるが、これらの予防や治療にカロリー制限が有効なことを科学的に証明した。

 グループは、マウスの両後ろ足の血管を縛り、人工的に閉塞性動脈硬化症に似た症状を作り出した。これらのマウスに35%のカロリー制限を行ったところ、通常の食事をするマウスと比べて、迂回(うかい)する細かな血管が1・5倍作られ、血流も1・5倍になった。

 カロリーを制限したマウスの血液中では、していないマウスと比べて、脂肪細胞が分泌するホルモン「アディポネクチン」が1・8倍に増加。このホルモンが欠けたマウスにカロリー制限を行っても血管が作られず、ホルモンが重要な働きをしていることが分かった。

[中日新聞 2008年11月05日]
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2008110502000252.html

食欲増進ホルモン「グレリン」、心筋梗塞を改善=国立循環器病センター

2008年09月13日 | 循環器
 胃から分泌されるグレリンという食欲増進ホルモンが、急性心筋梗塞(こうそく)の症状を改善することを、国立循環器病センター(大阪府吹田市)の研究チームがラットの実験で確認した。

 国内では年間約4~5万人が急性心筋梗塞で死亡しており、治療薬開発への応用が期待される。米国の内分泌学専門誌に掲載する。

 研究チームは、ラット26匹に心筋梗塞を起こさせ、グレリンを注射した群と、しない群とに分けて比較した。その結果、注射したラットは、6時間後に10匹が生存し、不整脈もほぼゼロだったが、注射しないラットは不整脈が頻繁に起き、3匹しか生き残らなかった。

 グレリンには、不整脈を引き起こす心臓の交感神経を鎮静化させる働きがあるらしい。岸本一郎医長は「グレリンはもともと体内にある物質で、心筋梗塞の有効な治療薬になる可能性がある」と話している。

[読売新聞 2008年09月13日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080913-OYT1T00366.htm

血管の増殖を制御する仕組み解明=国立循環器病センター

2008年04月21日 | 循環器
特定のたんぱく質が、血管を新たに作ったり、生成を抑えたりと、条件によってまったく逆の働きをする仕組みを、国立循環器病センター研究所の福原茂朋室長、望月直樹部長らのチームが明らかにした。がんや心筋梗塞(こうそく)などの治療法開発につながる可能性がある。英科学誌ネイチャー・セル・バイオロジー電子版に21日発表した。

チームは、血管中の内皮細胞に働くたんぱく質アンジオポエチン1に注目。血管の内皮細胞どうしが離れている場合には、アンジオポエチン1は、周辺のコラーゲンなどとくっつき、血管を新たに作る信号を出す。

ところが、血管の内皮細胞がほかの内皮細胞と接触している場合は、アンジオポエチン1が橋渡しする形になって細胞どうしを固く接着させ、新たな血管ができることを抑える。

この仕組みを基に、一方の作用だけ起こす物質を作れば、がんの周辺では血管新生を抑える、心筋梗塞などの疾患では血管を延ばすことで症状の改善をはかるなどの治療法開発が期待できるという。

[朝日新聞 / 2008年04月21日]
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200804210005.html

血栓:脳や心筋梗塞の原因、防ぐ抗体開発=滋賀県立大学

2008年04月02日 | 循環器
 血液を固まりにくくして、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞の原因となる血栓ができるのを防ぎ、一方で内出血などはあまり起こさずに済む抗体を、滋賀県立大の高山博史教授(血液内科学)らが開発した。臨床で使えれば、副作用の少ない理想的な血栓予防薬になる可能性があるという。

 米医学誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」(電子版)に2日、論文を発表した。

 血栓は、血液中の血小板にコラーゲン繊維がからまり、固まりを作ってできる。しかし高山教授らは、固まりができない女性を発見。血液中から、血小板とコラーゲンの結合を妨げる抗体を見つけ、この抗体を人工的に作ることに成功した。

 抗体には、血小板の表面に存在しコラーゲンと結びつく「コラーゲン受容体」を、血小板の内部に引っ込めさせる働きがあった。

 さらに、マウスの体内に人為的に血栓を作る実験を行い、普通のマウスには血栓ができるが、同様の抗体を前もって注射したマウスにはできないことを確かめた。

 血小板の機能を部分的に低下させて血栓を防ぐ薬は既にあるが、副作用で脳出血など体内の出血が起きやすくなる。しかし今回の抗体を持つ患者は、脳出血などを起こさず20年間過ごしている。高山教授は「抗体を実用化すれば、脳出血などの副作用なく血栓を防ぐ薬ができるのではないか」と話している。【日野行介】

[毎日新聞 / 2008年04月02日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080402-00000035-mai-soci




【副作用ない脳梗塞治療に道=滋賀県立大学】


 滋賀県立大(滋賀県彦根市)の高山博史教授(血液内科学)らのグループが、副作用がほとんどなく心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞などの血栓症を治療する新薬の開発にめどを付けた。2日付の米医学誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」電子版に発表した。

 血栓症は、血中の血小板が血管のコラーゲンと呼ぶタンパク質線維と異常反応して血管をふさぐことで引き起こされる。アスピリンなど従来の治療薬は、血小板の反応を抑制する半面、投与量を増やすと血小板の止血作用を妨げたり、血小板の数を減らす副作用があった。

 研究グループは、一部の患者の体内でつくられる特殊な物質(自己抗体)に注目。この抗体が、血小板の表面のコラーゲンと結合する部位(コラーゲン受容体)を消失させ、その結果、止血にはほとんど影響を及ぼさずに血栓ができにくくなることを解明した。その上で、この特殊な抗体と同様の物質を人為的につくり、それがコラーゲン受容体を消失させることを試験管内で再現し、新薬となることを突き止めた。

 マウスなど動物実験でも、これまでに効果が確認されており、臨床での応用が期待される。

 ▽一瀬白帝・山形大医学部教授(分子血液学)の話 血栓症は今後も患者が増えると予想される病気。研究は副作用のない安全な治療に応用でき、新しい道を開いた。動物実験で血栓症防止効果がはっきりと確認できていれば、実用化も近いのではないか。

[中日新聞 / 2008年04月02日]
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008040290121925.html


血管の老化を抑える物質判明。脳卒中予防に期待=大阪大学

2008年03月24日 | 循環器
 肝細胞増殖因子(HGF)という体内物質が血管の老化を抑えることを、大阪大の真田文博研究生や森下竜一教授(臨床遺伝子治療学)らがマウス実験で明らかにした。糖尿病や高血圧になると血管が老化し、脳卒中や動脈瘤(りゅう)が起きやすくなる。HGFによって血管老化を抑えて病気を予防するという期待がかかりそうだ。28日に福岡市で始まる日本循環器学会で発表する。

 血管の形成や再生には、骨髄細胞から分化した細胞(EPC)の働きが関与するとみられる。ところが、糖尿病や高血圧になると血管が炎症などで傷ついても修復されにくい。この原因を高血圧について探ると、高血圧を招くホルモン(アンジオテンシン2)によってEPCが老化し、能力が衰えるとわかった。

 このホルモンの働きを、血管を新生する因子であるHGFによって抑制できないか、ヒトのEPCを移植したマウスで調べた。

 ホルモンだけを入れたマウスのEPCは、何も入れない場合の4分の1まで減った。一方、一緒にHGFを入れたマウスは減り具合が3分の2程度にとどまっていた。

 HGFを使うと、ホルモンで悪化した血流が改善することも分かった。

 HGFの遺伝子治療薬は、脚の血管が詰まる閉塞(へいそく)性動脈硬化症の治療薬として森下さんらが開発中。近く承認申請される見込みだ。

[朝日新聞 / 2008年03月24日]
http://www.asahi.com/science/update/0323/TKY200803230247.html

心不全にからむたんぱく質発見=国立循環器病センター

2007年09月22日 | 循環器
 心臓が正常に動くために必要で、不足すると心不全につながるたんぱく質を国立循環器病センターと大阪大などの研究グループが発見した。心臓への負担が少ない心不全治療薬の開発につながる可能性がある。米医学誌ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション電子版に21日、発表した。

 発見されたたんぱく質はミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)と呼ばれる酵素の心臓特異型。12人の重症心不全患者から治療のために切り取った心筋を使い、そこで働く遺伝子を調べた。すると、心不全の症状の重さと関連の深い遺伝子が特定され、その遺伝子が作りだすMLCKが少ないと、心不全になる傾向が強いことがわかった。

 心筋内のMLCKが足りない熱帯魚を遺伝子操作でつくったところ、心臓収縮の原動力となる筋細胞内の配列が乱れ、心臓が大きくなって拍動に異常が現れ、心不全と同じ症状になった。ラットの実験でも、MLCKが心筋細胞内の規則的な配列を維持し、心臓が正常に収縮するために必要なことがわかったという。

 循環器病センターの北風政史・心臓血管内科部長は「弱った心筋を酷使する従来の強心剤は心臓への負担が大きい。心臓のMLCKの働きを活性化することで壊れた心筋を修復し、副作用も少ない心不全治療薬の開発につながる」と話す。

[朝日新聞 / 2007年09月22日]
http://www.asahi.com/science/update/0922/OSK200709220018.html

血圧調節:尿へ食塩を排せつする仕組み解明=東京医科歯科大学

2007年05月09日 | 循環器
 腎臓で尿が作られる際に、尿へ食塩を排せつすることで血圧を調節する仕組みを、東京医科歯科大などの研究チームが突き止めた。日本では、この仕組みが十分に働かないことが原因とみられる高血圧患者が多いとされ、新たな降圧薬の開発につながる可能性がある。研究成果は米科学誌「セル・メタボリズム」5月号に掲載された。

 同大の内田信一准教授によると、食塩を取りすぎた際、十分に排せつできずに高血圧になる「食塩感受性高血圧症」の原因解明を目指して研究。食塩排せつ量減少が原因とされる遺伝性の高血圧症「偽性低アルドステロン症2型」に着目し、遺伝子を変異させてこの病気と同じ状態にしたマウスの腎臓を調べた。

 腎臓で血液をろ過する際、老廃物は尿として排出する一方、水分や塩分など必要なものは尿細管で血液中に再吸収する。食塩は通常、99%が再吸収される。しかし、遺伝子変異マウスでは、食塩をくみ上げる働きをする分子が異常に活性化し、再吸収量がさらに増加。余分な食塩が排せつされず、血圧上昇を招いていた。

 内田准教授は「これまで知られていなかった血圧調節の仕組みで、新たな降圧薬開発にもつながるのではないか」と話している。【大場あい】

[毎日新聞 / 2007年05月09日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070509k0000m040182000c.html


【塩分排出妨げ、高血圧起こす仕組み発見 新薬に期待】

 日本人に多い塩分のとり過ぎによる高血圧が起こる新たな仕組みを、東京医科歯科大の内田信一・准教授(腎臓内科)らのグループがマウスを使った研究で明らかにした。新しい治療薬の開発も期待できる成果で、米科学誌セル・メタボリズム5月号に発表した。

 高血圧は複数の要因が重なって起きることが多く、原因ははっきりしない場合が多い。そんな中で、偽性低アルドステロン症2型という遺伝性の高血圧の場合、塩分を尿に排出する機能の異常が原因とされ、関係する遺伝子もほぼ特定されている。しかし、具体的な仕組みはよくわかっていなかった。

 内田さんらは、遺伝子操作でこの病気を起こしたマウスを詳しく調べたところ、腎臓にあるたんぱく質が活性化され、尿の元になる液体から塩分を過剰に再吸収し、排出を妨げていた。その結果、体液が増えて高血圧が引き起こされていることがわかったという。

 体が血圧を調整する仕組みとしてはレニン・アンジオテンシン系が知られ、今の降圧剤はこれに働きかけるものが多い。偽性低アルドステロン症2型自体の患者数は少ないが、今回わかった塩分と高血圧の関係は多くの高血圧患者にかかわると考えられる。内田さんは「レニン・アンジオテンシン系とは別の仕組みなので、全く新しい降圧剤の開発につながる可能性がある」と話している。

[朝日新聞 / 2007年05月09日]
http://www.asahi.com/science/update/0509/TKY200705090143.html

テルモの補助人工心臓、欧州で販売承認 国内に先駆け

2007年02月28日 | 循環器
 テルモ(東京都渋谷区)グループの開発した補助人工心臓「デュラハート」が26日付で、欧州での販売承認を得たことが分かった。製造と臨床試験を担当してきた米子会社テルモハート(ミシガン州)が27日、明らかにした。国産技術だが、承認に時間がかかる日本に先駆け、海外で使われるようになる。

 患者の腹腔(ふくくう)内に埋め込むデュラハートの本体は、赤松映明・京都大名誉教授らが考案した「磁気浮上型遠心ポンプ」で、磁石の間に浮かせた羽根車を回して血液を押し出す。体外の電池で動き、弱った心臓の働きを補う。軸受けも人工弁もないため、血液が固まりにくく、耐久性に優れており、心臓移植までの「つなぎ」ではない、長期使用できる新しい人工心臓としても期待されている。

 テルモは実用化を急ぐため、承認の遅い日本を避け、欧州からのスタートを選んだ。04年1月からドイツ、オーストリア、フランスの計4病院で臨床試験を始め、33人に埋め込んだ。6カ月以上装着した患者は12人で、うち4人は1年を超えた。13人は心臓移植を受けたが、移植を断ってそのまま装着を続ける患者もいる。人工心臓そのものが原因と見られる死亡はなかった。

 ドイツで承認を得たことでEU(欧州連合)各国で販売できる。米国、日本でも申請準備を進める。

[朝日新聞 / 2007年02月28日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200702270438.html

[テルモ社 ホームページ、プレスリリース]
テルモ、世界初の磁気浮上型左心補助人工心臓 「DuraHeart®」のCEマークを取得
http://www.terumo.co.jp/press/2007/005.html

低酸素状態での解糖系の仕組みを解明~慶応大学 先端生命科学研究所

2007年02月13日 | 循環器
 鶴岡市にある慶応大先端生命科学研究所(鶴岡市、冨田勝所長)は13日、ヒト赤血球をモデルに細胞内の代謝反応を予測するコンピューターソフトウエアを独自に開発し、低酸素状態で赤血球の中に含まれるヘモグロビンが特殊な酵素と結び付き、必要なエネルギーを生み出す解糖系の仕組みを解明したと発表した。今後、赤血球の機能の研究が進めば、人工赤血球の開発にもつながる可能性があるという。

 赤血球はヘモグロビンを含有し、酸素の運搬役として機能する。冨田所長と曽我朋義教授、慶応大医学部の末松誠教授、同大大学院の木下綾子さんらの研究グループは、低酸素下での赤血球の働きを調べるため、細胞内の代謝反応を高速でシミュレーションするコンピューターソフトを開発。このソフトを用いて、細胞の機能維持や血流調整に必要なATP(アデノシン3リン酸)などの代謝物質の変化を予測した。だが、メタボローム解析で測定したところ、予測値と実測値は一致しなかった。

 そこで研究グループは、赤血球の膜に付着しているタンパク質のBAND3(バンドスリー)に着目。酸素が外れたヘモグロビンは、バンド3と結合することで、バンド3の中からPFK(フォスフォーフルクトキナーゼ)など3種類の酵素が分離し、解糖系を機能させる仕組みをプログラムに組み込んで予測値を算出。さらに、メタボローム解析したところ、予測値と実測値が一致する結果を得た。

[山形新聞 / 2007年02月13日]

http://yamagata-np.jp/newhp/kiji/200702/13/news20070213_0195.html

慶応義塾大学 プレスリリース
 計算機科学を利用した生命現象の予測と実証
 -慶應義塾大学「細胞生体機能シミュレーションプロジェクト」の成果
http://www.keio.ac.jp/pressrelease/070213.pdf

チョコレートで血液凝固リスクが軽減=ジョンズホプキンス大学

2006年11月11日 | 循環器
「チョコレート中毒」の人の血小板は、血液凝固を起こしにくいという報告が、シカゴで開催された米国心臓病協会(AHA)年次集会で発表された。この知見は、米ジョンズ・ホプキンス大学(ボルチモア)医学部のDiane Becker博士らによるもの。

チョコレートにはフラボノイドと呼ばれる抗酸化物質が豊富に含まれており、これまでの研究でもダークチョコレートで同様な効果が示されているが、これは人が通常食べる量よりもはるかに多量のチョコレートでの効果で、食べてから2~4時間以内に評価を行ったものであった。実際に人がチョコレートを食べるのに近い条件での効果は、これまでわかっていなかったという。

今回の研究の対象となった139人は、いずれも若年性冠動脈性心疾患(CHD)の家族歴がある高リスク者で、本来は血小板に対するアスピリンの作用を調べる研究に参加するはずだった。参加にあたっては、決められた運動内容を厳密にこなすほか、喫煙および血小板活性に影響を及ぼす飲食物を避けるよう指示を受け、これにはチョコレートも含まれていた。ところが、この139人は指示に反して、チョコレートを食べたことを認めた。Becker氏らは、この「違反者」たちを単に不適格とせず、血小板が凝集するのにかかる時間について、チョコレートを食べていない対照群との比較を行うことにした。

その結果、チョコレートに血液凝固を遅らせる作用がみられたという。チョコレートを食べた群では血液凝固にかかる時間が平均130秒であったのに対して、対照群では約123秒であった。血小板活性により生じる老廃物を調べた検査でも、チョコレート摂取群の尿にはこの物質の量が著明に低く、血小板活性が低いことが示された。この差は十分に有意なものであったという。

Becker氏によると、12時間前というかなり前に比較的少量食べたものが、血小板の機能に影響するという。その影響で、血液の粘りが少なくなり、血液凝固ひいては心疾患が生じにくくなる。「チョコレートは必ずしも悪いものではない」とBecker氏は述べ、高品質なチョコレートにはかなりの健康増進効果が期待できるという。結論としては、たまに高品質のチョコレートを少量食べても害にはならないということだが、大量に摂取すると、砂糖と脂肪で健康を害することになるので、注意が必要である。

[Yahoo!ヘルスケアニュース / 2006年11月14日]
http://health.yahoo.co.jp/news/detail?idx0=w03061103

一酸化炭素が肺動脈高血圧症の治療に有効=ボストン

2006年10月02日 | 循環器
無色無臭で時に “サイレントキラー”(沈黙の殺人者)とも呼ばれる一酸化炭素(CO)に、肺動脈高血圧症(PAH)の治療効果が期待できることが、米国の研究で明らかになった。

PAHでは、肺血管壁が血液を効果的に送り出せないほどに肥厚し、重篤な心肺合併症、特に心臓発作を引き起こす危険性が高い。現在のところ、治癒させる治療法はない。

米医学誌「Journal of Experimental Medicine」9月号に掲載された米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(ボストン)とピッツバーグ大学(ペンシルバニア州)の共同研究では、 低用量の無毒性の一酸化炭素をPAHマウスに連日短時間曝露させ、治療効果を検討した。

その結果、PAHは改善し、血圧と心臓の重量が正常値に戻った。このことは、差し迫った心不全の危険が回避されたことを意味する。

さらに研究では、一酸化炭素の効果は、PAH患者で無制御に増殖する平滑筋細胞を破壊することで発揮されることが明らかになった。その際、一酸化炭素は健常な細胞に影響を与えることなく平滑筋細胞を破壊した。

論文著者の米ハーバード大学医学部外科学準教授のLeo Otterbein氏は「一酸化炭素は人類誕生の以前から地球上に存在しており、生命誕生に貢献しているという説もある。今回の研究は、生物学上欠くことのできない一酸化炭素の役割を示しているのかもしれない」と述べている。

[2006年10月02日/ヤフーヘルスケア HealthDay]
http://health.yahoo.co.jp/news/detail?idx0=w14061002

血管拡張に特定タンパク鍵 ED、はげ治療薬に道=京都大学

2006年09月25日 | 循環器
 一酸化窒素(NO)が血管を拡張する作用は、血管の細胞にあってカルシウムイオンの通り道となる特定のタンパク質が鍵になっているとの研究結果を森泰生京都大教授(生物化学)らがまとめ、米科学誌ネイチャー・ケミカルバイオロジーに25日、発表した。
 「TRPC5」というタンパク質で、NOを生産するスイッチになっており、勃起(ぼっき)不全(ED)や、はげの治療薬開発につながるのではないかという。
 森教授らはウシの血管内皮細胞を分析。このタンパク質による約3ナノメートル(ナノは10億分の1)の穴が開き、カルシウムイオンが細胞内に入るとNOができた。NOは内皮細胞を取り巻く平滑筋細胞に作用、血管を広げた。このタンパク質はNOを検知するとNO生産をさらに増幅させた。
 ニンニクのアリシンという成分にこのタンパク質の穴を開ける作用があることを確かめた。ニンニクに血圧を安定させるなどの作用があるのは、この仕組みによると考えられるという。
 森教授は「狭心症治療でニトログリセリンの服用を続けると耐性ができるが、このタンパク質を標的にすると新たな薬の開発につながるのではないか」と話している。

[2006年09月25日/山梨日日新聞社]
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=soci&NWID=2006092501000010

白血病治療薬で心筋回復、梗塞壊死3割が助かる=千葉大学

2006年04月05日 | 循環器
 心臓の冠動脈が血栓などで詰まる「急性心筋梗塞(こうそく)」を起こした患者に、 白血病などの治療で使われる薬を皮下注射で投与し、壊死(えし)しかけた心筋を
回復させることに千葉大大学院の小室一成教授(循環病態医科学)と千葉県救急医療センター、君津中央病院などのチームが成功した。


 小室教授らは、急性心筋梗塞を起こした50~70歳代の男女16人に対し、血液中の造血幹細胞を増やす薬剤「顆粒(かりゅう)球コロニー刺激因子(G―CSF)」を
5日連続で投与した。投与4日後と6か月後の心臓の状態を比べると、冠動脈が詰まり血液量が著しく減少して一部が壊死してしまった部分が平均3割ほど減少。
心臓の収縮力も正常値近くまで回復した。

 G―CSFが活性酸素の一種によってダメージを受けた心筋細胞を保護して細胞死を防いだり、心臓の血管を増やしたりしたとみられる。一方、G―CSFの代わりに生理食塩水を注射した患者では変化がなかった。

 急性心筋梗塞の治療は現在、冠動脈を広げる手術や、血栓溶解剤の使用などが一般的。一方、G―CSF注射は簡便で、危険性も比較的低い。

 小室教授は「今後、G―CSFが心筋梗塞に使えるよう、製薬会社が適用の拡大を厚生労働省に申請することになる。認められれば、広く使用されるようになるだろう」と期待している。

[読売新聞 / 2006年04月05日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060405it01.htm