ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

群青色の「蛍光たんぱく質」を開発=北海道大学

2009年04月07日 | 可視化技術
 北海道大電子科学研究所の永井健治教授らの研究グループは、強い酸性やアルカリ性の中でも高い発光能力を持ち、退色しにくい群青色の「蛍光たんぱく質」の開発に成功した。

 青色系の蛍光たんぱく質の開発は世界で2例目。6日付の米科学誌「ネイチャー・メソッズ」電子版に掲載された。

 蛍光たんぱく質は、薬剤の体内での働きを確認する目印などに用いられている。ノーベル化学賞を受賞した下村脩博士が発見した緑色系や、赤色系が大半で、青色系はこれまで1種類しかなかった。

 研究グループは、緑色蛍光たんぱく質を構成するアミノ酸の一種トリプトファンの一部を、別のアミノ酸フェニルアラニンに置き換えたところ、群青色の蛍光たんぱく質ができたという。酸性、アルカリ性の程度を問わずに発光能力が高く、従来の青色系に比べ、退色する割合が約60分の1だった。

 永井教授は「酸に強い特性を生かし、胃の中などのたんぱく質の動きを直接観察したり、蛍光発色の繊維の開発への応用が考えられる」と話している。


(画像:北大の永井教授らが開発した群青色の蛍光たんぱく質(左端)。
    左から4番目が下村脩博士が発見した緑色蛍光たんぱく質)

[読売新聞 2009年04月07日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090407-OYT1T00067.htm

狙ったタンパク質に目印をつける新手法 自然な状態で観察可=京都大学

2009年03月30日 | 可視化技術
 生きた細胞内や生体内の狙ったタンパク質に目印を直接付ける手法を、京都大工学研究科の浜地格教授(生命化学)らが開発した。より自然に近い状態でタンパク質の挙動を観察できるという。英科学誌「ネイチャーケミカルバイオロジー」で29日に発表した。

 細胞内のタンパク質の観察には、タンパク質に目印となる緑色蛍光タンパク質GFPなどをくっつける必要があり、細胞の遺伝子を改変して目印がくっついたタンパク質を作る必要があった。

 浜地教授は、GFPなどの目印と、狙ったタンパク質の連結部分に「トシル基」と呼ばれる物質を入れて、「トシル化学」を起こし、その反応を利用した。連結部分には、狙ったタンパク質にだけ結合する分子も付けておく。タンパク質に目印が付けられた後、その分子は切り離されてタンパク質の働きを損なわない。この手法を使って、生きたマウスの赤血球内の酵素を目印できることを確かめた。

 浜地教授は「異常なタンパク質に目印を付けることで病気を診断したりするのに役立つのではないか」と話している。

[京都新聞 2009年03月30日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2009033000027&genre=G1&area=K00

統合失調症の治療に道 ラットの脳、薬剤で正常に=放射線医学総合研究所

2009年02月11日 | 可視化技術
 幻覚や妄想を伴う精神疾患「統合失調症」の治療薬開発や発症要因の解明につながる脳の研究成果を、放射線医学総合研究所(千葉市稲毛区)の樋口真人博士(40)らのチームが、十一日付の米科学誌に発表した。覚せい剤を与えて統合失調症を模したラットに特定の薬剤を投与すると、脳内が正常な状態に戻ることを、陽電子断層撮影(PET)で画像化することに成功。同種の薬剤が統合失調症の治療薬として利用できる可能性や、この画像化技術が診断に応用できる道を示した。

 統合失調症の発症メカニズムは未解明だが、脳内での神経伝達物質「ドーパミン」の異常放出が原因の一つとみられている。

 ラットに覚せい剤を投与すると、統合失調症に似た異常行動を示し、脳内のドーパミン放出は増加する。研究チームは、この状態のラットに、脳内の「グルタミン酸神経系」を阻害する薬剤を与えることで、ドーパミンの異常放出を完全に防げることをPETで確認。ドーパミンを出す神経系を、グルタミン酸神経系が制御していることが分かった。

 動物実験では麻酔を使うことが多いため、測定結果に影響が出る可能性が高いが、今回は麻酔をせずにPET測定に成功。より人に近い状態で検証できたため、診断への応用も期待できるという。

 同チームで実験を行った徳永正希博士(37)は「治療薬開発や診断に役立てたい」と展望を語った。

[ちばとぴ千葉日報 2009年02月11日]
http://www.chibanippo.co.jp/news/chiba/society_kiji.php?i=nesp1234327147

効果が見える新抗がん剤開発、治療効果の予測も容易に=放射線医学総合研究所

2009年01月31日 | 可視化技術
 脳腫瘍(しゅよう)の抗がん剤が、脳内に運搬される様子を画像で示すことに、放射線医学総合研究所(千葉市)の青木伊知男チームリーダーらが世界で初めて成功した。

 薬の効果の判定が予測しやすくなるため、患者の特性に応じて抗がん剤の投与量を調整する手法の開発につながりそうだ。近く、米専門誌に掲載される。

 脳には「脳血液関門」という構造があり、薬剤が入りにくい。これまでは投与した抗がん剤が脳にどの程度運ばれるか、直接確かめることができないため、がんの縮小率などを指標に、薬の効果を判定している。

 研究チームは、国内未承認の脳腫瘍の抗がん剤に、造影剤を結合した薬剤「SLENU(スレニュー)」を開発。この薬剤をマウスの静脈に注射したところ、20秒後に脳内に薬剤が運ばれている様子が、MRI(磁気共鳴画像)で観察することができた。

 また、スレニューは、がん細胞が死ぬときに出る活性酸素で性質が変化するため、この薬剤でがん細胞がどれくらい死んだか、治療効果を判定することもできるという。

[読売新聞 2009年01月31日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090131-OYT1T00404.htm

緑色蛍光たんぱく質、生命解明の研究で広く活用(読売新聞コラム)

2008年12月09日 | 可視化技術
 スウェーデン・ストックホルムで10日、ノーベル化学賞の授賞式に臨む米・ボストン大名誉教授下村脩さん(80)が発見した緑色蛍光たんぱく質は、生命解明の研究で幅広く活用されている。

 愛知県岡崎市にある自然科学研究機構基礎生物学、生理学両研究所では、約50ある研究室のほとんどで蛍光たんぱく質が使われている。1990年代半ばから、細胞や遺伝子に組み込んで動物のがん細胞識別に活用されるなど、身近な存在だけに、受賞を知った時には「なぜ、今頃ノーベル賞なの」と驚く研究者も多かったという。

生理学研究所の小泉周(あまね)准教授(36)は「蛍光たんぱく質は、様々な色を遺伝子に組み込むことができるようになった。将来は動物実験で神経細胞をそれぞれ色分けし、その働きを調べたい」と話している。


[読売新聞 2008年12月09日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20081209-OYT1T00832.htm

蛍光物質:生きたがんだけ光らせる=東京大学、米国立衛生研究所ら

2008年12月08日 | 可視化技術
  生きたがん細胞だけを光らせる蛍光物質を、日米の研究チームが開発した。1ミリ以下の小さながんを見つけられるうえ、がん細胞が死ぬと光が消えるため、治療効果を確認しながら手術や内視鏡治療ができるという。7日付の英科学誌ネイチャー・メディシン電子版に発表した。

 開発したのは、浦野泰照・東京大准教授(薬学)、小林久隆・米国立衛生研究所主任研究員ら。生きた細胞内では「リソソーム」という小器官が弱酸性、死んだ細胞では中性になることに着目。乳がん細胞に結びつきやすく、酸性のときだけ光る物質を開発した。

 また、マウスの肺に乳がんが転移したという条件を再現したうえで蛍光物質を注射すると、1ミリ以下の肺がんが検出され内視鏡で切除することに成功した。さらに、がんを殺すエタノールをかけたところ、約30分後に光が弱まり、がん細胞の死を確認した。米国で臨床試験の準備に入ったという。

 PET(陽電子放射断層撮影)など現在の画像検査では、1センチ以下のがんを見つけることや、抗がん剤の投与後の効果をすぐに確認することは難しい。浦野准教授は「他の種類のがんに結びつく蛍光物質を開発することも可能だ。小さながんを見過ごさず切除できるので、誰もが名医になれるだろう」と話す。【西川拓】

[毎日新聞 2008年12月08日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20081208k0000e040012000c.html

インフルエンザ素早く診断 ウイルス検出で新手法開発=長浜バイオ大学、滋賀県工業技術総合センターら

2008年11月22日 | 可視化技術
 長浜バイオ大(滋賀県長浜市)、滋賀県工業技術総合センター(同県栗東市)などの研究グループは、現在のインフルエンザの検査法に比べ10倍以上の感度でウイルスを検出できる新しい手法を開発した。感染の早期発見につながり、投薬効果も高められると期待される。

 インフルエンザは、ウイルスに反応する免疫物質「抗体」を使って感染しているかどうか検査する。

 検査は、色素を付けた抗体を使い、ウイルスに抗体が結合した際の色を目で確認する方法が一般的で、大量のウイルスの存在が必要だった。このためこれまで1度目の検査で体内のウイルスが少ないため陰性とされ、翌日には陽性と診断されるケースもあった。

 今回の検査法は、色素の代わりに、抗体に蛍光物質を施した。ウイルスと結びついた抗体にレーザー光を当てると光を発し、それを機械で測定、少ないウイルスでも確認できるようになった。鼻水や体の違和感がある程度の軽い段階から、ウイルス陽性を診断できるという。また、10-20分だった検査時間も、半分から4分の1程度に短縮されるという。

 研究結果は同センターで12月18日に開かれる研究成果報告会で発表する。

 ■金城政孝北海道大教授(生物物理学)の話 原理は比較的簡単。さらに研究を進めれば廉価な装置もできるはずだ。精度の高いウイルス検査法普及の道筋を付けた。

 【抗体】 体内に侵入した病原体や異物に反応して作られる免疫物質。ウイルスを排除する一方、アレルギー反応を引き起こす作用がある。抗体の性質を利用した検査薬や治療法が数多く開発されている。

[中日新聞 2008年11月22日]
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2008112202000077.html

がん早期診断へ蛍光剤開発=島根大学

2008年11月19日 | 可視化技術
 島根大は18日、がんの早期診断などに応用できるナノメートルサイズ(ナノは10億分の1)の蛍光剤「酸化亜鉛ナノ粒子」を開発したと発表した。毒性が少なく、安価なのが特徴で、体内のがん細胞に付着させて活用すれば、がんの早期発見などが期待できるとしている。近く動物実験に着手し、3年以内の臨床実験を目指す。

 酸化亜鉛ナノ粒子は直径11.7ナノメートルで、酸化亜鉛とアミノ基などで構成。マウスの細胞に付着させて光を当てるとナノ粒子が発光し、動画撮影に成功した。付着させても細胞は生きたままで安全性も確認できたという。

 産学連携センターの中村守彦教授と総合理工学部の佐藤守之教授の研究チームで開発、10月末に特許申請した。今後の臨床応用は静脈注射でナノ粒子を体内に注入し、粒子とがん細胞を結合させて内視鏡で確認する方法などが考えられるという。

[中国新聞(GOOニュース) 2008年11月19日]
http://news.goo.ne.jp/article/chugoku/region/Tn200811190077.html

肝がん細胞を光らせ切除 再発防止へ新手法開発=大阪府立成人病センター

2008年10月28日 | 可視化技術
 肝臓がんの手術中にがん細胞だけを光らせることで残らず切除する手法を大阪府立成人病センター(大阪市)の研究チームが開発した。28日から名古屋市で開かれる日本癌学会で発表する。

 微小な肝がんを取り残すと約7割が5年以内に再発するとされ、センターは「手術後の再発防止につながりそうだ」としている。

 チームは、肝機能検査で使う試薬「インドシアニングリーン」が肝がん細胞に一定期間とどまるのを発見。光学機器メーカー「浜松ホトニクス」(浜松市)の小型赤外線カメラで患部を観察するとがん細胞だけが光って見え、従来は見つけることができなかった5ミリ以下のがん組織を手術中に見つけるのに成功した。

 昨年2月からセンターで肝がん手術を受けた患者39人にこの手法を適用。うち7人で手術前の検査で見つからなかった新たながんを発見、切除したという。

[共同通信47NEWS 2008年10月28日]
http://www.47news.jp/CN/200810/CN2008102801000329.html

【ノーベル化学賞】下村氏受賞、クラゲの緑色蛍光タンパク発見

2008年10月08日 | 可視化技術
 スウェーデンの王立科学アカデミーは8日、2008年のノーベル化学賞を、米ボストン大名誉教授、下村脩氏(80)ら3人に授与すると発表した。下村氏は京都府出身で、米マサチューセッツ州在住。

 下村氏らは飛躍的に発展している生命科学分野で欠かせない“道具”となっている緑色蛍光タンパク質(GFP)を発見した。

 日本人のノーベル賞受賞は、7日に物理学賞で受賞が決まった米シカゴ大名誉教授の南部陽一郎氏、高エネルギー加速器研究機構名誉教授の小林誠氏、京都大名誉教授の益川敏英氏の3人に続く快挙。日本人受賞者は計16人で、化学賞は02年に受賞した島津製作所フェロー、田中耕一氏以来5人目。

 GFPは紫外光を当てると、その光を吸収して緑色に輝き出すタンパク質。下村氏が渡米中の1961年にオワンクラゲから発見した。GFPを作り出す遺伝子をほかの生物のDNAに組み込み、特定のタンパク質を機能させると緑色に光る「標識」として使える。タンパク質の働きを見えるようにする道具として生物学や医学、創薬など幅広い分野で利用されている。

 下村氏は昭和3年8月、京都府生まれ。長崎医科大付属薬学専門部(現長崎大薬学部)卒業後、助手を経て35年、名古屋大で理学博士号を取得、米プリンストン大研究員。名古屋大助教授などを経て57年、米ウッズホール海洋生物学研究所上席研究員。平成13年、同研究所退職。19年、朝日賞受賞。

[msn産経ニュース 2008年10月08日]
http://sankei.jp.msn.com/science/science/081008/scn0810081948015-n1.htm

ノーベル化学賞に下村脩さん 蛍光たんぱく質を発見

2008年10月08日 | 可視化技術
 スウェーデンの王立科学アカデミーは8日、今年のノーベル化学賞を米ウッズホール海洋生物学研究所・元上席研究員の下村脩(おさむ)さん(80)と米国の研究者2氏の計3人に贈ると発表した。下村さんは、オワンクラゲの発光の仕組みを解明する過程で、緑色蛍光たんぱく質(GFP)を分離し、その構造を解明した。GFPは、生命科学の研究で、細胞内で動く分子にくっつけて追跡する便利な「道具」として世界中の研究者に使われている。

 日本人のノーベル賞受賞は7日発表の物理学賞の3人に続き16人目。2日連続の快挙となった。化学賞は02年の田中耕一・島津製作所フェローに続き5人目。授賞式は、12月10日にストックホルムである。賞金1千万スウェーデンクローナ(約1億4千万円)は下村さんと共同受賞者の3人で均等に分ける。

 たんぱく分子は大きさがわずか10ナノメートル(ナノは10億分の1)程度と小さく、そのままでは光学顕微鏡で観察できない。そこで、特定のたんぱく分子にGFPをつけると、目印の電球のように光って見えるので、観察が可能になる。

 下村さんは、発光する生物から発光物質を取り出し、その仕組みを研究してきた。1962年、オワンクラゲから、発光物質としてイクオリンというたんぱく質とGFPを取り出して発表した。70年代に、イクオリンがカルシウムと結合することで青く光り、そのエネルギーを使ってGFPが緑に光って見えることを解明した。採ったオワンクラゲは85万匹にのぼる。

 90年代になり、米国の研究者によってGFPをつくる遺伝子がわかり、ほかのたんぱく質とくっつけて細胞に組み込む方法が開発された。

 GFPはいまや学生からプロの研究者まで医学や生物学の実験で欠かせない道具となっている。たとえば、がんの転移を調べる動物実験で、あらかじめがん細胞にGFPを組み込んでおくと、転移先で蛍光色に光る。アルツハイマー病で神経細胞がどのように壊れていくのかや、インスリンを分泌する細胞が膵臓(すいぞう)でどのようにつくられるか、などの解明にも使われている。下村さんは、そのような応用は「当時まったく想定していなかった」と言う。

 共同受賞者は米コロンビア大のマーティン・チャルフィー教授と米カリフォルニア大サンディエゴ校のロジャー・チェン教授。チャルフィー教授はGFPを実際に細胞内に入れ、光らせることに成功した。チェン教授は緑以外の色にも光るようにするなど、手法を発展させた。

     ◇

〈下村脩さんの略歴〉

1928年 京都府生まれ
  51年 長崎医科大付属薬学専門部卒業
  55年 名古屋大学理学部有機化学研究生
  60年 米プリンストン大学研究員
  63年 名古屋大助教授
  65年 米プリンストン大上席研究員
  81年 米ボストン大客員教授
  82年 米ウッズホール海洋生物学研究所上席研究員
  01年 自宅に研究室をつくり、研究を続ける
  07年 朝日賞

[朝日新聞 2008年10月08日]
http://www.asahi.com/science/update/1008/TKY200810080238.html

複数薬剤:動きを体内で同時画像化=理化学研究所

2008年07月13日 | 可視化技術
 複数の薬剤の動きを動物の体内で一度に画像化する手法を、理化学研究所などが開発した。現在、がんの診断などに使われているPET(陽電子放射断層撮影)は単一の薬剤しか追跡できないが、複数の薬剤の動きを同時に見ることで、がんと潰瘍(かいよう)を見分けるなど、より精密な診断が可能になるという。

 PETは、薬剤に含まれる陽電子が出すガンマ線を検出し、体内での薬剤の場所を画像化する。理研の榎本秀一ユニットリーダーらは、さまざまな放射性同位元素から放射されるガンマ線を元素ごとに識別できる装置を開発。ヨウ素、亜鉛、ストロンチウムの放射性同位体で標識をつけた3種類の薬剤をマウスに投与し、それぞれの場所を画像化することに成功した。

 榎本さんは「5年後をめどに、人間に使える試作機を作りたい」と話している。【西川拓】

[毎日新聞 2008年07月13日]
http://www.mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/07/13/20080713ddm016040050000c.html

理化学研究所 プレスリリース (2008年07月03日)
 マウスで複数の放射性薬剤の同時イメージングに世界で初めて成功
 - 世界に先駆けて分子イメージング技術を活用した新診断装置を創出 -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2008/080703/index.html
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2008/080703/detail.html

いらない細胞、細胞がパクパク=京都大学

2008年04月09日 | 可視化技術
 体内の不要になった細胞を処理する「貪食(どんしょく)細胞」が「食べる」過程を連続撮影することに、京都大大学院生命科学研究科の松田道行教授、中村岳史講師らが成功した。貪食細胞が生きたまま、その様子を連続撮影したのは初めて。英科学誌ネイチャー電子版に発表された。

 生体内の「ゴミ処理」は細菌やがん細胞などから体を守るのに重要な仕組みだ。この時、食べるべきものを見分ける▽のみ込んで細胞内の消化する場所まで移動させる▽あとかたなく消化する――の3過程があるが、移動の過程がよくわかっていなかった。

 松田教授らは、貪食細胞が細胞内にのみ込む過程で、カギとなるたんぱく質Rab5に注目、このたんぱく質が働く準備ができると黄色に光るように遺伝子を改造した。同大医学研究科の長田重一教授らとの共同研究で、リンパ球を食べさせた。

 貪食細胞は、リンパ球を包み込み、細胞内の消化酵素を含む小袋があるところまで移動させる。顕微鏡で観察すると、黄色に光って働いているRab5が不要細胞をぐるりと包み込んで運ぶ様子がはっきりと見えた。(内村直之)

[朝日新聞 / 2008年04月09日]
http://www.asahi.com/science/update/0408/OSK200804080032.html

がん細胞の分裂、色で追跡、新技術=理化学研究所

2008年02月08日 | 可視化技術
 がん細胞を、分裂のたびに、信号が点滅するように「赤」と「緑」に変色させる新技術が開発された。

 理化学研究所が、サンゴの蛍光物質を利用して成功した。がん細胞が体内でどのように活動しているかが一目でわかり、患者に最適な治療法を選ぶのに役立つという。8日付の米科学誌セルに掲載される。

 細胞は、〈1〉分裂直後の休止期〈2〉DNAが複製されて分裂する増殖期――を繰り返して、増えている。

 理研は、休止期と増殖期の各段階で、細胞内にたくさん作られる特有のたんぱく質があることに着目。休止期のたんぱく質に「赤」、増殖期のたんぱく質には「緑」の蛍光物質が発色するようにがん細胞の遺伝子に蛍光遺伝子を組み込んだ。

 ガラス皿で培養して高感度カメラで見ると、赤と緑が交互に現れる様子が連続して観察できた。マウスの腹に移植した実験でも、赤と緑がまざって広がっていく様子が追跡できた。

 理研によると、患者のがん細胞に蛍光物質を組み込み、マウスに移植して患者の細胞の性質を見ながら、副作用の小さい抗がん剤を選ぶことができるという。

[読売新聞 / 2008年02月08日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080208-OYT1T00185.htm

理化学研究所 プレスリリース
DNA複製や細胞分裂の様子をリアルタイムで観察する新技術
- 生物発生のメカニズム解明やがんの診療・治療薬開発に新たな道 -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2008/080208/index.html
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2008/080208/detail.html

神経回路生きたまま可視化・制御に成功 生きた状態で初、認知症解明など期待=国立遺伝学研究所

2008年01月15日 | 可視化技術
 魚の特定の神経回路を蛍光物質で光らせ、機能を止めると行動がどう変化するかを観察することに、国立遺伝学研究所の浅川和秀・日本学術振興会特別研究員らの研究チームが成功した。脊椎(せきつい)動物の神経回路を生きたまま可視化し、制御できたのは初めて。パーキンソン病や認知症などの神経の病気が起こる仕組みや、記憶のメカニズムの解明に役立つ可能性があり、米国科学アカデミー紀要(電子版)に発表した。

 生物の行動や思考は脳や脊椎に張り巡らされた感覚神経、運動神経などの神経回路が制御するが、各神経回路の働きはよく分かっていない。チームは、狙った細胞で目的の遺伝子を働かせる手法を開発。熱帯魚のゼブラフィッシュを使い、狙った神経回路に蛍光たんぱく質を作る遺伝子と、神経の機能を阻害する毒素を作る遺伝子を導入して実験した。

 その結果、狙った神経回路を光らせ、機能を止めることに成功。例えば、感覚神経と運動神経の働きのバランスを調整する「介在神経」の働きを抑えた魚は、針でつつかれても逃げずにその場で奇妙な動きをするなど、行動の異常が表れた。

 同研究所初期発生研究部門の川上浩一准教授は「神経の異常によって起きる病気の解明だけでなく、記憶や学習をつかさどる神経回路がどう形成されているかを解明することができるかもしれない」と話している。【永山悦子】

[毎日新聞 / 2008年01月15日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080115k0000e040028000c.html

国立遺伝学研究所 News & Topics
http://www.nig.ac.jp/hot/2007/0116kawakami.html
初期発生研究部門 川上研究室
http://www.nig.ac.jp/section/kawakami/kawakami-j.html