ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

がんを1ミリも残さず切除 動物実験で確認=東京大学、オリンパス光学工業

2009年03月21日 | 医療技術
 東京大学とオリンパスの共同研究グループは、体内にできたがんをほぼ確実に切除する新手法を開発し、動物実験で効果を確認した。特殊な薬剤を使ってがん細胞だけを光らせ、内視鏡などで切り取る。1ミリメートルのがんも残さずに手術することが可能で、再発防止につながる。人間への応用を目指して米国立衛生研究所(NIH)と組んで治験を進める計画だ。

 研究成果は26日から京都市で開かれる日本薬学会で発表する。(18:06)

[NIKKEI NET 2009年03月21日]
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090321AT2G2100221032009.html

エボラ出血熱:ワクチン開発…マウス実験で確認=東京大医科学研究

2009年02月13日 | 医療技術
 感染者の過半数が死ぬエボラ出血熱のワクチンを、河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)らが開発した。マウス実験で効果を確認した。これまで対処しようのなかった感染症だが、拡大を防ぐ可能性が出てきた。米専門誌ジャーナル・オブ・バイロロジー電子版で発表した。

 研究チームは昨年、ウイルスが自ら増殖するのを担う遺伝子を除去するのに成功した。接種しても重篤化を避けられる可能性が出てきたため、このウイルスをワクチンとして使うことができるのかをマウスで試した。

 ワクチンを接種せずに感染させたマウス10匹は6日後にすべて死んだが、接種したマウス15匹は、健康なマウス3匹と同じように2週間以上生き続けた。

 エボラ出血熱は1970年代からアフリカ中央部で発生した。発熱や吐血などの症状が表れ、致死率は65%と高い。日本での感染報告はない。

 ウイルスは他の生物に寄生して生存するが、エボラ出血熱のウイルスは共存している生物も不明だ。研究は遅れ、ワクチンや効果的な治療法はなかった。河岡教授は「医療従事者や研究者がワクチンを必要としている。今後サルで実験し、早期実用化を目指したい」と話す。【関東晋慈】

[毎日新聞 2009年02月13日]
http://mainichi.jp/select/today/news/20090213k0000m040138000c.html

胃がん:酢で染色、部位把握=岡山大学

2009年01月15日 | 医療技術
 ◇正診率向上、早期発見に期待
 色素に酢(酢酸)を混ぜ、胃がん部位を浮き上がらせる検診技術を岡山大学病院光学医療診療部の河原祥朗助教らが発見、日本消化器内視鏡学会の英文誌「Digestive Endoscopy(消化器内視鏡)」に発表した。胃がんの正確な診断や早期発見につながる手法として期待されている。【石川勝義】

 ◇正診率向上
 胃がんの治療は近年、患者の負担が少ない内視鏡手術が発達。患部の根元に薬剤を注入し、がんを持ち上げて切り取る「内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術」が普及し、内視鏡で切除可能な胃がんは直径約2センチから10センチ以上になった。

 一方、通常胃がんの診断には、インジゴカルミンという青色の着色料で胃内部を染め、凸状になった患部を浮き上がらせる手法が用いられる。しかし、胃壁は元々起伏があるためがんと見分けがつきにくく、正診率は約70%という。取り残しは再発につながるため、がん部位を正確に把握するための検出技術が求められていた。

 河原助教らは胃の細胞は粘液で胃酸から身を守り、がん細胞は粘液をつくる力を失う点に着目。内視鏡検診時は胃の中が空で胃酸、胃粘液とも分泌されないため、検診時にインジゴカルミン溶液に0・6~0・8%の酢酸を混ぜることで胃を刺激、粘液を分泌させた。結果、着色料は正常組織の粘液と結合して青く染まって胃がん部分だけが浮き上がり、正診率は90%以上に向上したという。

 河原助教らは既に日本の特許を取得し、科学技術振興機構の支援を受けて海外でも特許を出願する予定。河原助教は「特殊な機器が不要で、低コストで正確な診断ができるようになった」と話している。

[毎日新聞 2009年01月15日]
http://mainichi.jp/area/okayama/news/20090115ddlk33040668000c.html

末期肝臓がんの新治療法に着手、局部細胞凍らせ破壊=岐阜大学

2008年11月09日 | 医療技術
 岐阜大医学部は、末期の肝臓がんを凍らせて壊死(えし)させる新しい治療法開発に着手した。これまでの臨床で一定の効果がみられたため、保険診療が一部可能となる高度医療評価制度の認定を求めて今月中にも厚生労働省に申請。治療法の早期確立を目指す。

 この治療法は、先端だけ熱を通す直径3ミリほどの針を腹部から肝臓内のがん組織に刺し、マイナス196度の液体窒素を送り込んで局所的に凍結させる。治療は週1回、15分間の冷却を5分の間を置いて3回繰り返し、がん細胞を破壊する。

 腫瘍(しゅよう)外科研究室の長田(おさだ)真二准教授(45)が中心に研究し、2002年から昨年6月ごろまで13人の患者でデータを収集。治療開始2カ月後では、6人でがんに対する免疫機能が活性化し、肝臓内の凍結させなかった部分やリンパ節や腹膜へ転移していたがんも縮小した。残り7人はがんに対する免疫は変化せず、凍結した部分でがん細胞が消えただけだった。

 末期がん治療ではがん細胞を熱で焼く方法が知られているが、長田准教授は「細胞を焼くとがん細胞内のタンパク質が変性して免疫細胞が正しく反応できない。凍結する方法ではこのタンパク質が変性せず、免疫機能が活発になるのでは」と推察する。

 今後、マウスなどの動物実験でも詳しいメカニズムを解明する方針。長田准教授は「これまでは保険診療と併用できず、研究のための症例数に予算的限界があった。申請が認められれば、多くの患者さんに治療を受けてもらえる」と話した。

[中日新聞 2008年11月06日]
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2008110602000054.html



 皮膚に開けた小さな孔から細い管を挿入し体の奥深い患部へ到達させて治療を行う方法を「インターベンション治療」と呼びます。 この細い管のような医療器具は、薬剤を注入するカテーテル、丈夫な風船、ステンレスのワイヤを繰り出す装置のついたカテーテルから、先端にハサミや発熱装置、あるいは内視鏡、レーザー焼灼などなど、と、さまざまな装置が開発されています。
インターベンション治療は、今までの全身麻酔を行いメスで大きく開腹する外科手術と比べると患者さんの負担が小さく、QOL(生命の質)もあまり下げず、また術後の回復も早いので、脚光を浴びています。

 それにしても末期肝臓がんの患者さんの半数近くに手術部分だけでなく他の部位の病変の縮小や免疫機能の改善が見られたというのは朗報ですね。将来、ヒトはがんという病気も克服してしまい、軽い気持ちでちょっと通院すれば治癒ってしまう、という時代がやって来るのでしょうか?

 がんの研究には、体毛の生えていない肌色でしわしわの「ヌードマウス」が活躍します。胸腺(T細胞の免疫機能をつかさどる器官)が欠損しており、ヒトの癌組織の移植に拒絶反応がありません。皮下のがん組織ならぱっと見て定規を当てただけで、その大きさの変化を観察できます。ヌードマウス、頑張れ。

先天性腎性尿崩(にょうほう)症の遺伝子治療、基礎技術を開発=名古屋大学

2008年11月09日 | 医療技術
 多尿に苦しむ難治性の病気「先天性腎性尿崩(にょうほう)症」を遺伝子治療で抑える基礎技術の開発に、名古屋大の大磯ユタカ教授(糖尿病・内分泌内科学)らの研究グループが成功した。動物実験の段階だが、今後の治療に道を開くと期待されている。

 先天性腎性尿崩症は腎臓の遺伝子の異常によって利尿作用を調整するホルモンが効かないために発症。腎臓が水分を再吸収できなくなり、1日に10リットル以上の尿が出る。

 患者数は国内で約1000人いるとみられ、多尿による脱水症状で命の危険もある。薬物治療や塩分制限などの対処法しかなく、効果も薄い。

 グループは無害化したウイルスに正常な遺伝子を組み込み、人為的に尿崩症にしたマウスの尿管から腎臓に向けて注入。遺伝子が水分調整の役割を持つ腎集合尿細管で正常に働き、尿量を最大40%減らした。腎臓の中心部付近にまで遺伝子を投入し、効果を確認できたのは世界で初めてという。

 効果が得られたのは約1週間だけだったが、より持続的な治療法の開発を目指す。研究を主導した長崎弘講師(44)は「治療法がないと考えられていた疾患に、遺伝子治療の道筋ができた。他の腎集合尿細管の遺伝性疾患にも応用でき、意義が大きい」と話している。

[中日新聞 2008年11月09日]
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2008110902000061.html

ブタの細胞人体移植実験を許可、糖尿病治療開発に向け=ニュージーランド

2008年10月22日 | 医療技術
【10月22日 ウェリントン/ニュージーランド発 AFP】
ニュージーランド政府は21日、ブタの細胞を人体へ移植する臨床実験を認可した。糖尿病の画期的な治療法に道を開くものとして期待される。


 異種間移植として知られるこの方法は糖尿病患者にとって大きな可能性を秘めていると、デービット・カンリフ(David Cunliffe)保健相は指摘。「ニュージーランドが糖尿病の治療および異種間移植の双方で、世界のリーダー的立場に立つことができる重要な新技術だ」と強調した。

 バイオテクノロジー企業、リビング・セル・テクノロジーズ(Living Cell Technologies Ltd、LCT)は、1型糖尿病の治療でインシュリンの分泌を促進するため、ブタのすい臓から採取した細胞を移植したい考えだ。

 LCTによると、前年にニュージーランドのブタの細胞を移植された5人のロシア人患者では、1日あたりのインシュリン注射の必要量が23-100%減少し、うち4人では血糖値が正常に保たれるようになったという。

■心配される感染症

 だが、この技術は糖尿病患者に大きな恩恵をもたらす可能性がある一方で、ブタのウイルスが人体で広がって感染症を引き起こす恐れもあるため、激しい議論を呼んでいる。
 
 ニュージーランド医師会(New Zealand Medical Association)は2005年、移植によりブタのウイルスが人体に感染すると、数百万人が死亡する可能性があると指摘した。これに対しLCTは、細胞は、オークランド島で150年以上にわたり隔離されて飼育された系統の子ブタから採取されるため、そうしたリスクは低減できるとしている。 (c)AFP

[AFP BB News 2008年10月22日]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2530919/3454571

日本製の人工心臓、生存率が移植並みの好成績=東京女子医科大学、早稲田大学、ピッツバーグ大学ら

2008年10月18日 | 医療技術
 東京女子医科大学などが開発した日本製人工心臓「エバハート」を装着した心臓病患者の6か月生存率が89%、1年生存率が83%に達し、心臓移植並みの好成績を挙げていることがわかった。

 脳死での臓器提供の少ない日本で、人工心臓が移植の代替医療となる可能性を示す成果で、東京で開かれた日本心臓移植研究会で18日発表された。

 エバハートは2005年5月から、日本製の体内埋め込み型補助人工心臓として初めて、国内での人への治験が始まり、今年8月に終了した。

[読売新聞 2008年10月18日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20081018-OYT1T00376.htm

株式会社サンメディカル技術研究所/EVAHEART開発情報
http://www.evaheart.co.jp/development.html

先天性難聴の遺伝子診断を開始=信州大学病院

2008年09月25日 | 医療技術
 信大病院(松本市)は24日、先天性難聴の原因を遺伝子レベルで調べる「遺伝子診断」を始めたと発表した。先天性難聴の約半数は遺伝子の変異によるといわれ、遺伝子ごとに発生部位や重症度、将来の進行などが異なることから、原因を特定して治療や療育計画に生かす狙い。同病院によると、先天性難聴の遺伝子診断は全国初という。

 同病院によると、先天性難聴の原因は分からないことが多く、同じ治療をしても言葉の発達に差が生じることがあった。耳鼻咽(いん)喉(こう)科長の宇佐美真一教授らが10年ほど前から、全国の病院と共同で難聴者約4000人分の遺伝子を研究。これまでに、日本人の難聴は10種類の遺伝子に起きる計47の変異によることが分かった。

 こうした成果を診断に活用。乳児の血液から遺伝子を採取し、47の変異の有無を調べる。結果を保護者らに伝える際は、難聴の仕組みや治療について説明する耳鼻科医のほか、遺伝子診療部の医師が同席。今後生まれる子どもや次世代が難聴となる確率なども説明し、疑問や不安に応える「遺伝カウンセリング」を行う。9月1日に開始後、既に2人が受診したという。

 県内の病院は2002年度から、新生児の聴覚スクリーニングを始めている。遺伝子診断は、精密検査などで訪れた保護者が希望した場合に行う。記者会見した宇佐美教授は「言葉の発達には2-3歳が重要な時期。早い診断と適切な治療を行うことで、難聴児の言語発達を助けたい」と述べた。

[信州毎日新聞 2008年09月25日]
http://www.shinmai.co.jp/news/20080925/KT080924FTI090021000022.htm

乳がん手術後、自身の脂肪で乳房 幹細胞注入し再建

2008年09月24日 | 医療技術
 乳がんで乳房温存手術をした後、患者自身の脂肪組織から採った幹細胞を注入すると乳房再建に効果があるようだ。九州中央病院(福岡市)の北村薫副院長(乳腺外科)らの臨床研究で、注入後1年半以上たった10人を調べたところ、膨らみが保たれていた。26日から大阪市で開かれる日本乳癌(がん)学会で発表する。

 脂肪組織から幹細胞などを抽出する機器を開発した米サイトリ社との共同研究で、まず患者の腹部から吸引した脂肪組織を2等分する。一方を処理して、様々な細胞の元になる幹細胞を含む細胞液を抽出し、もう一方の脂肪組織と混ぜ合わせて再建したい場所に注入する。

 06年5月から20~50代の16人の患者に実施した。注入から1年半以上過ぎた10人を調べたところ、がん摘出でくぼんだ場所の厚み(中央値)は再建前は9.8ミリだったが、注入1カ月後は18.1ミリになり、1年半後も15.5ミリと膨らみが保たれていた。

 乳がんが比較的進んでいない場合は乳房をできるだけ残す乳房温存手術が行われることが多いが、術後の放射線治療の影響などで思うように膨らみが戻らないことがある。

 北村さんによると、この手法は、残った乳房の萎縮(いしゅく)が大きい場合の復元は難しいものの、部分的なくぼみであれば十分修復することができた。長期的な効果や副作用はまだわからないが、少なくとも1年半(最長2年2カ月)では8割の患者が満足しており、特段の副作用もみられていないという。

 抽出した細胞液には幹細胞だけでなく、血管新生を促す物質や繊維組織を作る物質なども含まれ、それらが複合的に働いて組織が生着しやすいとみられる。

[朝日新聞 2008年09月24日]
http://www.asahi.com/science/update/0924/TKY200809240062.html

飲み込めるカプセル内視鏡、日本で発売認可=オリンパス株式会社

2008年09月11日 | 医療技術
 オリンパスメディカルシステムズは9月11日までに、錠剤のように飲み込める小腸用のカプセル型内視鏡について、厚生労働省から日本での製造販売認可を取得した。今後、発売に向けて準備を進める。

 直径11ミリ、長さ26ミリのカプセル状。超小型のCCDカメラと無線送信機構を持ち、飲み込んだ患者の小腸内部の様子を外部モニターで観察できる。チューブを挿入する従来型と異なり、患者の負担を抑えながら消化器内を観察できる。

 同製品は2005年10月から欧州、2007年10月から米国で販売している。

飲み込めるカプセル内視鏡、オリンパスが開発(ITmedia news)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0411/30/news096.html

[livedoorニュース 2008年09月11日]
http://news.livedoor.com/article/detail/3816179/

オリンパス株式会社 ニュースリリース (2008年09月10日)
 内視鏡総合メーカーのオリンパスメディカルシステムズ
 日本メーカー初、通常内視鏡に匹敵する高画質を実現した
 小腸用の「オリンパスカプセル内視鏡システム」"エンドカプセル"
 日本で製造販売承認取得
http://www.olympus.co.jp/jp/news/2008b/nr080910capsulej.cfm

急性白血病:原因遺伝子を特定=東京大学

2008年08月07日 | 医療技術
 ◇再発患者多い
 7~8割の患者が再発する急性白血病の原因遺伝子の一つを、黒川峰夫・東京大教授(血液腫瘍(しゅよう)内科学)らが特定し、7日付の米医学誌に発表した。新たな治療の道を開く成果として注目される。

 研究チームは、急性白血病の再発患者で働きが活発な遺伝子「Evi-1」に注目。白血病マウスからEvi-1を除去した細胞を取り出し、それを健康なマウスに移植した。

 その結果、Evi-1除去細胞を移植されたマウス約10匹は、白血病細胞を移植されたほぼ同数のマウスより、白血病の発症を1カ月遅らせることに成功した。発症は完全に止められなかったが、研究チームは「実験上の限界だ」としている。

 これまでに見つかった白血病の原因遺伝子は約100種類ある。Evi-1について、黒川教授は「発症に極めて重要な役割を担っていると言える。適切に制御できるようになれば、白血病の新たな治療につながるだろう」と話す。【斎藤広子】

[毎日新聞 2008年08月07日]
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/08/07/20080807ddm003040074000c.html

遺伝子3種類で「インスリン」細胞…マウスで成功=ハーバード大学

2008年06月12日 | 医療技術
 【フィラデルフィア(米ペンシルベニア州)=矢沢寛茂】膵臓(すいぞう)に3種類の遺伝子を入れるだけで、血糖値を下げるインスリンを分泌するベータ細胞を作り出すことに、米ハーバード大のダグラス・メルトン教授らのグループがマウスの実験で成功した。

 11日、当地で始まった国際幹細胞研究学会で発表した。様々な組織の細胞に変化する胚(はい)性幹細胞(ES細胞)や新型万能細胞(iPS細胞)を使わずに簡単につくることができ、ベータ細胞が破壊され、インスリンを作れない1型糖尿病の治療への応用が期待される。

 メルトン教授らは、遺伝子操作でベータ細胞を作れないようにしたマウスの膵臓に、ウイルスを運び役にして膵臓に関連した遺伝子を注入。1100種類を試し、受精卵から膵臓ができる過程で働いている3遺伝子がベータ細胞を効率よく作るのに欠かせないことを突き止めた。

 この3遺伝子を入れた2割のマウスで、膵臓の95%を占める外分泌細胞の一部が、ベータ細胞と極めて似た細胞に変わった。インスリンが分泌され、血糖値が下がるのも確認された。直接、ベータ細胞の状態に変わったとみられる。

 1型糖尿病患者は、インスリンを注射するしか血糖値を調節できないため、ベータ細胞をES細胞やiPS細胞などから作製する研究が世界中で行われている。メルトン教授は、「狙った細胞を体内の狙った場所に作れることが分かった。とてもミラクル。神経や肝臓細胞などにも応用できるのでは」と話している。

[読売新聞 2008年06月12日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080612-OYT1T00507.htm

採血せず血糖値測定・装置開発・実用化めど 糖尿病患者の負担軽減=長崎県工業技術センター

2008年04月12日 | 医療技術
長崎県工業技術センター(同県大村市)は、採血をせずにレーザー光を使って血中の血糖値を測定できる装置を開発した。現在は臨床試験の段階だが、実用化の見通しが立ったという。採血不要の測定装置は世界の各メーカーが開発にしのぎを削っており、実用化、製品化されれば世界初。15日に長崎市である研究成果発表会で報告する。

センターによると、果物の糖度測定のために独自開発した携帯型糖度計の技術を応用。レーザー光を肌に照射し、反射する光の波長を測定して血糖値を測る。果実と違い人体には脂肪があるため測定が難しいが、新たな解析手法を考案して特許を出願中という。

センターは昨夏から、長崎大付属病院の糖尿病入院患者3人に測定装置を使ってデータを収集。米食品医薬品局が定めた採血型血糖値測定器の数値とほぼ変わらない、高精度の測定結果を得た。本年度以降、より多くの患者でデータを収集。早期実用化と製品化、将来的には携帯型測定器の開発を目指す。センターの下村義昭専門研究員は「糖尿病患者は年々増えており、採血不要の血糖測定装置の需要は世界規模だ」と開発の意義を話している。

糖尿病患者は国内だけで700万人以上とされる。重症者は1日数回採血して測定しているが、針から病原菌に感染する恐れがあるほか、使い捨て小型検知器(チップ)に年間数十万円の費用がかかる負担の軽減が大きな課題になっている。

採血不要の血糖値測定装置は、民間企業が2004年、熱エネルギー計測などの技術を使って開発に成功、製品化すると発表したが、実用化、販売には至っていない。

[西日本新聞 2008年04月12日]
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/15869?c=170


非侵襲(体に傷をつけない、ダメージを与えない)的な医療技術の開発は今後どんどん重要になってくると思います。実用化されて、量産、低価格化にも成功すれば医療財政の負担も軽減されるでしょう。

脊髄小脳変性症:マウスに遺伝子導入成功=群馬大学

2008年03月23日 | 医療技術
 原因不明の難病「脊髄(せきずい)小脳変性症」の治療に有効な遺伝子を、マウスの脳神経細胞に効率よく導入させることに群馬大などが成功した。安全性や効果を確認したうえで、遺伝子治療への応用を目指す。

 脊髄小脳変性症は、小脳が萎縮(いしゅく)して神経細胞が破壊される病気。歩行障害や言語障害を起こし、死に至る場合もある。根治療法はなく、リハビリで進行を抑えているのが現状だ。国内に約2万人とされる患者のうち4割が遺伝性という。

 群馬大大学院医学系研究科の平井宏和教授(神経生理学)らは、病原性を取り除いたウイルスを使って、目的の遺伝子を細胞内へ効果的に導入させる「レンチウイルスベクター」に着目。この方法を使って、細胞内の異常を修復する「CRAG」と呼ばれる酵素の遺伝子を、脊髄小脳変性症のマウスに導入した。その結果、神経細胞が回復し、運動障害が大幅に改善された。

 生物の神経細胞に直接、遺伝子を導入したのは初めてで、遺伝子治療に応用できれば、遺伝性の患者の8割に症状改善が期待できる。今後、サルを使った実験などで効果や安全性を確認する。14日の欧州分子生物学機構の専門誌「エンボ・リポーツ」オンライン速報版に掲載された。【伊澤拓也】

[毎日新聞 / 2008年03月23日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080323ddm016040127000c.html

「1リットルの涙」の難病、遺伝子治療で改善=群馬大学

2008年03月14日 | 医療技術
 群馬大大学院医学系研究科の平井宏和教授(43)は14日、難病の脊髄(せきずい)小脳変性症を、遺伝子治療で改善するマウス実験に成功したと発表した。

 研究成果は、専門誌「欧州分子生物学機構機関誌」のネット版で公開される。この病気にかかると、脊髄や小脳の神経細胞が徐々に破壊され、歩行などが困難になる。根治療法は見つかっていない。平井教授は今後、サルを使った実験に取り組み、患者への応用を探るという。

 平井教授は3年前に、HIVウイルスから病原性を除去したベクター(遺伝子の運び屋)を作製。昨春、このベクターに「CRAG」と呼ばれる治療用の遺伝子を組み込んで、同変性症を発症させた生後21~25日のマウスの小脳に注入したところ、よろよろしたり転んだりしていたマウスが約2か月後には正常に歩けるほど回復したという。

 同変性症は、遺伝が原因の場合、神経細胞内に毒性のあるたんぱく質の塊が蓄積して発症すると考えられている。「CRAG」には塊を溶かす働きがあることが、培養細胞を使った実験ですでに確認されていた。しかし、生体細胞に注入する方法が確立されておらず、今回の研究で初めて、生体での効果が確認された。

 平井教授の話「サルでの実験は治療用遺伝子の量を増やせばうまくいくと思う。ベクターの安全性が確認されれば、人の臨床試験も行いたい」

 ◆脊髄小脳変性症◆ 患者の4割は遺伝性とされるが、それ以外は原因不明の神経疾患。歩行がふらつく、話すとき舌がもつれるなどの運動失調が主な症状で10、20年という長い期間をかけて進行する。国内の患者は約2万人。実在の女性患者の日記を基にした「1リットルの涙」はテレビドラマや映画にもなった。

[読売新聞 / 2008年03月14日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080314-OYT1T00499.htm