ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

チョコレートなどに含まれる物質に記憶力向上効果=米・ソーク研究所

2007年05月31日 | 食品・栄養
 ブドウ、チョコレート、ブルーベリー、茶などに含まれるエピカテキンという物質が、マウスの記憶力を向上させるという米Salkソーク研究所による研究結果が、医学誌「Journal of Neuroscience」5月号に掲載された。

研究グループは、エピカテキンを添加した餌を与えたマウスでは、脳の特定部位での血管の成長度合いが大きいことを突き止めた。この結果から、特に運動と組み合わせることによって、エピカテキンが脳の血行をよくすることが示されると、英BBCニュースは報じている。

研究を率いたHenriette van Praag博士によると、次のステップとしては、まず高齢動物を用いてエピカテキンが記憶および脳血流に及ぼす影響について検証し、次にヒトを対象に軽い運動と組み合わせた研究を実施する予定だという。

BBCニュースによると、米国立加齢研究所(NIA)のMark Mattson博士は、記憶力向上効果をもつ単独の天然由来物質が特定され、運動と食事によって脳機能が改善する可能性が示されたことは大きな前進だと述べているという。

[Yahoo!ヘルスケアニュース / 2007年05月31日]

アバスチンの売上高は薬価ベースで70億円の見通し=中外製薬

2007年05月30日 | 創薬
 [東京 30日 ロイター] 中外製薬(4519.T: 株価, ニュース , レポート)は30日、抗がん剤アバスチンの薬価公表を受け、今年6月から2008年3月末までのアバスチンの売上高が薬価ベースで70億円になるとの見通しを示した。同社広報担当者がロイターに明らかにした。

 アバスチンは今年4月に承認を受け、30日に薬価が発表された。薬価は100ミリグラム5万0291円、400ミリグラム19万1299円となった。

 市場では予想価格より低いとの見方から中外の株価は30日後場に値を下げ、終値は前営業日比200円安(7.09%下落)の2620円となった。

 日興シティグループ証券はリポートで「想定価格より約28%低い」と指摘。この他、中外の貧血治療薬エポジンの競合薬で、キリンビール(2503.T: 株価, ニュース , レポート)の「ネスプ」の価格が単純比較で約33%安いこともあり、貧血治療薬における中外からキリンへのシフトが予想以上に起こると考えられるとみている。



 アバスチンは、中外製薬がすでに承認を受けた抗がん剤で、今年販売を開始する主力商品の一角。売上高の予想数値は、07年6月から08年3月を想定したものとなっている。

 中外によると、今回決まった薬価は米国に比べて約40%、英国に比べて約7%、海外平均に比べて約25%低い水準という。

[ロイター / 2007年05月30日]
http://today.reuters.co.jp/news/articlenews.aspx?type=businessNews&storyID=2007-05-30T194816Z_01_NOOTR_RTRJONC_0_JAPAN-262022-1.xml

中外製薬、アバスチンの売上高は薬価ベースで70億円の見通し(ロイター) - goo ニュース

ヒトES細胞:大量培養法開発 パーキンソン病などに朗報=理化学研究所

2007年05月28日 | 脳、神経
 あらゆる細胞に分化する能力を持つヒトの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を大量に培養する方法を、理化学研究所・神戸研究所などの研究グループが開発した。この方法で、脳の神経細胞を効率よく作ることにも成功した。パーキンソン病など神経変性疾患の再生医療につながる成果で、27日付の米科学誌「ネイチャー・バイオテクノロジー」(電子版)に掲載された。

 未分化のまま増やしたES細胞の塊をバラバラにし、再び未分化の細胞塊に成長させる方法で、マウスの場合は効率よく増やす方法があった。しかし、ヒトの場合はバラバラにする操作を加えると、ほとんどの細胞が死んでしまい、少しずつほぐしながら増やす効率が悪い方法しかなかった。

 研究グループは、特殊な細胞の死だけに関係するたんぱく質「Rho」と結合して活性化される酵素「Rhoキナーゼ(ROCK)」に注目。ROCKの阻害剤を培養液に添加すると、塊をバラバラにしても細胞がほとんど死ななくなり、培養効率が1カ月当たり100倍以上も向上した。

 笹井芳樹・理研グループディレクター(神経発生学)は「ヒトES細胞の大量培養の道を切り開く画期的な技術開発で、パーキンソン病やハンチントン病など大脳の神経変性疾患の再生医療や創薬開発につながる可能性がある」と話している。【河内敏康】

[毎日新聞 / 2007年05月28日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070528k0000m040097000c.html

理化学研究所 プレスリリース
  ヒトES細胞の画期的培養法開発:大量培養や大脳神経細胞産生が可能に
 - 再生医療や創薬開発を加速する新技術の確立 -


(図2の説明:分散したヒトES細胞のROCK阻害剤による劇的な生存促進
ROCK阻害剤(Y-27632またはFasudil; 10 μM)の培養液への添加により、細胞分散による細胞死はほとんど抑制され、多数の細胞コロニー(単一細胞から増殖した細胞塊)が生じる。
1回の植え継ぎで十数倍程度の細胞数に殖やすことが可能。)
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070528/index.html

ヒトES細胞大量培養に成功 従来の100倍以上の効率(朝日新聞) - goo ニュース

認知症の原因のひとつ? 異常たんぱく質の正体解明=東京都精神医学総合研究所

2007年05月27日 | 脳、神経
 人格が変わったり、異常行動をとったりすることが多い認知症の一種、「前頭側頭型認知症」(FTD)の原因とみられる異常たんぱく質の正体を、東京都精神医学総合研究所のグループが突き止めた。30日から東京都内で開かれる日本神経病理学会で発表する。病気のメカニズムの解明や治療法開発につながる可能性がある。

 FTDは、65歳以下の認知症としてはアルツハイマー病に次いで多い。FTDは、脳に、タウというたんぱく質がたまるタイプと、タウ以外のたんぱく質がたまるタイプに分けられるが、タウ以外のたんぱく質の正体は分かっていなかった。

 長谷川成人チームリーダーと新井哲明主任研究員らは、患者の脳に異常にたまっている物質を詳しく調べ、TDP43とよばれるたんぱく質であることを突き止めた。このたんぱく質は、筋肉が次第に動かなくなる筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)の患者の脊髄(せきずい)にもたまっていることを見つけた。米国グループも同じ結論を発表している。

 アルツハイマー病では、アミロイドベータという異常たんぱく質がたまることが突き止められてから、これを標的とする治療法の開発が進んでいる。今回の成果も治療法の開発につながる可能性がある。

 貫名信行・理化学研究所脳科学総合研究センター病因遺伝子研究グループディレクターの話 ALSと認知症の仕組みがどのように関係するのか、新たな研究が発展しそうだ。

[朝日新聞 / 2007年05月27日]
http://www.asahi.com/science/update/0526/TKY200705260211.html

遺伝情報運ぶたんぱく質、「歩く」仕組みを解明=早稲田大学

2007年05月25日 | 蛋白質
 細胞内での「荷物の運び屋」と呼ばれる、ごく小さなたんぱく質が、まるで二本足で歩いているかのように動く仕組みを、早稲田大理工学術院の木下一彦教授(生物物理学)らのチームが解明した。

 分子レベルの微細な機械(ナノマシン)の開発にもつながる成果で、25日発行の米科学誌「サイエンス」に掲載される。

 このたんぱく質は「ミオシン5」で、大きさは1万分の1ミリ程度。細胞内で、遺伝情報を担っているリボ核酸(RNA)などを運ぶ役割をしている。逆V字の形に開いた2本の足のようなパーツを持っており、その足を使って、まるでレールの上を進むように、細胞内の線維上を一定方向に移動していく。

 木下教授らは、その足に目印となる大きなたんぱく質を結合させた上で、顕微鏡を使ってビデオ撮影し、その動きを詳しく調べた。

 その結果、ミオシン5はまず、両足が分岐する「股(こ)関節」部分を前に押し出すことで、線維にくっついている「後ろ足」を線維から離していた。次に、線維から離れて自由に動くようになった「後ろ足」に、水分子が衝突して、「後ろ足」が回転。その結果、「後ろ足」は前方の線維に着地していた。これを交互に繰り返すことにより、約2分間で2000分の1ミリの距離を「歩行」していた。

[読売新聞 / 2007年05月25日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070525ik01.htm

早稲田大学 プレスリリース
『分子モーター、ミオシン5の歩く様子を直接観察』
http://www.waseda.jp/jp/pr07/070525_p.html

バイアグラは「時差ぼけ」に効くと発表=キルメス国立大学(アルゼンチン)

2007年05月22日 | 薬理
- CNN/REUTERS

ワシントン──男性の勃起(ぼっき)不全治療薬「バイアグラ」が時差ぼけの解消に有効だとする研究結果を、アルゼンチンの研究者が21日、米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した。


アルゼンチンの首都ブエノスアイレスにあるキルメス国立大学の研究者、パトリシア・アゴスティーノさんやサンティアゴ・プラノさんらは、実験用のハムスターを用いて、飼育箱のライトを昼夜に関係なく、点灯したり消したりして、人工的に時差ぼけ状態にさせた。


その後、「バイアグラ」の成分シルデナフィルをさまざまな濃度で与えたところ、シルデナフィルを投与しなかったハムスターよりも、50%早く、時差ぼけ状態を解消したという。


特に、「東向きフライト」と同様の状態で生じた時差ぼけに、大きな効果があった。逆に、「西向きフライト」ではあまり効果が見られなかったという。


研究者らは、本来の目的よりも薄い濃度であれば、多くの人々の時差ぼけを解消するのに役立つのではないかとしている。

[CNN.co.jp / 2007年05月22日]
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200705220021.html

生体肝腎移植、1人の提供者から実施=国立成育医療センター

2007年05月19日 | 医療技術
 国立成育医療センター(東京・世田谷)は19日、肝臓と腎臓が先天的な病気のために機能しなくなった4歳の女児に対し、父親から肝臓と腎臓を同時に生体移植する手術を18日に実施したと発表した。同センターによると、健康な1人の臓器提供者からの生体肝腎同時移植は国内で初めて。世界でも4例目という。

 健康な人から同時に肝臓・腎臓を摘出して移植に利用すると、提供者の体への負担や危険が大きい。ただ現行の臓器移植法は15歳未満の脳死臓器の提供を認めておらず、小児の脳死移植は実施できない。このため父親の強い希望で手術に踏み切った。手術は成功し、女児と父親はともに経過は良好という。

 女児は肝臓と胆のうをつなぐ「胆管」や腎臓などに生まれつき異常があり、腎臓と肝臓の機能が低下。生後9カ月までに2つある腎臓を両方とも摘出し、敗血症を引き起こして入院を続けていた。母親は病気のために臓器提供者となれず、30代の父親から肝臓の一部と右の腎臓を摘出し、女児に移植した。

[日本経済新聞 NIKKEI NET / 2007年05月19日]
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070519AT1G1900M19052007.html

国立成育医療センター ホームページ
http://www.ncchd.go.jp/


臓器移植手術については、色んな問題点や意見があってコメントし難いと思います。
でも、このニュースを聞いた時は即座に、無条件に嬉しくなりました。
最近の、親子の悲劇のニュースが多い中、「ああこれこそが親子愛なんだな、」って素直に感動しました。
術後の経過が良好でありますように、早くお二人が元気になれますように、祈りたいと思います。

父→4歳娘、生体肝腎同時移植…異なる血液型は世界初(読売新聞) - goo ニュース

はしか流行でワクチン不足懸念、厚労省が適切接種を通知

2007年05月18日 | 創薬
 厚生労働省は18日、関東地方を中心にはしかが流行しており、ワクチンが不足する恐れがあるとして、都道府県や日本医師会などに対し、無駄を避け適切な接種を行うよう通知した。

 厚労省によると、はしか単独のワクチンは、4月末から需要が急増。今月16日までに14万本が出荷され、メーカーなどの在庫は11万本になった。新しいワクチンの生産には時間がかかり、9月ごろまで、新たな供給はない。

 通知は、はしかが流行していない地域では、やみくもにワクチン接種せず、まず血液検査で免疫の有無を確認するなど流行状況に応じた対応を行うこと、適正量のワクチンを購入することを要請。在庫が不足した場合、ワクチンを融通し合うように求めている。

 はしかと風疹(ふうしん)の混合ワクチンは、16日現在、34万本の在庫がある。厚労省の担当者は「はしかと風疹のワクチンをどちらも接種していない人もいるので、混合ワクチンも活用してほしい」と話している。

[読売新聞 / 2007年05月18日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070518i412.htm

 関連ニュース
【はしか 関東で流行の兆し…過去に比べ若者の発病が増加 --2007年05月02日】
http://blog.goo.ne.jp/cinogi/e/c016dc291948cf3a081ec9fd271dfb9e

はしか流行でワクチン不足懸念、厚労省が適切接種を通知(読売新聞) - goo ニュース

ハエに「自発的意志」米独研究チームが計測実験=ベルリン自由大学(ドイツ)

2007年05月18日 | 生きもの色々
2007年05月17日15時41分

 昆虫の行動は外部からの刺激だけによって決定されているわけではなく、例えばハエには特殊な「自発的で自由な意志」があると推論されるとの実験結果を米独の研究チームが16日、発表した。

 実験は、ベルリン自由大学のビヨルン・ブレムプス氏らがショウジョウバエを使って行ったもので、ハエが外部の刺激に反応して行動するだけの「入力・出力装置」とみなす仮説が妥当かどうかを検証した。

 オンライン科学・医学誌プロス・ワンに掲載された論文によれば、実験では、体の動きをコンピューターでデータ化する装置にショウジョウバエを入れて頭を固定。装置の内部はむらのない白色にし、ハエが視覚刺激を受けない環境をつくった。その結果、ハエは視覚刺激を受けていないにもかかわらず、羽や脚を激しく動かした。

 その運動をコンピューターで解析したところ、極めて複雑ながら一定のパターンを持っており、研究チームは「ハエも自発的意志のための脳内メカニズムを持っていると考えられる」とした。(時事)

[朝日新聞 / 2007年05月17日]
http://www.asahi.com/science/update/0517/JJT200705170008.html?ref=rss


「自由な意志」‥ホントかなぁ?
ハエの脳内メカニズムにはとても興味のあるところですが、頭を固定されて真っ白な部屋に入れられたら、たとえセンチュウだろうとラットだろうと「自由意志」どころじゃなかったりする(笑)。
生物の脳(昆虫の場合は「脳のような神経節」)は食べ物を探して生き残るために発達したのではないか、と考えられます。
ですから、この束縛からも開放してあげないと、実験は不十分ではないかと思います。
つまり、探索行動も、好奇心もおこさせないほどに餌も環境も十分満たされている。満腹で、快適で、自由で、その上ではじめて、このハエ君は他のハエ君とも違う趣味の世界のごとき自由な意志による羽ばたきのデータを研究者に見せる、と思うのですが‥。

ピロリ菌 胃の粘膜破壊の仕組み解明=北海道大学

2007年05月17日 | 消化器
 胃炎や胃潰瘍(かいよう)、胃がんの原因とみられている細菌ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が胃の粘膜を破壊する仕組みを、北海道大遺伝子病制御研究所の畠山昌則教授らのグループが突き止めた。17日発行の英科学誌ネイチャーに発表される。

 ピロリ菌は胃の粘膜をつくる上皮細胞にくっつくと、CagAというたんぱく質を細胞の中に打ち込んで粘膜を破壊することが知られている。畠山さんらは培養できるイヌの上皮細胞を使い、CagAが粘膜を破壊する仕組みを詳しく調べた。

 それによると、CagAはまず、隣り合う上皮細胞同士を固く結びつけている「装置」を作る酵素(PAR1)と結び付くことがわかった。CagAが結合するとPAR1の働きが鈍り、装置が破壊されて、正常な粘膜組織が維持できなくなっていた。

 畠山さんらは今回の研究に先立ち、CagAが細胞の増殖を促すたんぱく質(SHP2)を活性化させてがん化を促進するらしいことも明らかにしており、(1)CagAとPAR1が結合して胃粘膜を破壊(2)結合したCagAがSHP2を活性化させてがんを起こす、との2段階を考えている。

 日本人はざっと2人に1人がピロリ菌に感染しており、胃がんのほとんどが感染者で起きていることもわかってきた。抗生物質による除菌が健康保険でできるが、うまくいかない人もいる。「今の抗生物質では除菌できない耐性ピロリ菌が20%を超える。CagAがPAR1と結合できなくする薬ができれば、胃がんなどを大幅に減らすことができるかもしれない」と畠山さんはいう。

[朝日新聞 / 2007年05月17日]
http://www.asahi.com/life/update/0517/TKY200705160394.html

ピロリ菌と胃がんのメカニズムを解明…北大研究チーム(読売新聞) - goo ニュース

脳冷却→てんかん抑制を実証…米専門誌に発表=山口大学

2007年05月16日 | 医療技術
 脳の神経細胞の異常な活動により、けいれんなどの発作を起こす「てんかん」について、山口大医学部(山口県宇部市)の研究チームが電子部品で脳を局所的に冷やして発作を抑えることに成功し、米国の医学術論文専門誌ジャーナル・オブ・ニューロサージェリーや日本の総合医療誌に発表した。

 この手法を用い人の脳で発作の抑制を実証したのは世界初という。同大工学部(同)と共同で脳内に埋め込む冷却装置を開発中で、専門医らは「発作をコントロールできるようになる可能性がある」と期待している。

 ◆原因電流の減少に効果
 同大によると、てんかんは人口1000人当たり8人がかかり、うち約2割が発作を抑制できない難治性。通常は薬の投与か、異常を起こした神経細胞の切除で治療するが、言語や運動などをつかさどる部分は切除できない。

 研究チームは実験動物の大脳皮質にてんかんの要因となるカイニン酸を埋め込み、25度以下に冷却。神経の細胞膜が安定し、異常な興奮を起こす電流が約4割減少することを確認した。これをもとに、コンピューター内の冷却にも使われる小型電子部品「ペルチェ素子」で脳を冷やす3例の臨床試験を行ったところ、発作を招く電流が大幅に減少。先天的な脳の異常がある2歳の男児の場合、脳を22度まで冷やすと電流の8~9割が消えた。

 ◆埋め込み型冷却装置を開発中
 研究チームは工学部と共同で脳波解析、バッテリーなどの機能も持つ、同素子を用いた埋め込み型の冷却装置を開発中。脳の異常電流を感知して脳の冷却を始め、電流が収まれば温度を元に戻すことで、切除できない脳の部分に起因する発作を抑えられるという。研究チームの藤井正美・准教授(49)(機能神経外科)は「埋め込む装置をいかに小型化するかが今後の課題」としている。

 日本てんかん外科学会の前会長で、国立精神・神経センター武蔵病院の大槻泰介・手術部長は「摘出困難な個所に発作原因がある患者にとって、発作をコントロールできるようになる可能性がある」と話している。

[読売新聞、九州発 / 2007年05月16日]
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/ne_07051606.htm

深海の細菌、ゲノム解読/化学合成で栄養分供給=海洋研究開発機構

2007年05月16日 | 生きもの色々
化学合成で栄養分供給

 太陽光が届かない深海にすむ二枚貝「シロウリガイ」に共生し、有毒な硫化水素を基に化学合成した栄養分を供給している細菌のゲノム(全遺伝情報)を海洋研究開発機構などの研究チームが解読した。15日付の米科学誌カレントバイオロジーに発表した。

 地球上のほとんどの生物は、光合成で作られた有機物を利用して生きているが、深海には海底からわき出る硫化水素から生存に必要なエネルギーを得る生態系があり「地球を食べる生態系」とも呼ばれる。こうした光に全く頼らない生態系にある共生細菌のゲノム解読は初めてで、謎の多い生態系の実態解明につながる成果という。

 研究チームは、相模湾の深さ約1200メートルの海底でシマイシロウリガイを採取、えらの細胞にすむ共生細菌を抽出してゲノムを解読した。

 その結果、塩基配列の数は大腸菌の4分の1以下と少なく、遺伝子は約900個と判明。硫黄を酸化してエネルギーを合成し、有機物を作る遺伝子がある一方、細胞分裂に必要な遺伝子など、単独での生存に必須の遺伝子が欠けていた。

[共同通信 / 2007年05月16日]
http://www.47news.jp/CN/200705/CN2007051501001057.html

プリオンの病原性、新ビタミンが抑制――東京農工大学

2007年05月16日 | 創薬
 東京農工大学大学院の早出広司教授らは、新しいビタミンと考えられている「ピロロキノリンキノン」(PQQ)と呼ぶ物質に、牛海綿状脳症(BSE)や変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を引き起こすプリオンの病原性を抑える機能があることを発見した。研究グループは「治療や予防に応用できる可能性がある」と話している。
 プリオンは正常型と異常型の2種類がある。異常型が体内に入り込むと正常型プリオンが次々に異常型プリオンに変化してしまう。異常型プリオンはアミロイドと呼ぶ繊維となって神経細胞を侵し、脳をスポンジ状に変えてしまうとされる。


[日経産業新聞 / 2007年05月16日]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2007051508150h1

シナプス小胞:神経伝達物質放出する仕組み解明=京都大学

2007年05月14日 | 脳、神経
 京都大大学院の森泰生教授(生物化学)らの研究チームは、記憶情報などの神経伝達物質を取り込んで神経細胞間に伝える「シナプス小胞」が、伝達物質を放出する仕組みを解明したと発表した。神経細胞内にある小胞を、細胞膜付近にとどめるための“綱”や、綱を巻きつけて細胞膜から離れないようにする“杭(くい)”の役割を果たす2種類のたんぱく質が働いていることが分かった。

 森教授は「神経伝達物質の放出量が減少して起きる、アルツハイマー病の症状を改善させる薬剤開発につながる」と話している。成果は13日、英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」電子版に掲載された。

 運動調節や記憶、感情などの情報は神経伝達物質に組み込まれてシナプス小胞に詰められ、神経網を伝わる。小胞は細胞の端に達すると、表面が細胞の膜と融合して開き伝達物質を放出。細胞間の連結部分・シナプスで次の細胞に中継される。

 チームは、神経伝達物質の放出にかかわることが既に知られているたんぱく質「RIM1」を人為的に10倍以上増やしたラットの培養神経細胞では通常より多く融合が起き、神経伝達物質の放出量が2.5倍になったことを確認。また、“杭”役のたんぱく質とRIM1の結合を人為的に妨げると、小胞と細胞膜の融合は約6割に減少したことから、RIM1が“杭”役のたんぱく質と結合することで、小胞を細胞膜近くにつなぎ留め、融合を導いていることを確かめた。

 RIM1の働きを強める薬剤ができれば、神経伝達物質の放出を安定化させ、アルツハイマー病の症状を改善する効果が期待できるという。【中野彩子】

[毎日新聞 / 2007年05月14日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070514k0000m040142000c.html

亜鉛に免疫系細胞の情報伝達作用=理化学研究所、大阪大学

2007年05月14日 | 創薬
 体内にある微量元素の亜鉛が、免疫系の細胞で情報を伝達する役割を担っていることを、理化学研究所と大阪大の研究チームが突き止めた。

 研究が進めば、新たな薬を生み出す手がかりになりそうだ。成果は21日付の米専門誌「ザ・ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー」に掲載される。

 亜鉛はたんぱく質の合成や傷の治癒、抗酸化作用といった重要な働きがあり、不足すると免疫低下や発育不全などをもたらすことは昔から知られていた。しかし、他の役割についてはよくわかっていなかった。

 研究チームは、免疫機能に重要な役割を果たす「肥満細胞」の内部で、亜鉛がどう働いているかに注目。肥満細胞を刺激して特殊な顕微鏡で観察した結果、刺激から数分で、細胞内部の小胞体という器官のあたりから亜鉛が大量に放出されることを突き止めた。

 研究チームによれば、肥満細胞が活性化すると、炎症物質が放出されるが、亜鉛はこうした物質を作る遺伝子調節にかかわるとみられる。平野俊夫・大阪大大学院教授は「細胞内で情報伝達を担う物質には、カルシウムや脂質など約10種類が知られている程度。他の細胞でも亜鉛放出が起きていれば、細胞を制御する新たな手段となりうる」と話している。

[読売新聞 / 2007年05月14日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070514i414.htm

理化学研究所 プレスリリース
 亜鉛が細胞内の情報伝達役を担っていることを発見
 - 外的刺激によって細胞内に亜鉛ウエーブが発生 -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070514/index.html

(図2 亜鉛は新たな細胞内セカンドメッセンジャー)