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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

変異メダカから疾患遺伝子発見、細胞表面の繊毛動かず=東京大学、フライブルグ大学(ドイツ)

2008年12月04日 | 遺伝子
 心臓や肝臓の位置が左右逆転したり、気管支炎を起こしたりする遺伝疾患「カルタゲナー症候群」の原因遺伝子を、突然変異のメダカから発見したと、東京大やドイツ・フライブルク大などの研究チームが4日付の英科学誌ネイチャーに発表した。この遺伝子の異常のため、細胞の表面に生えている繊毛(せんもう)が動かなくなっていることが分かった。研究成果は繊毛や鞭毛(べんもう)の形成過程の解明に役立つと期待される。(2008/12/04-06:03)

[時事ドットコム 2008年12月04日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_date1&k=2008120400052

4億年前に入り込んだ遺伝情報、哺乳類の脳生成に深く関係=東京工業大学、理化学研究所

2008年03月05日 | 遺伝子
 何億年も前に脊椎(せきつい)動物のゲノム(全遺伝情報)の中に入り込んだ特殊な遺伝情報が、哺乳(ほにゅう)類特有の発達した脳を生み出すのに深く関係していることが東工大や理化学研究所などの共同研究でわかった。

 外から入り込んだ遺伝情報が、大きな進化を起こす引き金になった可能性を示す初めての証拠で、哺乳類誕生の謎を解明する手がかりとして注目されている。米科学アカデミー紀要に掲載された。

 研究チームは、進化の過程でゲノムに入り込み、その後は抜け落ちずに子孫に伝わる「レトロポゾン」という短い配列の遺伝情報を手がかりに、様々な動物のゲノムを調査。爬虫(はちゅう)類、鳥類、哺乳類に、特定のレトロポゾンが共通に存在し、哺乳類でのみ、脳組織の発達を促す役割を担っていることを突き止めた。

 このレトロポゾンが関係している脳組織は、ねずみのひげやもぐらの鼻先など哺乳類特有の感覚器官に反応する部分で、爬虫類や鳥類にはない構造をしている。レトロポゾンが入り込むことでゲノム上の領域が刺激され、脳組織の位置などを決める遺伝子が活性化されることがわかった。

 化石などから推定して、レトロポゾンは、約4億年前に脊椎動物のゲノムに入り込み、約2億年前に哺乳類の共通祖先の中で、高度な脳を発達させる機能を獲得したと見られている。

 同大大学院生命理工学研究科の岡田典弘教授は「遺伝子の研究では、突然変異の積み重ねなどの小進化に関係する成果は多いが、外から入る遺伝子で、体の構造に大きな変化をもたらすような大進化に関係する成果はなかった。進化の新しい研究手法になる」としている。

[読売新聞 / 2008年03月05日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080304-OYT1T00813.htm

フランス:遺伝子組み換えトウモロコシを栽培禁止

2008年02月10日 | 遺伝子
 【パリ福井聡】フランス政府は9日、米・モンサント社の遺伝子組み換えトウモロコシ「MON810」の仏国内での栽培禁止を発表した。仏国内では2万ヘクタール以上で栽培されており、一部農民は裁判で禁止解除を訴える構えだ。

 遺伝子組み換え作物に関する諮問委員会のルグラン委員長は「害虫、ミミズ、微生物への否定的影響を証明する事実が浮かんだ。また、花粉が予想を超え数百キロも飛んでいることへの懸念もある」と指摘している。

 MON810は害虫の殺虫性に優れ収穫増が見込め、欧州連合(EU)が承認したことで数年前からフランスも導入。昨年はEU内でスペインの7万5000ヘクタールに次ぐ2万2000ヘクタールで栽培された。仏トウモロコシ生産者組合によると、禁止命令がなければ今年は10万ヘクタールで栽培予定で、同組合は禁止命令による損害を1000万ユーロ(約15億6000万円)とし、一部組合員の提訴を示唆している。

[毎日新聞 / 2008年02月10日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080211k0000m030041000c.html

(2007年06月14日の関連記事)

成長や内臓機能に影響か 遺伝子組み換えトウモロコシ
http://blog.goo.ne.jp/cinogi/e/a5f99e21cf2327b00916c9ad67f59dee

サントリー開発の「青いバラ」、2009年発売へ

2008年02月05日 | 遺伝子
【2月5日 AFP】赤いバラはありふれていると感じていた人も、これからは青いバラを贈ることができるようになる。飲料大手サントリー(Suntory)は4日、世界で初めて開発に成功した「青いバラ」を2009年から発売すると発表した。

 価格は高めになるもようで、贈り物用のぜいたくな切り花として、年間数十万本の販売を目標とする。価格の詳細や商品名は未定。

 同社はオーストラリア、米国でも販売許可を得るために実験的に青いバラの栽培を行っているが、両国での販売開始時期は決まっていない。

 サントリーは2004年、オーストラリアの研究者らとの14年間におよぶ共同研究により世界初の青いバラを開発、発表した。パンジーなどに含まれる「デルフィニジン(Delphinidin)」という青色成分を合成するのに必要な青色遺伝子を導入することで開発に成功した。この青色成分は自然にはバラの花弁には存在していない。(c)AFP

[AFP BB News / 2008年02月05日]
http://www.afpbb.com/article/economy/2346411/2597034

サントリー ニュースリリース
サントリー「青いバラ」のカルタヘナ法に基づく承認について
http://www.suntory.co.jp/news/2008/10016.html

ヒトゲノム 遺伝子制御の仕組み解明=東京工業大学ら

2008年01月31日 | 遺伝子
 ヒトゲノム(全遺伝情報)に存在するニ万数千個の遺伝子が、相互に干渉せず秩序を維持して働く仕組みを、東京工業大大学院の白髭克彦教授らの日欧共同研究チームが解明した。環状のタンパク質がDNAを約1万3000カ所で区切り、遺伝子の機能を場所ごとに制御していることを突き止めた。英科学誌「ネイチャー」(電子版)に30日、発表した。

 人体の設計図であるヒトゲノムを機能別のブロック単位で理解できるようになる成果で、遺伝病の原因究明や遺伝子治療の進歩につながると期待される。

 タンパク質をつくる遺伝子は、スイッチ役の制御配列から「オン」(活性化)や「オフ」(抑制)の情報を受け、機能を制御されている。この情報は個々の遺伝子ごとにきちんと区別して伝達され、“混線”することはないが、その仕組みは分かっていなかった。

 白髭教授らは、ゲノム上のタンパク質の働きを網羅的に解析。細胞分裂の際に働く「コヒーシン」という環状のタンパク質が、遺伝子の機能制御に深く関係していることを発見した。

 コヒーシンは、輪ゴムで縛るようにDNAをループ状に区切っていると推定。遺伝子の制御情報は、区切られた領域内で同時に伝わるが、他の領域にはコヒーシンによって遮断されて伝わらないという。

 遺伝子治療では、導入した遺伝子が本来の機能を発揮せず、治療効果が得られない場合がある。今回の成果を基に、遺伝子が活性化される領域を狙って導入すれば、効果が高まる可能性があるという。

[msn産経ニュース / 2008年01月31日]
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080131/acd0801310302000-n1.htm

細菌ゲノム、完全合成 米チーム「人工生命」に前進=クレイグ・ベンター研究所

2008年01月25日 | 遺伝子
 細菌のゲノム(全遺伝情報)を人工的に合成することに、米クレイグ・ベンター研究所のチームが成功した。これまで、より原始的なウイルスでの成功例はあったが、自己増殖能力を備えた生物である細菌のゲノムを人工合成したのは初めて。人工合成ゲノムを実際に働かせることができれば、細菌の人工合成につながるだけに、「人工生命」づくりに向けた大きな前進だ。米科学誌サイエンス(電子版)に25日、発表する。

人工合成したのは「マイコプラズマ・ゲニタリウム」という細菌のゲノム。

 チームはまずゲノム全体の8分の1~4分の1の大きさの分子を試験管内で化学合成。これらの「部品」を大腸菌に入れ、遺伝子組み換えでくっつけ、大きな部品をつくった。さらに大きな部品を酵母の中で同様にくっつけ、完全なゲノムを合成した。

 生物の設計図であるゲノムの人工合成は、特定の能力を備えた「人工生命」づくりの前提となる技術。バイオ燃料を製造したり、有害廃棄物を分解したりするのに必要な人工微生物づくりなどへの応用が期待されている。

 人工生命づくりには、合成したゲノムをどうやって働かせるかなどの課題はあるが、チームは昨年、ある細菌のゲノムと別の細菌のゲノムを入れ替えることにも成功しており、こうした技術との組み合わせで「人工生命」が誕生するのも時間の問題、という見方も広まってきている。

 しかし、人工生命はテロへの悪用、自然界への悪影響などの懸念がつきまとう。

 国立遺伝学研究所の小原雄治所長は「生命のデザインを可能にする大きな一歩だ。ただ、人工微生物を人間が制御できなくなったときにどう対応するのかなど、二重、三重の安全対策を考えていく必要がある」と話す。

[朝日新聞 / 2008年01月25日]
http://www.asahi.com/science/update/0124/TKY200801240478.html

分割遺伝子からゲノム再構築=慶応大先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)

2008年01月09日 | 遺伝子
 慶応大先端生命科学研究所(鶴岡市、冨田勝所長)の板谷光泰教授らのグループは、三菱化学生命科学研究所(東京都、関谷剛男所長)との共同研究で、分割した遺伝子をつなぎ合わせて遺伝子全体(ゲノム)を再構築する技術を開発したと、9日までに発表した。細胞内の遺伝子全体を抽出することが可能になる基盤技術で、ゲノムに関するさまざまな研究の効率を飛躍的に高めることができるほか、病気の治療や有益な物質を生産する微生物の開発などに応用できるという。

 板谷教授によると、遺伝子には長さや大きさなど、一定のサイズがあるため、巨大な遺伝子全体を一度に引き出そうとすると、物理的に途中で切れてしまっていたという。このため既存の技術では、遺伝子の一部しか取り出すことができず、研究効果の実証などに一定の時間が必要とされてきた。

 板谷教授らは、遺伝子全体を短く切り、枯草菌というバクテリア内にそれらの切った遺伝子を組み込みつなぎ合わせることで元の状態に復元、抽出する手法を考案。マウスのミトコンドリア(呼吸などに関与する細胞小器官)ゲノムと、イネの葉緑体ゲノムを用いて実験し、復元化を成功させた。この技術は、国際論文誌「ネイチャー・メソッズ」2008年1月号に掲載された。

 板谷教授は「これまでは遺伝子の一部を取り出して利用していたが、この技術を用いると遺伝子全体を扱うことができるため、効率的に研究を進めることが可能」と解説。ミトコンドリアに起因する病気の治療法開発や、プラスチックの原料となる乳酸を多量に発生させるような有益微生物の開発などにも転用できるとしている。

[山形新聞 / 2008年01月09日]
http://yamagata-np.jp/newhp/kiji_2/200801/09/news20080109_0111.php

「スシイチ」、胎児成長に大事 フグから発見DNA断片=東京医科歯科大学、東海大学

2008年01月07日 | 遺伝子
 フグで見つかり、すしにちなみ「スシイチ」と名付けられたDNA断片が、進化の過程で変化し、哺乳(ほにゅう)類では胎児が育つ際に重要な役割を担う遺伝子として定着していることを東京医科歯科大や東海大などのグループが突き止めた。6日付の米専門誌ネイチャージェネティクス電子版に発表する。

 グループは、この遺伝子を働かなくしたマウスでは、胎児と母親を結ぶ胎盤の毛細血管が異常になり、誕生前後に死ぬことを見つけた。胎盤の毛細血管は、栄養や酸素・二酸化炭素の通り道だ。

 また、人の胎児でこの遺伝子が過剰に働くと胸郭の発達が異常になるなどの症状が出ることも、国立成育医療センター研究所との共同研究で明らかにした。これまで原因不明とされた成長障害の診断につながる可能性があるという。

 今回の一連の研究の中で、この遺伝子はニュージーランドの研究者が発見したDNA断片「スシイチ」が変化したものであることもわかった。フグではウイルスのように動き回る「レトロトランスポゾン」と呼ばれるものだが、進化の過程で哺乳類の祖先で遺伝子として定着し、重要な役割を果たすようになったとみられている。

[朝日新聞 / 2008年01月07日]
http://www.asahi.com/science/update/0106/TKY200801060162.html

川崎病に関連遺伝子 発症しやすい配列解明=理化学研究所

2007年12月17日 | 遺伝子
 子どもに発熱や発疹などの症状が出る川崎病にかかわる遺伝子を、理化学研究所などのチームが突き止めた。遺伝子のタイプによっては2倍近く発症しやすく、心臓の冠動脈に瘤(こぶ)ができる合併症や治療効果とも関係するという。川崎病が報告されてから40年たつが原因はわかっておらず、原因解明や治療法の選択に役立つと期待されている。

 理研遺伝子多型センターの尾内善広・上級研究員らが米カリフォルニア大サンディエゴ校と共同で研究。論文は17日(日本時間)付米科学誌ネイチャージェネティクス電子版で発表された。

 川崎病との関連がわかったのは「ITPKC」という遺伝子だ。尾内さんらは、兄弟姉妹で発症した患者78組の協力で、関連遺伝子がありそうな場所を10カ所見つけた。さらに患者と患者以外の人を比較し、米国人患者のデータも解析した。

 この遺伝子には、遺伝暗号を記す塩基の並び方が1カ所変わったタイプがある。このタイプの人は川崎病を1.89倍発症しやすく、合併症も2.05倍起きやすかった。合併症を防ぐために投与する薬、ガンマグロブリンの効果が不十分な人にも多かった。

 この遺伝子は、免疫を担うT細胞を活性化する物質インターロイキン2の増加を抑制し、過剰な免疫反応を抑えることもわかった。川崎病の発症直後はインターロイキン2の濃度が高く、合併症の患者はさらに高いという報告もある。遺伝子の塩基配列の違いが関係しているとみられる。

[朝日新聞 / 2007年12月17日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200712160153.html

エイズ発症の速度を決定する遺伝子発見=テキサス大学(米国)

2007年10月22日 | 遺伝子
【10月22日 AFP】エイズ(HIV/AIDS)ウイルスに感染した人の、エイズを発症する速度を決定する2つの主要遺伝子を特定したとする研究が、21日発行の科学誌「Nature Immunology」に掲載された。

 エイズ確認以来四半世紀にわたり、エイズ発症を促すのは血液内のHIVウイルスで、それが増大しヒトの免疫システムを破壊してしまうことが原因と考えられていたが、今回の研究は、その考え方に修正を促すものになりそう。

 研究では、個人の遺伝子特性が、HIVの複製と、HIVへの身体反応に影響を及ぼすことが明らかになった。

 HIVウイルスと免疫システムの相互作用は、「通常は軽い感染をも致死性のあるものに変えてしまう」と研究者。

 今回特定された遺伝子は「CCR5」と「CCL3L1」。まだ解明されていない他の遺伝子も、同様の役割をになう可能性もあるという。

 「CCR5」は、HIVウイルスがとりつく免疫細胞「CD4」の表面の主要な受容体を制御する。もう1つの「CCL3L1」は、HIVが受容体に付着するのを阻止するケモカイン(chemokine)と呼ばれる分子に信号を送る免疫システムを制御する。

 以前からの研究により、「CCR5」のある種の変異体は、HIVウイルスの侵入を阻止する盾の役割を果たしているらしいことが明らかになっていた。

 2005年には、今回の研究と同じテキサス大学ヘルスサイエンスセンター・サンアントニオ校(University of Texas Health Science Center)のチームが、「CCL3L1」遺伝子の複製の数も、影響を及ぼすことを明らかにしている。

 この遺伝子複製の数には個人差があり、0から5、場合によってはそれ以上のこともあるが、この数が多い人ほどHIVウイルスに感染しにくいということがわかっていた。

 今回の研究でテキサス大学のSunil Ahuja氏を中心とするチームは、好ましい、あるいは好ましくないCCR5の変異体と、CCL3L1の複製の数に基づき、遺伝子的「リスク・グループ」のいくつかを特定。

 その上で、HIVウイルスに感染している米国人患者と健康な人3500人を比較・分析し、どの段階で感染者がエイズを発症するのかを調べ、これを「リスク・グループ」の特徴および免疫反応と比較した。

 感染初期段階では、HIV感染者がAIDSを発症する速度に血液中のウイルスの量が及ぼす影響は9%にとどまった。

 ウイルスの量と同じくらい重要なのは上述の2つの遺伝子の組み合わせのあり方であることも明らかになった。「個人の遺伝子の性質は、HIV1ウイルスの血中量と同じくらい、エイズを発症する速度に影響を及ぼす」とAhuja氏。

 「ウイルスの量が及ぼす影響を考慮してもなお、遺伝子的な要素がエイズ発症の速度に影響を及ぼすのはあきらか」と、共同研究者で同じテキサス大学ヘルスサイエンスセンター・サンアントニオ校のHemant Kulkarni準教授も指摘する。

 また「CCR5-CCL3L1」の特徴は、健康な人の免疫反応にも影響があることがわかり、この遺伝子の組み合わせは、エイズ以外の感染症への身体反応にも影響を及ぼすという結論も導かれた。

 もう1人の共同研究者San Antonio Military Medical Center(サンアントニオ陸軍医学センター)のMatthew Dolan氏によると、今回の発見は個人の遺伝子的特徴に合わせたHIVの薬品とワクチンを作る必要性を補強する点で極めて大きな意味を持つという。

 2006年末の時点で、世界で3950万人がHIVウイルスに感染するか、あるいはエイズを発症していると国連合同エイズ計画(UNAIDS)と世界保健機関(World Health Organisation、WHO)が発表している。(c)AFP

[AFP BB News / 2007年10月22日]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2301452/2271595

薬剤耐性遺伝子、海の細菌から人体へ移動も=愛媛大学

2007年09月16日 | 遺伝子
 抗生物質を効かないようにする薬剤耐性遺伝子は、自然界の海洋細菌から、人の体内にもいる大腸菌や腸球菌に移動しやすいことが分かった。耐性菌を含んだ生魚などを食べると、使ったことのない抗生物質でも効かなくなる可能性を示す結果だという。松山市で開催中の日本微生物生態学会と国際微生物生態学シンポジウムアジア大会の合同学会で、愛媛大沿岸環境科学研究センターの鈴木聡教授らが17日、発表する。

 実験では、魚の養殖でも利用される抗生物質の一つであるテトラサイクリンが効かなくなる耐性遺伝子を持った5種類の海洋細菌を使った。これらの海洋細菌と、大腸菌や腸球菌を一緒に培養した。すると、細胞の膜構造が互いに似ている場合に、耐性遺伝子が大腸菌や腸球菌に取り込まれる確率は最高1000分の1程度あった。

 似た細菌が接触して細菌間で遺伝子が移動する確率は、100万分の1から10万分の1程度だとされる。ところが、耐性遺伝子では100~1000倍高い値になった。

 鈴木教授は「環境中の菌から、人の体内の病原性の大腸菌などに耐性遺伝子が移ると、抗生物質が効かなくなる恐れがある」と話している。

[朝日新聞 / 2007年09月16日]
http://www.asahi.com/science/update/0915/OSK200709150076.html

スプリンターか、マラソンランナーかを左右するのは「ACTN3」遺伝子(シドニー、オーストラリア)

2007年09月10日 | 遺伝子
【9月10日 パリ/フランス発AFP】(一部修正)あなたは短距離を速く走りたいと思うだろうか? それとも長距離を快適に走りたいだろうか? その希望を左右するのは、「ACTN3」として知られる、いわゆる「速く走ることに関係する遺伝子」によって握られている。

 「ACTN3」は、速い動きを生み出す「速筋」の新陳代謝を司るタンパク質の遺伝暗号を持つ遺伝子だ。

 世界の人口の18%は、このタンパク質を阻止する変異体を保有しているという。中でも「R577X」と呼ばれる変異体は、優れた長距離ランナーによく見られることが、過去の研究で明らかになっている。

 逆に、瞬発力が求められる一流の短距離ランナーは、「R577X」を持たない傾向にあるという。

 オーストラリア・シドニー(Sydney)のウエストメッド(Westmead)にある小児病院のキャスリン・ノース(Kathryn North)教授率いる研究チームはさらに研究を進めるため、遺伝子操作により「ACTN3」が欠如したマウスを作り出し、実験を行った。

 実験は、「ACTN3」を欠いたマウスと「ACTN3」が機能している普通のマウスを電動踏み車に乗せ、マウスが疲れ果てるまで速度を上げ続けるというもの。

 その結果、「ACTN3」が欠如したマウスは普通のマウスの3倍以上もの距離を走ることができた。

 理由は、「ACTN3」の欠如は、筋肉の新陳代謝をより滑らかかつ効果的に有酸素系に変換する「αアクチニン2」と呼ばれる別のタンパク質によって補われていたからだ。その結果、「速筋」は疲労することなく、繰り返し伸縮することができたのだ。

 研究結果は9日付の英科学誌「ネイチャー(Nature)」の姉妹誌、「ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)」に掲載される。(c)AFP

http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2280556/2121349

日仏チーム、ミトコンドリア病の原因遺伝子発見=東京大学、パリ大学

2007年05月08日 | 遺伝子
 東京大学の中村祐輔教授らとフランスのパリ大学などの共同チームは、筋力や知能が低下するミトコンドリア病の新たな原因遺伝子を発見した。中村教授は「ミトコンドリア病の新しい診断に応用できる」と話している。7日付の英科学誌ネイチャー・ジェネティクスの電子版に発表される。
 ミトコンドリア病は、細胞内の小器官でエネルギーをつくり出すミトコンドリアの遺伝子が異常をきたし、筋力や知能の低下などが起きる病気。国内には数万人の患者がいるとみられており、難病に指定されている。


[日本経済新聞 NIKKEI NET / 2007年05月08日]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2007050708747h1

「細胞の頑強性」の定量的実証に成功=慶應義塾大学 先端生命科学研究所

2007年03月23日 | 遺伝子
「細胞の頑強性」を世界で初めて定量的に実証
~史上最大規模の細胞分析実験に成功し、米科学誌「サイエンス」に掲載(*)~


 慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)は、最先端のバイオ技術を駆使して、生物学史上最大規模の細胞分析実験を実施した結果、大腸菌の細胞内における振る舞い(代謝)を安定化するための様々な戦略を持っているという「細胞の頑強性」の定量的実証に成功しました。(**)

 ヒトからバクテリアまですべての細胞は、糖をエネルギー分子のATP(アデノシン三リン酸)に変換する「エネルギー代謝」という機構を持っています。これは最も基本的な生命活動のひとつとされており、約100個の遺伝子で構成されています。
 研究グループはまず、4288個ある大腸菌の遺伝子をひとつずつ欠失させた突然変異体を3984種類作成。その中からエネルギー代謝にかかわる遺伝子を欠失した大腸菌を選出しました。また、通常の菌体については、様々な異なる条件で生育させました。これらの大腸菌の細胞内物質を、最先端の分析技術と遺伝子工学などのバイオテクノロジーを駆使して徹底分析し、数千種もの細胞内分子(代謝物質、タンパク質、RNA)を網羅的に計測しました。さらに、代謝物質130種,タンパク質57種とRNA85種について詳細な解析を行い、それらのデータをもとにエネルギー代謝の各ステップにおける代謝流束(酵素反応の速度)をコンピュータで計算しました。
 その結果、エネルギー代謝のような重要プロセスを担っている遺伝子が欠失していても、細胞の生存に影響がないだけでなく、細胞内の各種の物質量の変化にもほとんど影響が出ませんでした。また、生育条件を変化させた場合、RNAやタンパク質の量は大きく変化しましたが、代謝物質の量はほとんど変わりませんでした。このように「大腸菌は状況に応じて様々な手段で代謝を安定に保っている」ということが世界で初めて定量的に実証されました。
 これは当研究所が5年間独自に開発してきた先端技術を組み合わせて行った世界に類のない大規模な実験であり、今後はこの技術を医療、環境、食品分野に応用していくことになります。

 冨田勝先端生命科学研究所長は、「我々のグループが鶴岡でこの5年間に独自に開発してきた先端技術を組み合わせて、世界の誰も真似のできない大規模な実験を実施することができました。山形の自然豊かな環境が、独創的な研究を育んでくれたのだと思います。今後はこの技術を医療、環境、食品分野に応用して世界があっと驚く成果を出していきたいです。」とコメントしています。


* この論文は米科学誌「サイエンス」2007年4月27日号に掲載予定です。またそれに先がけて、日本時間3月23日にScience Expressウェブサイトに掲載されます( http://www.sciencexpress.org および http://www.aaas.org )。サイエンスおよびScience Expressは世界最大の総合科学機関である米国科学振興協会(AAAS)により発行されています。

** 代謝物質の分析には研究グループが独自に開発した「メタボローム解析技術」を応用。キャピラリー電気泳動と質量分析計を組み合わせた「CE-MS」という技術で、同時に数千種類の代謝物質を測定できます。またタンパク質の解析にも独自に開発した測定技術を応用しました。これらの大規模な細胞分析の手法は、様々な分野での応用が期待できます。たとえば、がん細胞に特有の代謝系を突き止め、その代謝系に特異的に働く抗がん剤を開発したり、バイオエタノールやバイオプラスチック生産菌など工業用の有用微生物の代謝系を改善して生産性を大幅に向上することが可能と考えられます。

[日経プレスリリース / 2007年03月23日]
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=156127&lindID=4

慶應義塾大学先端生命科学研究所 ホームページ
http://www.iab.keio.ac.jp/ja/

DNA修復 助ける酵素を特定 がん治療応用期待=京都大学

2007年03月10日 | 遺伝子
 放射線などで切断、欠損したDNAの初期段階の修復に重要な役割を果たす酵素を、京都大医学研究科の武田俊一教授、園田英一朗助教授らのグループが確認した。がん治療の効率化につながる知見という。米科学誌「モレキュラーセル」で10日、発表した。

 ■初期段階で働き

 武田教授らは、酵母のDNA複製時に補助的に働く酵素「UBC13」の機能を、ニワトリのリンパ球を用いて調べた。

 UBC13がない細胞は、切断されたDNAの修復に2倍以上の時間がかかり、放射線照射で死滅する確率が高かった。修復するためのタンパク質が切断部に集まらなくなっており、修復の初期の段階で働いていることが分かった。人の細胞でもDNAの修復能力が低下することを確かめた。

 染色体は、DNAがタンパク質(ヒストン)に巻き付く構造になっている。UBC13は、修復作業を始めるために、ヒストンからDNAをほどく役割をしている可能性があるという。

 UBC13の働きを抑えることができれば、DNAの修復が遅くなり、細胞は死にやすくなる。がん細胞でUBC13の働きを抑えれば、抗がん剤や放射線治療の効率が上がるという。

 武田教授は「DNAの修復はいくつもの段階を経て行われるが、UBC13は、これまで知られていなかった初期の段階で働く酵素。品種改良や遺伝子治療の効率を上げることにも応用できる可能性がある」と話している。

[京都新聞 / 2007年03月10日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007031000024&genre=G1&area=K10



【遺伝子修復「要」のたんぱく質確認 京都大教授ら】

 遺伝情報を担うDNAは、放射線や活性酸素などでちょん切られたり傷ついたりし、病気を引き起こす。京都大大学院医学研究科の武田俊一教授(放射線遺伝学)らは、壊れたDNAを細胞が自力で直す仕組みの解明を進め、修復システムの引き金となる新たなたんぱく質を確認した。病気の予防治療にも役立ちそうだ。米科学誌「モレキュラーセル」9日号に発表した。

 DNAの損傷は一つの細胞で1日あたり5万~50万回に達するが、細胞は1分以内に損傷場所を探し、修復する。「ATM」というたんぱく質が損傷を感知し、修復システムの引き金を引いていることは分かっている。

 武田教授らは酵母に耐性をつけることで知られる「UBC13」という別のたんぱく質に着目。ニワトリのリンパ球細胞でUBC13を作る遺伝子の働きを止め、放射線を当てたときの細胞の反応を調べた。すると、正常の細胞に比べて生存率が10分の1前後になり、DNAを直す時間も2倍程度かかった。UBC13の方が、修復システムの要になっているとみている。

 武田教授は「がんの放射線治療で、患部でのUBC13の働きをじゃましてやれば、がん細胞をもっとよく殺せる可能性もある」と話している。

[朝日新聞/ 2007年03月10日]
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200703100059.html

京都大学 医学研究科 放射線遺伝学教室
http://rg4.rg.med.kyoto-u.ac.jp/