ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

アジアゾウは足し算が得意? リンゴなどで実験、高確率で正解=東京大学

2008年08月31日 | 生きもの色々
アジアゾウに2つの足し算の結果(和)の大小判断をさせたところ、高い割合で正答、優れた数量認知の能力を持つ可能性があることが、東大大学院文化研究科博士課程の入江尚子さん(25)の研究で分かった。

 実験は東京・上野動物園のメス「アーシャ」と京都市動物園のメス「美都」に実施。2つのバケツを用意、バケツの中は見えないように2メートル離れた場所に立たせ、リンゴなどをそれぞれのバケツに、最初に1個から5個の範囲で入れるところを見せ、次いで両方に1個から5個の範囲で足して、どちらを選ぶかを見た。例えば、左のバケツに3つ、右に2つ入れた後、左に2つ、右に5つ加えるといったやり方。多い方のバケツを選んだ場合を正答とし、9つのパターンを日やエサをそれぞれ変えて6回ずつテストしたところ、アーシャは正答率87%、美都は69%だった

(写真:研究をまとめた入江尚子さん。右は「アーシャ」=上野動物園)

[msn産経ニュース 2008年08月31日]
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080831/acd0808311724005-n1.htm

雄のY染色体、母の卵子から=マウスの子、初誕生-東京農業大学、マギル大学(カナダ)

2008年08月26日 | 遺伝子組替マウス
 男性を決定付けるY染色体は通常、父親の精子から男の子に受け継がれるが、母親の卵子から正常なY染色体を受け継ぐマウスの雄の子が世界で初めて誕生した。東京農業大の尾畑やよい講師と河野友宏教授、カナダ・マギル大の武藤照子博士らが26日までに、異常な卵子の細胞質を正常な卵子と交換する方法で生み出すことに成功した。
 哺乳(ほにゅう)類の性分化の根源に迫る研究成果で、卵子の細胞質を原因とする不妊の仕組み解明にも役立つと期待される。論文は米科学アカデミー紀要の電子版に発表される。(2008/08/26-06:13)

[時事ドットコム 2008年08月26日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_date1&k=2008082600044

生ごみから抗がん物質 能美のバイオ技研など発見 微生物が生成、新薬に=バイオ技研工業、富山県立大学

2008年08月26日 | 創薬
 バイオ技研工業(能美市)と富山県立大工学部生物工学科の五十嵐康弘准教授ら研究グループは二十五日までに、抗がん作用のある新しい化合物を作り出す微生物を生ごみ処理槽の中から発見し、新薬開発を目指して国際特許を出願した。この微生物は生ごみを発酵分解しながら、がんの転移や活性を抑える化合物を生成していた。動物実験で毒性が非常に弱いことも分かり、医薬品としての用途が期待される。
 堆肥(たいひ)中の微生物に環境や農業以外の分野から着目した研究は珍しい。

 この微生物は放線菌の仲間で、バイオ技研工業が開発し、能美市内で稼働する有機ごみの処理システムで作られた堆肥から見つかった。

 微生物が作り出す複数の物質を調べたところ、いずれもがんの転移を抑制する作用と、細胞のがん化や炎症に関係する活性酸素を消去する作用を持つまったく新しい化合物であることが分かった。

 微生物に由来する医薬品としては、青カビから発見された「ペニシリン」や筑波山の土壌から見つかった「タクロリムス」などが有名だが、五十嵐准教授によると、堆肥はほとんど研究されてこなかったという。

 研究は生ごみ分解微生物の新たな利用法を探っていたバイオ技研工業の宮野内浩治社長が同准教授に依頼して昨年六月に始まった。短期間での成果に五十嵐准教授は「身近な生ごみの中にこんな面白い微生物がいるとは思わなかった」と話し、宮野内社長は「生ごみの発酵処理は環境に優しいだけでなく、有用な物質が眠る『宝の山』を作る技術だ」と自信を深めている。

[北国新聞 2008年08月26日]
http://www.hokkoku.co.jp/_today/H20080826102.htm

甘い?辛い?いや「カルシウム味」 第6の味発見か=(米)モネル化学感覚センター

2008年08月25日 | 食品・栄養
【ワシントン=勝田敏彦】米ペンシルベニア州にあるモネル化学感覚センターのチームがカルシウムを味わうための遺伝子をマウスで確かめ、米化学会で発表した。「カルシウム味」が第6の基本味である可能性もあるという。

 遺伝的に系統が異なる40種類のマウスにカルシウムを含む溶液を飲ませたところ、多くが飲むのを嫌うなか、がぶ飲みする系統が見つかった。遺伝子を比較した結果、カルシウムを味わうのに使う二つの遺伝子が特定された。

 人間の舌は、甘み、塩味、酸味、苦み、うまみという五つの基本味を感知する。今回のマウスの遺伝子に似たものは人間にもあることから、研究チームは「カルシウム味」が基本味の一つである可能性もあると考えている。

 研究チームのマイケル・トルドフ博士は「カルシウム味は苦みに酸味が少し加わったようなものだ。適切に表現する言葉はなく、『カルシウムっぽい』としかいいようがない」と話している。

[朝日新聞 2008年08月25日]
http://www.asahi.com/science/update/0825/TKY200808250043.html

<ターメリック>カレーに記憶力のもと 認知症治療に効果?=武蔵野大学、(米)ソーク研究所

2008年08月23日 | 食品・栄養
 カレーのスパイス「ターメリック」(ウコン)に含まれる成分から、記憶力を高める化合物を、武蔵野大と米ソーク研究所が合成した。動物実験の段階だが、将来、認知症の治療などに役立つ可能性があるという。米老年医学誌(電子版)に掲載された。

 この成分は「クルクミン」と呼ばれ、生薬としても用いられるショウガ科の多年草「ウコン」の黄色色素。アルツハイマー病の原因とされる異常たんぱく質ベータアミロイドが脳内に蓄積するのを防ぐ作用を持つことが知られている。

 研究チームが調べたところ、クルクミンは神経細胞の損傷を抑えられるが、記憶力向上までの効果は確認できなかった。そこで、クルクミンの化学構造を変えたさまざまな化合物を合成。ラットから記憶の形成にかかわる脳の「海馬」を摘出、薄くスライスして組織が生きた状態が保たれたままにして、これらの化合物を加えた。

 その結果、「CNB-001」と名付けた化合物が、細胞間の情報伝達の効率を高め、その状態を持続させることが分かった。また、この化合物を飲ませたラットは前日に見せた物体を記憶していたのに対し、飲ませなかったラットは覚えていなかった。この化合物が、記憶をつくるスイッチとして働く酵素を活性化していることも判明した。

 武蔵野大の阿部和穂教授(薬理学)は「この化合物は、海馬の働きを直接活発にしている。安全性を確認し、新薬の開発を目指したい」と話す。【下桐実雅子】

[毎日新聞 2008年08月23日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080823-00000128-mai-soci


【カレーを食べて記憶力アップ…アルツハイマー予防に期待】

 武蔵野大は18日、米ソーク研究所との共同研究で、カレーのスパイスの一種ターメリック(ウコン)から作った化合物に記憶力を高める効果があることが動物実験でわかった、と発表した。

 アルツハイマー病など脳疾患の予防などに役立つ成果として注目される。

 同大薬学部の阿部和穂教授らは、インドでアルツハイマー病の患者が少ないことに着目。その秘密は食生活にあるとして、同国の代表的料理カレーに含まれる様々なスパイスの効果を調べたが、ターメリックに、加齢などによる脳の神経細胞の損傷を防ぐ働きがあることを確認したにとどまった。そこで研究チームは、米ソーク研究所がターメリックの成分(クルクミン)から作った新化合物「CNB―001」の効果をラットを使って調べた。

 その結果、ターメリック由来の化合物を飲むと、飲まないラットに比べて、記憶力が高まっていることが観察できた。阿部教授は「新化合物は、脳の記憶にかかわる海馬部分を直接活性化している可能性が高い。今後は、安全性を確認し新薬の開発を目指したい」と話している。

[読売新聞 2008年08月19日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080819-OYT1T00040.htm?ref=mag


染色体異常の細胞を生成 「がん原因解明に光」 サイエンス誌に発表=久留米大学

2008年08月23日 | 癌、腫瘍
 生物の遺伝情報が集まる染色体の一部を操作し、異常な構造の染色体を人為的に作り出すことに、久留米大学分子生命科学研究所(福岡県久留米市)の高橋考太教授(分子生物学)の研究チームが成功し、22日付の米科学誌サイエンスに発表した。染色体異常が一因とされる、がんや不妊の原因解明に役立つ可能性があるという。

 通常、染色体は細胞分裂の際に均等に分かれ、同じ性質の新しい細胞を形成する。均等に分かつ役割を担うのが染色体の一部「セントロメア」で、これが機能不全を起こすと分裂後の細胞のほとんどが死滅する。しかし数千分の一程度の確率で生き残った場合、染色体異常を起こした異型の細胞が形成されるという。

 研究チームは、人間と似た染色体構造をもつ単細胞生物「分裂酵母」を用い、人為的にセントロメアを破壊、染色体異常がある細胞を自在に作り出す方法を確立した。高橋教授は「これにより染色体異常に伴う、がんや不妊の原因メカニズムを遺伝子レベルで解明できる可能性が出てきた」としている。

2008年8月23日 09:25 カテゴリー:科学・環境 九州・山口 > 福岡

[西日本新聞 2008年08月23日]
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/43073

ほ乳類は危険を「におい」で察知=(スイス)ローザンヌ大学

2008年08月22日 | 心のしくみ
【8月22日 ジュネーブ/スイス発 AFP】スイス・ローザンヌ大学(University of Lausanne)の研究チームは21日、ほ乳類はにおいを利用して危険を知らせ合えることが判明したと発表した。

 あるラットが発した警告フェロモンを混ぜた水の入ったビーカーが置かれた環境に別のラットを入れると、すぐに危険をかぎ取りビーカーから離れる。この警告フェロモンに反応しているのが、鼻孔入口にある300-500個の細胞からなるGruenebergと呼ばれる神経節だったのだ。

 この神経節は1973年に科学者Hans Grueneberg氏が発見したもの。人間にも備わっていることから、ローザンヌ大学の研究チームは、人間にも互いに危険をにおいで知らせ合う機能があるとみている。

 Grueneberg神経節の細胞は、細胞に含まれるカルシウムを利用して脳に危険を警告するという。研究チームが実験で、マウスにほかのフェロモンやにおいや母乳のにおいをかがせたところ、神経節の細胞内に含まれるカルシウムの濃度は上昇せず、細胞の活性化みられなかった。だが、警告フェロモンをかがせた場合だけ警告信号を発した。

 別の実験では、Grueneberg神経節を取り除いたマウスの反応を観察したが、隠したビスケットなど、ほかのにおいはかぎ分けたものの、警告フェロモンには反応しないことが分かった。

 このような警告信号を感知することによって、危険や捕食者から逃げるなどの行動を起こすのだと、研究チームは指摘している。

 生物のほかの種にも同様の機能があり、例えば昆虫は同種間で分子の信号を送り、互いに危険を知らせ合っているという。(c)AFP

[AFP BB News 2008年08月22日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2509245/3250612

ES細胞から大量の赤血球を生成、輸血用血液も可能か=アドバンスド・セル・テクノロジー社(米国)

2008年08月21日 | 再生医療
【8月21日 ワシントンD.C.発 AFP】米マサチューセッツ(Massachusetts)州ウスター(Worcester)を拠点とする米企業、Advanced Cell Technology(ACT)の研究員らが専門誌「Blood」(電子版)で、ヒトの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から大量の赤血球を生成することに成功したと発表した。今回の成功で、輸血用の血液を無限に供給できる可能性が出てきた。

 ACTのRobert Lanza氏は「血液の供給に制限があることは、大量の失血をしている患者にとって生命を落としてしまうことにつながりかねない」とした上で、「ES細胞は、治療に必要な赤血球を供給する細胞を無限に増殖させることができる新たな細胞源の役割を果たす」と語った。

 同氏は「われわれは現在、6ウェルプレートの培地1つで培養したES細胞から、10-1000億の赤血球を生成することができる」と述べるとともに、「幹細胞株を『Oマイナス』の血液型に合わせれば、どの血液型にも合致する『万能供血者』の血液を生成することができるだろう」と強調した。O型の血液は、どの血液型の人にも輸血することが可能な唯一の万能血液型だとされている。(c)AFP

[AFP BB News 2008年08月21日]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2508996/3245547

ラットに新たな「神経核」発見=京都府立医科大学

2008年08月19日 | 脳、神経
 ラットの脳の視床下部に新たな神経細胞の集合体「神経核」があることを、京都府立医科大学院3回生の森浩子さん(26)が発見、19日の米国科学アカデミー紀要電子版に発表した。新たな神経核の発見は30年ぶり。この神経核は血中の女性ホルモンの量に応じて受容体数が変動し、生殖や摂食行動を制御している可能性があるという。

 森さんは昨年4月、ラットの脳の断片写真を見ていて自律神経や内分泌機能をつかさどる視床下部に見たことがない神経核があるのを見つけた。ラットの脳の構造を解説する資料にも記述がなく、新たな神経核と判明。「矢状核(やじょうかく)」と名付けた。

 矢状核は雌雄いずれの脳にもあることが確認されたが、雄では雌に比べて約1.7倍大きいことも判明した。女性ホルモンであるエストロゲンの血中量の変化に応じ、受容体数が増減。変化に対応するように、矢状核内の抑制性の神経伝達物質が働いており、視床下部がつかさどる生殖や摂食行動などに影響を及ぼしているとみられるという。

 ヒトでは矢状核は見つかっていないが、森さんを指導する河田光博教授は「(人間にも)同じような神経核があれば、自己の性別を自然に認識する仕組みにかかわっている可能性がある」と話している。

[msn産経ニュース 2008年08月19日]
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/080819/trd0808191116008-n1.htm

ラットの脳細胞でロボット制御、実験に成功=レディング大学(英国)

2008年08月15日 | 心のしくみ
 【ワシントン13日共同】培養したラットの脳細胞が出す電気信号で小型ロボットを障害物にぶつからないように動かす実験に成功したと、英レディング大の研究チームが13日、発表した。

 人間やコンピューターからの指示は一切なかった。脳の発達や記憶の仕組みの解明に役立つほか、生体の脳で機械を直接制御する技術として注目を集めそうだ。

 チームによると、ラットの胎児から脳細胞を採取して酵素でばらばらにし、約60の電極が付いた小さな容器に入れて培養。脳細胞が成長して出すようになった電気信号を、円筒形の2輪走行ロボットに無線で送り、ロボットを動かした。

 ロボットには超音波センサーを搭載。障害物に近づくと特別な刺激が脳細胞側に送られるようにした。ロボットは最初は障害物に衝突を繰り返したが、そのうち“学習”して衝突を回避するようになった。

 チームは「培養した脳でロボットを動かした最初の例だ」と指摘。さまざまな刺激を与えて特定の動きをさせるよう訓練するという。

[共同通信47NEWS 2008年08月14日]
http://www.47news.jp/CN/200808/CN2008081401000164.html



【ロボット制御:ラットの脳で障害物との衝突回避を“学習”=英レディング大学】(毎日新聞)

 【ワシントン共同】培養したラットの脳細胞が出す電気信号で小型ロボットを障害物にぶつからないように動かす実験に成功したと、英レディング大の研究チームが13日、発表した。人間やコンピューターからの指示は一切なかった。脳の発達や記憶の仕組みの解明に役立つほか、生体の脳で機械を直接制御する技術として注目を集めそうだ。

 チームによると、ラットの胎児から脳細胞を採取して酵素でばらばらにし、約60の電極が付いた小さな容器に入れて培養。脳細胞が成長して出すようになった電気信号を、円筒形の二輪走行ロボットに無線で送り、ロボットを動かした。

 ロボットには超音波センサーを搭載。障害物に近づくと特別な刺激が脳細胞側に送られるようにした。ロボットは最初は障害物に衝突を繰り返したが、そのうち“学習”して衝突を回避するようになった。

 チームは「培養した脳でロボットを動かした最初の例だ」と指摘。さまざまな刺激を与えて特定の動きをさせるよう訓練するという。

[毎日新聞 2008年08月15日]
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/08/15/20080815ddm012040038000c.html

YouTube動画"Robot with a rat brain"
http://jp.youtube.com/watch?v=1-0eZytv6Qk

食道がん:野菜、果物で危険半減 飲酒、喫煙習慣あっても効果=厚労省研究班

2008年08月14日 | 癌、腫瘍
 ◇男性3万9000人調査
 野菜と果物を多く食べる男性は、あまり食べない男性に比べ、食道がんになる危険性がほぼ半減することが、厚生労働省研究班(担当研究者、山地太樹・国立がんセンター予防研究部研究員)の調査で分かった。今月号のがんに関する国際誌電子版に掲載された。

 研究班は95年と98年、8県の45~74歳の男性約3万9000人を対象に、食事に関するアンケートを実施し、野菜と果物の1日あたりの摂取量を推計した。04年までに、116人が、食道がんのうち日本人の大半を占める「扁平(へんぺい)上皮がん」と診断された。国内の食道がんの患者は、男性が8割以上とされる。

 分析の結果、野菜と果物の合計摂取量が1日平均544グラムと最も多いグループが食道がんになる危険性は、最も少ない同170グラムのグループの52%にとどまった。また摂取量が1日100グラム増えると、危険性は約10%減った。

 種類別では、キャベツや大根などのアブラナ科の野菜の摂取と、危険性の低下に関連が認められた。

 喫煙、飲酒習慣がある人でも、野菜と果物を多く食べると危険性が減った。喫煙習慣があり、日本酒を1日2合以上飲む人では、多く摂取する人の危険性が、少ない人より6割以上も低かった。

 山地研究員は「食道がんの予防には、禁煙、禁酒が第一だが、野菜と果物の摂取にも予防効果が期待できることが分かった。アブラナ科の野菜は、がんを抑制するとされる成分『イソチオシアネート』を多く含むため、効果があるのではないか」と話している。【関東晋慈】

[毎日新聞 2008年08月14日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080814dde007040069000c.html

尿崩症の仕組みを解明 新薬開発に光=東京医科歯科大学

2008年08月12日 | 生理学
 大量の尿が出て脱水状態に陥る病気「尿崩症」が起きる仕組みを、東京医科歯科大などが解明し、11日付の米の科学誌「ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー」電子版に発表した。尿から水を吸収する役割を果たす物質の移動に、不可欠なたんぱく質を突き止めた。この仕組みを利用することによって、尿崩症の新薬開発が期待できるという。

 尿崩症の患者は、数万人程度いるとみられる。1日最大10リットル近く尿が出るため、水を補給しないと昏睡(こんすい)状態になることもある。遺伝性の尿崩症の場合、尿を調節するホルモンを補充する治療があるが、精神系の薬の副作用が原因の場合、治療法はない。

 脱水時は一般に、細胞に水分を取り入れるたんぱく質「アクアポリン」が尿細管の細胞内部から細胞の表面へ移動し、尿から水を吸収する。しかし、尿崩症患者は、脱水状態でもアクアポリンが細胞表面に移動せず、尿からの水の取り入れができないため、脱水状態が続くとみられる。

 通常はアクアポリンを細胞内部にとどまらせる「柵」の働きをするたんぱく質「トロポミオシン」が、脱水をきっかけにアクアポリンと結びつき、柵の役目をしなくなり、アクアポリンが自由に移動できるようになることが分かった。研究チームの野田裕美・同大助教は「トロポミオシンの量や働きを調節することで、今まで治療できなかった患者のための新薬が開発できるかもしれない」と話している。【永山悦子】

[毎日新聞 2008年08月12日]
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/08/12/20080812ddm012040090000c.html

人のあくび、飼い犬にも伝染 日本人研究者が発表=ロンドン大学

2008年08月10日 | 心のしくみ
 人のあくびが犬に伝染することが実験で確かめられた。あくびの伝染は人やチンパンジーの間で報告されているが、人と犬では初めて。ロンドン大学の千住淳研究員(心理学)らが英科学誌バイオロジー・レターズに発表した。「飼い犬は人に共感する能力を備えているのかも」と話している。

 実験は、飼い主の家など、犬が落ち着ける場所で行った。飼い主以外の人が5分間犬と一緒にいて、目があったら声を出してあくびをした。その結果、29匹のうち21匹が1回以上のあくびをした。あくびと同じような口の動きだけでは1匹もあくびをしなかった。人から犬へのあくび伝染のメカニズムについては研究が必要という。

 動物は、思いがけない相手と遭遇したときにあくびをすることがある。研究チームは「その可能性も否定しきれない」としつつも「つられあくびが犬と人のコミュニケーションに役立っている可能性がある」と指摘している。(行方史郎)

[朝日新聞 2008年08月10日]
http://www.asahi.com/science/update/0809/TKY200808090289.html

急性白血病:原因遺伝子を特定=東京大学

2008年08月07日 | 医療技術
 ◇再発患者多い
 7~8割の患者が再発する急性白血病の原因遺伝子の一つを、黒川峰夫・東京大教授(血液腫瘍(しゅよう)内科学)らが特定し、7日付の米医学誌に発表した。新たな治療の道を開く成果として注目される。

 研究チームは、急性白血病の再発患者で働きが活発な遺伝子「Evi-1」に注目。白血病マウスからEvi-1を除去した細胞を取り出し、それを健康なマウスに移植した。

 その結果、Evi-1除去細胞を移植されたマウス約10匹は、白血病細胞を移植されたほぼ同数のマウスより、白血病の発症を1カ月遅らせることに成功した。発症は完全に止められなかったが、研究チームは「実験上の限界だ」としている。

 これまでに見つかった白血病の原因遺伝子は約100種類ある。Evi-1について、黒川教授は「発症に極めて重要な役割を担っていると言える。適切に制御できるようになれば、白血病の新たな治療につながるだろう」と話す。【斎藤広子】

[毎日新聞 2008年08月07日]
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/08/07/20080807ddm003040074000c.html

視床下部:もとになる細胞、ES細胞で作成 尿崩症治療薬に期待=理化学研究所

2008年08月06日 | 脳、神経
 食欲や排尿など体の重要な働きを調節する脳の一部「視床下部」のもとになる細胞をヒトのES細胞(胚(はい)性幹細胞)から作り出すことに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の笹井芳樹グループディレクターと綿谷崇史リサーチアソシエイトらが成功した。拒食、過食などの摂食障害や脳手術などで視床下部が傷ついた際に尿が大量に出過ぎる「尿崩症」などの治療薬開発に活用できる可能性があるという。

 5日、米国科学アカデミー紀要電子版に論文が掲載された。

 視床下部は体積5立方センチ前後の器官。多様なホルモンを分泌し排尿や睡眠、体温などを調節している。人間が母胎で育つ途中で「視床下部前駆細胞」が変化してできる。笹井さんらは今回、この前駆細胞をヒトとマウスのES細胞から作った。

 マウスの実験では、前駆細胞をさらに変化させ、実際に視床下部の細胞を作ることに成功。排尿を抑えるホルモンを出す細胞や、満腹中枢の細胞ができた。これらを使えば、さまざまな化学物質が視床下部のホルモン分泌をどう変化させるか調べられるという。【野田武】

[毎日新聞 2008年08月06日]
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/08/06/20080806ddm012040062000c.html