ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

「慢性痛」解明へ一歩 ラットで人為的に発症=愛知医科大学

2009年02月10日 | ラット
 愛知医科大(愛知県長久手町)の研究チームが、けがや病気が治った後も痛みが続く「慢性痛」を、ラットで人為的に発症させることに成功した。より実態に近い実験モデルを開発したことで、謎の多い慢性痛の発症メカニズム解明へ前進が期待できそうだ。7月の国際生理学会世界大会(京都市)で発表する。

 研究チームは、2003年に日本で初めて開設された「痛み学講座」の熊沢孝朗教授ら。これまで人為的に慢性痛を発症させるには、神経を直接傷つけていた。しかし、多くの慢性痛は、直接傷つかなくても発症し、メカニズムは謎。現在の研究の焦点となっている。

 ラットの足に炎症物質「リポポリサッカライド(LPS)」を注入。1日後に痛みを起こす濃い食塩水を注入すると、神経を傷つけず慢性痛を起こすことができた。さらに、LPSの濃度が低く炎症が弱い方が慢性痛になり、高濃度のLPSで炎症が強い方が慢性痛を発症しないことも分かった。

 LPS、食塩水それぞれ単独では、急性痛しか起こらない。なぜ組み合わせると慢性痛が起きるかは不明だが、濃度の組み合わせやタイミングが合うと異常な痛み信号が出続けてしまい、発症につながるとみられる。熊沢教授は「この実験モデルで、発症前の(炎症などの)状態がポイントであることが分かった。さらに解析を進めたい」と話した。

 九州大医学研究院の吉村恵教授(神経生理学)の話 慢性痛は、神経損傷ではなく筋肉からくる痛みのケースが多い。実態に近いモデルは極めて珍しく、治療法や薬物開発に有効な研究成果だ。

  【慢性痛】  急性痛が治まった後、痛覚神経系が何らかの原因で“誤作動”し続けている状態。原因である傷病が治っても痛みが続き、鎮痛薬などが効かない。急性痛が長引いている状態とは違い、決定的な治療法、治療薬はない。研究先進国のアメリカでは、患者数は約7500万人と推計されている。

[中日新聞 2009年02月08日]
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2009020802000153.html

妊娠中の軽いストレス→子供の学習能力向上=山口大学、山口労災病院ら

2008年11月16日 | ラット
 妊娠中の母体が軽いストレスを感じると、生まれた子供の学習能力が向上することを、山口大大学院医学系研究科の中村彰治教授(神経科学)と山口労災病院産婦人科の富士岡隆医師らの研究グループが動物実験で突き止めた。

 過度なストレスは胎児には悪影響だが、軽いストレスなら、感じた時に分泌されるホルモンが胎児の脳の発達を促すとみられる。中村教授らは「人間の赤ちゃんにも当てはまる可能性がある」としている。

 研究グループは、妊娠後期にあたる15~17日目のラットを3日間、金網状の筒で身動きできる程度に拘束し、ストレスを与えた。

 その後、胎児の脳を比較。記憶や空間認知をつかさどる海馬の神経細胞を調べたところ、1日30分間だけ拘束したラットの胎児は、他の神経細胞から情報を受け取る樹状突起が通常より大幅に発達していた。

 一方、4時間拘束したラットの胎児は、逆に樹状突起の成長具合が通常よりも低下していた。

 さらに、生まれたラットの学習能力を調査。音と光で合図して床に電流を流した時に別の部屋に逃げる割合を調べたところ、通常のラットが40~50%だったのに対し、30分間拘束した母親から生まれたラットは70~80%だった。迷路で迷わずに餌を探し出す能力も後者の方が高かった。

 研究グループは、ストレスから体の機能を守るために分泌される副腎皮質ホルモンが胎盤を通じて胎児の脳に届き、神経細胞の遺伝子に影響を与えて発達を促す、と推測している。

 妊娠中に適度なエアロビクスを続けた女性の子供の知能指数は、通常より高くなったという米国の研究報告もある。

[読売新聞 2008年11月16日]
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20081116-OYS1T00339.htm

母の食事が子のリズム作る、ラットで解明=東北大学

2008年07月02日 | ラット
 妊娠中の母親の食事パターンが、胎児の体内で1日のリズムを刻む生物時計の働きに、大きく影響を与える可能性があることを、太田英伸東北大助教(小児科学)らのチームがラットの実験で突き止め2日、米科学誌プロスワンに発表した。

 人間でも胎児の順調な成長や発達に、規則正しい食事が重要なことを示す成果という。

 チームは、妊娠したラットに、人工的に12時間ごとに昼夜を過ごさせた。ラットは夜にえさを食べる「夜型」だが、明るい時にしかえさを与えず「昼型」の食事パターンにしたラットも作り、出産直前の母親と胎児の脳などで、時計の役割をする遺伝子の働き方によって刻まれるリズムを調べた。

 母親の遺伝子が刻むリズムは、食事パターンにかかわらず夜型だったのに、昼型にしたラットの胎児は、リズムが夜型とは異なる昼型になっていた。

 えさを食べることで分泌されるホルモンなどが胎児に伝わり、時計遺伝子の働き方に影響を与えているとみられる。(共同)

[中日新聞 2008年07月02日]
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008070290104626.html


【胎児の生物時計:母の食習慣が影響 ラットで確認=東北大学】

 ラットの胎児の体内で約24時間周期のリズムを刻む「生物時計」が、昼夜の日照の変化ではなく、妊娠中の母親ラットがいつ食事をするかという「食習慣」の影響で決まることを、東北大病院周産母子センターの太田英伸助教(発達生理学)らが発見した。

 多くの生物は、生物時計を刻む時計遺伝子を持っている。太田助教らは、胎児の生物時計が母親から受ける影響を調べるため、人工照明で12時間ずつ昼夜が交代する環境を作り、妊娠中のラット10匹を飼育。うち5匹は1日1回、照明の点灯(日の出にあたる)から5~9時間後にだけえさを与え、残る5匹はいつでも自由に食べられるようにした。後者の5匹は、夜行性の習性で自然と暗くなってからえさを食べた。

 その後、母親と胎児の脳と肝臓で時計遺伝子「Per1」の発現と、日照を受けた情報を伝えるホルモン「メラトニン」の分泌リズムを調べた。すると母親は昼に食べたグループも、夜に食べた方も全く同じリズムだった。一方、胎児は母親が昼型の食事をしているとリズムのピークが昼だが、夜型だとピークも夜に変化した。

 このことから、母親の生物時計は人間が太陽を浴びて時差ぼけを治す時のように、日照の変化で決まるが、胎児は日照以上に、母親の食事スケジュールの影響を強く受けていることが分かった。胎児も生まれた後は、日照リズムに合わせて生物時計が調整されるという。

 太田助教は「生物時計の仕組みは人間でも共通で、妊娠中のお母さんの生活リズムが赤ちゃんの成育に重要だと再確認できた。この成果を元に、早産の赤ちゃんの生物時計をきちんとコントロールできる保育器の開発などに生かしたい」と話している。

 米国のオンライン科学誌「プロス・ワン」で発表した。【奥野敦史】

[毎日新聞 2008年07月13日]
http://www.mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/07/13/20080713ddm016040048000c.html



 そりゃやっぱり「昼型」で「規則正しく」食事を摂っている方が健康に良いような気がしますよ、なんとなく。胎児にだってそりゃ良いことだろうとは思います。

 でもね、妊婦にも妊婦を取り巻く環境にもいろいろな事情はあります。
 こんな記事で「ちゃんと睡眠や食事の管理をしなければいけませんよ」とか要らぬプレッシャーをかけないでください!と言いたいです。 「~だから最近の子どもはキレ易いんだ」とか 「ちゃんと産休を取って、会社は休ませて、ご主人は家事をしなければいけませんよ」とか、世の中の意見をこういう方向に誘導しているように感じてしまい、少しイラっとします。

 夜行性のラットが明期に(ちょっと不安な心持ちですが)ご飯を食べられるのに、暗期には(どういうわけか)ご飯にありつけない。こういう条件を学習し、仔ラットに内分泌レベルで何かを伝える、ということはあるかも知れません。仔ラットも昼型になればご飯にありつける可能性は上がるかも知れません。
 ですが、これらの遺伝子の働き方なんて、環境でどんどん左右されるでしょうし、元に戻らなくてもなにかで代償がきくような気がします。 明期と暗期を反転させて日周期リズムを変えたラットでも、数日でたいてい元に戻るという記事を読んだことがあります。 きっと生きものの仕組みは、もっと芯が強くて柔軟に出来ているはず。

 ですから、妊婦さんも赤ちゃんも新米お母さんも、どうか不安になりませんように。
夜更かししてしまったり、食事が不規則だったり、つわりとかご主人の午前様とか姑とか、まったりスルーで良いと思います。

(それにしてもYahoo!ニュースのコメント欄も、なんだか荒れていました)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080703-00000027-nkn-ind

勃起・射精の専用神経回路を発見=京都府立医科大学

2008年05月19日 | ラット
 哺乳(ほにゅう)類のオスはペニスを勃起(ぼっき)させて射精するために、脊髄(せきずい)に専用の神経回路を発達させていることを、京都府立医科大学の坂本浩隆助教(神経解剖学)らが発見した。この神経細胞は、特殊なホルモンを作り出していることもわかり、勃起不全などの原因を探るかぎとなりそうだ。米科学誌ネイチャーニューロサイエンス(電子版)に19日、掲載された。

 坂本さんらは、神経細胞が出すガストリン放出ペプチド(GRP)というホルモンとしても働く物質に注目。ラットを使い、下半身の運動や感覚をつかさどる腰付近の脊髄を輪切りにしてGRPがあるかどうか、染色で確かめた。するとオスだけに、よく染まる神経細胞があり、神経の先端が勃起や射精を起こす自律神経につながっていた。一方で、オスの生殖器が萎縮(いしゅく)したラットには、GRPを持つ神経は発見できなかった。GRPの放出を薬などを使って調節する実験では、勃起と射精は対応して増減した。

 哺乳類のオスの生殖行動は、脳からの興奮と同時に、脊髄での反射も重要な役割をしているとみられる。今回の成果は、反射と勃起のメカニズムの基礎的な関係を解明するもので、坂本さんは「勃起不全の治療に結びつく可能性がある」と話している。(内村直之)

[朝日新聞 2008年05月19日]
http://www.asahi.com/science/update/0519/OSK200805180049.html

難病「ALS」の進行を抑制=東北大学

2008年03月14日 | ラット
 運動神経が死んで全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、筋委縮性側索硬化症(ALS)になったラットの脊髄(せきずい)に、神経細胞を増やす働きがある物質を投与し病気の進行を抑える実験に、青木正志東北大講師(神経内科)らの研究チームが13日までに成功した。名古屋市で開催の日本再生医療学会で14日、発表する。

 サルの実験でも同様の効果が出始めており、引き続き効果と安全性が確認されれば、少数の患者を対象にした臨床試験を来春にも始める計画。

 チームは、神経を含む多様な細胞を増やす働きがある肝細胞増殖因子(HGF)という物質の働きで、脊髄の細胞死を抑制したり、神経のもとになる「前駆細胞」が神経に成長するのを促進するのではないかとみている。

[産経ニュース / 2008年03月13日]
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080313/acd0803130853004-n1.htm

やはりネコにはネズミ? アレルギーワクチンのマウス実験成功=スイス

2008年01月05日 | ラット
【1月5日 AFP】ネコアレルギーに対するワクチンを開発中のスイスの科学者らが「敵の敵は友」の格言を生かし、ネコのライバルであるネズミを使った試験に成功した。

 マンガの「トムとジェリー」ではないが、Swiss asthma and allergies research institute(SIAF)の研究チームは、タンパク分子に基づいたネコアレルギーのワクチンをまずマウスに投与して成功した。その結果、監督機関から臨床試験の認可を得ることができた。

 Reto Crameri主任研究員はスイス通信(ATS)に対し、新ワクチンは現在の天然抽出物を使用した治療法より100倍以上も効果的だと述べた。

 現在の治療法では3か月で20-30回の皮下注射を行う上、その後も3-5年間にわたり毎月の接種を要するのに比べ、新ワクチンはわずか3回の接種で効果を発するという。

 人体に対する新ワクチンの試験は3-4か月後には開始される予定で、チューリヒ大学(University of Zurich)と独ハノーバー(Hannover)のImVisioN社が共同で行う。(c)AFP

[AFP BB News / 2008年01月05日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2332588/2499479


聴覚の発達のしくみを解明=ジョンズホプキンス大学

2007年11月02日 | ラット
【11月2日 AFP】聴覚の発達のしくみを解明した研究結果が10月31日、英科学誌「ネイチャー(Nature)」で発表された。

 研究を行ったのは米メリーランド(Maryland)州ボルティモア(Baltimore)にあるジョンズホプキンス大学(Johns Hopkins University)のDwight Bergles氏率いる研究チーム。チームは中耳と内耳が発達しておらず空気伝送音を感知できない、生まれたばかりのラットを使い実験を行った。

 聴覚器官内の細胞が、細胞間のエネルギー伝達をつかさどるアデノシン三リン酸(ATP)を放出すると、これが音波に反応する内有毛細胞を刺激し、グルタミン酸塩と呼ばれるアミノ酸を放出。これにより、音を感知して脳に電気的信号を送る神経線維である初期聴覚神経細胞が活性化され、音が聞こえるという。

 研究チームは、今回の研究結果を「耳鳴り」の原因解明にも活用できる可能性があるとして期待を寄せている。(c)AFP

[AFP BB NEWS / 2007年11月02日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2305581/2302827

動脈瘤肥大を抑える物質を開発、ネズミで効果確認=大阪大学

2007年03月17日 | ラット
 腹部や胸部の大動脈がこぶのように膨らむ大動脈瘤(りゅう)は、破裂すると突然死する恐れが高い。その大動脈瘤が大きくなるのをとどめる物質を、大阪大の三宅隆医師や森下竜一教授(ともに遺伝子治療学)らが開発し、ネズミで効果を確認した。小さいままにできれば破裂の恐れが低くなる。脳動脈瘤などへの応用も考えられ、森下さんは「患者の不安が和らぐ。安全性を確かめ臨床応用につなげたい」という。
腹部大動脈瘤が大きくなるのをとどめる仕組みのイメージ


 動脈瘤は、加齢や動脈硬化に伴って、炎症が起きたり組織が壊れたりして血管の壁がもろくなった動脈が、血圧の影響で膨らんで起きる。

 炎症や組織の破壊は、それぞれ誘因物質が知られている。森下さんらは誘因物質を直接壊したりするのではなく、誘因物質が働きかける核酸とよく似た「おとり核酸」を合成し、動脈瘤の近くに入れる戦略をとった。誘因物質の大半が「おとり」に引っかかって、炎症や組織の破壊が進まなくなると考えた。

 腹部大動脈瘤を発症させたネズミで実験したところ、「おとり核酸」を大動脈近くの腹腔(ふくくう)内に注入した場合のこぶの断面積は、1週間後で平均3平方ミリ(注入しなかったネズミでは5平方ミリ)、2週間後で6平方ミリ(同13平方ミリ)と膨らみ具合が抑えられ、4週間後も維持された。

 近年、健康診断で直径3センチ前後の小さな腹部大動脈瘤が見つかるケースが増えている。治療に危険を伴うこともあり、破裂の恐れが高まる5~6センチになるまで待ってから手術やステントという器具で治療することが多い。その間、患者は不安と隣り合わせになる。

 胸部大動脈瘤や脳動脈瘤などへの応用をにらみ、静脈内に注入できるよう「おとり核酸」の微小粒子化に取り組んでいるほか、薄膜状や寒天状にして細い管(カテーテル)で患部に入れることも検討している。

 成果は17日、神戸市で開催中の日本循環器学会で発表される。
[朝日新聞 / 2007年03月17日]

http://www.asahi.com/life/update/0317/004.html

インスリンを傷口に塗ると回復が早まる=UCR

2006年12月13日 | ラット
 米カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)の研究者らは、膵臓から分泌されるホルモンであるインスリンを傷口に塗ると回復が早まることを発見した。動物実験で効果を確かめた。
どんな細胞や分子に働くかもわかっており、同じ効果を持つ安価な物質を開発できれば治りにくい傷の治療薬になるとみている。

 ラットを使って実験したところ、インスリンを塗った方が表皮の細胞が早く傷口を覆い、真皮の細胞による血管の再形成も早まった。人の細胞株を使った実験では、皮膚の細胞の増殖や移動を促し、微小血管の内皮細胞の移動を促進する効果があることもわかった。

[2006年12月13日/日経産業新聞]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2006121207215h1

心臓移植:摘出後72時間保存し移植…ラットで成功=神奈川大学

2006年11月21日 | ラット
首の部分に他のラットの心臓を移植されたラット=関教授提供 ラットから摘出した心臓を従来の記録より24時間長い72時間保存し、他のラットへ移植して10週間拍動させることに、関邦博・神奈川大教授(環境生理学)らの研究グループが成功した。東京都内で行われる日本臓器保存生物医学会で24日、発表する。

 関教授らは、臓器を浸す液として、他のどんな物質とも化合しないパーフルオロカーボン(PFC)液を使用。ラットから摘出した心臓に生理食塩水に近い保存液を注入した上で、PFC液中に浸した。さらに水中ポンプのような装置を使い、二酸化炭素10%、酸素90%の気体を液中の心臓に毎秒35ミリリットル吹き付けた。

 この心臓を72時間後に取り出して別のラットの首の部分に移植すると、10週間後にも心電図で拍動を確認することができたという。

 ラットの心臓では、神戸大が95年に発表した48時間保存後に移植し、6週間生存させたケースが最長記録だったという。人間の心臓の場合、摘出から移植して血流が再開されるまでの時間は4時間が限度とされている。

 関教授は「二酸化炭素を吹き付けることで、臓器の細胞の代謝を低下させて休眠状態にしたため、長時間保存ができたと考えられる。人間の臓器の場合はさらに研究が必要だが、応用も可能ではないか」と話している。【大場あい】

(写真は首の部分に他のラットの心臓を移植されたラット=関教授提供)

[毎日新聞/2006年11月21日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20061121k0000e040023000c.html

高脂血症治療薬フルバスタチンが脳梗塞に伴う記憶障害を緩和させる=大阪大学

2006年10月05日 | ラット
 高脂血症の治療薬として使用されているフルバスタチンに、脳梗塞(こうそく)に伴う記憶障害の症状を緩和させる働きがあることを、大阪大大学院医学系研究科の森下竜一教授(臨床遺伝子治療学)らのチームが解明した。ラットを使った実験では、脳の血管や神経の回復も確認された。日本人の死因の上位を占める脳梗塞の画期的な治療薬となる可能性が出てきた。

 森下教授らは脳梗塞の患者と同じ症状で実験するため、人工的に脳梗塞の状態にしたラットにフルバスタチンを3カ月間投与。その後、避難台を設置した水槽で泳がせ、避難台の場所を覚えさせる実験を実施した。

 避難台に到達するスピードを計測したところ、フルバスタチンを投与したラットは4日間で到達時間を約15秒短縮したが、投与しなかったラットはほとんど短縮できず、投与したラットが避難台の場所を記憶するなど、学習能力を回復していることが分かった。

 また、2種類のラットの脳を摘出して調べたところ、フルバスタチンを投与したラットは、脳梗塞で減少した脳の血管の数が正常に近い状態に戻ったほか、脳神経も再構築されたという。

 フルバスタチンは悪玉コレステロール値を下げる薬として広く使用されているが、森下教授らはその抗酸化作用の強さに注目。森下教授は「実用化までさらに臨床実験を進める必要はあるが、脳梗塞に有効な治療薬となるだろう。認知症の改善効果も期待される」と話している。6~7日に広島市で開かれる「第25回日本認知症学会学術集会」で、今回の研究結果を紹介する。

[産經新聞 / 2006年10月05日]
http://www.sankei.co.jp/news/061005/sha012.htm