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優秀な盲導犬増やすため、遺伝子解析 精巣などの保存も=帯広畜産大学

2007年02月25日 | 遺伝子
 帯広畜産大の鈴木宏志教授(家畜生命科学)らのチームは4月から、犬の性格にかかわる遺伝子を解析し、盲導犬に適した犬の遺伝子情報などをデータベース化すると同時に、精巣や卵巣の組織を凍結保存する世界初の「バイオバンク」を始める。盲導犬候補の犬は訓練前に去勢されるため、優秀な盲導犬だと分かった時には子どもをつくることができない。そこで将来的には保存しておいた精子や卵子を使って繁殖させ、盲導犬不足の解消を目指したいという。

 さいたま市で開催中の日本獣医師会学会年次大会で23日、発表された。

 日本盲導犬協会によると06年3月現在、国内で働いている盲導犬は952匹。一方、日本財団の98年の調査では、盲導犬を求める人は将来的な希望も含めると約7800人いて、「現在も大幅に不足している」(同協会)。繁殖用の犬は全国に145匹で、年間の育成数は130匹前後だという。

 盲導犬候補の雄は生後半年ごろ去勢、雌は8~11カ月ごろ不妊手術をする。1歳を過ぎたころ適性評価を受け、訓練が始まる。合格して実際に盲導犬になれる犬は、3~4割に過ぎないという。

 鈴木教授のチームは、独立行政法人の理化学研究所と共同で、盲導犬の訓練を受けた「ラブラドルレトリーバー」約200匹の遺伝子を解析。性格を左右すると思われる五つのSNP(DNA配列のわずかな個体差)の型と、盲導犬合格率との間に密接な関連があることを発見した。

 例えば、この五つのSNPをすべて持っている犬は合格率が82%だったのに対し、いずれか一つしか持っていない犬の合格率は6~7割、一つも持っていない犬は20%だった。一般に盲導犬には、人なつっこく集中力がある、ほえないなどの性格が向いているとされる。

 鈴木教授らのチームは、盲導犬を繁殖・育成している全国9団体などに協力を依頼し、犬の遺伝子を解析。「優秀な遺伝子」を持つ犬の情報をデータベース化する。そのうえで精巣や卵巣を保存し、団体から希望があれば、精子や卵子を提供していきたい考えだ。

 同チームはこれまでに、凍結保存精子を雌の犬に人工授精し、出産させることに成功。現在は、凍結卵巣組織を別の雌犬に移植し、子犬が生まれるかどうかを経過観察しているという。

[朝日新聞 / 2007年02月25日]
http://www.asahi.com/national/update/0224/TKY200702240307.html

日本獣医師会ホームページ
http://nichiju.lin.go.jp/


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2 コメント

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鈴木先生 (マウス)
2007-03-03 21:43:37
 帯畜で盲導犬の生殖工学するのは聞いていたけど、こんな目的なんですね。
 研究でいえば、マウスの精子凍結でかなり敵対されましたが・・・まぁ、本人は覚えてないでしょうが、噛み付かれた方(私)はよく覚えてます。それにしても、あんだけ精子凍結をボロっかすに言ってて、犬の精子凍結はやるんですね~さすが大学教授
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Re:マウスさん (ラット)
2007-03-06 20:25:10
 マウスさん、コメントありがとうございます。
 精子凍結の議論に関して、詳しくないのでごめんなさい。でも、よその研究室の貴重な研究を「ボロっかす」に言うのはやはり、いかな大学教授でも宜しくないですよね。しかもどこかで宗旨変えしていた‥なんて?(笑)。

 この記事を読んで初めて近年の盲導犬の現状を知りました。なるほど、頭数の大幅な不足が切実な問題で、優秀な盲導犬も既に不妊治療処理を施されていること、特定の5つのSNPと性格について最近ある関連性が見出されたとのこと。ですが、除去した(不要な)精巣だから凍結保存しておいて、後で別の目的に利用してもOK、とか、特定のSNPが揃っていたら優秀な遺伝子だから(ホントなの?)これをIVF用に提供しましょう、とか‥って一体、議論は十分尽くされたのか、研究は十分にされたのか、社会の合意は十分得られているのか、ちょっと‥心配になりました。

 勿論、たくさんの優秀な盲導犬が、それを待ち望んでいる目の不自由な方のもとへいち早く届けられれば、それは朗報だと思います。
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