ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

マウスの皮膚の若返りに成功=スタンフォード大学(米国)

2007年11月29日 | 遺伝子組替マウス
【11月30日 AFP】米スタンフォード大(Stanford University)医学部の研究チームが、欠陥遺伝子の働きを阻止する仕組みを発見し、マウスの皮膚を若返らせることに成功した。

 27日に発表された研究報告によると、同大の研究チームはコンピューター解析により、特定のタンパク質がさまざまな組織の老化に伴う遺伝子変化を促進することを発見。この発見をもとに、成長時に特殊な化学物質を含んだクリームを塗布すると、問題の欠陥遺伝子「NF-eB」のスイッチがオフになるよう遺伝子操作を施したマウスを開発した。
 
 実験では、この遺伝子操作を施したマウスの全身の皮膚の半分だけにクリームを塗った。2週間後に経過を調べたところ、クリームを塗った皮膚では遺伝子発現プロフィール、組織特性ともに、若いマウスの皮膚の特徴を取り戻していた。一方、クリームを塗らなかった皮膚は塗った部分よりも老化の改善がみられなかった。

 研究を主導したスタンフォード大のハワード・チャン(Howard Chang)教授は、AFPとの電話インタビューで研究の意義について「人間の老化には、疲労や肉体的消耗のみならず、遺伝的プログラムが影響していることが明らかになった。これをブロックすることで、健康改善につなげることも可能だ」と語った。

 しかし同教授は、この技術を全身に応用するのは現実的ではないという。老化を促進する欠陥遺伝子NF-eBは、免疫システムや他の細胞機能とも連携しているため、この遺伝子の活動が全身で停止することは死を意味するからだ。

 このことから同教授は、今回の発見は身体の一定の部分を治療する際への使用が適当だと考えている。次の研究段階として、心臓や肺機能の若返りへの応用研究や、若返り治療の継続の必要性、治療停止時の細胞で急速に加齢が進む危険性などの確認が必要だという。

 チャン教授によれば、すでに多くの研究者が、欠陥遺伝子NF-eBが免疫システムに果たす役割を考慮し、薬剤で遺伝子をブロックする手法を研究しているという。研究が進むにつれ、そうした薬剤が効果的に欠陥遺伝子をブロックできる日が来るかもしれないと期待を寄せている。

 人間に用いるには安全面の研究にまだ数年を要するとみられるが、この技術は全ての内臓や細胞組織に応用できることから、老化に伴う疾病や障害治療にとって朗報と言えるだろう。

 研究結果の詳細は、12月15日発売の医学誌Genes and Developmentに掲載される。(c)AFP

[AFP BB-News / 2007年11月30日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2319307/2413331

遺伝子操作でガンにかからないマウスの製作に成功=ケンタッキー大学

2007年11月29日 | 遺伝子組替マウス
【Technobahn 2007/11/29 14:33】米ケンタッキー大学の研究グループが遺伝子操作を加えることによりガンにかからないマウスの製作に成功していたことが28日までに学術専門誌「Journal Cancer Research」に掲載された論文により明らかとなった。

 研究グループは「PAR4」受容体に着目。PAR4の活動をより活発化させる遺伝子操作を加えることによって癌に対して抗生があるマウスを製作することに成功した。

 研究グループではPAR4受容体を活性化させる遺伝子操作を加えたマウスは癌にかかることなしに、また、遺伝子操作を加えない通常のマウスに比べて長く生存したと述べている。

 癌治療の画期的な成果となる可能性も秘めているこの研究、ケンタッキー大学の研究グループでは、この遺伝子操作の方法をヒトに応用することも十分に可能だと述べているが、PAR4受容体が癌細胞に与える影響を調べるためには今後、更に多くの研究調査が必要だとも述べている。

[technobahn / 2007年11月29日]
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200711291433

心臓血管機能改善に「足湯」、移植待機患者で効果確認=国立循環器病センター

2007年11月25日 | 医療技術
 「足湯」による温熱治療で、心臓移植を待つ患者の心臓血管機能が改善することが、国立循環器病センター(大阪府吹田市)の研究でわかった。

 体の深部の温度が上がって末梢(まっしょう)血管の血流がスムーズになることで、心臓のポンプ機能への負担が軽減するらしい。

 駒村和雄・心臓動態研究室長は、これまでに、全身浴のできない20~40歳代の移植待機患者4人に対して、温かい蒸気の出る「足湯」装置を使い、42度で15分間温め、30分間保温する治療を2週間行った。

 最も効果があったのは、重症の拡張型心筋症で人工心臓を装着した20歳代の男性で、足湯治療により、心筋に酸素や栄養を送る血管の広がりやすさ(血管内皮機能)が正常値まで改善した。さらに、心臓が血液を送り出す能力も向上して、左心房の内径が縮小、リハビリで歩く速度も速くなったという。

 別の40歳代の男性も、血管内皮機能が正常値になり、「夜に熟睡でき、不安感が消えた」と話す。

 効果があった2人はいずれも、足湯治療後、深部の体温が、約1度上がった。

 駒村室長は「足湯は、血管の機能を改善して、従来の薬物治療を後押しする効果がある。心臓にも効果があるのか研究を積み重ねて検証していきたい」と話している。

[読売新聞 / 2007年11月25日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071125it03.htm

ゼロ歳児にも遊び相手を選ぶ能力=エール大学

2007年11月24日 | 心のしくみ
ワシントン(AP) 意地悪な相手と優しい相手を見分けて、優しいほうと遊ぼうとする――生後6カ月から10カ月の赤ちゃんに、こんな複雑な判断能力があるとの研究結果を、米エール大の研究チームがこのほど、英科学誌ネイチャーに発表した。


チームは、大きな目が描かれた木製のおもちゃ3個を使って実験を試みた。1つのおもちゃが急坂を上ろうとする。そこへもう1つの「良いおもちゃ」がやって来て手助けし、別の「悪いおもちゃ」は引きずり下ろそうとする――という場面を赤ちゃんに見せた後、これらを赤ちゃんに与えたところ、ほぼ全員が、悪いおもちゃではなく、良いおもちゃのほうを選んだという。


また、手助けも邪魔もしなかった「中立のおもちゃ」を加えてみると、悪いおもちゃより中立、中立より良いおもちゃを選ぶ傾向がはっきりと現れた。男児と女児の反応に差はなかった。ただ、おもちゃから目を消した実験では、赤ちゃんたちはこれほどの判断力を示さなかったという。


チームを率いた同大の心理学者、カイリー・ハムリン氏は「ゼロ歳児にこのような社会的能力があるとは驚きだ。人間は生まれたばかりの時点で、教えられなくても社会性を備えているようだ」と述べた。


一方、フロリダ・アトランティック大の心理学者、デービッド・ルーコビッチ氏は、「赤ちゃんは生後6カ月までの間に、非常に多くの社会的経験を蓄積する。この実験で示された能力が、経験によって得られたのではないと結論付けるのは誤りだ」と批判する。


これに対し、ハムリン氏は、「予備実験では、生後3カ月の赤ちゃんにも同様の反応がみられた」と主張している。同氏らのチームはさらに、これが人間特有の能力かどうかを調べるため、サルを使った実験にも取り組んでいるが、結果はまだ出ていないという。

[cnn.co.jp / 2007年11月24日]
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200711240001.html

肺炎感染 細菌に「足」発見=大阪市立大学

2007年11月24日 | 生きもの色々
 肺炎を引き起こす細菌、マイコプラズマの一種に、クラゲのような形をしたたんぱく質の集まりが一つ存在することを大阪市立大大学院理学研究科の宮田真人教授らが見つけた。このたんぱく質構造は、体内に入ったマイコプラズマが感染のため、肺細胞に素早く移動する能力とかかわりがあるとみられ、構造の解明が治療法開発につながると期待される。今週の米科学アカデミー紀要(電子版)に発表する。

 実験に使ったマイコプラズマは魚のえらに炎症を起こす。細菌は長さ1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)弱のひょうたんのような形をしている。

 マイコプラズマの細胞膜を薬品で溶かし、電子顕微鏡で見たところ、中に直径約250ナノメートル(ナノは10億分の1)の楕円(だえん)形の頭の下に長さ約600ナノメートルの足が20本ほどついたクラゲのような形のたんぱく質を見つけた。

 マイコプラズマの移動には、細菌の外側に約400本ある長さ約50ナノメートルのたんぱく質が足となって動く必要がある。この足に異常があって移動しないマイコプラズマではクラゲ構造も見られないという。

[朝日新聞 / 2007年11月24日]
http://www.asahi.com/science/update/1122/OSK200711220059.html

赤ちゃんにも人を見る目?生後6カ月で実験=エール大学

2007年11月22日 | 心のしくみ
 敵になる人か味方になる人か……。生まれて6カ月の赤ちゃんが他人を助ける人の方を好む傾向があることを、米エール大グループが実験で突き止め、22日付英科学誌ネイチャーで発表した。人は小さいころから「モラル」を持っているのではとの見方を示している。

 人を見分ける力は、社会生活を営んでいく上で重要だ。実験では、顔に見せかけたおもちゃが山に登ろうとしているときに、それを助けて押し上げるキャラクターと、妨害する別のキャラクターがそれぞれ登場する場面を見せた。その後、二つのキャラクターを見せると、ほとんどの赤ちゃんが助けるキャラクターを選んだ。

 これまで、1歳半で人を助けようという行動をとるという報告があるが、社会的判断は、かなり大きくなってからできるようになると考えられていた。

[朝日新聞 / 2007年11月22日]
http://www.asahi.com/science/update/1121/TKY200711210399.html

人間の皮膚から万能細胞、再生医療へ前進=京都大学

2007年11月20日 | 再生医療
 人の皮膚細胞などに複数の遺伝子を組み込み、各種の組織のもとになる万能細胞(人工多能性幹細胞=iPS細胞)をつくることに、京都大・再生医科学研究所の山中伸弥教授らが成功した。21日、米科学誌セル(電子版)に発表する。米ウィスコンシン大も同日、米科学誌サイエンス(電子版)に同様の成果を発表する。人間の体細胞から万能細胞ができたことで、臓器や組織を補う再生医療が現実味を帯びてきた。

 代表的な万能細胞の胚(はい)性幹(ES)細胞は、生命の萌芽(ほうが)である受精卵を壊してつくるので批判が根強い。山中教授と高橋和利助教らは昨年8月、マウスの皮膚の細胞に四つの遺伝子を組み込み、世界で初めてiPS細胞を作製。受精卵を壊す必要がなく、倫理問題が少ないとして注目された。

 山中教授らは今回、成人の顔の皮膚の細胞や関節にある滑膜の細胞に、マウスの場合と同じ四つの遺伝子を導入。人やサルのES細胞の培養用の増殖因子を使ったり、マウスより長く培養したりして、人間のiPS細胞をつくるのに成功した。この細胞が、神経細胞や心筋細胞、軟骨などへ分化できることも確認したという。

 山中教授は「再生医療の実現にはまだ少し時間がかかるが、ねらった細胞に効率よく分化させたり、安全性を高めたりして、臨床応用につなげたい」と話している。

 一方、米ウィスコンシン大のチームは、山中教授らの4遺伝子のうち二つを別の遺伝子にして、新生児の皮膚細胞からiPS細胞をつくった。

[朝日新聞 / 20071120]
http://www.asahi.com/science/update/1120/TKY200711200405.html

マイコプラズマ:細胞にクラゲ構造の“骨組み”発見=大阪市立大学

2007年11月20日 | 蛋白質
 細菌の一種で肺炎などを起こすマイコプラズマの細胞内に、クラゲのような形をしたたんぱく質の“骨組み”があることが分かった。発見した大阪市立大の宮田真人教授(生物物理学)の研究グループによると、マイコプラズマに数百本ある「足」の動きを止めて病原性をなくす薬の開発につながる可能性があるという。研究成果は近く、米科学誌「米国科学アカデミー紀要」のオンライン版に掲載される。

 マイコプラズマは長さ約1万分の10ミリの病原体で、ひょうたんに似た形をしている。人間や魚などの気管やえらの細胞に生えた繊毛の先端に取り付き、繊毛の根元まで移動して病気を起こす。

 宮田教授らは魚のマイコプラズマを使い、表面の細胞膜を薬品で溶かし、電子顕微鏡で内部を観察した。その結果、直径約1万分の2ミリのかさ状のたんぱく質に、約20本のひも状のたんぱく質が取り付き、クラゲに似た形を作っていた。

 マイコプラズマは、ひょうたん形のくびれ部分に数百本生えた「足」を使って動くことが、宮田教授らのこれまでの研究で知られていた。しかし足を支えるマイコプラズマ内部の様子は不明だった。宮田教授は「クラゲ構造は、マイコプラズマを内部から支えるフレームだ。この構造には、体外に数百本ある足一本一本を、タイミングを合わせて動かす役目もあるのではないか」と話している。【高木昭午】

[毎日新聞 / 2007年11月20日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20071121k0000m040079000c.html

脊髄損傷の回復へ脳がんばる。画像で初確認=自然科学研究機構生理学研究所

2007年11月16日 | 可視化技術
 脊髄(せきずい)の一部が傷つき一時的に指を上手に動かせなくなった際、リハビリによる回復過程で、本来は使われないはずの脳の領域の活動が高まっている様子を、生理学研究所(愛知県岡崎市)の伊佐正教授らがサルを使った実験で初めて画像にとらえた。16日付の米科学誌サイエンスで発表する。より効果的なリハビリ法の開発につながる可能性がありそうだ。

 サルの脊髄の一部を傷つけ、一時的に人さし指と親指で食べ物をつまむことができなくする。リハビリをさせると、傷を受けなかった神経が働くようになり、3カ月程度で回復する。その過程の脳の働きを、血流量から活動領域を明らかにする装置で調べた。

 右手でつまむように訓練を受けたサルで右手が使えなくなると、回復初期の1カ月には、右手の動きをつかさどる左の脳の領域だけでなく、右手とは無関係なはずの右側の脳も活動した。3カ月後、回復が安定すると、本来使う側の左の脳の活動がさらに高まることがわかった。失われた機能をなんとか回復しようと脳が働く様子をとらえたのは初めてという。

 伊佐さんは「それぞれの脳の部位が、回復に対して果たす役割がわかってくれば、効果的なリハビリ法ができるだろう」といっている。

[朝日新聞 / 2007年11月16日]
http://www.asahi.com/science/update/1115/TKY200711150390.html



【リハビリで運動能力回復、脳が重要な働き】

 脊髄(せきずい)損傷後、リハビリ訓練によって運動能力が回復する過程で、回復にかかわる脳の特定部分が変化することを、自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)などのチームがサルを使った実験で突き止めた。

 運動能力の回復には、損傷がない特定部分の脊髄をうまく機能させるため、脳が重要な働きをしていることを示す結果で、リハビリでの患者の回復具合が予測できる可能性がある。成果は16日付の米科学誌サイエンスに掲載される。

 首の部分の脊髄(頸髄=けいずい)を一部損傷したサルは、直後は指先を使うことができないが、食べ物を指先でつまむ訓練を繰り返すと、1~3か月後には元通りにつまむことができる。

 研究チームは、回復途中のサルの脳を調べた。損傷1か月後の回復初期には、通常なら右手を動かす時に働きが活発化する脳の左側の運動野のほか、右側の運動野も働いていた。運動能力がほぼ元通りになった3か月後では、右側の運動野の脳活動レベルは下がり、左側の運動野の活動がより広範囲で強くなっていた。

 回復の過程で、損傷を受けていない脊髄の特定部分を通って情報を伝えるよう脳活動が変化しているとみられるという。同研究所の伊佐正教授は「脊髄の損傷の程度に応じて、リハビリ訓練でどこまで回復するか予測できるようになる可能性がある」と話している。

[読売新聞 / 2007年11月16日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071116i201.htm


炎症抑制タンパク質、感染症予防に効果=香川大学、ハーバード大学

2007年11月16日 | 蛋白質
 炎症反応を抑える作用があるタンパク質「ガレクチン9」に、体内に侵入した細菌やウイルスを退治する働きを強める作用があるらしいことを、香川大の平島光臣教授(免疫病理学)と米ハーバード大などの研究チームが突き止め、16日付の米科学誌サイエンスに発表した。

 炎症が関係するリウマチや膠原(こうげん)病など、自己免疫疾患の新たな治療薬として期待される。平島教授は「インフルエンザなどの感染症治療にも役立ちそうだ」としている。

 平島教授らは、ガレクチンが結合する細胞表面の受容体に着目。白血球の一種マクロファージの受容体にガレクチンがくっつくと、細菌やウイルスを食べるマクロファージの働きが強まることを確かめた。

 一方でガレクチンは、炎症関連物質を出す別の白血球の働きを抑制。生体内で二種類の白血球のバランスを取りながら制御しているらしい。

 バランスが崩れて炎症が過剰になると、リウマチなどの自己免疫疾患が起きる。平島教授は「ガレクチンを投与すれば、炎症を抑えながら感染症を防ぐ新たな治療のアプローチが可能だ」と話す。

[四国新聞社 香川NEWS / 2007年11月16日]
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/social/article.aspx?id=20071116000148

「老化で物忘れ」の仕組み解明=アルツハイマーと同じたんぱく質関与=理化学研究所

2007年11月16日 | 遺伝子組替マウス
 アルツハイマー病に関与するたんぱく質の一つが、老化に伴う記憶障害の原因になっていることを、理化学研究所の高島明彦アルツハイマー病研究チームリーダーらがマウスを使った実験で確認し、15日付の学会誌に発表した。このたんぱく質が脳内に蓄積すると、アルツハイマー病の原因になる神経細胞の変質(神経原繊維変化)をもたらすが、早期に発見できれば、発症予防が期待できるという。
 人間の脳は老化に伴い、記憶の形成にかかわる嗅内野(きゅうないや)という部位に「過剰リン酸化タウたんぱく質」が蓄積し、神経原繊維変化が発生。その後「ベータアミロイド(Aβ)」と呼ばれる別のたんぱく質により脳の広い部位に神経原繊維変化が拡大、アルツハイマー病に至る。
 研究チームは、ヒトのタウたんぱく質を作るマウス(タウマウス)を遺伝子操作でつくった。学習、記憶行動と神経細胞の活動を調べたところ、若いタウマウスでは通常のマウスとの違いはなかったが、老齢では嗅内野の神経原繊維変化が起きていなくても、記憶能力が極端に低下していた。
 老齢タウマウスの嗅内野を詳しく調べると、神経細胞同士のつながり(シナプス)の減少が判明。タウたんぱく質が神経原繊維変化とは別に、シナプスを減少させて記憶障害を起こしていることが分かった。
 神経原繊維変化は元に戻せないが、タウたんぱく質は薬剤で害を与えない状態に変化させることができるため、早期の発見により、記憶障害の改善やアルツハイマー病への進行を防げる可能性があるという。 

[Yahoo!ニュース 時事通信 / 2007年11月16日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071116-00000020-jij-soci

大切な音は左脳が聞き分ける。=自然科学研究機構生理学研究所

2007年11月15日 | 脳、神経
 騒音や人込みの中でも恋人や子どもの声が聞き取れるのは、左脳の聴覚野が大切な音を区別しているためとの研究結果を、自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)の柿木隆介教授と岡本秀彦研究員らのグループがドイツとカナダの大学と共同でまとめ、15日、英国の電子版の生物学・脳科学雑誌「ビーエムシーバイオロジー(BMC Biology)」に発表した。

 柿木教授によると、左脳が雑音から音を聞き分けていることを明らかにしたのは初めてという。

 柿木教授らは、雑音の中から会話のような音を聞き取る実験を約10人に実施。脳の神経細胞が音を聞いて活発化した際、神経細胞の電気活動に伴って出る微弱な磁場を測定して脳の働きを調べた。

 その結果、右脳の聴覚野は雑音に邪魔され、音を聞き取る神経細胞の働きが低下したが、左脳の聴覚野は活動があまり衰えず、必要な音を聞き逃さない傾向が確認できたという。


[共同通信 47NEWS / 2007年11月15日]
http://www.47news.jp/CN/200711/CN2007111501000772.html

音楽が女性ホルモンと作用 性別で不安緩和効果に差=徳島大学

2007年11月15日 | 心のしくみ
 音楽を聴くと不安が和らぐ効果には女性ホルモンの作用が関係しており、これが性別による効果の差を生んでいる可能性があることを、徳島大の近久幸子助教(環境生理学)らの研究チームがマウスを用いた実験で15日までに突き止めた。

 不安が音楽によって取り除かれるとの報告は多いが、男性より女性で効果が強く現れる傾向があり、理由は不明だった。

 チームは、高所で不安定な実験装置にマウスを入れて行動を分析。メスにクラシック音楽を聴かせると、装置から落ちそうな場所を避けるなど不安を示す行動が減った。

 オスではこの効果がなく、女性ホルモンの一種プロゲステロンを働かなくしたメスでも効果が消失。チームはこの物質が音楽による不安緩和に重要な役割を果たしており、性別で効果の差が出る一因と結論した。

[中日新聞、共同通信 / 2007年11月15日]
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2007111501000015.html

統合失調症に関与の遺伝子特定=理化学研究所

2007年11月13日 | 遺伝子組替マウス
 幻覚や妄想などの症状が出る統合失調症の発症に関与するとみられる遺伝子を、理化学研究所の吉川武男チームリーダー(精神医学)を中心とするグループがマウスの実験で突き止め、13日付の米科学誌に発表した。

 この遺伝子は、脳でドコサヘキサエン酸(DHA)などの不飽和脂肪酸と結び付くタンパク質をつくる「Fabp7」。脳が発達する胎児期にこれら脂肪酸が不足したことが、発症に影響している可能性を示す。確認されれば、妊婦への栄養指導による発症予防にも道を開くという。

 グループは、大きな音を聞く直前に小さな音を聞くと、通常は大きな音だけのときより驚き方が小さくなるのに、統合失調症患者では驚きが変化しにくいことに着目。マウスの中にも患者のように驚きが変化しにくいタイプを見つけ、正常に反応するマウスと比較し、この反応をつかさどる遺伝子がFabp7であることをまず突き止めた。

 この遺伝子は通常、脳の発達期に働きが高まり、成長後は低下するが、驚き方が変化しないマウスでは逆に、脳発達期に働きが低下し、成長後増加していた。Fabp7を持たないマウスをつくって調べると、脳の発達期に神経細胞の増殖が低下することも分かった。

 さらに、死亡した大人の統合失調症患者の脳でもこの遺伝子の働きが高まっていたことなどから、グループは原因遺伝子の1つと判断した。

[msン産経ニュース / 2007年11月13日]
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/071113/trd0711131012001-n1.htm

DNA配列:逆に記録 情報、元に戻す機能も-藻類で発見=立教大学

2007年11月11日 | 生きもの色々
 生命の設計図であるゲノム(全遺伝情報)のDNA配列が、通常とは逆の順序で記録されているケースのあることを、立教大などが真核生物の藻類「シゾン」で発見した。しかも細胞内では、逆の順序のDNA情報をもとに作られたRNA(リボ核酸)の前後を入れ替え、順序を元に戻す未知の現象が起きていることも突き止めた。生物が想像以上に多様な方法で生命情報を操っていることを示す重要な成果という。

 真核生物の遺伝情報は、DNAの塩基配列によって記録されている。この情報をもとに、たんぱく質を構成するアミノ酸を運ぶ運搬RNAなど、複数のRNAの働きで、その生物固有のたんぱく質が合成される。

 シゾンのDNA塩基配列は完全に解読されているが、その配列に対応するはずの運搬RNA遺伝子の多くが見つかっていない。研究チームは、この点に着目しシゾンを解析した。

 その結果、遺伝情報の配列が部分ごとに逆転しているDNAが見つかった。例えば「モンシ・ロチョウ」と書くべきところを、「ロチョウ・モンシ」と書くようなものだ。

 これから作られたRNAは両端が結合して環状になった後、結合部とは反対側が切断されて、正常な配列に加工されることを突き止めた=図。

 同大理学部の関根靖彦准教授(生命理学科)は「他の生物も同様の仕組みを持つ可能性がある。DNAの情報がどう使われるかという生命の謎の解明に貢献すると考える」と話す。【永山悦子】

[毎日新聞 / 2007年11月11日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20071111ddm016040079000c.html