ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

実験用マウス、祖先は江戸時代のペット 遺伝研が解明

2013年06月07日 | 生きもの色々
 実験動物として、世界の医学の進歩に貢献しているマウス。それらは、江戸時代に日本でペットとして飼われていたマウスの子孫であることを、国立遺伝学研究所の城石俊彦教授らが理化学研究所との共同によるゲノム解析で突き止めた。米国の科学誌に論文を発表した。

 実験で使われるマウスは、病気のなりやすさなどに違いがでないように、近親交配を20世代ほど繰り返して遺伝的な差がほとんどないように改良されている。欧州でペットとして飼育されていたマウスが米国に運ばれ、1900年初頭以降、米ハーバード大などで作られてきた。

 城石教授らは、日本産マウスをもとにつくったJF1と呼ばれるマウスと、世界で広く使われ、基準になっているマウスの全ゲノムを比較した。その結果、基準マウスのゲノムの1割がJF1と一致。基準マウスはJF1と同じ祖先に由来していることがわかった。

[朝日新聞 2013年06月07日]
http://www.asahi.com/tech_science/update/0607/TKY201306060523.html?tr=pc

サンゴ礁、海の酸性化で消える 沖縄・硫黄鳥島で確認

2013年03月26日 | 生きもの色々
 海の酸性化が進むと、サンゴ礁が姿を消し、魚などにすみかを提供しないソフトコーラルというサンゴの仲間が増えることを、東京大などが沖縄県の硫黄鳥島で確認した。将来、気候変動で海の酸性化が進むと予測されており、未来の海の姿が垣間見えた形だ。

 硫黄鳥島の東の浅瀬では、海底から二酸化炭素(CO2)のガスが噴き出すため、CO2が海水に濃く溶け込み、酸性化した場所ができる。

 東京大と琉球大が2011年、この付近を調べると、CO2濃度が一般的な海の倍以上の場所では、サンゴ礁をつくる硬い種類のサンゴが消え、ソフトコーラルが底を埋めていた。濃度が3倍以上の場所では、ソフトコーラルもいなくなった。一方、近くにある一般的な濃度の場所では、サンゴのみが生息していた。

[朝日新聞 2013年03月26日]
http://www.asahi.com/eco/articles/TKY201303250044.html

ホタルは人工光が苦手 一部のLED照明が産卵阻害か=国立環境研究所

2009年03月30日 | 生きもの色々
 発光ダイオード(LED)照明の中には、ごく弱い光でもホタルの産卵や幼虫の行動に悪影響を与えるものがあることが、国立環境研究所生物圏環境研究領域の宮下衛さんの実験で30日、明らかになった。

 影響が大きい波長の光は、照明や街灯などにも使われており、すでにホタルの繁殖に悪影響を与えている可能性もあるという。

 宮下さんは、成虫の飼育装置を箱で覆って暗くし、人工的に昼夜をつくった環境で飼育。「夜」の間に五色のLEDランプで照らした場合と暗いままの場合の産卵とふ化を比較した。

 受精卵を産んだゲンジボタルは、暗いままの場合は80%だったが、黄色のLEDでは0・1ルクスでもゼロになり、赤のLEDでは10ルクスで20%に低下した。雄と雌は自らの光でコミュニケーションを取るが、LEDの光によって妨げられ、交尾できなかったらしい。

[msn産経ニュース 2009年03月30日]
http://sankei.jp.msn.com/science/science/090330/scn0903300916002-n1.htm


植物の受精導く物質発見、140年の謎解明=名古屋大学

2009年03月19日 | 生きもの色々
 植物のめしべに花粉がついた後、受精を導く物質の正体を、東山哲也・名古屋大教授(植物細胞学)らのチームが突き止めた。140年前から研究されてきたが、長く謎だった。ふつうは受精しにくい種の間で有用な雑種をつくり出す道を開く可能性がある。19日付の英科学誌ネイチャーに発表、写真が表紙を飾る。

 花を咲かせる植物は、めしべの先端に花粉がつくと、花粉から「花粉管」と呼ばれる細い管が伸びて、めしべの中にある「卵細胞」に到達、受精する。しかし、なぜ花粉管が卵細胞へと伸びていくのかなど、受精の詳しい仕組みは、わかっていなかった。

 東山さんは東京大助手だった01年、ゴマノハグサ科の園芸植物「トレニア」で、卵細胞の横にある「助細胞」が花粉管をひきつける物質を出すことを報告。その正体の解明を続けていた。

 チームは今回、助細胞でつくられるたんぱく質に注目。少なくとも2種類のたんぱく質が花粉管の誘引物質として働くことを見つけた。

 花粉管をおびき寄せる性質から「ルアー1」「ルアー2」と名付け、助細胞でこれらのたんぱく質ができないと、花粉管が卵細胞へと伸びないことも確かめた。

 こうした誘引物質を使えば、植物の受精を人工的に制御できる可能性がある。

 東山さんは「誘引物質は植物ごとに異なり、今後はトレニア以外の植物でも見つかるだろう。花粉管がどのようにこの物質を受け取っているのかも研究し、植物の受精の仕組みを明らかにしていきたい」と話す。(米山正寛)

[朝日新聞 2009年03月19日]
http://www.asahi.com/science/update/0318/TKY200903180266.html

ショウジョウバエの触角の付け根に“耳”=東京大学

2009年03月12日 | 生きもの色々
 ショウジョウバエは、触角の付け根にある感覚神経で、人間の耳と同様に音や重力を検知することを確認したと、伊藤啓東京大准教授らが12日付の英科学誌ネイチャーに発表した。音と重力に関する脳の神経回路は人間とよく似ていたという。

 伊藤准教授は「人間とショウジョウバエは進化の過程で6億年前に分かれたが、音や重力の情報処理に最適な構造を求めていった結果、同じような神経回路になった可能性がある」としている。

 この感覚神経は、約500個の神経細胞が並ぶ「ジョンストン器官」。研究チームは、緑色蛍光タンパク質GFPを利用し、触角の動きから、音を検知する領域と重力を検知する領域を突き止めた。

 雌への求愛の歌を聞くと雄は雌を探す習性があり、スピーカーから歌を流すと、通常の雄は付近に集まったが、音に関する神経細胞が働かないようにした雄は集まらなかった。驚くと上に向かって逃げる習性を利用した実験でも、重力に関する神経細胞を働かないようにしたハエは上に飛ばないものが多かった。

[共同通信47NEWS 2009年03月12日]
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009031101001115.html

野生の母ザルが子に歯磨き指導 タイで確認=京都大学霊長類研究所

2009年03月11日 | 生きもの色々
 人の髪の毛をデンタルフロス(歯間磨き)のように使うことを覚えたタイの野生ザルの群れで、母親が子どもと向き合いながら大げさな身ぶりで歯磨きのやり方を「教育」していることを、京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)の正高信男まさたか・のぶお教授らが突き止め、米科学誌に十日発表した。

 同研究所によると、親が子に道具の使い方を教えるのを野生のサルで確認したのは初めて。

 チンパンジーやニホンザルの群れで、シロアリを巣から草で釣り上げたり、イモを海水で洗ったりする行動が広がった例は知られているが、一般的には子が親のやり方を単純にまねていると考えられてきた。

 こうした文化的な行動の広まりに、親の積極的な働きかけがあったことを示す成果。正高教授は「人に近い動物なので教育の起源を解明する手がかりになるかもしれない」と話している。

 グループは昨年二月から約一カ月、タイ中部の寺院跡近くにすむカニクイザルの群れ約二百五十匹を観察。群れでは十年前から、落ちている人の髪の毛を両手に持って歯の間を掃除する行動が見られるようになり、百匹近くに広まったという。

 幼い子ザルがいる母ザル七匹に注目し、髪を口に出し入れする回数や、歯の間をこする時間を計測。子ザルが目の前で見ている場合は、見ていない場合に比べて回数が二倍に増えた。時間もたっぷりかけて磨き、しぐさが大げさになる傾向も確認できた。

 「歯磨きしている母ザルのしぐさを、じっと見つめている子ザルの姿に大変驚いた」と正高教授。「今後は群れの中での歯磨き行動の広まりを追跡調査し、教育による効果がどの程度なのかを見極めたい」としている。

【写真説明】人の髪の毛を歯間磨きのように使い、子どもに歯磨きを見せる母ザル(京都大霊長類研究所・正高信男教授提供)

[中国新聞 2009年03月11日]
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200903110083.html

バッタが群れとなる原因は脳内物質セロトニン=ケンブリッジ大学

2009年01月31日 | 生きもの色々
【1月31日 AFP】英国の専門家チームは、バッタが孤独相から群生相に相転換するのは、脳内の神経伝達物質セロトニンが原因であることを突き止めた。29日の米科学誌「サイエンス(Science)」で発表された。

 バッタの後ろ脚をくすぐると、2時間後、そのバッタは、作物を食い尽くす巨大な群れを構成する一員となる準備が整う。これは、脚をくすぐって刺激するのは、通常1匹で行動するバッタが、食糧不足のために集団にならざるを得ない状況でぶつかり合うのと同じ状況を作り出すことになるためだが、研究者らは群れを作る理由は分かってはいたものの、急激な生物学的変化が起こる仕組みについては  90年間  も頭を悩ませていた。

 研究論文の共同執筆者、ケンブリッジ大学(Cambridge University)のSwidbert Ott氏は、「セロトニンは脳内の化学物質で、人間の行動や他者とのかかわりに大きく影響を及ぼすものだが、これと同じ化学物質が、内気で孤独を好む昆虫を大集団に団結させるのを知るのは驚きだ」と語った。

 研究結果によると、セロトニンが、個々のバッタを敵対関係から引きつけ合うように変えるという。また、群生相のバッタのセロトニン水準は孤独相のバッタより3倍高いことも判明した。

 いったん群生相に相転換すると、緑色だったバッタは鮮やかな黄色に変わり、筋肉も増強して長時間の飛行や仲間の活動的な捜索が可能となる。数十億匹規模の大集団となって、餌を探して約100キロメートルの距離を5-8時間飛ぶこともできるという。

 だが、孤独相のバッタにセロトニンの生成を抑制する物質を注入すると、そのバッタは落ち着いたままで、後ろ脚を刺激したり群れが現れても群生相には転換しなかった。一方、セロトニンの分泌を刺激する物質を注入されたバッタは、きっかけとなる刺激がなくても群生相へと変形したという。

 もう1人の共同執筆者のオクスフォード大学(University of Oxford)のMichael Anstey氏は、「これまで、刺激を与えるとバッタが『ジキルとハイド』のような驚くべき変形を引き起こすことは分かっていたが、孤独相のバッタを巨大な群れへと変える神経系の変化を特定することはできずにいた」と述べた。(c)AFP

[AFP BB News 2009年01月31日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2566067/3738966

クラゲから有用タンパク 変形性関節症の治療に効果=東海大学、理化学研究所

2009年01月31日 | 生きもの色々
 東海大と理化学研究所は30日、クラゲから採取した新しい糖タンパク質「クニウムチン」を使い、高齢者に多い変形性関節症の治療効果を高めることに、ウサギ実験で成功したと発表した。日本海での大量発生が問題化したエチゼンクラゲなどの有効利用にもつながるという。

 変形性関節症は、関節の軟骨がすり減るなどし、ひじやひざなどの痛みや機能障害を引き起こす。国内の患者数は700万人以上とされる。現在の治療では、軟骨の粘度を保つ糖タンパク質「ヒアルロン酸」を人工的に作りだし、患部に注射している。これに対して軟骨を保護、修復する糖タンパク質「ムチン」は自然界に少なく、構造が複雑で大量生産は難しかった。

 研究グループは一昨年、エチゼンクラゲやミズクラゲからムチンとよく似た性質を持つクニウムチンを発見。構造が単純なため高い品質で抽出でき、クラゲ1トンからはクニウムチン約1キロを採取できるという。

 クニウムチン0・5ミリグラムとヒアルロン酸5ミリグラムを混ぜ、変形性関節症を発症させたウサギに注射したところ、従来のヒアルロン酸だけと比べ、軟骨の厚みや面積が2・6倍も修復された。

 佐藤正人・東海大医学部准教授は「大量生産を軌道に乗せ、4、5年で実用化したい」と話している。研究内容は、3月5日から開かれる日本再生医療学会総会で報告する。

[msn産経ニュース]
http://sankei.jp.msn.com/science/science/090131/scn0901310021000-n1.htm


理化学研究所 プレスリリース
 クラゲから採取したムチン、関節治療への応用で動物実験に成功
 - 高齢化社会を支える変形性関節症治療への可能性 -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2009/090130/index.html
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2009/090130/detail.html

カタツムリ、交尾器の微細な模様で種を識別=信州大学

2009年01月22日 | 生きもの色々
 カタツムリが交尾する際、交尾器の表面にある微細な彫刻模様で、相手が自分と同じ種かどうかを識別している可能性が高いことを、信大理学部(松本市)の浅見崇比呂准教授(53)=進化生物学=らが突き止めた。一つの種から新種が分かれて進化する際のスタート地点である「生殖隔離」の過程を解明する有力な手掛かりとして注目される。

 東邦大理学部(千葉県船橋市)の関啓一研究員らとの共同研究。英王立協会の生物学専門誌「バイオロジー・レターズ」(電子版)に13日付で掲載された。

 カタツムリは雌雄同体で、交尾は互いに交尾器を相手に挿入して精子を交換して卵子と受精させ、両者が産卵する。温帯地域に生息する外来種「オナジマイマイ(BS)」と、近縁種で形態がそっくりの在来種「コハクオナジマイマイ(BP)」で実験した結果、BSとBPは10回中8回は同種間で交尾するが、2回は異種間でも交尾した。

 異種間では、BSは通常と同じように交尾するのに、BPは交尾器を抜いてしまうことが判明。BPはBSの精子をもらって産卵するが、BSはBPの精子をもらえず産卵できないことが分かった。

 相手の識別には化学物質「性フェロモン」がかかわっている可能性もあるが、交尾して初めて種の違いに気付くケースが2割あるため、性フェロモンだけでは説明できない。浅見准教授は「種ごとに異なる交尾器の微細な彫刻模様で相手の種を識別している」と結論付けた。

 交尾器の形態の違いで生殖隔離が起きる例が、巻き貝の仲間や雌雄同体の動物で報告されたのは初めて。カタツムリの交尾器の彫刻模様は種の分類の根拠として使われているが、なぜ種ごとに彫刻模様が異なるのかは分かっていなかった。

 冨山清升(きよのり)鹿児島大理学部准教授(動物行動学)の話 新種が進化する際の生殖隔離のメカニズムについては、精子と卵子の不和やフェロモンなどさまざまな研究がされているが、今回は、交尾した後に「器械的な違い」で相手が違うと気付いていることをデータで証明した。他の動物を含め、世界初の画期的な成果だと思う。

[信州毎日新聞 2009年01月22日]
http://www.shinmai.co.jp/news/20090122/KT090121LSI090002000022.htm

断食繰り返すと長生き? 線虫で解明=京都大学

2008年12月15日 | 生きもの色々
一時的に栄養を与えない“断食状態”を繰り返すと線虫の寿命が延びるメカニズムを、京都大の西田栄介教授らのチームが遺伝子レベルで解明し、15日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

 Rhebというタンパク質がインスリンに似た物質を活性化して代謝を変化させ、寿命を制御していた。線虫だけでなく、ラットなど哺乳類も食事を制限すると老化が遅れるが、詳しい仕組みは謎。西田教授は「人の寿命が決まる仕組みや動物の冬眠などにも、同じタンパク質が関係しているかもしれない」と話している。

 線虫は土壌などにすむ体長約1ミリの線形動物。遺伝子解析が進んでいるため生命科学研究のモデル生物として利用されている。

 チームは、線虫が食べる大腸菌を2日間隔で与えると、毎日食べる線虫と比べ、平均寿命が20日から30日に延びるのを確認した。詳しく調べると、Rhebが働いて老化抑制や代謝調節にかかわる複数の遺伝子のスイッチを入れていた。

[共同通信47NEWS 2008年12月15日]
http://www.47news.jp/CN/200812/CN2008121501000393.html

京都大学/研究成果 (2008年12月15日)
「断続的飢餓による寿命延長の鍵を握る遺伝子を発見」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2008/081215_1.htm

禿げの遺伝子を特定 7人に1人は生まれながらに禿げる運命=マギル大、グラクソ・スミスクラインら

2008年10月14日 | 生きもの色々
【Technobahn 2008/10/14 19:22】
3分の1の男性は45歳までに禿げることが知られているが、禿げの原因は遺伝的要素や、生活習慣などの複雑に絡み、これまでにはっきりと原因解明が行われたことはなかった。

 そのような中、加マギル大学、英キングズカレッジ、英医薬品大手のグラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)社による共同研究グループが禿げにつながる2種類の遺伝的変移の特定に成功していたことが12日、英科学雑誌「ネイチャー・ジェネティックス(Nature Genetics)」に掲載された論文によって明らかとなった。

 研究グループは1125名に渡るコーカソイド(いわゆる白人)のゲノム分析を実施。その結果、禿げには2種類のX染色体の遺伝的変移が関わっていることを突き止め、その後、更に1650名のコーカソイドのゲノム分析を実施することにより、分析結果が正しいことを確認したと述べている。

 研究グループでは禿げの80%はこの2種類の遺伝的変移が原因だとした上で、禿げの遺伝子は母親から子へ、母系統の家系を通じて受け継がれてきたものではないかと推論している。

 研究グループによると7人に1人は遺伝的に生まれながらにして禿げる運命にあるとしおり、X染色体の染色体番号20に遺伝的変移のリスクがある場合、その人が禿げる可能性はそうでない場合の7倍にも達すると述べている。

 禿げの遺伝子の特定に成功したのは今回の成果が史上初となる。
[techno barn 2008年10月14日]
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200810141922

魚たちは赤い蛍光色を発し赤色を認識する=(独)チュービンゲン大学ら

2008年09月16日 | 生きもの色々
【9月16日 パリ/フランス発 AFP】多くの魚や海洋生物が、赤色ネオンのような蛍光色を発しているとする論文が、15日発表された。

 太陽の可視波長は最長でも海面下10メートルまでしか届かないため、海中では色のスペクトルが不足し、魚は赤色をほとんどまたは全く認識できないというのがこれまでの定説だった。例えば消防服のような真っ赤なダイビングスーツは、海面下20メートルではダークグレーまたは黒色にしか見えない。魚にとってもそうであろうと魚類学者たちは考えてきた。

 だが、ドイツのチュービンゲン大学(University of Tubingen)のNico Michiels氏らは、そうした考えが間違いであることを偶然、発見した。

 同氏は同僚らととともに、緑と青の光線を遮断して赤の光線だけを通すゴーグルを着けて海中にもぐったところ、赤色に光り輝く世界を目の当たりにした。魚、藻、サンゴ、その他の微小生物が、深紅、ルビー色、チェリー色、さび色に輝いていたという。「日中に海に差し込む緑と青の光線が、われわれに赤色を見えなくさせていた」とMichiels氏は言う。 
 
 研究では、岩礁に生息するハゼやベラなど少なくとも32種の魚類が、太陽光による反射ではなく、自ら「クリスマスの赤い電飾のように」光ることができることもわかり、海中ではなく研究室でも確認された。発光源は、マニキュア液や塗料の光沢として使用されるグアニン結晶であるという。

 蛍光色の赤色を発光すると、たとえ深海であっても、付近の魚に認識されやすくなる。また、多くの魚が赤色を完全に認識できていると考えられる。

 それにはいくつかの理由がある。赤色を発光することで、交尾の相手を探したり、危険を知らせたりすることができる。サンゴ礁では、赤色を出すことがカモフラージュ効果を生む。

 発光することでどのように情報をやりとりしているのかが、今後の研究課題だという。魚が認識できる色スペクトルの実験を重ねて、一部の魚が赤色を実際に認識できていることを立証したいとしている。(c)AFP

[AFP BB News 2008年09月16日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2518039/3346102

人間の目はクラゲ起源か 光とらえる仕組み類似=大阪市立大学

2008年09月16日 | 生きもの色々
クラゲと人間は、目で光をとらえる仕組みがよく似ているとの研究結果を、大阪市立大の寺北明久教授と小柳光正講師(分子生理学)らが16日までにまとめた。

寺北教授は「クラゲは脳を持たない原始的な動物だが、人間の視覚システムはクラゲの祖先から進化した可能性がある」と話している。

クラゲの目にはレンズや網膜がある。寺北教授らは、アンドンクラゲの網膜で光をキャッチする「視細胞」を調べ、情報伝達にかかわるタンパク質などを特定。

その中で、光の信号を神経を伝わる電気的な信号に変換しているタンパク質や、このタンパク質に情報を伝えている「環状ヌクレオチド」という物質は、人間と共通であることを確かめた。

視細胞の仕組みは、無脊椎動物と脊椎動物で異なる。クラゲの目は脊椎動物の目と構造は似ているが、目のレンズが光を効率良く集めることができないこともあり、従来は脊椎動物とは起源が異なると考えられてきた。

寺北教授は「クラゲの目が光をとらえる仕組みは、脊椎動物のグループに近い」と話している。

[中国新聞 2008年09月16日]
http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2008091601000102_Science.html

カッコウの托卵 だまし、見破られて進化(コラム)=信州大学

2008年09月02日 | 生きもの色々
 家族も友人も持たず、子育ては一切しない鳥、カッコウ。他種の鳥の巣に卵を産み、他の鳥に子育てさせる「托卵(たくらん)」の習性がある。そんななぞに包まれたカッコウの生態が、遺伝子解析など先端技術で少しずつ明らかにされている。「カッコウの生態研究がライフワーク」という信州大学教育学部の中村浩志教授を訪ねた。 (引野肇)

 信州大学から車で三十分も走れば千曲川。ここが中村教授の研究フィールドだ。中村教授は同大の助手時代から、この不思議な托卵という行動に魅せられてきた。

 カッコウが托卵する相手としては、オオヨシキリ、モズ、オナガなどがある。卵がある鳥の巣を見つけると、そこから卵を一個取り除き、自らの卵を一個産みつける。他の卵よりいち早くふ化したカッコウのひなは、もともとあった卵を背中に乗せて巣外に捨てる。親もずる賢いが、ひなも相当の“ワル”だ。

 被害者の鳥もだまされてばかりではない。カッコウを見かけると巣に近づかないよう威嚇したり、カッコウの卵を見つけると外へ捨てたりする。中村教授は「カッコウと托卵される側との長い攻防戦を通じて、巧妙な托卵という行動が磨きあげられ、進化した」と説明する。

 江戸時代の文書によると、中部地方では当時、カッコウはホオジロに托卵していた。やがて、ホオジロもカッコウの悪だくみに気づき、ホオジロの卵を識別できるようになった。現在、ホオジロへの托卵はほとんど見られないという。「十種の鳥の巣に紙粘土製の擬卵を入れ、それが偽物と識別できるかどうか調べたが、ホオジロが一番識別能力が高かった」という。苦い歴史がホオジロの観察眼を磨いたのだ。

 メスが托卵する鳥の種類は決まっている。オナガに育てられたカッコウは、オナガの巣にオナガの卵に似た卵を産む。オオヨシキリに育てられたカッコウは、オオヨシキリの巣に、というわけだ。

 一方、オスは不特定のメスと交尾する。そこで中村教授は「カッコウの卵の形や色、模様は、オスにはないメスだけが持つW染色体上の遺伝子で決定される」と考えた。カッコウの血液を集めてDNA解析を実施して、その可能性が高いことを確認。二〇〇〇年、米科学誌「ネイチャー」に発表した。

 卵の模様には、線模様と斑点、斑紋の三つがある。ホオジロの卵には線模様が多く、江戸時代のカッコウの卵にも線模様が多かった。ところが、線模様がないオナガやオオヨシキリに托卵するようになると、卵から線模様が大幅に減った。「カッコウの卵にまだ線模様があるのは、ホオジロに托卵していたころの名残。いまは、線模様が多いとカッコウの卵と見破られて捨てられてしまう」と中村教授。

 オナガへの托卵が始まったのは約三十年前。当初、オナガはほぼ百パーセント、カッコウにだまされていた。しかし、じきに托卵に気づき、カッコウへの攻撃性も獲得、カッコウの卵を識別できるようになった。現在、だまされるオナガはほとんどいない。カッコウは、長い時間をかけて托卵の相手を次々と変えているのだ。

 中村教授は「カッコウは、夫婦関係も、親子関係も、友人関係も持たない孤独な鳥。生まれて死ぬまで悩むこともない。生まれて死ぬまで悩み続ける人間とは正反対だ」と言う。そこがカッコウ研究の奥深いところでもある。

<記者のつぶやき> 巣作り、ひなのエサやりなど子育てはたいへん。これを他の鳥にやらせ、そのうえ他の卵は捨ててしまう。人間だったら極悪非道だ。中村教授は「いったん悪の道に入ったら、とことんその道を追求せざるを得ないのが進化」という。托卵だって、そうそううまくはいかない。カッコウは「できればまっとうに生きたい」と思っているのかも…。

[東京新聞 2008年09月02日]
http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2008090202000166.html

アジアゾウは足し算が得意? リンゴなどで実験、高確率で正解=東京大学

2008年08月31日 | 生きもの色々
アジアゾウに2つの足し算の結果(和)の大小判断をさせたところ、高い割合で正答、優れた数量認知の能力を持つ可能性があることが、東大大学院文化研究科博士課程の入江尚子さん(25)の研究で分かった。

 実験は東京・上野動物園のメス「アーシャ」と京都市動物園のメス「美都」に実施。2つのバケツを用意、バケツの中は見えないように2メートル離れた場所に立たせ、リンゴなどをそれぞれのバケツに、最初に1個から5個の範囲で入れるところを見せ、次いで両方に1個から5個の範囲で足して、どちらを選ぶかを見た。例えば、左のバケツに3つ、右に2つ入れた後、左に2つ、右に5つ加えるといったやり方。多い方のバケツを選んだ場合を正答とし、9つのパターンを日やエサをそれぞれ変えて6回ずつテストしたところ、アーシャは正答率87%、美都は69%だった

(写真:研究をまとめた入江尚子さん。右は「アーシャ」=上野動物園)

[msn産経ニュース 2008年08月31日]
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080831/acd0808311724005-n1.htm